G8・アフリカ共同宣言
共有された価値、共有された責任


G8サミット
2011年5月26日〜27日
ドーヴィル、フランス
骨子英語

  1. G8並びにアルジェリア、エジプト、エチオピア、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ及びアフリカ連合委員会は、G8・アフリカ間の強化されたパートナーシップの重要性を強調する。アフリカは、躍動期にあり、取り組むべき課題が特に後発開発途上国において残っているとはいえ、世界の成長の新たな柱になりつつある。G8及びアフリカは、この重要な変革期に共に肩を並べている。
  2. 我々は、自らの目標を達成するため、共有された価値(特に、平和及び人権)、民主的ガバナンス並びに持続可能な開発を共に一層促進することを決意し、この点に関し、互いに説明責任を果たすとの精神に則って、我々それぞれの、そして共有された責任を引き続き受諾していく。

平和、安全保障及びガバナンス

  1. 我々は、この大陸において安定及び民主主義に向けて見られた全般的な進捗を歓迎する。幾つかの長期にわたる武力紛争が終結し、民主化プロセスは、普通のこととなり、もはや例外ではなくなりつつある。しかしながら、我々は、いまだ残る課題、特に自由かつ公正な選挙結果及び法の支配の尊重、一層の民主的開放性への人々の願望、並びになお続く紛争の解決に取り組んでいく必要がある。テロリズム、人身・武器・麻薬の不正取引、組織犯罪、そしてまた海賊といった現在の世界的な脅威には、アフリカにおける国別及び地域別のイニシアティブの国際社会の支援による強化並びに更なる国際協力が必要である。
  2. 我々は、コートジボワール国民の自由な主権意思に対する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、アフリカ連合及び国連による断固とした支持を称賛する。我々は、コートジボワールにおける人道的及び経済社会的に重大な状況に深刻な懸念を表明する。この点に関し、我々は、国際社会全体に対し、難民及び国内避難民の置かれた窮状の緩和を喫緊の課題として必要な支援を供与すること、そしてアラサン・ウワタラ大統領及びその政府が同国全域にわたって恒久的な平和、セキュリティの安定及び経済回復を取り戻せるよう支援の手を差し伸べることを求める。我々はまた、コートジボワール当局に対し、全コートジボワール国民の間の正義、平和及び和解という諸課題への取組に必要な措置を講じる、また、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰に関連する事項を含め、ワガドゥグ政治合意の中で現在宙に浮いている事項を実施するために努力を惜しまないよう奨励する。
  3. 我々は、スーダン問題に関するAUハイレベル履行パネルがスーダン関係者と重ねてきた取組を称賛する。我々は、包括的和平合意(CPA)の当事者及びスーダン国民に対し、2011年の住民投票の成功裡の終了を祝福しつつも、アビエにおける最近の暴力の拡大を非難する。我々は、すべての当事者に対し、従来のコミットメントを維持するため、その地域からすべての権限の無い部隊を引き揚げるよう求める。そして我々は、当事者に対し、CPAの主要課題すべて、特にアビエの石油のステータスに関する問題及び債務につき合意するよう求める。我々はまた、当事者に対し、ポストCPAに係るスーダンと独立する南部スーダンとの間の交渉について、両国が良好な近隣関係を保ち、経済的に互いに存立できる枠組みの中で、迅速に妥結するよう要請する。我々は、ダルフールでなお続く暴力及び不安定な状態に懸念を表明し、すべての当事者に対し、合同首席調停官及びカタール政府によって調停されたドーハ・プロセスの文脈において、迅速な解決を達成するよう取り組むことを求める。我々は、これらの目的のため、スーダン協議フォーラムを通じたものを含め、G8及びアフリカ各国の継続的な協力及び相互の努力を奨励する。
  4. 我々は、ソマリア暫定連邦政府(TFG)に対し、和解プロセスを拡大し及び強固にするよう、また、今後の道筋、特に移行を終結させる方法について、並びに2011年8月に暫定連邦諸機関の任期が終了した後の憲法プロセスといった今後の主要課題について合意するため、国際社会と共に取り組むよう要請する。我々は、すべての関係者に対し、紛争を収束させる方途として、包含的かつソマリア主導のプロセスを支持するよう求める。我々は、アフリカ連合及びそのミッションであるAMISOMによる行動を称賛し、ソマリア担当国連事務総長特別代表の任務及び努力に対する全面的支持を表明する。我々は、ソマリアに建設的に関与し続けること、並びに、人権及び民主的機関があらゆるレベルにおいて発展し得る平和的で安全な環境を確立するための国際的な努力を支援することにコミットする。
  5. 我々は、5月10日に行われた大西洋を越えたコカインの不正取引対策に関するG8閣僚会合で採択された、大西洋の両側での麻薬取引との闘いにおいて国際的及び地域的な協力を強化することを目的とする政治宣言及び行動計画を歓迎する。
  6. 我々は、国際法、特に関連する国連安保理決議及び国際条約に完全に沿った形で、あらゆる形態のテロリズムと闘うこと及びテロリズムを醸成する諸条件に対処することへの自らのコミットメントを再確認する。我々は、国家を超えたこの脅威のあらゆる側面を考慮に入れ、地域的な戦略を策定することを奨励する。我々は、テロの惨禍に見舞われた国々がテロリズム及びテロリスト集団と闘う能力を構築することを支援する用意がある。
  7. 我々は、海賊、特にソマリアを拠点とする海賊の深刻な脅威に引き続き懸念を表明する。我々は、海上での協調した対応を通じ、また、ソマリア沖海賊に関するコンタクト・グループを通じたものを含め、より長期的で地域的な能力開発の必要性に対処すること、並びに海賊の根本原因に対処し、及びソマリアの能力を補強する包括的戦略により、この脅威に対して断固たる対応を継続するとの我々の決意を強調する。並行して、我々は、判決の執行を含む効果的な訴追のために、一層の支援が必要であることに同意する。我々は、ソマリア沖海賊との闘いにおける重要な前進である国連安保理決議第1976号の採択を歓迎する。
  8. 我々は、アフリカ連合及び地域経済共同体による、アフリカ待機軍を含むアフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)設立に向けた努力、並びに2004年のシーアイランド・サミットで採択されたアフリカの平和維持能力強化のためのG8行動計画の成功裡の実施を歓迎する。我々は、互いに説明責任を果たすとの精神に則ってAPSAを一層強化する必要性を強調し、そして最近のAPSAアセスメント及びAPSAロードマップの指標となる諸要素の採択という進捗が得られたことを認識する。我々は、アフリカ大陸における平和及び安全保障のイニシアティブに関して最大の効果及び持続可能性を確保するため、支援供与に係るすべての利害関係者間の調整を改善し、アフリカのオーナーシップを促進する重要性を強調する。
  9. 人権、法の支配及び民主的ガバナンスの尊重並びに男女平等は、開発、安定及び民主主義を持続させる上で鍵となる重要性を持つ。我々は、アフリカのガバナンス及び人権に関する諸文書、特に民主主義、選挙及びガバナンスに関するアフリカ憲章の批准を加速するとのアフリカ連合の決定を歓迎する。我々は、アフリカ・ガバナンス・アーキテクチャー、特にアフリカ・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)への支持を想起し、APRM国別行動プログラムの提言の実施促進を奨励する。我々はまた、人権及び国民の権利に係るアフリカ憲章並びにアフリカの女性の権利に関する附属議定書の批准及び完全な実施を奨励する。
  10. 我々は、違憲的な体制変更と闘うためにアフリカ連合及びアフリカの地域機関がとった行動を完全に支持する。我々は、法の支配及び人権尊重を確保し、不処罰に対処するための一層の努力を奨励する。我々は、人権侵害に取り組むための暫定司法メカニズムの設立に向けた幾つかのアフリカ諸国によるイニシアティブを強く歓迎する。これらの行動は、更に発展させる必要がある。

経済発展及び環境

  1. アフリカは、ますます海外からの投資先及び民間セクター開発の目的地となっている。今日の課題は、雇用を創出し、人間の安全保障を確保し、個人、特に若年世代の能力を強化する、より包含的で共有された持続的な成長を達成するため、現在のアフリカ経済が有する前向きのダイナミクスを足場とすることである。我々は、人的資本の開発、地域的及び世界的な貿易統合、ビジネス環境、国内資源の動員、並びにエネルギー、交通及び情報通信技術等のためのインフラ及び関連サービスへのアクセス拡大を含め、経済成長の推進力についての我々の努力を強化する必要がある。この点に関し、我々は、2011年4月21日にパリで行われた第16回アフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)の結論を歓迎する。
  2. アフリカ諸国は、伝統的な政府開発援助(ODA)を越えて、債務の持続性を保ち続けながら、経済成長に資金を供給するために国内外から追加的に直接投資を呼び込む必要がある。規制の枠組み及びビジネス環境の改善並びに汚職との闘いのための相互の取組は強化される必要がある。このため、我々は、ビジネス環境の改革へのモメンタムを高め、かつ、同改革への障壁除去を支援するため、APFの中にビジネス界を含めた対話の場を設ける。我々は、すべての利害関係者による責任ある投資を奨励するとともに、企業に対し、企業としての社会的責任を強化するよう要請する。
  3. 地域統合は、アフリカの成長及び安定を増進するために不可欠である。野心的な戦略が採択されたが、その実施については、今も進捗が遅くかつ一様でない。アフリカ経済はまた、世界的なサプライ・チェーンに十分に統合されていない。我々は、今後のより深化した統合の構成要素となるような、アフリカにおける複数の地域統合イニシアティブ及び自由貿易地域に関する野心的なビジョンを支持する。我々は、この問題に関し、より良い地域的及び大陸的な統合を促進する手段として、アフリカ域内貿易の推進が2012年1月のアフリカ連合首脳会議の焦点として提案されていることを歓迎する。我々は、アフリカ連合及び地域経済共同体が、アフリカ連合ミニマム統合プログラムを含むそれぞれの行動計画を完全に実施することを引き続き支援していく。我々は、これら機関間での及びアフリカ連合との連携強化を奨励する。我々は、主要な貿易回廊、特にアフリカの内陸国における貿易を加速するために重要な貿易回廊の効率性を改善するための行動、特に地域経済共同体によって策定された回廊に係る行動計画の実施を支援する。また、域内貿易の増加及びインフラ改善のために必要な政策改革を求める。この大陸が直面する特定の課題を考慮し、我々は、国際社会による、特に国際開発金融機関を通じた協調的取組が、インフラ・プロジェクトへの融資においてアフリカを優先するよう求める。
  4. アフリカにおける地域統合もまた、この大陸を世界の諸市場に効果的に統合することを確保する上で極めて重要である。我々は、多角的体制を強化するために貿易自由化及びルール策定のプロセスを前進させることへの我々のコミットメントを改めて表明するとともに、後発開発途上国(LDCs)の優先事項に関するものを含む、ドーハ・マンデートに沿ってドーハ・ラウンドを妥結に導くための、すべての交渉の選択肢を探求する用意がある。
  5. 国内資源の動員の改善は、発展を持続させ、成長の強靱さを高め、援助への依存度を低下させるために非常に重要である。途上国における税務制度及び租税政策の改善は、途上国自身の開発計画に資金を供給するための持続的な収入源を確立することに資する。
  6. 採取資源に関連付けられた支出及び収税の透明性、並びにこれら収入の管理に係る健全な財政ガバナンスは、国内資源を十分に活用し、公共財及び公共サービスの一般市民への提供を確保するために不可欠である。より概括的には、透明で公正かつ機能している公的財政制度は、貧困削減及び持続的で自立的な開発のために非常に重要な要件である。収支両面における財政のグッド・ガバナンスは、これを達成するために鍵となる前提条件である。したがって、我々は、2007年のアフリカにおける財政のグッド・ガバナンスに関するG8アクション・プランを一層促進する重要性を強調し、財政のグッド・ガバナンスに向けた現在進行中のアフリカ主導の開発努力を歓迎する。
  7. 我々すべては、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)の完全な実施を通じたものも含め、他の分野における透明性を引き続き支援する。我々は、すべての国々、特に資源の豊富な国々、及び採取企業に対し、このイニシアティブに参加し又はこれを支持することを求める。我々はまた、政府収入の透明性を高める補完的な努力を歓迎し、石油、ガス及び採掘企業が政府への支払いを公開するよう要求又は奨励する透明性関連法令の制定又は自発的な基準の促進にコミットする。我々は、2010年12月にルサカで採択された大湖地域行動計画に関する国際会議のような、アフリカにおける天然資源の不法な搾取及び取引に対処するための国際的及び地域的なイニシアティブの完全な実施を奨励する。鉱物資源の不法な搾取及び取引に取り組み、森林保護を含む健全な天然資源管理を促進するためには、包括的なかつ地球規模のアプローチが必要である。
  8. G8は、マクロ経済のガバナンス、国内税制、公共財政管理並びに利権及び契約の交渉についての能力構築及び技術協力への支援を継続する。
  9. 電力及び調理燃料の両面でエネルギーへのアクセスが限られていることは、引き続き主要な懸念事項である。これは、経済発展及び貧困削減にとって主要なボトルネックとなっており、伝統的な調理燃料が幅広く利用されていることは、健康及び環境への深刻な悪影響の原因となっている。我々はそれゆえ、とりわけ再生可能なエネルギー源に焦点を当てつつ、持続的なエネルギー・サービスへのアクセスを確保することの必要性を強調する。G8は、エネルギーへのアクセス関連プロジェクト(地方分散型及び中央集中型の双方)、とりわけ地域的な側面及び持続可能な開発の視点を有するプロジェクト、並びに、エネルギーに関する越境取引及び様々な能力構築イニシアティブを引き続き支援する。アフリカ連合・アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)行動計画及びアフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)は、海外直接投資を動員するために適切な枠組みである。我々は、特に民間セクターから一層の投資を呼び込むためには、制度改革及び規制改革が必要であることを強調する。
  10. 我々は、大河川の水資源の活用については、共同開発を目的とした合意を達成するため、上流及び下流双方の国々の利益に十分配慮することが非常に重要であると考える。
  11. アフリカの農業は、広範で持続可能な経済成長及び開発の重要な推進力となり得る。農業の生産性及び生産量の持続可能な向上は、民間投資の誘引及び民間資金源の活用、雇用創出、農民の収入増加、並びにアフリカの農村部での包含的成長の活性化のために豊富な機会を提供している。これらは、食料安全保障の向上に貢献し、過度な価格変動を抑制するための主要な要素である。我々は、ラクイラ食料安全保障イニシアティブ及び包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)を通じたG8・アフリカ間の協力強化によって、アフリカの食料安全保障を改善していくことにコミットする。

互いへの説明責任

  1. 我々は、互いに説明責任を果たすとの精神に則って、2015年までのミレニアム開発目標達成、経済成長及び雇用創出の強化、並びに世界的な課題への対処を行うため、我々のコミットメントを果たし、その実施を監視することに完全にコミットする。
  2. 我々は、互いへの説明責任プロセスを歓迎し、保健及び食料安全保障についての2011年G8説明責任報告書、及びG8・アフリカ間のパートナーシップについての初のアフリカ連合・NEPAD説明責任報告書を歓迎する。我々は、互いへの説明責任プロセスを改善する努力を続ける必要性を認識する。
  3. 我々は、国内外の資源を開発に利用する際には互いに説明責任を果たし、透明性を確保することを奨励し、また、市民社会及び民間セクターの利害関係者に対し、あらゆるレベルで説明責任を向上させるよう奨励する。説明責任のメカニズムは、パフォーマンスを監視すべきであり、遵守のために十分なインセンティブを提供すべきである。我々は、すべてのドナー及びアフリカのパートナーに対し、援助の流れに関する透明で包括的な情報提供及び説明責任に関する多国間の取組への参画を求める。我々は、最近の災害による困難にもかかわらず、5月1日及び2日にダカールにおいてアフリカ開発会議(TICAD)閣僚級フォローアップ会合を開催した日本の決断を歓迎する。
  4. 本年後半に韓国釜山で開催される第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムを前に、我々は、パリ宣言及びアクラ行動計画の実施に向けた努力を歓迎する。主要な課題は幾つも残っており、それには、新興ドナー及び民間セクターを含む新たな利害関係者を開発アジェンダに参加させること、援助が与える影響を向上させること、分業の改善により援助の断片化を制限すること、制度上の能力を強化すること、並びに説明責任及び透明性を向上させることが含まれる。我々は、援助政策及び開発政策の影響及び成果に対してより強く焦点を当てるよう求める。
  5. 我々は、残された課題に鑑み、開発のための幅広い資源及び世界の公共財を動員することが緊急的に必要であることを強調する。ODAは、アフリカの途上国、特に後発開発途上国及び脆弱国家にとって主要な要素である。我々は、ODA及び援助効果向上に関するものを含め、我々のコミットメントを再確認する。ODAは、他の資金源との相乗効果によって、主要な開発政策の触媒及び経済成長のための民間投資のてことしての役割も果たしている。我々は、援助の枠を超えて、モンテレー合意で言及されたように、国内資源、革新的な資金調達、移民による送金、開発銀行が用いる市場手段及び民間資金フローを含め、他の資源を動員していく必要があることを強調する。
  6. 前途に横たわる諸課題は相当なものである。しかしながら、これらを乗り越えるとの我々の共有されたコミットメントも同じくらい大きい。我々は、パートナーシップの精神に則って、10億のアフリカの人々が有する発展の潜在力を解放することを目指して行動していく。