【菅総理冒頭発言】
今年のG8サミットにおいては、すべての首脳から、今回の震災、そして津波に対して、温かいお見舞いの言葉をいただきました。また、これほどの大災害においても冷静に行動してきた日本人の姿を見て深い感銘を受けたという、そういう言葉もすべての首脳からいただきました。あらためて世界各国との絆の深さを感じ、本当にありがたいことだと深く感じたところであります。
今年のサミットは、昨年に引き続いて私も出席をすることができ、率直な意見交換ができる関係になったことをうれしく思っております。外交政策を円滑に進めていくためには、首脳同士の信頼関係が重要だということをあらためて感じたところであります。
今年のG8サミットでは、サルコジ大統領が議長を務められ、まず我が国の大震災、そして原子力事故について、私の方から冒頭発言をするように、そうした機会を与えていただきました。私の冒頭の発言の中で、今回の原子力事故を教訓として、最高度の原子力の安全を実現するために、事故調査・検証委員会をまず立ち上げたことを説明いたしました。同時に、この事故の経験、そして教訓を世界の人々に伝え、さらには未来の人々にも伝え、我が国の歴史的な責任を果たしていきたいという考え方を、G8の皆さんにお伝えをいたしました。また、来年には我が国は、IAEAと協力して、この原子力事故を踏まえて、その原因を含めてしっかりと検証する国際会議を開きたいということを申し上げ、G8の皆さんへの参加の要請をいたしておきました。
今回のサミットとそれに先立つOECDの会合において、私は福島原発事故のことを踏まえながら、今後の我が国のエネルギー政策についての基本的な考え方を申し上げてきたところであります。つまり、これまで、原子力と化石燃料という二つの柱で特に発電などは行ってきたわけでありますけれども、この二つの柱に加えて、再生可能エネルギー、いわゆる自然エネルギー、省エネルギーという、この二本の柱を加える、こうした新しいエネルギー政策の基本的な考え方を申し上げたわけであります。
そして、自然エネルギー、つまりは太陽光や風力やバイオマス、こういったエネルギーによって、発電電力量に占める中で、2020年代のできるだけ早い時期に、少なくとも20%を超えるレベルまで、自然エネルギーの割合を拡大していく、このために、大胆な技術革新と積極的な普及の促進に当たりたい、このことを申し上げました。この目標を実現するためには、技術革新を進めると同時に、この場合には、政府主導のプロジェクトだけではなく、民間企業の資金や知恵も活かして、こうした事業を進めてまいりたい。すでに、ソフトバンクの孫さんなども、こういった分野への取組みを表明されていることを心強く思っております。
さらに、省エネルギーというのは、もちろん、エネルギーを効率的に使うということであると同時に、これまでのような、ある意味で無限にエネルギーが存在をするということを求めるのではなくて、生活の質は落とさないで、少ないエネルギーでも、しっかりと快適な生活を維持できる、そういう新たな文化の創造、また、国民一人一人の取り組みということも重要だと考えております。こういったことを含めて、しっかりと取り組んでいきたいということを、申し上げたところであります。
また、今回のG8サミットにおいて、世界情勢に関する議論を幅広く行いました。北朝鮮問題に関して私の方から議論を主導をいたしました。北朝鮮のウラン濃縮計画など、明らかに国連安保理決議に違反している問題について、そのことをG8としてもしっかり取り組んでほしいということを申し述べました。また、北朝鮮に対して、対話再開に向けた具体的な行動を求め、核開発計画の放棄や、さらには拉致問題の解決を迫る、こういう強いメッセージをこのG8の場においても出すことができました。
また、この間、このG8期間中も含めて、多くの国の首脳と二国間の会談を行いました。フランスのサルコジ大統領、そしてフィヨン首相とは、今回正式な公式訪問ということがありまして、それぞれ会談をもつことができました。サルコジ大統領からは、戦略的対話を進めたい、外相間の対話の立ち上げを提案いただき、合意いたしました。また同時に、国連の安保理改革の実現やグローバルな諸課題について、サルコジ大統領との間で有意義な会談を行うことができました。
米国のオバマ大統領には、震災から何度かの電話会談を行いましたが、(震災後)初めて直接お目にかかるということもありまして、多大な支援に対して謝意を直接申し上げました。そして日米関係、中東情勢、アジア太平洋情勢などの幅広い議題について、中身の濃い意見交換ができたと思います。その中で、TPP交渉参加の判断時期については、震災のため遅れているけれども、総合的に検討し、できるだけ早い時期に判断したい旨私の方から伝えました。また、オバマ大統領より、あらためて今年9月前半の私に対する訪米の招待をいただき、今後日程調整を進めていくことになりました。この私の9月訪米に先立って、国会の了承が得られるという前提で、いわゆる「2+2」を6月下旬に開催したいと思っております。さらには、本年夏にはバイデン副大統領を日本にお迎えすることになっております。こうした流れの中で安全保障、経済、文化・人材交流、この三本柱を中心として日米同盟をさらに進化させていきたい、従来からの考えを推し進めてまいりたいと思っております。
そして、ロシアのメドヴェージェフ大統領とは、エネルギー分野を含めあらゆる分野で互恵的な協力関係を進めていくことで一致いたしました。また、領土問題については静かな環境で領土問題の交渉を続けていくという考え方で合意をいたしました。さらに今回は、イギリス、ドイツ、カナダ、ハンガリーの各首脳とも有意義な会談を持つことが出来ました。
今後、私はブリュッセルにこの後移動し、明日の日・EU首脳定期協議に臨むことになっております。EUは、我が国にとって、基本的な価値を共有するグローバル・パートナーであります。首脳会談では、日・EU関係強化に向けて、しっかりとした議論を行ってまいりたいと思っております。今回で20年目の節目にあたる、このEUとの首脳会議、是非とも成功させてまいりたいと思っております。
今回の一連の首脳外交を通じて、私は各主要国のリーダーに対して、日本が国際社会とともに、一日も早く開かれた形での復興を成し遂げ、世界のリーダー国の一つとして、ご支援をいただいた、その国際社会からの善意のお返しとして、引き続き国際貢献という形で取り組めるよう、しっかりと復興に取り組んでいくことを、その決意を申し上げ、温かいご支持を得たところであります。
帰国の後には、いろいろな課題が待っておりますけれども、今回の外交によるいろいろな成果も踏まえて、今後の世界とのより良い、そして、世界に対して貢献できる日本というものを、野党の皆様にもご理解をいただきながら、実現してまいりたいと、そのように考えております。被災者の皆様をはじめとする国民の皆様の期待にお応えできるよう、国際社会と緊密に協力しつつ、未来志向の力強い復旧、復興、そして未来の創造に努めてまいりたい、このように考えているところであります。
【質疑応答】
(NHK・山口記者)
先ほど総理からもお話のありました、自然エネルギーを2020年に20%に引き上げるという話ですが、今回、国際公約として野心的な目標を掲げられました。しかし、技術革新のために必要な財源など、根拠が明確に示されなかったと思います。総理はこの国際公約を果たすために、具体的にどの程度投資して、どのようなスケジュール感でやっていこうとお考えなのかお聞かせください。
(菅総理)
正確に申し上げますと、2020年代のできるだけ早い時期に、少なくとも20%を超える水準となるよう、この自然エネルギーの割合を高めたいと、こういうことをOECDあるいはG8の場で申し上げた次第です。この目標は、おっしゃるように意欲的な目標ではありますけれども、私は決して不可能な目標だとは思っておりません。
すでに、ヨーロッパの国々では、20%近い自然エネルギーの比率を実現している国もあります。まず、現在国会に提出している固定価格買取り制度を、是非法案を成立させて、それによって多くの人たちが積極的にこの分野に参加をすることが、まず大きな第一歩だと思っております。さらに、革新的な技術改革、それに対する支援、これはもちろん国の支援もありますけれども、多くの場合、それが可能性があるとなれば、民間企業の資金も流入し、また知恵も活用されるものと思っております。そういった意味で、今我が国は財政上は厳しい状況にありますけれども、多くの可能性があるということを皆さんが認識していただければ、お金も人も知恵も集まってくると、このように考えているところです。
(共同通信・松浦記者)
内政についてお尋ねします。福島第一原発での海水注入をめぐって、政府の情報公開のあり方をめぐって不信が高まっています。こうした中で、自民党は内閣不信任案の提出を検討して、民主党の中にも同調する動きがありますが、こうした現状をどのようにお考えか、ということと、実際に不信任案に賛成あるいは採決の欠席などの動きが出た場合、党代表としてどのような処分をお考えか。そしてもう一点、震災対策などで、会期、国会を当分開いておくべきではないか、という声が根強いのですけども、会期延長についてどのようにお考えでしょうか。
(菅総理)
まず、海水注入につきましては、国会質疑の中で説明を申し上げたとおりであります。いろいろな野党からの動きもあるようですが、我が党として、しっかりとまとまって対応できるものと信じているところであります。国会の会期につきましては、いま多くの法案の審議をお願いしているところでもあります。そういったことを踏まえて、帰国してから、どのようにしていくのか、官房長官や幹事長を含め関係者としっかり相談したいと思っております。