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日本・ウクライナ・グローバル・パートナーシップに関する共同声明(仮訳)


 菅直人日本国総理大臣閣下とヴィクトル・ヤヌコーヴィチ・ウクライナ大統領閣下は、2011年1月18日、日本政府の招待によりヤヌコーヴィチ大統領が初の公式訪問を行った機会に、首脳会談を行った。
 両首脳は、民主主義、自由、法の支配及び人権といった基本的価値に特に重点を置きつつ、両国関係の現状と見通しにつき議論し、グローバルな課題について意見交換を行った。
 両首脳は、2012年の外交関係樹立20周年に向け、両国の潜在力を最大限活用するため二国間関係を進展させ、グローバルな課題への取組みにおける協力を強化するとのコミットメントを確認した。
 幅広い分野にわたる友好的な会談の結果、両首脳は以下の共同声明を発出した。


  1.  日・ウクライナ両国首脳は、4、600万人の人口を擁するウクライナの潜在力を強調しつつ、経済分野における一層の二国間協力の可能性に特に注目した。両首脳は、経済関係強化のため、具体的措置が採られるべきとの見解を完全に共有した。
     この目的のため、両首脳は、2011年中のハイレベルのビジネス・ミッションによる相互訪問を歓迎した。ヤヌコーヴィチ大統領と共に訪日したウクライナ側ビジネス・ミッションの滞在中には、日本経団連との会合が行われ、また、ビジネス・セミナーの開催が予定されている。
     日本経団連のミッションは、日本経団連ウクライナ部会及びウクライナ対日経済協力調整協議会による第3回日本ウクライナ経済合同会議開催のため、2011年3月にキエフを訪問予定である。


  2.  両首脳は、強固で持続的かつ均衡ある世界の成長を実現するため、世界経済危機に引き続き取り組むことの重要性を認識した。ヤヌコーヴィチ大統領は、日本の国際通貨基金(IMF)への1000億ドルの貢献に謝意を表明した。これは特に、2009年7月の対ウクライナ支援にも用いられたものである。また、日本人金融専門家をウクライナに派遣するとの日本の決定に対しても謝意を表明した。両首脳は、日本からの物品及びサービスの輸出を促進しウクライナの経済発展に貢献するとの観点から、日本政策金融公庫の国際部門である国際協力銀行(JBIC)からウクライナ輸出入銀行に対して供与される最大80億円のバンク・ローンへの署名を歓迎した。


  3.  両首脳は、WTOにおけるルール及びコミットメントを厳守し、保護主義に対抗する意思を再確認した。両首脳は、内容面で野心的かつバランスのとれた、多角的貿易体制の強化に資するドーハ開発アジェンダの早期妥結に向け、協働する意思を共有した。


  4.  両首脳は、両国の民間部門が経済関係の拡大に関心を有していることを歓迎し、相互の投資促進及び保護のための二国間協定締結に向けて2011年中に交渉を開始することを決定した。
     両首脳は、関連する行政手続の迅速化や投資環境の透明性と予見可能性の向上といった、ウクライナにおける一層の投資環境整備が外国投資の流入を促進するとの見解を共有した。菅総理は、こうしたウクライナの努力を支援するため、投資分野の日本人専門家を派遣することを表明した。
     ヤヌコーヴィチ大統領は、2011年1月から特定の分野における法人税の優遇措置を導入したことに言及し、また、採炭や冶金といった分野に日本からの投資を誘致することへの特別の関心を表明した。


  5.  ヤヌコーヴィチ大統領は、ウクライナにおける初の円借款案件である「ボリスポリ国際空港拡張計画」の進展を高く評価した。両首脳は、ODA事業の実施を続けるためには、円滑な手続の実施が重要であると認識した。両首脳は、ウクライナにおけるインフラ・プロジェクトの成功裏の実施が投資促進に積極的な役割を果たすこと、また、日本企業の関連技術及び専門性が効率的かつ適切に用いられることへの期待を共有した。
     両首脳は、日本からの支援の受入れ手続の最適化と効率性の向上の必要性について見解を共有した。


  6.  両首脳は、ウクライナの広大な黒土地帯が、穀物をはじめ、農業生産向上の高い潜在性を有し、世界の食料供給バランスに貢献しうるとの見解を共有した。両首脳は、農業投資の促進及び農業分野における知見と技術の共有の重要性を確認した。
     ヤヌコーヴィチ大統領は、日本を含む世界市場に対し農産品の安定供給を促進していく用意があることを表明し、菅総理はこれを歓迎した。


  7.  両首脳は、気候変動問題に取り組む必要性並びに京都議定書の下での共同実施(JI)及びグリーン投資スキーム(GIS)を含むこの分野における二国間協力の重要性を認識した。ヤヌコーヴィチ大統領は、日本からウクライナへの環境分野における投資を高く評価し、GIS資金の適切かつ透明性ある運用の確保に関するウクライナ政府のコミットメント及びGISの枠組みにおいて日本側との間で決定された関連取極の履行を確認した。ヤヌコーヴィチ大統領は、実施段階において日本の技術と専門性の活用が期待される、GISの具体的な事業を早急に特定するとのコミットメントを再確認した。


  8.  両首脳は、メキシコ・カンクンにおいて2010年11月から12月に開催された、国連気候変動枠組条約第16回締約国会議及び京都議定書第6回締約国会合の成果を歓迎した。両首脳は、カンクンにおいて採択された、コペンハーゲン合意に記された要素に基づくバランスのとれた一連の決定への支持を再表明した。両首脳は、全ての主要国が参加する公平で実効性ある国際枠組みを構築する、新しい一つの包括的な法的文書の早期採択に向けた相互協力を継続することで一致した。


  9.  両首脳は、ウクライナのロケットにより発射される日本の天文プロジェクト「JASMINE」に代表される宇宙の平和的探査の分野をはじめ、先進的な科学技術分野における協力の拡大と交流の緊密化を歓迎した。
     両首脳は、日本・ウクライナ科学技術協力委員会の推進及び効率性の向上を行う用意があることを表明した。


  10.  菅総理は、選挙監視団の派遣といった形により、ウクライナにおける民主主義のさらなる強化に向けたヤヌコーヴィチ大統領の努力を支援していく意図を再確認した。


  11.  両首脳は、両国外相級の日本・ウクライナ協力委員会、日本経団連ウクライナ部会及びウクライナ対日経済協力調整協議会による日本ウクライナ経済合同会議、日本・ウクライナ科学技術協力委員会、日本・ウクライナ政務協議をはじめとする両国間の協力的な対話の枠組みを高く評価した。両首脳は、幅広い分野における協力強化に向け、これら全ての枠組みをさらに強化していくことを支持した。両国外相級の日本・ウクライナ協力委員会第3回会合を2011年中の双方の都合の良いできるだけ早い時期に開催し、また、日本・ウクライナ科学技術協力委員会第2回会合を2011年に東京で開催することが決定された。両会合の具体的な時期は、早期に外交ルートを通じて調整される。


  12.  ヤヌコーヴィチ大統領は、2006年に日本からの財政的及び人的支援を得た共同プロジェクトとしてキエフ工科大学に設置されたウクライナ・日本センターの活動及び実績を高く評価した。同センターの様々な活動の中でも、両首脳は、日本のプロジェクト・プログラム・マネジメント(P2M)に関する技術協力は、ウクライナ経済の多様な部門の発展にとって有益であったことに留意した。両首脳は、同センターが、両国関係者の積極的関与を得つつ、科学技術、貿易・投資促進、日本語教育、相互の文化交流、相互理解促進といった分野における二国間協力の重要な要素であり続けるべきことを認識した。両首脳は、両国国民の相互理解の促進に向けた語学教育の重要性についての見解を共有した。菅総理は、ウクライナにおける日本語教育強化に向けウクライナ側と協働していく用意を表明した。ヤヌコーヴィチ大統領は、日本におけるウクライナ語教育促進に向け、日本側と協働していく用意を表明した。


  13.  両首脳は、2011年がチェルノブイリ原子力発電所事故25周年に当たることを想起し、被災地域の復興と持続可能な発展を支援する必要性について見解を共有し、国際社会の積極的関与の下、この問題について協力していく意向を再確認した。
     両首脳は2011年4月にキエフで開催される国際会議「チェルノブイリ事故から25年:未来のための安全」の重要性を認識し、ヤヌコーヴィチ大統領は、同会議への菅総理の出席を招請した。菅総理は、適切なレベルで同会議に参加する日本側の意向を表明した。ヤヌコーヴィチ大統領はまた、チェルノブイリ基金プレッジング会合の重要性を強調した。菅総理は、ウクライナ側及び国際社会による努力を歓迎し、チェルノブイリの安全及び安定化プロジェクトが速やかに完了するよう、必要な取組がなされることについて、真摯な希望を表明した。


  14.  ヤヌコーヴィチ大統領は、日本による貴重な貢献及び日本のイニシアティブにより設置された国連人間の安全保障基金を通じて行われているチェルノブイリ原発事故被災地域のコミュニティに対する支援を高く評価した。
     両首脳は、気候変動、テロリズム、麻薬取引、貧困、保健等の相互に関連するグローバルな諸課題への対処において人間の安全保障が重要かつ効果的であることを確認するとともに、すべての個人が恐怖と欠乏から免れ、尊厳をもって生きることができるような世界を築くという構想を一層推進するため、国際場裡において協力していくとのコミットメントを再確認した。


  15.  両首脳は、2012年にポーランドと共催でUEFA欧州選手権を開催予定のウクライナ・サッカー協会と、2002年に韓国と共催でFIFAワールドカップを開催した日本サッカー協会との間での実務的知見と経験の共有を歓迎した。


  16.  両国間の外交関係樹立20周年に当たる2012年を祝うに際し、両首脳は、ウクライナにおける日本月間及び日本におけるウクライナ月間を相互に開催する意向を表明した。この関連で、ヤヌコーヴィチ大統領は、日本の伝統芸能である歌舞伎のウクライナ公演開催に向けた支援を表明した。
     両首脳は、キエフ市と京都市との間の姉妹都市交流40周年の機会をはじめ、市民間の交流を通じた相互理解の深化を歓迎した。


  17.  両首脳は、2011年夏に就航予定の東京・キエフ間の直行チャーター便が両国間の人的交流を促進するであろうことを歓迎した。ヤヌコーヴィチ大統領は、近い将来の両国間の直行定期便の就航に向けたイニシアティブを表明し、菅総理は、チャーター便の実績を踏まえて適切な検討を行う意図を表明した。


  18.  両国間の人的交流の更なる促進に向け、両首脳は、ウクライナ国民に対する査証制度の円滑化の可能性を検討するよう、関係部局に指示を与えた。


  19.  菅総理は、「核兵器のない世界」及び核不拡散に向けた最も重要な取組として、ウクライナが1994年に、当時保有量世界第3位であった核兵器を廃棄し、また、2010年4月の宣言に従い2010年末に高濃縮ウランの大部分を国外移送したことを高く評価した。
     ヤヌコーヴィチ大統領は、2010年9月に日豪主導により立ち上げられた核軍縮・不拡散に関するイニシアティブを高く評価し、こうした取組と協働する用意があることを表明した。両首脳は、核リスクの低減の重要性を再確認し、核軍縮・不拡散分野において協力を強化することを決意した。両首脳は、包括的核実験禁止条約の早期発効並びに軍縮会議における兵器用核分裂性物質生産禁止条約の即時開始及び早期妥結に向け協働していくとの共通のコミットメントを表明した。


  20.  両首脳は、 日本・ウクライナ非核化協力委員会を通じた核セキュリティ及び原子力安全の分野におけるプロジェクトについて、満足とともに留意した。両首脳は、「核兵器のない世界」実現に向けた学界及び市民社会の積極的参加を歓迎し、2010年からのキエフ工科大学における「広島・長崎平和講座」の開始を歓迎した。


  21.  両首脳は国連及びその専門機関における両国の従来からの協力関係を歓迎した。両首脳は、近い将来、安保理をより代表性、正統性、実効性が備わったものとし、21世紀の国際社会の現実により応えたものにするとの要望を共有した。また、両首脳は、常任・非常任議席双方の拡大を含め、国連加盟国から可能な限り多くの支持を集められる解決の実現に向け、安保理改革に関する政府間交渉に引き続き積極的に参加していく用意があることを表明した。ヤヌコーヴィチ大統領は、日本の安保理常任理事国入りへの要望に対するウクライナの支持を改めて全面的に表明し、また、安保理改革においては、東欧グループのより幅広い代表性を確保するため、最低1非常任議席を割り当てるべきであるというウクライナの立場を、日本が引き続き支持し続けることへの希望を表明した。


  22.  菅総理は、民主主義促進及び経済発展のための重要な地域枠組みであり、「GUAM+日本」の枠組みにおいて日本が対話と協力を行っている「民主主義・経済発展のための機構−GUAM」について、ウクライナが果たしている積極的役割を賞賛した。
     ヤヌコーヴィチ大統領は、観光振興や省エネルギーといった双方の関心分野において、日本が資金提供し開催したセミナーの結果が、GUAM諸国間の協力の深化に貢献したことを高く評価した。両首脳は、「GUAM+日本」の下での対話と協力の促進に関するコミットメントを再表明し、2011年から3年連続で開催される観光振興に関する研修や、2011年に開催予定の自然災害予防に関するセミナーを歓迎した。


  23.  ヤヌコーヴィチ大統領は、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成する決意を表明し、地域小児病院における一般無償資金協力や一次医療の向上に向けた草の根・人間の安全保障無償資金協力といった保健分野における日本のODAを賞賛した。
     ヤヌコーヴィチ大統領はまた、2010年9月に菅総理大臣が第65回国連総会MDGs首脳会合において発表した、2011年からの5年間で、保健分野において世界エイズ・結核・マラリア対策基金への当面最大8億ドルの拠出を含む50億ドル、教育分野において35億ドルの支援を実施するとの「菅コミットメント」を賞賛した。


  24.  両首脳は、行った者、場所及び目的の如何を問わず、あらゆる形態のテロ行為を非難し、マネーロンダリング及びテロ資金対策のための効率的な協力枠組みに関して行われている議論について、満足の意とともに留意した。


  25.  北朝鮮による核開発に関し、両首脳は、2005年の六者会合共同声明及び関連の国連安保理決議に従い、朝鮮半島の非核化を達成することの重要性を強調した。両首脳は、国連安保理決議第1718号及び第1874号が全ての国連加盟国により着実に実施されることの重要性を改めて表明した。また、両首脳は、2010年12月の国連総会で採択された関連の決議及び2010年3月の国連人権理事会で採択された決議に従い、北朝鮮が国際社会が有する人道上の懸念に対応することの必要性を再確認した。


  26.  ヤヌコーヴィチ大統領は、近い将来、ウクライナを公式訪問するよう菅総理を招請した。菅総理は深く感謝してこの招待を受け取った。

2011年1月18日、東京において


     菅 直人             ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ
   日本国総理大臣            ウクライナ大統領