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生物多様性条約 第10回締約国会議(COP10)
ハイレベル・セグメント開会式
菅内閣総理大臣 演説


平成22年10月27日(水)
名古屋国際会議場
  政府インターネットテレビ

 地球の生物多様性を議論するために、世界の各地から日本に、愛知に、名古屋に、お越しいただいたみなさんに、このCOP10のホスト国の首相として、心から歓迎の意を表させていただきたいと思います。


 40年前、私は大学で自然科学を専攻していた頃、生物の多様性について、次のように学びました。
 地球が誕生した45億年前は、まだ地球上に生物は存在しませんでした。しかし、この地球が太陽からの距離によって、適度な温度であったこと、さらには水が存在し、二酸化炭素が存在したこと、こういった条件が重なる中で、無機物から有機物が生まれ、約40億年前に生物が誕生したと学びました。そして、環境に合わせて様々な形態の植物、動物が地球のあちこちに広がり、現在のような多種多様な植物、動物が溢れる地球が実現されたわけです。
 この地球の姿は宇宙のいくつかの偶然が重なったもので、まさに奇跡が生み出した、生物の多様性といっても言い過ぎではありません。

 今、その生物の多様性が、かつてないスピードと規模で失われています。日本列島の3分の1に当たる面積の森林が、毎年、地球上から消えています。大変残念なことは、現在進行中の大絶滅、大量絶滅は、私たち人間の活動が大きな原因となっています。このままのペースで破壊が進めば、人類がこれまで享受してきた多くの自然の恵みは、永久に失われます。その結果、私たち人類自身が地球上に存続することすら危うくなるおそれがあります。私達の世代で、大絶滅を食い止め、この宇宙でも貴重な、この豊かな地球を、将来の世代に引き継いで行かなければなりません。先ほどの子どもたちの世代に責任を持って引き継いでいかなければなりません。


 そのためには、このCOP10で「ポスト2010年目標」を策定することが不可欠です。世界共通の目標に合意するため、皆様の協力を心から求めます。「ポスト2010年目標」の実現には、今から2020年までの我々の行動が決定的に重要です。我が国は、国連システム全体に取組強化を求め、「国連の生物多様性の10年」を設けるよう提案します。


 また、「遺伝資源へのアクセスとその利用による利益配分」について、議定書の採択を目指さなければなりません。新たなパートナーシップが、遺伝資源を利用した医薬品開発を促進し、人類に多大な貢献をする一方で、その利益が生息地にも還元され、生態系保全の取組強化につながることを強く望みます。


 COP10に先立って開催されたMOP5では、大変喜ばしいことに、「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択されました。大きな成果であります。更なる成果に向け、COP10においても、各国の代表による一層の努力を心からお願い申し上げます。


 「ポスト2010年目標」が合意された場合、我が国は、世界の先頭に立ってその実現に尽くす用意があります。日本でお馴染みの昔話には、おじいさんが山で柴刈りをし、おばあさんが川で洗濯をする里山の風景が出てまいります。それは、人間が自然と共生する姿でした。日本は、古くから自然の恵みを生活や文化に巧みに利用しながら、自然と共に暮らしてきた国です。ここ愛知で5年前に開催された万国博覧会のテーマにおいても「自然の叡智」というものを掲げました。
 日本国政府は、この伝統から得た知恵、国内で培った技術や経験を活かして途上国を支援します。途上国が国家戦略を策定し、実践していく取組を支援するため「いのちの共生イニシアティブ」を立ち上げ、2010年から3年間で20億ドルの支援を行いたいと考えております。
 これにより、地域住民の参画を得た保護区の管理能力の強化、また、「SATOYAMAイニシアティブ」を通じた持続可能な利用の実践、そして、遺伝資源の利用と利益配分の促進を世界に広げていきたいと考えています。


 昔から、日本人は、親類、友人が病に倒れたとき、その治癒を祈って鶴の折り紙を折ってきました。それが千羽になれば、その祈りが天に通ずると信じられています。COP10のこのシンボルのロゴには、いろいろな動物や植物を表す折り紙がこの中にたくさん表されています。この折り紙に表された動物や植物に将来の子供たちが出会うことができなくなるような、そんな事態を避けるため、地球の生命力回復に向けた祈りを、そして、「自然との共生」に向けた決意を、この折り紙に乗せて、愛知から、名古屋から、世界に届けようではありませんか。元気な地球を未来に届けるため、今日からの首脳を交えた会議で必ず未来に対して責任を果たす大きな一歩にCOP10がなるのを心から祈念し、また、心から皆さんに努力をお願いして私からの歓迎の御挨拶とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。