第19回日・EU定期首脳協議共同記者会見


平成22年4月28日

  政府インターネットテレビ


【鳩山総理冒頭発言】

 ファン・ロンパイ欧州理事会議長及びバローゾ欧州委員会委員長と、1時間15分に亘る充実した会談、議論ができた。日・EUは共通の価値観を有する大変重要なグローバル・パートナーであるとの認識で一致した。日本が新政権となり、EUもファン・ロンパイ議長が誕生し、新たな出発を迎えた。新体制での初めての開催であり、具体的で行動志向な協力関係を構築する第一歩であったと認識している。

 2つの新しい協力を進めることで合意した。

 第1に、日・EU関係強化の方策・枠組みにつき検討する合同ハイレベル・グループを立ち上げる。特に、日・EU経済関係の包括的な強化及び統合に向けた「共同検討作業」を立ち上げることで一致をみた。来年の首脳協議で、作業の結果示される選択肢に基づき、次のステップを決定したい。我が方としては、選択肢の一つとして経済連携協定に向けた作業を期待。そのためにしっかり取り組む。旧政権よりも新政権は「国を開く」という視点を強く持っており、困難もあるだろうが、それを乗り越えていきたい。

 第2に、アフガニスタンやソマリア等の平和構築に関し、具体的協力案件を進めていくことで一致した。アフガニスタン・パキスタンの平和構築、特に警察への支援で協力を行っていく。ソマリアについては海賊対策である。外交安全保障分野におけるグローバルな問題の解決に向け連携することで一致した。

 この他、ギリシャ問題を中心に世界経済や気候変動等のグローバルな課題について議論した。特に気候変動については、日本の野心的な取組に評価をいただいた。EUも他の先進国に比べて野心的な目標を立てており、両者がカンクンでのCOP16の成功に向け協力していくこととした。

 このあとのワーキングディナーでは、我が方より、東アジア共同体構想を説明するとともに、北朝鮮を含む東アジア、アフガニスタン・パキスタンといった地域情勢について意見交換を行う。

【ファン・ロンパイ欧州理事会議長】

 鳩山総理、皆様、「こんばんは(日本語)」。日本に来ることができ、嬉しく思う。神戸、京都でも歓迎を受け、先ほどはバローゾ委員長と共に天皇皇后両陛下にお会いできた。鳩山総理はじめ皆様の温かいおもてなしに感謝。

 19回目の首脳協議であるが、新しい時代の協議である。新しい条約が生まれ、新しい人のもと、堅固な継続性とともに、変化を持った協議となった。変化は日・EU関係を新たな高みに導く。日・EUは、共通の価値、民主主義、市場経済、平和を信奉するとともに、世界の共通の課題に取り組んでいる。日・EUは戦略的に協力していくグローバル・アクターである。経済、貿易のみならず、日・EUはグローバルな政治面でのアクターであり、政治面でも共同行動を起こしていく。日・EU関係の強化にコミットしており、今回の協議はそのための道を明らかにするものであった。合同ハイレベル・グループを立ち上げ、日・EU関係を包括的に強化する。6か月後に評価を行い、次回2011年のブリュッセルでの首脳会合で報告を行う。

 経済危機に対するG20での対応、気候変動問題についての鳩山総理の提案を評価している。

 また、日・EUが平和構築分野での取組を強化していく。アフガニスタンの警察支援を行うとともに、海賊対策においても協力することを議論した。東アジアの動き、中国、北朝鮮、東アジアについてはこれから協議する。日・EUで、地域協力・統合に向けたビジョンを話し合う。欧州では統合により戦争が考えられない状況になった。欧州の経験が東アジアの統合に貢献できる部分があろう。また、イランについても議論する。イランの核開発等の問題に懸念を共有している。イラン人の人権の問題もある。日本とは国連で協力していきたい。

 では、最後に日本とEUに関して一句。「日本では日が昇る、欧州では眠っている、しかし太陽は同じである。」(The sun is rising in Japan, sleeping in Europe, still same the sun)

【バローゾ欧州委員会委員長】

 まず、日本のホストに感謝。東京で、建設的な議論ができ、戦略的パートナーシップを強化することができた。日本は、民主主義、法の支配、人権といった共通の価値を持ち、共通の課題に対処している。パートナーそれぞれが成果を引き出す意欲を持っている。経済の統合を進めるにあたっては、貿易、投資面で正しく対策がとられ、バランスがとれ、相互に利益となることが重要。合同ハイレベル・グループで早急に成果が得られると確信している。このハイレベル・グループは包括的に検討して提案を出すもの。地域の利益だけでなく、気候変動やグローバルな経済問題等、日本とは世界的な課題に対応していく。G20サミットは重要であり、世界経済、ガバナンスの問題への対応で、この機を逸することはできない。G20は伝統的なアクターと共に新しいプレーヤーも参加する重要なフォーラムである。

 日本は、ギリシャの問題に関心があるようだが、欧州委員会は確固たる迅速な対応をIMFとも協議して詰めている。ギリシャ調整プログラムは、欧州委員会で数日中にまとめ、ユーロ圏諸国が財政支援を行っていくこととなる。3月25日のEU首脳会合、4月11日の財務大臣会合の結果を踏まえ、支援を活性化させる。EUとしての最終的な対応を近く採択する。5月10日までに首脳会合を開催する。ユーロ圏諸国はギリシャへの財政支援にコミットしている。鳩山総理がEUの強い意思に賛同していただいたことに感謝。


【質疑応答】

(NHK 角田記者からの質問)
 今次首脳協議では合同のハイレベル・グループを立ち上げることが合意されたとのことだが、鳩山総理には今後本件に関しスケジュールも含めどのような進展が図られるのかお聞きしたい、また、EU側は日本側の規制が厳しい点を上げてEPAには慎重な姿勢だと伺っているが、今後どのように進展を図っていくつもりかお伺いしたい。

(鳩山総理)
 今次協議では政治的な面も含めたハイレベル・グループを立ち上げることで一致した。本ハイレベル・グループでは、日・EU間の経済関係の包括的な強化及び統合に向けた検討が行われ、関税、非関税措置を含む双方の全ての関心事項を扱う。旧政権とは異なり、新政権では「国を開く」との強い意志をもって取り組んでいく。半年後にお互いにどこまで進展したか評価しつつ、次回の首脳協議で次のステップに進むこととしたい。EUは簡単ではないと思っているようだが、その先にEPAに向けた作業を期待している。半年・1年のステップを進めながら、我々もしっかりと取り組んでいきたい。

(ファン・ロンパイ議長)
 本件は強い政治的な意志が重要であり、強力な政治的コミットメントで成果を出していきたい。ハイレベル・グループを作るのは、単なる時間稼ぎではない。半年後に評価を行うが、あらゆる選択肢を除外せず全てのオプションを検討する。日本がオープンであるとの話があったが、EUもオープンに、強力な政治的意思を持って取り組む。

(バローゾ委員長)
 ハイレベル・グループは日・EU間経済の包括的な強化及び統合に向けた検討を行うものであり、関税措置だけでなく、非関税措置についても取り扱う。規制のハーモナイゼーションが必要である。日本と深い関係を持ちたいと考えているが、日本の非関税措置には懸念を有しており、右懸念が解消されないかぎり、EPAに進むことはできない。官僚的な対応ではなく、人為的な障壁を取り除かなければならないと考えており、鳩山総理の示した意思を評価する。貿易・投資を含む経済全体で成果を出し、次回首脳協議で評価を行いたい。


(フィナンシャルタイムズ ミュア・ディッキー記者からの質問)
 (ファン・ロンパイ議長に対し、)ギリシャの財政危機に関してEU諸国は支援をコミットしているが債務不履行が起きないか。
 (バローゾ委員長に対し、)非関税措置が重要とのことであるが、どの程度前進が見られなければならないのか、どの分野が重要なのか、EPAを始めるための条件は何か。
 (鳩山総理に対し、)今次EU側の対応に失望したか、EPAに向け日本はどのようなことができるか。

(ファン・ロンパイ議長)
 EU各国の首脳は5月10日までに集まって中期的戦略を含めた必要な対応を協議し、ギリシャへの連帯を示す予定である。IMFとの協議も順調であり、5月10日までには首脳会議を開催し、合意に到達する。意欲的なプログラムにより、財政支援を含めたギリシャへのサポートをしっかりと行い、ユーロの安定性を確保する。

(バローゾ委員長)
 分野としては自動車、医療、食品規制、政府調達が重要であるが、包括的なリストとしては欧州ビジネス協会(EBC)の提言を参照して頂きたい。EUは日・EU間の貿易・投資を深めたいと考えており、今回のハイレベル・グループ立ち上げの合意は決して時間稼ぎを意図したものではないが、全体的なバランスも必要。日本企業も日本の規制上の問題を感じていると聞いている。関税措置、非関税措置、そして規制上の問題をとりあげ、政治的コミットメントを背景に進捗をえることができよう。我々にとって、日本のプライオリティは高い。

(鳩山総理)
 落胆したかといわれれば必ずしもそうではない。今次協議でハイレベル・グループの立ち上げに合意し、「共同検討作業」を行うこととなった。もともと「共同研究」を求めていたが、両者の違いは、ハイレベル・グループでは、レビューを行い、その結果前進が認められればその先に進むというということであり、政治的意思を持って進めれば、EPAの協議に入れると考える。当然ではあるが、バランスのとれた形で行うことが重要であり、日本も非関税措置で努力するが、EU側も例えば自動車の関税措置で努力することが必要。日本の非関税措置については、様々な条件に依って、実質的に自動車の輸入で制限が課されているものもあり、また医療(機器)の承認にスピード感がないとか、政府調達に関して海外からの調達が容易でないといったことがあり、開放性(openness)が求められている。これらの分野も含め、規制改革をしっかり行っていきたい。