バリ民主主義フォーラム(BDF)(総理発言日本語骨子)平成21年12月10日
|
  政府インターネットテレビ |
1.冒頭 (ユドヨノ大統領他への呼びかけ)ユドヨノ・インドネシア共和国大統領閣下のアレンジともてなしについて、深甚なる謝意を表明。多くの国からの参加を歓迎。ユドヨノ大統領のイニシャチブを高く評価。 2.日本の基本的立場 (1)バリ民主主義フォーラム(BDF)の意義バリ民主主義フォーラムは、アジア諸国の自発的取組によって民主主義を促進しようとする政府間対話の枠組みとして重要。民主主義や人権などの普遍的価値を重視する日本は、この枠組みを重視し、その取組に積極的に貢献していく。その一環として、BDF傘下の平和民主主義研究所の活動を歓迎し、人的貢献や知的貢献を積極的に行っていく。 (2)民主主義と開発 BDFは民主主義と開発の関係に焦点を当てようとしており、日本としてそうした姿勢を支持。今回の会議では、「アジアでの民主主義と開発の相乗効果の促進」をテーマに掲げており、日本としてその経験を踏まえて積極的に貢献したい。 開発を通じて、所得が向上し、教育を受ける機会が与えられ、さらには独立したメディアが育まれることで、成熟した市民社会が確立され、民主主義が育つ。特に、教育については、すべての意志ある人が質の高い教育を受けられるような社会を築くことが重要です。そのような社会では、政府の腐敗や政策決定の不透明さは是正され、良い統治が実現される。それはまた、さらなる経済成長を促す効果を持つ。 (3)民主主義と安全保障 国家と地域の平和と安全が確保され、それに加えて日本が推進してきた「人間の安全保障」の視点が重視される社会を目指すことが、民主主義の定着にとって重要。 そもそも民主主義とは、言論で対立を解消し、紛争を回避することを可能にする理念。他方、民主化が進む社会においても、宗教対立や少数民族問題が顕在化し、紛争にまで発展することもある。国民統合を図る政治システムとしての民主主義を実現していく上で、宗教、民族、言語などでの多様性を尊重する視点も不可欠。この視点は我々が進める地域統合にも当てはまる。 私の提唱する「友愛」の精神は、何よりも人の命が大切にされる中で、個人が「自立」し、多様性が尊重され、人々が尊厳ある生活の中で「共生」する社会を目指すもの。行き過ぎたナショナリズムに陥らず、平和で豊かな地域として発展することを、我々は目指すべき。 3.アジアの民主化の流れ (1)基本認識、日本の民主主義アジアは、経済成長と市民社会の形成を実現しながら、それぞれの事情に応じて独自の道で、民主主義体制へと変化を遂げてきた。日本は、戦後、平和に徹し、経済発展と国民生活の向上に努め、民主主義を定着させ、今日の繁栄を実現した。この流れを、我々は誇りに思って良い。日本の新政権は、こうしたアジアの民主化の流れを、地域の諸国と力を合わせて後押ししていく。 本年は、世界最大級の民主主義国家であるインドやインドネシアなどで重要な選挙が行われた。 日本でも歴史的な選挙の結果、政権交代が実現した。日本の長い民主主義の中で、実現できなかった当たり前のことが、今回ようやく実現した。そして、更なる民主主義の深化に取り組んでいる。例えば、厳しい財政状況の中、専門家が行う予算の無駄を仕分けする作業に市民やメディアを招待することにより「ガラス張り」の画期的なプロセスの下で予算編成を行っているところである。 (2)インドネシアの民主主義 ここインドネシアでは、経済開発と民主化が共に進展を見せてきた。インドネシアは、驚くほど多様な民族、言語、文化、宗教から成り立っているが、そのような中でも着実に民主主義を確立してきた。こうした経験は、アジアに止まらず、世界の国々にとって一つのロールモデル(目標とすべき姿)となり得る。また、同国の経験は、民主主義と開発の関係についても我々に多くの示唆を与えてくれる。日本は、インドネシアの民主化を称賛し、民主化したインドネシアと協力して、民主主義の経験と成果をこの地域で広く共有していきたい。それは、多様性に富んだアジアにおいて相互理解を一層深める契機ともなる。 (3)開かれた中国 アジア最大の人口を抱え、目覚ましい経済成長を遂げている中国は、アジア、世界に開かれる形で経済と社会を変化させてきた。日中両国は、2008年の「日中共同声明」にある通り、「国際社会がともに認める基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のために緊密に協力する」ことを約束した。中国が、引き続き、責任ある大国として、民主主義や人権といった分野においても前進を図っていくことが期待される。 (4)ミャンマー ミャンマーでは、民主化に向けた動きが少しずつ見られる。明年の総選挙にすべての関係者が参加できるように民主化プロセスが進展し、国際社会にも祝福されるものとなるよう、日本は、ミャンマー政府に押しつける形ではなく、その前向きな努力を慫慂していく。こうした期待は、この場の出席者の方々にも共有されているものと信じる。 (5)北朝鮮 北東アジアをめぐる情勢には依然として不信と対立の構造が残っており、残念。北朝鮮も、アジアや世界の潮流に加わることを呼びかけたい。アジアの平和と安定にとって重要な六者会合を通じて、朝鮮半島の非核化を実現することが必要。また、日朝間においては、特に拉致問題の解決と過去の清算が必要。そして、北東アジアに平和の枠組みが構築されていく過程で、北朝鮮が、国際社会に開かれた国家となることを期待。 4.日本の支援 (1)ASEAN憲章への評価民主主義、人権などの普遍的価値の重要性を規定したASEAN憲章を高く評価。同憲章に基づいて設立される人権に関するASEAN政府間委員会が、地域全体の人権や民主主義の取組をリードしていくことを期待。 (2)多様性の中の民主化努力への支援 他方で、政治体制、経済発展段階、宗教、文化、伝統など、アジア各国が置かれた状況は多様であり、民主化のプロセスやスピードは自ずと異なり、紆余曲折もあり得る。 重要なことは、民主主義に終着点はなく、常に前進するということ。日本の政権交代も、民主主義の前進の一つの形。互いの違いを認め、互いに助け合いながら開かれた形で協力を前進させていくことが重要。日本は、民主化への各国の自発的取組を支援。私の提唱する東アジア共同体構想も、このように前進していく先に見えてくるもの。 (3)日本の取組と支援 日本はこれまで、民主主義の基礎となる開発への支援から、民主化そのものへの支援まで、積極的に協力してきた。 東南アジア諸国を中心とするアジア諸国への支援、そして中国の改革開放への支援を行い、更には1997年のアジア通貨危機や昨年の金融・経済危機の際にも、日本としての最大限の貢献をいち早く行った。また、先月には東京でメコン首脳会議を開催するなど、ASEANの統合努力や地域協力も支援している。 そうした協力の中で、日本は、人材育成、法制度整備、メディア育成、選挙監視といった、民主化のための具体的な協力を積み重ねてきた。アジア諸国における市民社会の成熟と、良き統治の促進に向けた努力を、日本は全力で後押ししていく。この観点から、日本は、同じ志を持った国々と力を合わせてBDFを活用し、各国の民主化プロセスを積極的に支援していきたい。その一つとして、BDF参加国が、民主主義を定着・発展させていく上でのグッド・プラクティスを共有するため、相互に選挙を視察し合うプロジェクトの実施を提案したい。平和民主主義研究所には中心的役割を果たして頂きたく、日本としても協力したい。 5.結語 開発や経済発展なくして民主主義は発展せず、また、民主主義の発展なくして、個人の幸福や国家の繁栄も十分なものとなり得ない。まさに民主主義に終着点はなく、粘り強い取組を継続する必要がある。 日本はこのフォーラムの成功と継続にコミットし、この場にいる各国と力を合わせてこのフォーラムの発展に汗を流したい。 (了) |