【鳩山総理冒頭発言】
このたび、衆議院、参議院両院におきまして、総理に選出をいただきましたその瞬間に、日本の歴史が変わるという身震いするような感激と、更に一方では大変重い責任を負った、この国を本当の意味での国民主権の世の中に変えていかなければならない、そのための先頭を切って仕事をさせていただく、その強い責任も併せて感じたところでございます。
社民党さん、国民新党さんとともに民主党、中心的な役割を果たしながら、連立政権の中で国民の皆様方の期待に応える仕事を何としてもしていかなければならない、強い使命感を持って仕事に当たりたいと感じているところでございます。
言うまでもありません。この選挙、民主党あるいは友党は大きな闘いに勝利をいたしました。しかし、この勝利は民主党の勝利ではありません。国民の皆様方が期待感を持って民主党などに対して、一票を投じていただいた結果でございます。まだ歴史は本当の意味では変わっていません。本当の意味で変わるのは、これからの私たちの仕事いかんだと、そのように感じております。
私たちは、今回の選挙、国民の皆さん方のさまざまなお怒り、御不満、悲しみ、全国各地でそのようなものをたくさんちょうだいいたしてまいりました。何でこういう日本にしてしまったんだ、こんな故郷にしてしまったんだ、その思いを私たちはしっかりと受け止めていかなければなりません。そして、そこに答えをしっかりと出さなければならない大きな役割を私たちは担わなければなりません。
すなわち、今回の選挙の勝利者は国民の皆さん方でございまして、その国民の皆さんの勝利というものを本物にさせていただくためには、とことん国民の皆さんのための政治というものをつくり出していく、そのためには、いわゆる脱官僚依存の政治というものを、今こそ世の中に問うて、そして、それを実践していかなければなりません。私たちはさまざまな仕組みの中で、脱官僚依存、すなわち官僚の皆さんに頼らないで政治家が主導権を握りながら官僚の皆さんの優秀な頭脳を使わせていただく、そういう政治を送り出していきたい。
その先には、言うまでもありません。国民の皆さんの心と接しているのは政治家である。その気概を持って国民の皆様方のさまざまな思い、政治を変える、何のために変えてもらいたいのか、その思いを受け止めて、私たちが大きな船出をしっかりとしていきたい、そのように感じているところでございます。
そのためには、今までのように、国民の皆さんもただ一票を投ずればよいんだという発想ではなくて、是非政権にさまざまものを言っていただきたい。政権の中に参画をしていただきたい。私たちが皆様方のお気持ちをいかにしっかりと政策の中に打ち出していけるか否かは、国民の皆さんの参加次第にかかっているとも申し上げていいと思います。
私たちは、そんな中で今まではマニフェストというものをつくり上げてまいりました。子ども手当問題にしろ、ぼろぼろになった年金を何とか正していく、こういったテーマにしろ、そのための財源をどうするんだ、その思いの中で、私たちは無駄遣いを一掃しなきゃならん、まずは無駄遣いを一掃するべきだ、その発想の中で行政刷新会議というものをつくり上げてまいりました。
また、国家戦略室というものもつくり上げていきたい。そして、そこによって国民の皆さん方に必ず国家的な大きな役割を、指針というものを見出しながら、国民の期待に応えてまいりたい。そのように感じているところでございます。
多分、いろんな試行錯誤の中で失敗することもあろうかと思います。是非、国民の皆様にも御寛容を願いたいと思っております。何せまだ、ある意味での未知との遭遇で、経験のない世界に飛び込んでまいります。政治主導、国民主権、真の意味での地域主権の世の中をつくり上げていくために、さまざまな試行実験を行ってまいらなければなりません。従いまして、国民の皆様方が辛抱強く、新しい政権をお育てを願えれば、大変幸いに思っております。
私どもはそのような思いの中で、連立政権を樹立をする決意を固めた次第でございます。あくまでも国民の皆様方の御期待に応えるような新しい政治をつくりたい。その思い一つで、連立政権を樹立いたした。その思いをみんなでかみ締めながらスタートしてまいりたいと思っておりますので、どうか国民の皆様方にも御辛抱の中で、御指導、御支援をいただきますことを心から祈念をいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【質疑応答】
(問)
鳩山政権で当面、最も重要視する政策課題は何でしょうか。それと今、総理が言われました子ども手当などでは、依然として財源の問題が言われております。これにどう対処されるのか。それと同時に予算の執行停止などで景気の腰折れも懸念されています。この2つをどうやって折り合っていくのか。以上をお願いします。
(鳩山総理)
まず重視する政策課題でありますが、言うまでもありません。先ほどもちらっと申し上げましたけれども、マニフェスト。これは連立政権でありますから、連立政権の中では、合意をいたした中身をしっかりと実現をしていくということでありますが、民主党としては、その中での特に先ほど申し上げたような子ども手当、あるいは暫定税率の撤廃、国民の皆様方の家計というものを刺激する施策というものをまず真っ先に行いながら、今お話がありましたように、景気の先行きは極めてまだまだ見えてこない中で、国民の皆様にとって、「少しは懐具合がよくなってきそうだなと」「この政権は期待が持てるな」そう思っていただけるような施策をいち早く実現をしていくこと。ここに尽きるのではないかと思います。
そうなりますと、財源の問題が出てまいります。したがって、私たちは事業仕分けなどをしっかりと行っていくための、行政刷新会議をすぐに稼働させていきながら、いわゆる行政の無駄はないか。各省庁に対して徹底的に無駄をなくす方向で努力を願いたいと考えています。それなりのめどというものは立ちつつある状況ではないかと考えておりまして、財源の問題は私たちは、少なくとも初年度分7兆円余りでありますが、十分にめどが立つのだと確信をいたしているところでございます。
景気対策、補正予算というものを私たちは徹底的に見直さなければならないと考えております。したがいまして、予算の執行停止を求める部分もこれから出てくると思います。しかしながら、それはもう既に執行しているような地方において、地方の活性のためにお使いになっていただいているものに対しては、基本的に地域の活性化に役立つという判断であるならば、続けて執行していただきたいと思っておりますが、必ずしもそうでないもの。まだ執行が始まっていないものに対しては、大胆な見直しが必要ではないか。そのように考えているところであります。
私たちが申し上げたいのは、今、申し上げたように、もう既に地方において仕事がなされているものに対して、それを止めれば相当大きな影響が出てきかねないと思っておりますので、そこに対する配慮は行っていきながら、我々が考えていく中で、無駄だとか、あるいはもっと有効な使い道があるのではないかと思われているようなものに対しては見直して、もっと有効な手立てを構築していきたいと考えております。
(問)
総理は、今、脱官僚政治実現への強い意欲を改めてお示しになりましたけれども、これには官僚の強い抵抗が予想されます。国家戦略局の位置づけも含めて、具体的にどのように脱官僚政治を実現させていくおつもりかお聞かせください。
(鳩山総理)
まず私どもは、大臣、副大臣、政務官、いわゆる政務3役という方々にそれぞれの役所において、政治主導の立場から政策の意思決定を行っていただきたいと考えております。言うまでもありません。優秀な官僚の皆さんが国民のために頑張っていただくものに対して、それをけしからぬというすべは、私たちは持ち合わせておりません。
しかし、必ずしもそうでないものに対して、基本的に政治家が主導しながら、役所の事業というものを、むしろ政治家が主導して意思決定を行っていくというシステムをつくり上げていく。これも申し上げたと思っておりますが、閣僚委員会というものをつくらせていただいて、特にこれは幾つかの役所にまたがるようなプロジェクトに対して、閣僚委員会で意思決定をほぼ行い、最終的には閣議というもので最終決定をいたす。そこに事務次官会議というものを廃止しておりますから、必ずしも官僚の皆様方の抵抗によって大きく曲げられるということにはならないと考えております。
国家戦略局あるいは行政刷新会議の在り方も、その中で政治主導でまいることは言うまでもありませんし、特に予算の骨格というものを議論する国家戦略室、菅大臣にその仕事をお願いすることにいたしておりますが、菅大臣の大変強いリーダーシップというものを大いに私は期待申し上げたい。また、行政刷新会議は、仙谷大臣のリーダーシップを大いに発揮していただきたいと思いますし、いわゆる各省の副大臣クラスの方々にも、行政刷新会議の中での役割というものも任じていただきたい。そして、事業仕分けを始めとして、いわゆる無駄だと思われているような事業を徹底的に排除するように、政治主導で行っていきたい。そのようなさまざまなやり方を駆使しながら、いわゆる脱官僚依存の政治というものを行ってまいりたいと考えております。
(問)
鳩山総理、来年のマニフェストについては、もう7.1兆円のめどが立ったという御発言がありましたけれども、やはり来年度予算の編成というのが喫緊の課題となると思われますが、まずシーリングについてゼロベースで見直しをされるのか。それと年内編成を行うのか。そして年度内成立を目指すのか。その辺のスケジュールについては、現在どのようにお考えでしょうか。
(鳩山総理)
これは財務大臣、更には国家戦略室の菅大臣を中心に、これから早急に議論を詰めていくということが基本的なスタンスであります。私からあえて申し上げれば、当然のことながら、今までの手法というものは、ゼロベースで考え直していくということでありますので、シーリングのやり方などというものも基本的に考え直していきたいと考えておりますし、そうは言っても、このようなある意味で遅れてスタートはいたしますが、年内で編成ができるようなスケジュール感で臨んでまいりたいと、現在はそのように考えております。
(問)
国連総会に際しまして、訪米をされて、日米首脳会談も臨まれることになるんだろうと思いますけれども、日米関係を深めていくために、具体的にどのような方針で臨むおつもりなのか。連立与党の合意でも、日米地位協定の改定の転機ということを盛り込まれていますが、それについてはテーブルに乗せるおつもりはあるのかどうなのか、具体的にお聞かせ願いたいと思います。
(鳩山総理)
まだ日米首脳会談の日程がセットされることを期待いたしておりますが、どのような時間をいただけるか、まだ必ずしもわかっていない状況であります。
その上で仮定の中で申し上げるとすれば、私はまずオバマ大統領と信頼関係を構築するということが第一歩であって、今回の訪米はそういった意味でお互いに率直な意見交換をすることによって、信頼感というものを高めることが一番重要なことではないか、そのように思っております。
いわゆる日米の地位協定などの問題に関して、私どもが今、考えておりますのは、当然基本的な方針は変えるつもりはありません。この連立の中での合意のところでも改定に向けて努力をすることがうたわれておるのも事実でございます。
ただし、今回は信頼関係を醸成していくということが主眼でございますし、いわゆる日米間のさまざまな懸案問題、安全保障関係の問題に関しては、包括的なレビューというものを少し時間をかけて行うことが重要ではないか、そのように思っておりますので、このような時間をかけた中で議論を進めていくことが大事である。一番私たちがかぎに思っておりますのは、やはり信頼関係の構築だというように御理解をいただきたい。そのためには、くどいようですけれども、お互いに相手に対して遠慮しないでものを言う立場というものを築き合うことだと、そのように考えております。
日本がややもすると受身的な日米関係に今までなりつつあったわけでありますが、そうではなくて能動的な立場で、我々としてもこう考えているんだということを率直に話し合えるような関係をつくり上げていきたい、その中での結論というものを導いていくように努力をしたい、そのように考えています。
(問)
政府の拉致問題に対する姿勢をお伺いいたします。
今度の鳩山内閣には、北朝鮮の横田めぐみさんの拉致実行犯である辛光洙元死刑囚の釈放嘆願書に署名した、菅さんと千葉さんという2人の閣僚がおります。これから北朝鮮に拉致問題の解決を迫るときに誤ったメッセージを送りかねないいという気もするのですが、どうお考えでしょうか。
また、このお二人に、拉致被害者家族に対する反省なり謝罪なりを求めるお考えはありませんか。
以上です。
(鳩山総理)
私は過去の経緯というものは事実としてあろうかと思います。ただ、一番大事なことは、北朝鮮に対しては拉致問題を現実的に解決に向けて進めていくということが肝要であります。そのためにも、今回、国家公安委員長になりました中井洽大臣に拉致問題担当大臣というものを命じているところでございます。
彼が今日まで拉致問題に対して大変積極的に行動してまいったということに私は重きを置かせていただきながら、拉致問題をうまく展開させていくために努力を惜しまない、そのように考えておりまして、過去のことに関して私は今2人の大臣に問うことを考えてはおりません。
(問)
先ほどの予算編成の絡みで一点確認と、もう一点、新内閣について一点あるんですが、予算編成が当面喫緊の課題としてあるわけですが、その司令塔は国家戦略局が司令塔なのか財務省が担うのかという今後のどちらが司令塔なのか点と、もう一つは、総理が幹事長時代に西松建設の違法献金事件をめぐって「国策捜査だ」ということをおっしゃいました。
今回、政権をとられてその考えは変わらないのかという点と、法務大臣のポストを選ばれるときに、国策捜査ということの認識に立たれるのであれば、考慮された点があるのかどうかという点についてお願いします。
(鳩山総理)
まず、予算編成に関してでありますが、私は国家戦略室に予算の骨格というもの議論していただく、いわゆる詳細に対する設計というものではなくて、骨格の設計を国家戦略室にお願いを申し上げたいと思いながら、国家戦略室をつくった次第であります。
したがいまして、その骨格に対してしっかりとした骨組みから精緻な内容に仕立て上げていくのが、財務大臣あるいは財務省を中心とする役割だと任じております。ただ、双方がある意味での行政刷新会議も含めて、どのぐらい無駄遣いを削減することができるかというものに絡んでおるものですから、その三者がある意味で一体的に議論を進めながら、役割分担というものを行っていくべきだと考えております。
それから、西松建設に対して「国策捜査」という言葉を一度使った次第でございますが、私は二度は使わなかったつもりでございます。すなわち、一度使ったことに対するある種の反省の思いを含めて、その言葉を遠慮しているところでございますので、そのような立場だと御理解を願いたい。
(問)
総理が提唱されている東アジア共同体なんですが、それは今後の外交日程の中で、いつ、どういった形で国際社会に周知していくことをお考えなのか。
また、この共同体がアジア共通通貨といった総理のお考えが、アメリカではアメリカ離れとか、ドル離れを志向しているのではないかという受け止め方もされているようですが、こういったことに対してどのように答えられるか。
(鳩山総理)
御案内のとおり、ある意味での友愛という精神がスタートラインでありまして、それがEUにおいては共通のユーロという通貨まで展開をしていったということでございまして、ある意味でかなり体制も違う国々もあるわけではありますけれども、アジアにおいて、特に東アジアにおける共同体というものを中長期的に見て構想することは、私は正しい道のりだと考えております。
その発想は決してドルというもの、あるいはアメリカというものを除外するつもりではありません。むしろ、その構想の先に私はアジア太平洋共同体というものを構想するべきだと思っておりまして、アメリカ抜きで必ずしもすべてできると思ってもおりません。このような構想はできるだけ早い時期に、すべてどこまで詳細にお話しするかということは別にいたしまして、何らかの形で今度国連でも演説をする予定でもございます。
そのような中で、頭出しくらいはしてみようかなと考えているところでありますが、まだそこのところは詰めている状況ではありません。
(問)
個人献金問題についてお伺いします。
個人献金問題を鳩山総理は説明責任を十分果たしたという立場を一貫してとられていますが、臨時国会等で野党の厳しい追及を受けるのが必至だと思います。個人献金問題を抱えたままでの政権運営の影響についてと、今後の新たな説明のお考えがあるかどうかについて、お願いします。
(鳩山総理)
この問題に対して、国民の皆様方にいろいろと御心配をおかけしたことをおわび申し上げながら、私なりに修正あるいは訂正をいたしたところでございます。
なかなか国民の皆様方には御理解をいただいていないことは事実だと思っておりますので、それはもっと説明を尽くす努力はしてまいりたいと思っておりまして、今後の展開というものもさまざま考えながら、私なりの思いを国民の皆様方にできるだけ正確に正直にお伝えを申し上げて、御理解を深めていただきたいと、そのように努力をいたしたいと思っています。
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