新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見
【菅総理冒頭発言】
先ほど新型コロナ対策本部を開催し、19都道府県の緊急事態宣言及び8県のまん延防止等重点措置の全てを、9月30日をもって解除し、制限を段階的に緩和することを決定いたしました。7月以降、感染力の極めて強いデルタ株によって、全国各地でかつてない勢いで感染が拡大しました。それに伴い、病床のひっ迫は非常に厳しい状況となりました。こうした中で、医療・介護関係者、飲食などの事業者、国民の皆さん、お一人お一人に御協力いただきながら、医療体制の構築、感染防止対策、ワクチン接種を懸命に進めてまいりました。
多くの皆様の御尽力により、8月の半ば過ぎに2万5,000人を超えていた全国の新規感染者数は大幅な減少を続け、昨日は1,128人となりました。東京では5,773人から本日は248人まで減りました。病床の利用率は、全ての都道府県において50パーセントを下回り、重症者は9月初めをピークに減少傾向にあります。一時は全国で13万人を超えた自宅療養者も3万人となり、なお減り続けております。現在の状況は先般、専門家から示された宣言解除の基準を満たしており、解除を判断いたしました。
これまでに御協力いただいた全ての皆様方に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
その上で、ウイルスへの高い警戒は保ちながら、飲食などの制限については段階的に緩和することといたします。これから、新型コロナとの闘いは新たな段階を迎えます。ワクチン接種が急ピッチで進む中で、感染リスクが高い場面を抑えることにより、感染者数は大きく減っています。
また、ワクチン接種と中和抗体薬で重症化を防ぐことができます。パネルにもありますとおり、累積の新規感染者数に対する死者数の割合は、1月から3月の3か月は2.4パーセント、4月から6月は1.7パーセントであるのに対し、今回の感染拡大期に対応する7月から9月の3か月では0.3パーセントにとどまっております。
こうした大きな変化に対応した医療体制の構築により、一定の感染が生じても、安定的な医療の提供ができるようになります。今後はウイルスの存在を前提とし、社会全体の対応力を高め、次の波に備えながら、感染対策と日常生活を両立していくことが重要です。そのためには、次の3つの方針で進めていかなければならないと思います。
第1に、医療体制のもう一段の整備です。7月以降に全国で4,800病床、1万4,000室の軽症者用のホテルを確保し、更に臨時の医療施設、酸素ステーション合わせて全国で約80施設を設置し、現在も増設を進めております。自宅で療養する方々に対しては、身近な診療所や在宅医療の専門医が健康観察や入院の判断を行い、必要な医療が受けられる体制を各地で構築しております。
私がお会いした在宅医療のチームは、勤務医の方々が交替で訪問診療に当たり、クラウドファンディングや企業の寄附も活用して、献身的に活動されておられました。また、効果の目覚ましい中和抗体薬については、既に3万4,000人に使用されています。診療報酬も大幅に引き上げて、入院しなくても、自宅への往診や外来診療でも使えるようにしました。「翌日には効果を現す画期的な薬を使えることについて、医師冥利(みょうり)に尽きる」、こうした医療現場の声も伺いました。
持てる力を全て使って構築したこれらの資源をフル活用して、今後再び感染拡大が発生したとしても、十分に機能する体制を作っておかなければなりません。各都道府県と医療機関が協議し、いざというときにすぐに活用できる病床や人材を確保できるように方針の作成を進めます。
そして皆様には、これまで同様に、マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防を続け、感染リスクの高い行動は避けていただくよう、お願いします。昨日から抗原検査キットを薬局で購入できるようにしました。体調が気になる場合には自ら検査を行い、医療機関の受診につなげていただきたいと思います。
第2に、着実なワクチン接種の継続です。今月もワクチン接種は1日110万回で進み、総接種回数は1億6,000万回を超えました。既に全国民の69パーセントが1回接種し、58パーセントが2回の接種を終え、数か月前まではその背中も見えなかったアメリカの接種率を抜きました。高齢者の接種率は約9割に達し、多くの方々にワクチン接種を受けていただいております。
ワクチンの効果により、今回の感染拡大では65歳以上の感染者を10万人、死亡者を8,000人減らすことができたとの厚生労働省の試算もあります。50代でも1回接種が8割程度まで進み、2回接種が6割を超え、足元の感染者数の減少や重症化の防止に大きく貢献したと考えております。
10月から11月のできるだけ早い時期に希望する全ての国民が2回目を終えるよう、接種を進めます。最終目標を8割に引き上げた自治体も多く、このまま進めば、我が国は世界でもワクチン接種が最も進んだ国の一つになります。これまでのお一人お一人の御協力が私には大変ありがたく、誇らしい気持ちで一杯です。
3回目の接種も見据え、既に2億回分の契約を結んであります。2回目の接種からおおむね8か月以上後との審議会の意見を踏まえ、年内にも3回目接種が開始できるよう、準備を進めます。
第3に、日常生活の回復です。ワクチン接種によって社会全体の感染予防効果が高まり、感染者数も大きく減少してきたことで、ようやく社会経済活動の正常化が見えてきました。私自身がお約束してきた安心とにぎわいのある日常の回復に向けて、段階的に制限の解除を進めてまいります。
10月1日以降、当面はアクリル板の設置や換気などの対策を取り、認証を受けた飲食店においては都道府県の判断で酒類を提供し、営業時間は21時までとすることも可能とします。イベントについては最大1万人までと致します。このように段階的な緩和を行った上で、ワクチンの接種証明や検査結果も活用した更なる措置を検討いたします。ビジネスに必要な国際的な人の往来についても、その制限を緩和していく方策を積極的に検討します。来月1日からは、原則としてワクチン接種済みの帰国者の自宅待機を2週間から10日間に短縮いたします。今後、更なる措置を検討してまいります。
総理に就任してから1年余り、新型コロナとの闘いに明け暮れた日々でした。私自身、政治家を志して以来、いつも幅広い方々の話を徹底して聞き、現場で物事が動き、人々が生き生きとやっていけるよう努めてきました。自宅で療養される方々への医療、飲食など事業者の生活、子供たちの教育、生活困窮者の暮らし、そして、孤独な状況に置かれた人々、そうした人々に思いをはせ、悩み抜いた日々もありました。
そうした中でたどり着いたのが、ワクチンと治療薬でした。無理だろうと言われながらも、これまでの発想にとらわれず、打ち手が足りなければ歯科医師や救急救命士や臨床検査技師に打ち手をお願いし、打ち手を確保し、職域での接種を導入し、そして、厚生労働省だけでなくオール日本の政府で総務省を通じて全国の自治体にも協力を求めながら、全力で取り組んできました。その結果、ようやく皆さんに行き渡りつつあります。
ワクチンと治療薬に目途が付きつつある中で、新型コロナとの長い闘いにもはっきりとした明かりが見えてきていると申し上げました。この言葉には数々の御批判もありましたが、今や効果は明らかであり、明かりは日々輝きを増している、このように実感しております。また、軽症者が自宅で使える飲み薬についても、早ければ年内を目指して開発が進められており、承認次第、投与できるよう交渉をしっかりと進めております。
御協力いただいた全ての皆様に改めて心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
昨年総理に就任してから1年余り、ただひたすらに走り続けた日々でした。全てをやり尽くすには短い期間でありましたが、長年の課題に挑み、様々な改革に道筋を付けるつけることができました。4月の訪米の際にバイデン大統領に直接要請した福島のお米や牛肉を含む日本産食品の輸入規制が、先般、全面的に撤廃されました。内閣の重要な使命である東北の復興にとって、大きな励みとなると思います。
外交・安全保障においても、日本が歩むべき進路をお示しできたと思います。基軸である日米同盟はかつてない高みにあります。先週には初めて対面での日米豪印の首脳会合が実現し、日本が牽引(けんいん)してきた自由で開かれたインド太平洋、この構想を大きく前進させることができました。
日本は今、正に正念場にあると思います。国難と言うべき少子高齢化、激変する安全保障環境、更に新型コロナによってデジタル化の遅れなどの課題も浮き彫りになりました。日本の未来のためには成長を実現し、国民の食いぶちを作っていかなければならない、痛みを伴う改革であってもしっかりと説明し実現していくことがますます重要となってまいります。
最後になりますが、この1年、お付き合いいただいた記者の皆様方にも感謝申し上げます。
そして、国民の皆様。皆様の御協力なしには何一つ実現することができなかったと思います。国民のために働く内閣への皆様の御支援、御協力に心から感謝と御礼を申し上げます。皆さん、本当にありがとうございました。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これより皆様より御質問を頂きます。
尾身会長におかれましては、所定の位置にお進みください。御質問の内容によりまして、尾身会長にも御説明を頂きます。
指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、御質問をお願いいたします。
それでは、まず、幹事社から御質問を頂きます。
では、日本テレビ、山﨑(やまざき)さん、どうぞ。
(記者)
日本テレビの山﨑です。
総理、先ほど会見で、今後の対策について医療提供体制のもう一段の整備が必要だとおっしゃった中に、今後その都道府県と医療機関が協議して病床や人材確保ができるようにする方針の作成を進めるとおっしゃいましたけれども、正にこのことが難しくて病床の確保がこれまで進まなかったと思うのですけれども、前回の会見でも総理は医療提供体制の確保ができなかったことが反省点だと述べられましたけれども、今日、最後の会見ですので、なぜこれまで病床の確保が進まなかったのか、その原因と改善すべき点について率直に自らのお考えをお答えください。
また、冬に向けて第6波が懸念されていますけれども、次の政権が発足した後、第6波に備えてまず取り組むべきことは何なのか、具体的にお聞かせください。
(菅総理)
まず、この感染拡大に病床確保が追いつかない状況が続きました。通常、現場からは新型コロナの治療というのは、通常以上に人手がかかる、医師や看護師が不足している、こういう指摘でした。そういう中であっても今年に入ってから病床で1万3,000床、ホテル療養施設で2万6,000床確保し、改正した感染法の規定にのっとり、また、協力要請も行ってきました。ただ、いざというときにすぐにそういう医療チームの体制で病床や人材を確保するというのは、常日頃からそうした体制で取り組んでいないとなかなか現場は難しいということでした。看護師さんはたくさんいても、そのコロナの現場に従事してくれる看護師さんが少ないとか、いろいろなことがありましたので、常日頃から都道府県と病院の間で対応することができるように、政府としてもやはり支援をする必要があると思っております。
ですから、私自身は、先般も申し上げましたけれども、ただ病床が空いているからということではなくて、体制をしっかり作っていくことがなかなかできなかったというのがいろいろな方の指摘でしたので、そうしたことも含めて、第6波が来ても、今回今度はワクチンを打っていますから状況はかなり違うと思いますけれども、そうしたときにもやはり感染者数を最小にしながら病床をしっかり確保していく体制を作ることが大事だと思っています。
尾身先生もちょっとよろしいですか。
(尾身会長)
第6波にどう備えるかという御質問があったと思いますけれども、私は第6波にどう備えるかということに関して、今回なぜ感染が急激に拡大して、なぜ感染が急激に落ちてきたかを分析することが非常に重要だと思っています。
私は幾つかの要素があると思いますけれども、まず前提として例の夏休み、4連休、お盆というものが重なって、急激に感染を上昇させる要素が一時期に集まりましたね。その感染上昇する要素が取れてきたことがまず1点あったと思います。
それに加えて、また最終的な結論を出すにはデータが不足していますが、現時点では、私は大体大きく分けて5つぐらいの感染減少の要素があったと考えています。ただし、それぞれの5つの要素が感染減少にどれだけ寄与したかを今のところでは数量的に定量的に分析することは、まだこれからの課題だと思います。
それで、5つの要因と申しますのは、まず最初の2つは人々の努力です。1番目は一般市民の協力ということで、今回は急激に感染が拡大して、深刻な医療のひっ迫ということがマスコミを通して一般市民に発信されたことで、これが人々の危機感を高めることになって、今まで以上に人々が感染対策に協力してくれたことがあったと思います。
それから、2番目は人流、特に夜間の滞留人口の減少というのがあったと思います。人流、特に繁華街における夜間滞留の人口というのを8月12日の時点で5割削減をお願いしたわけですけれども、その目標5割には達しなかったものの、この6週間ぐらい、ずっと20パーセントから30パーセントぐらいの夜間の繁華街における滞留人口とが低く維持されていたことがあると思います。それと、これはまだ分析中で、こういう仮説を今我々は持っていますが、ワクチン未接種者の人たちが、夜の滞留人口なんかにより集中的に避けてくれたと、減少してくれた部分があったと思います。それが2つ目です。
3つ目は、先ほど総理からもお話がありましたように、ワクチン接種の効果というのが私は確かにあったと思います。実効再生産数の推移などを見ますと、ワクチン接種率の向上が感染の減少に寄与した可能性はあると思います。本当の意味の詳細な分析は、ワクチンだけではなくて自然感染した人も一定程度いるので、そうした意味では、抗体保有率の厳密な調査がこれから待たれると思います。
それから、4番目ですけれども、これはあまり語られておりませんけれども、医療機関、高齢者施設での感染者の減少があって、これまでは若者を中心に感染の起点がありましたけれども、それが後半になって高齢者に伝わったということですけれども、今回はワクチン接種があったために、そして、院内の感染防止対策も以前に比べて進展した。高齢者の感染があまり増えなかったことで、今まではずるずると行った、それが無かったこともあったと思います。
それから、なかなかこれは証明は難しいのですけれども、気温や降水などの気象の要因も関与したのではないかと思います。
そうしたことで、これからも我々専門家としては、更にこの、なぜ感染が急激に減少したかの分析を続けていきたいと思っています。
(内閣広報官)
それでは、続きまして、読売新聞の黒見さん、どうぞ。
(記者)
読売新聞の黒見です。
明日には自民党総裁選で新しい総裁が選出され、総理は長年過ごされた官邸を週明けにも出ることになると思うのですけれども、退任後はどのような政治活動に取り組まれるお考えでしょうか。在任中は、この新型コロナ対策に加えて、デジタル政策や子供対策に注力されてこられたと思うのですが、特に重視していきたい政策テーマは何でしょうか。よろしくお願いします。
(菅総理)
私自身は、当選1期生から今年は何をやろうかとか、そういうことを目標に掲げながら取り組んできました。特に当選2回、3回は、拉致問題、万景峰(マンギョンボン)号という、日本に、新潟の港に15回も寄港した船を止める議員立法をやりました。あるいはその後にはプリペイド携帯電話、犯罪の温床になっていましたけれども、この制限も議員立法で挑戦しました。
私自身、政治家として、今、若い人たち、子供を含めて、に対して、高齢者の皆さんの社会保障費などを、やはり移すことを実現したいなと思っています。それはこども庁設置を目指して取り組んできましたので、そうしたこと。それと、高齢者医療費についても道筋を付けましたので、そうしたものをこれからしっかり進めていく。
それと、NPO(特定非営利活動法人)の皆さんに初めて予算で60億円を付けさせていただきました。このコロナ禍の中にあって、自殺相談だとか、あるいは子供食堂だとか、そうした行政の手が届かないところをNPOの皆さんに行っていただいていますから、そうしたことについても一政治家の立場としてしっかりと応援していくようなことをやっていきたいなと思っています。
(内閣広報官)
ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
それでは、NHKの長内(おさない)さん、どうぞ。
(記者)
NHKの長内と申します。
総理に伺います。総理は官房長官として長期政権の一翼を担われてきたわけですけれども、この1年、総理として政権を担ってきた中でどんな違いがあったとお感じでしょうか。それを踏まえて次の総理に何か伝えたいことはありますでしょうか。また、自民党総裁選挙への立候補断念に至る中で、総理にとって誤算があったとすれば何だったでしょうか。よろしくお願いします。
(菅総理)
まず、総理大臣と官房長官の違いですけれども、これはやはり最終決定者であるか、そうでないか、ここは極めて重いものがあると思いました。総理大臣として、例えばですけれども、緊急事態宣言を決定する。すると、多くの皆様方の生活が一気に変わってくるわけですから、そういう判断を総理大臣はせざるを得ないわけですから、そうしたことによって大きな影響が、御商売をやっている人は御商売ができなくなるわけですから、やはりそうしたことを決める最終的な判断者と、そうでない官房長官と、私はそこが一番違うのかなと思います。
それと、政治というのはやはり最終判断は総理大臣がすべきだと思っていますので、次の総理大臣にも、そうした権限を行使する総理大臣として、そこは健康でもなければだめだと思いますし、いろいろな条件に耐えられることが必要だと思います。
(内閣広報官)
続きまして、それでは、神奈川新聞の石川さん、どうぞ。
(記者)
神奈川新聞社の石川です。
総理に伺います。非世襲、無派閥たたき上げの総理として国民のために働く内閣を掲げて政権運営をされてこられました。1年余りで退陣という結果になりましたが、明日、自民党総裁選の投開票が行われます。この1年の経験を踏まえ、かつて御自身がおっしゃられた、普通の人間でも努力をすれば総理を目指せる政治を実現していくためには何が必要でしょうか。また、衆院選を目前に控えていますが、地元横浜では横浜市長選の余波がまだ残っているように感じます。退任後、地元に戻られたら何から始められますか。よろしくお願いいたします。
(菅総理)
私、総裁選挙の際に、自民党という政党は、私のように秋田の田舎で生まれて、高校まで育って、東京へ出てきて、いろいろな紆余曲折(うよきょくせつ)を経ながら、横浜で市会議員に当選させていただいて、当選2回で衆議院に出てきて、努力すれば総裁候補にもなれるんだということを演説で言ってきたことを今、思い浮かべております。いずれにしろ、日本という国は正に民主国家ですから、そうしたことができる国でこれからもあり続けたいと思っています。
それと、私は横浜の市会議員を経験して、市会議員当時に現場で思ったことを国政に反映させたいという形で出てきていますので、地元のことに対しては、やはりどんな小さいことでも、多分、地元担当の秘書よりも私が今、地元のことは一番よく知っているんじゃないかなと思っています。それぐらいに地元には気を遣いながら、やはり政治は行わなければならないと思います。
(内閣広報官)
続きまして、RADIO FRANCEの西村さん、どうぞ。
(記者)
RADIO FRANCEの西村と申します。よろしくお願いします。
水際対策について質問させていただきます。1年半前から多くの外国人の留学生は日本に来られなくて、入国の許可をもらえません。感染拡大を防ぐために水際対策の必要性は誰でも分かりますが、その間に芸能人や多くのスポーツ選手らが入国できました。なぜ留学生の入国を認めませんか。いつから留学生は入国できるようになるのでしょうか。
(菅総理)
外国人留学生の新規入国については、現在、原則一時停止にしておりますが、外国人留学生の受入れについては、大学などの国際化や、教育・研究力を向上させる観点から、重要だと考えています。そういう中で、国際的な人の往来については、制限を緩和していく方策を、積極的にこれから検討していきたいと思います。留学生の入国についても、国内におけるワクチン接種の進展や国内外の感染状況を踏まえながら、前向きに検討していきたいと思っています。
(内閣広報官)
続きまして、それでは、テレビ東京、篠原(しのはら)さん、どうぞ。
(記者)
テレビ東京の篠原です。
大変コロナで困難な時期に総理御在任、お疲れさまでございました。
総理の会見の発言の中にも、ワクチン接種のくだりで、厚生労働省だけでなく総務省も使ってオール日本政府でやったという発言がありました。厚生労働省をめぐっては、以前から、巨大過ぎて大臣のマネジメントが利きづらいなどの指摘がありまして、今般の総裁選でも、省の分割とか複数大臣制を取るべきといった意見が出ています。コロナ対応などで、また、官房長官としても長年厚生労働省と接してこられた経験から、総理としてはこの厚生労働省の組織の問題についてどのようなお考えを持っていますでしょうか。
(菅総理)
厚生労働省は、予算的にも、また仕事量からしても、やはり余りにも巨大になり過ぎて、そしてまた、厚生労働省関係の仕事が今、どんどんどんどん増えてきております。そういう中で、やはり大臣の他に担当大臣とか、複数大臣制にするとか、あるいは最終的にはやはり組織全体の分割、見直しというのは、私は避けて通れないと思っています。私自身もこの1年半にわたるコロナ対応を行ってきて、そこは極めて大事なことだと思っています。
(内閣広報官)
それでは、続きまして、ジャパンタイムズの杉山さん、どうぞ。
(記者)
ジャパンタイムズの杉山です。
総理、お疲れさまでした。
政治の安定についてお伺いしたいと思います。菅総理が自民党の総裁選挙に出馬しないことで、菅政権は短命内閣となり、来週には新しい内閣が誕生しますが、海外ではまた日本の総理が1年ごとに代わる時代に戻ってしまうのではないかといった懸念もくすぶっており、外交上日本は信頼できるのかということにも、こういった信用問題にも発展しかねないと思いますが、この点について菅総理はどのようにお考えでしょうか。
(菅総理)
まず外交については、信頼、そして、継続性と一貫性、ここが当然、一番必要だと思います。そういう中で、総理が1年ごとに代わるというのは、国益から考えれば、そういうことはすべきではないと思っています。
私自身、総理として様々な仕事に答えを出すには、1年は短過ぎると感じていますが、政府一体となって取り組んできている。例えば今回の私の訪米に際して、日米豪印のクアッドで様々なことを決めてきました。ただ、これはそもそも安倍前総理が提唱して、そして、アメリカで政権が交代して、インドが入ってきたのです。それで、今回初めて4か国の首脳が対面で行いました。やはり一つの政党ですから、そうした外交にも基本的な考え方は変わりありませんので、今回はすんなり入れたのかなと思います。
いずれにしろ、自由で開かれたインド太平洋構想というのを、4か国の首脳で方向性を出したわけですから、そうしたことには影響はないと思っています。ただ、やはり一定の期間やった方が、当然国益にかなう、こう思います。
(内閣広報官)
続きまして、それでは、フリーランスの大川さん、どうぞ。
(記者)
フリーランスの大川興業総裁、大川豊です。
菅総理、お疲れさまでございました。
今でも知的障害者施設のワクチン接種の現場を訪れておりまして、親御さんが2回接種を打ったとしても、まだブースター接種、3回目があれば、その施設でお子様に会えるという現状を考えているのですが、まだ3回目の接種を、例えば福祉従事者、親御さん、家族に優先的にこの接種が打たせてもらえるのだろうかと。今の時点で、実を申しますと、いまだに利用者さんの接種が、若いということで接種券が届かず打てないという現状があります。
あと、もう一点は、パラリンピック、オリンピックを開催し、その後、スペシャルオリンピックスなどを始め、菅総理から今後も知的障害者、発達障害の方のスポーツを応援するという御回答を頂きました。実は、今後、バータスグローバル競技会という国際的な競技会の、知的障害とか発達障害の競技会がありますが、横浜での誘致を是非日本がやりたいとおっしゃっております。ですので、これはやはり国と自治体の協力、応援がないとできないとおっしゃっておりますので、今後、日本の多様性を世界に発信するために、そういったお考えはございますでしょうか。
以上です。お願いします。
(菅総理)
まずワクチン接種ですけれども、障害者施設への入所者、従事者に対する接種について、調査させていただきました。この前御質問いただいたものですから。結果として、8月末時点での入所者について、9割の施設で1回目の接種が、約7割の施設で2回目の接種が完了しているという、そういう状況でした。そこの従事者については、9割の施設で1回目の接種、8割の施設で2回目の接種が終了しているということでしたので、そこは他と比較して遜色(そんしょく)がないというか、多い状況だと思います。いずれにしろ、そうしたことも十分配慮しながら、対応はさせていただきたいと思います。
また、横浜でバータスですか。
(記者)
バータスグローバル競技会という知的障害、発達障害の方のスポーツ競技会、パラリンピックと連携しておりますので、パラリンピックにも将来出場ができるという競技会でございます。
(菅総理)
私自身、詳細を承知しておりませんので、今後調べて御報告させていただきたいと思います。
(記者)
よろしくお願いします。
(内閣広報官)
続きまして、日本経済新聞重田(しげた)さん、どうぞ。
(記者)
日本経済新聞の重田です。
総理、1年間お疲れさまでした。
今後の政治活動についてお伺いしたいのですけれども、総理は党内のガネーシャの会など、総理の支持される議員グループがあるかと思います。今後はこうしたグループを中心に皆様と一緒に政策実現を目指していかれるのか、もしくは、派閥などに衣替えをすることも視野に入れるのでしょうか。よろしくお願いします。
(菅総理)
私自身、今後の自分の政治活動をどういうふうに方向するかということは、まだ正直決めていません。ただ、政策の実現について、自分が掲げたものがありますので、そうした政策の実現には取り組んでいきたいと思っています。ですから、私のグループって、私、いろいろな人たちとお付き合いをしていますので、様々な勉強会はやっていきたいと思っています。派閥ということでなくて、政策の勉強会をやっていきたい、こう思います。
(内閣広報官)
それでは、フジテレビの鹿嶋(かしま)さん、どうぞ。
(記者)
フジテレビの鹿嶋です。
1年間の激務、大変お疲れさまでした。
北朝鮮による日本人拉致問題が解決されていないことに関して、横田早紀江さんが先日、絶望感に近いむなしさを感じるとコメントされていますが、今、この御家族の思いをどのように受け止めておられますでしょうか。
そして、自民党総裁選に出馬する候補者の多くが、北朝鮮とのトップ会談を目指す考えを示しておりますが、小泉政権以来実現していないことも事実だと思います。この問題の解決のために何が必要と考えられているのか、お聞かせください。
(菅総理)
まず、私自身、国政に議席を得てから、先ほど申し上げましたけれども、北朝鮮拉致問題、特に万景峰号という北朝鮮の船が年間15回、新潟港に出入港していた。日本人を拉致する船をそのまま入港させることはできないという中で、議員6人の仲間と一緒に、議員立法を作って、あの船を止めることができました。
そういう中で、北朝鮮拉致問題というのは、私にとっても最重要の大きな自分の思いとして取り組んできています。総理大臣として大変申し訳なく、じくじたる思いですけれども、いろいろな対応をしてきていることは、事実です。外交はもちろんですけれども、様々な人脈を使ったりとか。そういう中で、次の総理になるわけですけれども、こうしたことを優先して当然やられると思いますけれども、なかなかいつ具体的にどうかというのは難しいですけれども、そういう状況は私からもしっかり説明して、今の現状を引き継いでおきたい、そう思います。
(内閣広報官)
それでは、ラジオ日本の伊藤さん、どうぞ。
(記者)
ラジオ日本の伊藤です。
1年間御苦労さまでした。
そこで、総理にお尋ねしたいのですけれども、総理はコロナ対策の柱としてワクチン接種1日100万回を決断しました。そのときに、現在は、今年の6月下旬も1日100万回を達成したのですけれども、当初、1日100万回を決断した、どういう判断で政治決断されたのか、お尋ねします。
それから、尾身先生には、この1日100万回という総理の提案が、医学的に見た評価、成果というのをどういうふうに評価されているのかお尋ねします。
よろしいでしょうか。
(菅総理)
私自身、100万を掲げたのは、ワクチンというのは正にこの新型コロナに対しての切り札だと、私、信じていました。そこで、7月一杯までに65歳以上の人を優先して接種することになったときに、逆算した場合、1日に100万を超えないとなかなか7月一杯にはできない状況でした。それで、いろいろ調べたのですけれども、ワクチン接種で最高60万回はあるということだったのです。ですから、これ、国を挙げてやりますから、そうすれば100万回は超えられるだろうと。
そういう発言をしたのはよかったのですけれども、その後が大変で、悩みに悩み抜いたのですけれども、結果として、やはり総務省、地方自治体を非常によく分かりますので、まず総務省にも参加してもらおうと。それと、そのために打ち手が医師会の方だけでは足りなかったものですから、歯科医師会とか、先ほど申し上げましたけれども、いろいろな団体に、打てる可能性のあるところに、厚生労働省に話をして、参戦してもらえるような体制を作って、さらに、産業界、企業には産業医というのがいるという話を聞きまして、だったらその人たちにもやってもらおうじゃないかと。そこにもお願いしようとか、いろいろな体制を整える中でやり始めましたが、日本の国民の皆さんって非常に真面目で協力的で、そうした大きな方向を出してやり始めると、6月の平均が1日110万回でした。7月は150万回でした。ですから、6月から始めた当時、ワクチンが足りないと騒がれましたけれども、確かに一部の都市では足りなかったのですけれども、その間も着実に打ち続けてくれていましたので、そういう意味でやはり目標を掲げて退路を断ったというのですか、やって本当によかったと思いますし、御支援いただいた皆さんには心から感謝を申し上げたいと思います。
そして、今の状況では8割ぐらいの国民が接種してくれるだろうと思っています。そういう8割も含めて10月末から11月の早い時期には2回接種を終えることができるだろうと、そういう状況にあります。
(尾身会長)
医学的な評価ですけれども、私は2つの側面があると思います。
1つは、今回のワクチンは感染予防効果は必ずしも100パーセントじゃなくて、今また少し落ちていますけれども、確かに重症化の予防という効果があって、感染防止効果も一定程度あるということで、今回、先ほど申し上げましたように感染が急激に減少してきた一つの要因だと思います。
そういうのがまず1つと、それから、このワクチン接種の向上のスピードですよね。これは私は公平に見て、日本は遅れてワクチン接種を開始したわけですけれども、この接種向上のスピードが諸外国よりもかなり速いスピードで、多くの諸外国では、もう皆さん御承知のように、ある一定のところに行くと頭を打つわけですよね。私は分科会の会長としてあるいは個人として、恐らく日本の場合には頭打ちのレベルが他の国よりももう少し高くて、多くの人がワクチン接種していただければというのが私の2つの立場としての希望であります。
(内閣広報官)
それでは、大変恐縮でございますけれども、あと2問とさせていただきます。
それでは、朝日新聞の星野さん、どうぞ。
(記者)
朝日新聞の星野です。よろしくお願いします。
臨時国会の召集についてお伺いします。野党は7月16日に憲法53条に基づいて臨時国会を召集してコロナ対応などの審議を求めていましたが、菅内閣が決めた召集日は10月4日でした。自民党の憲法改正草案では、要求から召集まで20日以内とされています。今日の議運委でも、総理は与党と相談しながら対応と答弁されていましたけれども、総理は自民党の総裁でもあります。憲法上の義務として指示を出せばよかったのだと思いますが、なぜなかなか速やかに召集を指示できなかったのか。あと、専門家からは憲法違反との指摘が出ていますが、そうした指摘をどう受け止めていますでしょうか。
(菅総理)
まず、今日の国会での質問にもありましたけれども、召集については、これは政府が決めるわけですけれども、党と相談をしながら様々な政治日程の中で相談をして決めさせていただきます。そういう中で10月の4日ですか、召集を決定しているということです。
それと同時に、コロナ対応については、閉会中審査をかなりやっていることも事実だと思っています。そういう中で政府の対策を野党の人に答えている、そういうことで配慮をしながら行っている、こういうふうに思います。
(記者)
憲法違反ということについては。
(菅総理)
そこはないと聞いています。
(内閣広報官)
それでは、フリーランスの江川紹子さん、こちらで最後とさせていただきます。
(記者)
フリーランスの江川紹子です。よろしくお願いします。
今日、全面解除ができるような事態になったのは非常に喜ばしいことだと思いますし、本当にお疲れさまでしたと申し上げます。
ただ、1つ、先ほどのお話で気になるのが、飲食やイベントの制限について段階的に緩和するとおっしゃいました。それは多分、リバウンドを避けるためには必要なことだとは思うのです。であれば、まん延防止等重点措置の方に一回移行することはお考えにならなかったのかということです。そして、今のように全面解除にしちゃうと、やはり営業の自由とかというのは憲法に保障された財産権の一部というのもあると思うので、やはりそういったものを要請という形で、この制約するのはいかがなものかということについても御意見を伺えればと思います。やはり法治国家である以上、個人の自由を制限するとすれば、きちっとした根拠となる法律が必要で、やはりそういう法案をちゃんと作って国会に提出した方がよかったのではないかとも思うのですけれども、そういうような法律づくりの必要性をどう考えるかということですね。まん延防止等重点措置のことについては尾身先生にも御見解を頂ければと思います。
(菅総理)
今回、地方自治体と連携をしながらこの対応は決めさせていただいています。そういう中で、まん延防止等重点措置をどうしてもというところは、結果的に無かったと報告を受けています。ただ、首都圏の場合、1都3県で足並みをそろえてやろうとか、そういう自治体の考え方を聞きながら、政府として段階的なことを判断させていただいたということであります。
(記者)
法的な根拠は。
(菅総理)
これについては、今の法律の中でも要請はできると思っています。
(内閣広報官)
自席からの御発言は、お避けください。
尾身先生、ございますでしょうか。
(尾身会長)
実は、今の御質問、まん延防止等重点措置の件ですけれども、実は今日の基本的対処方針の分科会で、一部の人からまん延防止等重点措置をかませて、緊急事態宣言を解除した後、まん延防止等重点措置に継続した方がいいという意見が1人、2人ありました。
その根拠というか、なぜそういう意見があったかということの背景は2つあったと思います。
1つは、今、おっしゃるように、法的なツール、まん延防止等重点措置というものがあった方がいいのではないかというのが1点と、2番は、それと関係しますけれども、それがないと、強いメッセージが出なくて、間違ったメッセージみたくなるのではないかと、この2点だったと思います。それに集約される。
1点目の方は、実は、これも委員の方から出たあれですけれども、確かにそういうところはあるのだけれども、特措法の24条9項ということを使えば、知事が基本的には、地域の実情に合わせて、この法律を使うことができて、実態的にはほぼ同じような対策を打つことができるという仕組みになっていることが、まず1点。
それから、2点目の、これを出さないとメッセージがクリアにならないと、もう今日から明日から10月1日から、みんなガードを下げていいのだというメッセージに、これは全員、それだけは絶対によしてくださいということで、実は、今日の分科会で5つの点について、これはコンセンサスとして合意しました。
そのうちの最初の2つは、一般市民への皆さんへのお願いということで、詳しくはもう申しませんが、これからも基本的な対策は続けていただきたいということと、ワクチンがまだ必ずしも接種率が高くない組織とか学校がありますね、それについては、なるべく本人の自由意思を尊重して、前提ですけれども、しっかりワクチンの接種率を上げてくれというのが、一般市民への、同時に、自治体及び国へのお願いということで、これは非常に強い意見で、これもコンセンサス、それは、1つは、今、段階的な、少しずつ行くという、慎重にやっていただきたいということで、その中で、今の24条9項のことが出た。
それから、次の点は非常に重要だと思うのですけれども、重点という、法律がツールだけではなくて、それは一部でもっと本質的な総合的な感染対策を、それはワクチンであり、検査であり、その他、我々は前から申し上げている科学技術を使ったQRコードだとか、CO2のモニターだとか、健康アプリあるいは下水、こういうことも総合的にやらないと、1つのツールだけでは難しいと、これを今、緊急事態宣言を解除するわけですから、少し11月ぐらいまでの間に、これを今までも国は、あるいは地方自治体は努力していただきましたけれども、これを冬に向けて徹底的にこの期間を利用してやっていただきたいということです。
最後は、もちろん、今、QRコードというところを同時に、医療体制の強化、これは、言わずもがなでやるということ。
最後ですけれども、これも非常に重要で、これもコンセンサス、これから、いろんなことが起き得るわけですね。特に、冬に向かって、また、12月になると、また、いわゆる恒例行事ということが来るので、感染拡大のリスクはある、これは、今までの経験ですから、そういうようなことで、仮にリバウンドの兆候があって、このまま放っておくと医療にひっ迫がまた起きてしまうということ、そういう予兆が探知できたら、もう今回はすばやく、今までもすばやくやったときもあったけれども、ちょっと遅れたときもあったのでね。今回はすばやく果敢にやっていただきたいと、この5点をみんなで確認したということで、まん延防止等重点措置、今回はなくても、もっと大きな総合的な対策をやっていただきたいということで、今回、全員で国の諮問案について合意したということだと思います。
(内閣広報官)
すみません、もうお時間ですので、挙手いただいている方につきましては、後ほど1問メールでお送りいただけますと、書面で回答させていただきます。
以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。