日中韓サミット出席等についての内外記者会見
【安倍総理冒頭発言】
北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射が続いています。私たち3か国は、この状況に強い懸念を有している。本日の日中韓サミットでは、この認識で一致しました。3か国は、米朝プロセスの進展を完全に支持します。プロセスが正念場を迎える中で、更なる挑発行動は自制すべきである、それが一致したメッセージであります。
朝鮮半島の完全な非核化に向けて3か国が協力し、それぞれができる限りの努力を行っていく、その認識を共有しました。最重要課題である拉致問題については、その早期解決を目指す我が国の立場に、中国、韓国から理解を頂きました。拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指すとの、我が国の方針に変わりはありません。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とも、北朝鮮問題に対する日韓の緊密な連携を確認しました。現在の東アジアを取り巻く厳しい安全保障環境の下で、日韓の協力は極めて重要です。韓国は重要な隣国であります。しかしながら、国交正常化の基礎となった日韓基本条約、日韓請求権協定が守られなければ、国と国との関係は成立しない、成り立ちません。
文在寅大統領には、旧朝鮮半島出身労働者問題に関する我が国の立場を伝えました。国と国との約束を遵守してもらわなければなりません。韓国側の責任で解決策を示すべきである。日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを韓国側からつくるよう求めました。
日中韓サミットがスタートして20年です。この枠組みの下で、経済、文化、スポーツ、幅広い分野での協力によって、人々の交流はその厚みを増してきました。隣国ゆえに様々な課題があります。そうした中でも民間同士の交流は、途絶えることなく続いてきました。その時々の政治情勢には左右されない分厚い交流の基盤をつくり上げていく。それが、3か国によるサミットの原点であります。本年の日中韓サミットでは、日本の経済界にも参加いただき、ビジネスサミットを開催したほか、様々な分野での協力を確認いたしました。
私たちが共有する海では、プラスチックごみによる汚染が深刻な問題となっています。この世界的な課題に立ち向かうため、本年、我が国で開催したG20大阪サミットにおいて、2050年までに、海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロとする新しいビジョンに合意しました。そして、その実現に向けた具体的な実施枠組みを設けました。大阪で合意に達した強固な基盤の上に、今回、3か国で更なる協力を進めていくことで一致いたしました。貿易摩擦など世界的に保護主義への懸念が高まる中で、自由貿易の基本原則や質の高いインフラ投資に関する原則など、大阪サミットで共有した諸原則の重要性についても、今回改めて確認いたしました。
昨日は北京において、習近平国家主席と日中首脳会談を行いました。日本と中国は、この地域と世界の平和と繁栄に、共に大きな責任を有している。その点を改めて確認いたしました。そして、その責任を果たすとの意思を明確に示していく。そのことが今現在のアジアの状況において国際社会から求められている、そう考えています。私からは、東シナ海を平和、協力、友好の海にするための努力を促しました。国際社会から高い関心が集まっている南シナ海、また、香港情勢や、新疆(しんきょう)ウイグル自治区における人権状況について話し合いました。課題があるからこそ、対話を続けなければならない。たゆまぬ交流を続けることで国際社会の期待に応える。新時代の成熟した日中関係を構築していく考えです。明日は、李克強(り・こくきょう)総理と世界遺産の都江堰(とこうえん)を訪れます。雄大な自然の下、経済を始め、日中2国間の課題、この地域の様々な課題について、時間をかけて話し合いたいと思います。
さて、年が明けるといよいよ、半世紀ぶりとなる東京オリンピック・パラリンピックが日本にやってきます。18年の平昌(ピョンチャン)、そして22年の北京。日中韓で連続してオリンピック・パラリンピックが開催されることで、この地域にはかつてなく、世界の関心が集まります。この機に、世界の平和と安定に向けた力強いメッセージを、この地域から発信していく。そのような大会にしたいと思います。
今年も残すところ1週間です。本年は、200年ぶりとなる歴史的な皇位の継承が行われました。未来への希望と共に、新しい令和の時代がスタートした、大きな節目となる年となりました。来たる令和2年が皆様にとってすばらしい年となることを心より祈念しております。
私からは以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これから皆様から御質問を頂きます。最初に日本の同行プレスの幹事社から頂きたいと思います。指しますのでお名前と所属を明らかにした上でお願いいたします。はい、どうぞ。
(記者)
NHKの松本といいます。よろしくお願いします。朝鮮半島情勢に関連してお伺いします。
米朝プロセスを後押しするというのが日本の立場でありますけれども、膠着(こうちゃく)状態が続いているのが現状だと思います。北朝鮮から融和的な対応や姿勢を引き出すために、米朝プロセス以外の対話の枠組みも含めまして、新たな対応を検討する必要はないのでしょうか。
また、北朝鮮に向き合うにも韓国との連携が重要だと総理も強調していらっしゃいます。しかし、安全保障の連携強化を進めるにも、両国間の問題解決が欠かせないと考えます。韓国内では立法府の動きというのは見えますけれども、大統領側の動きというのがまだ見えてこないように思えます。こうした中で行われた会談、文大統領から前向きな意思というのは示されたのでしょうか、また、感じることができたのでしょうか。御見解、お伺いしたいと思います。
(安倍総理)
我が国は、米朝プロセスを完全に支持しています。北朝鮮には、危険な挑発行動ではなく、平和な対話を通じて、朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組むよう、改めて強く求めていきたいと思いますし、正に今、国際社会が協力して米朝プロセスを後押ししながら、北朝鮮に完全な非核化を求めていかねばならないと、こう考えています。
東アジアの安全保障をめぐる問題について、日米韓、日韓の連携が重要であることは当然であります。この点については、日韓ももちろん共有しておりますが、韓国も共有しております。
他方、日韓間の問題については、本日の文在寅大統領との首脳会談において、日本としては主張すべきは主張し、韓国側が、日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけをつくるよう求めました。文大統領との間では対話による解決の重要性については確認したところであります。
(内閣広報官)
それでは、次は外国のメディアの方、御質問を受けますので、御質問がある方は挙手をお願いしたいと思います。どうぞ。お名前と所属を明らかにしてください。
(記者)
今年は中日韓協力20周年です。現在の中日韓協力をどう思うか。三者協力の最大のポイントは何とお考えでしょうか。どのような分野で更なる協力が必要とお考えでしょうか。
(安倍総理)
この20年間にアジア経済危機、リーマン・ショックなど厳しい局面にも巻き込まれましたが、日中韓3か国は、未来志向の実務協力を重ね、これらを乗り越え、世界の成長センターとなっています。昨年5月のこのサミット以降も、環境、文化、観光、農業、保健、財務、防災、経済、貿易等の分野で閣僚会合が開催されました。
本日のサミットでは、6月のG20大阪サミットでの合意を受けて、私から、環境問題、高齢社会、人的交流を取り上げました。そして具体的には、海洋プラスチックごみ問題を始めとする環境問題への対応、活力ある健康的な高齢社会の実現に向けた取組の共有、昨年から2年ごとに3か国がリレー開催するオリンピック・パラリンピックを通じた人的交流の拡大で、3か国が協力して国際社会に貢献していきたいと思います。
また、日中韓3か国は、北朝鮮情勢についても議論を深め、朝鮮半島の完全な非核化との共通の目標に向け、引き続き緊密に協力していくことで一致し、安保理決議に従って、3か国で協力を進めることを確認しました。日本にとって最も重要な拉致問題の早期解決に向けても、日本の立場に理解を得ました。
3か国がより大きな責任を果たすべく、次の10年に向けて、今後も日中韓協力を国際社会に広げていく考えであります。
(内閣広報官)
それでは再び日本のメディアの方。どうぞ。
(記者)
読売新聞の池田と申します。日中関係について大きく2点伺いたいと思います。
日中の現状を見ますと、関係改善ムードが高まる一方で、中国公船の尖閣(せんかく)周辺海域への侵入や、邦人の拘束事案が相次いでいます。総理は習近平国家主席に対して直接、こうした懸念への解決ですとか、また、国際社会から懸念が出ているウイグルの人権問題、香港情勢への対応を何度も働きかけていますけれども、中国側は歩み寄らず、むしろ事態をエスカレートさせているようにも見えます。総理は先ほど課題があるからこそ対話を続けないとと仰いましたが、現状では余りに課題が多いのではないのでしょうか。
そうした中、日本国内からは、来春に国賓待遇で習氏を迎えることについて批判も出始めておりますが、総理は、来春までにこうした諸課題でのその前進が見込めない場合、それでも国賓待遇で迎えるお考えなのでしょうか。または、それまでの間に中国に具体的にどのようなことを求めたいとお考えでしょうか。
またもう一点なのですが、習主席の来日に合わせて日中新時代の理念を盛り込んだ第5の政治文書、これをつくるお考えはありますでしょうか。お願いします。
(安倍総理)
日中間には隣国であるゆえ、歴史的に常に様々な課題・問題がありました。そういう課題や問題については話し合いを進めていくことによって解決していく、このことが大変重要だろうと思います。
そして日中両国は、アジアや世界の平和、安定、繁栄に対する大きな責任を共に有しており、習近平国家主席の国賓訪問をその責任を果たすとの意思を明確に内外に示していく機会としたいと考えています。そしてそのことが、アジアや国際社会からも求められているのではないかと思います。日本もそうした責任を果たしていく必要があると考えています。
同時に、中国との間には御指摘のような様々な懸案が存在していることも事実であります。こうした懸案については、昨日行われた習主席との日中首脳会談でも、私から直接提起をしたところであります。御指摘をされたような成果の形については、現時点では何も申し上げることはできませんが、今回の議論を踏まえて各分野での成果が上がるよう、日中の双方で一つ一つ、努力していきたいと思います。
(内閣広報官)
それでは次は日本のプレスの方でも、あるいは外国の方でも結構でございます。
(記者)
中国は新しい国産空母を就役させました。日本は同空母が地域にもたらす脅威に対処する準備はあるのかどうかお伺いします。
(安倍総理)
特定の国の装備についてコメントすることは差し控えたいと思います。他方で、我が国政府として、国民の生命・財産、領土・領海・領空を必ずや守り抜く。そのため、格段に速度を増す安全保障環境の変化にしっかりと対応を行っていくことは当然であります。
来年度予算案において、真に実効的な防衛力を構築するため、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保するための予算を計上する考えであります。
同時に、中国の軍事的活動や国防政策については、強い関心を持って注視しています。
先週、10年ぶりに我が国の国防大臣による訪中が実現しました。様々なレベルで、日中間の外交・安全保障分野の意思疎通を強化し、軍事力の透明性の向上を促していく考えであります。
(内閣広報官)
それでは、次最後の質問になると思います。
(記者)
フジテレビの鹿嶋と申します。ロシアについてお伺いします。ロシアのプーチン大統領は、年末の記者会見で、日本との平和条約交渉について引き分けでなければならないと述べまして、日露双方が受入れ可能な解決策を見つけるべきだというような考えを示されました。現在双方で進められている交渉の状況も踏まえて、受け止めをお願いします。また、安倍総理はかつて、自身の手で平和条約を締結したいと意欲を示されていましたが、この考えは今も変わりないでしょうか。
(安倍総理)
日露の平和条約の締結は、残念ながら70年以上にもわたって解決してこなかった問題であります。領土問題を解決して、平和条約を締結する、この基本方針の下、真剣に交渉を続けてきています。私もプーチン大統領と会談を重ねてまいりました。先週も初めて、茂木外務大臣とラヴロフ外務大臣の間で外相会談が行われましたが、大変よい雰囲気の中で協議が行われたと聞いています。もちろん、先ほど申し上げましたように70年以上解決されていない難しい問題ではありますが、しかし、私はプーチン大統領との間で領土問題を次の世代に先送りすることなく、必ずや自らの手で終止符を打つとの強い意思を共有しています。また、この問題は難しい問題ではありますが、日本国の総理大臣として当然この問題を前進する、あるは終止符を打つために全力を尽くす義務が私にはあるのだろうと思っています。私が先頭に立ってこの問題の解決を目指すとの決意には全く変わりはありません。
(内閣広報官)
はい、以上をもちまして、安倍総理の記者会見、予定の時間を越えておりますので、終了にさせていただきたいと思います。皆様方の御協力に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(安倍総理)
ありがとうございました。