日中韓ビジネスサミット 安倍総理スピーチ
本日は、お招きいただきましてありがとうございます。この場に、李克強(り・こくきょう)国務院総理、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と共に出席できることを大変うれしく思います。
私は昨晩、この成都の地に足を踏み入れ、ここ成都を首都とした、蜀(しょく)を含む、三国時代の英雄たちに思いを馳(は)せました。日本では多くの日本人が英雄たちの英知や活躍に胸を躍らせ、三国時代を題材とした小説や、また漫画が数多くあります。
今日この場にいる3か国の首脳は、三国時代の魏(ぎ)、呉、蜀ではありませんので、相争う者同士ではありません。私は、3か国のビジネスリーダーの皆様と共に、我々3か国が共に協力し、国際社会と共に発展する、新しい三国時代を築きたいと考えています。
中国の改革開放以降、日本は早くからここ四川省成都の可能性、潜在力の高さに注目し、積極的に投資を行ってきました。例えば、1990年代には、イトーヨーカドー、トヨタ自動車等の日系企業がこの地に進出しており、成都の産業の発展にも貢献してきています。今では四川省に進出している日系企業は370社を数えるまでになりました。三国時代の、英雄たちが活躍する四川省成都も魅力的ですが、物流拠点としても発展著しい今の四川省成都はそれ以上に日本人にとって魅力的な場所となっています。
日中韓3か国のGDPは、世界の5分の1を越えています。我々は、世界の経済成長を牽引(けんいん)すべき存在であるとともに、国際経済市場の発展にも大きな責任と義務を負っています。経済分野において、我々はすでに切っても切れない重要なパートナーであり、多くの分野で協力の潜在力が秘められています。
同時に、日中韓3か国は少子高齢化や環境問題などの分野で共通の課題も抱えています。こうした共通の課題に効果的に対処するためには、経済界の皆様の御協力を得て、日中韓3か国が互いの優位性を補いつつ、共に取り組んでいくことが重要です。また、デジタル経済など新しい分野についても、ルールづくりを含め、日中韓3か国の連携を強化していく必要があります。
こうした取組を進める基礎は、日中韓3か国の企業間協力であり、これを更に強固なものとするためには、互いに公平で、透明で、非差別的かつ予見可能性のあるビジネス環境を相互に提供することが不可欠です。同時に、我々は互いの政策や制度に対する理解を深め合い、互恵的な実務協力を強化することを通じ、3か国の経済成長を更に後押ししなければなりません。
また、人的交流は相互理解の基礎であり、3か国協力の基盤でもあります。政府同士が困難に直面する時期であっても、人的交流は積極的に進めていかなければなりません。2020年までに年間3,000万人の人的往来との目標が、2018年に達成されたことを歓迎し、引き続き人的交流を強力に推し進めていきたいと考えています。
多国間においては、日中韓3か国は公平な競争環境の整備に向けて、電子商取引等の新たなルール形成を含め、WTO(世界貿易機関)を礎とする多角的貿易体制の強化に、共に努力し、自由で公正な貿易を一層力強く推進していかなければなりません。先般のG20大阪サミットでは、デジタル化が急速に進む中で、経済発展にとって最も重要な要素であるデジタルデータについて、新しい時代のルールづくりを進めていく大阪トラックもスタートしました。日本としては、引き続き、自由で公正なルールに基づく21世紀型の経済秩序を世界へと広げていく決意であります。
地域に目を向ければ、RCEP(東アジア包括的経済連携)及び日中韓FTA(自由貿易協定)交渉に関し、日中韓3か国で連携を強化していくことが必要です。RCEPについては、16か国で早期に交渉を妥結し、未来を見据えた世界最大の、自由で、公正な経済圏を目指します。また、日中韓FTAについても、RCEP交渉を踏まえ、包括的、高水準、かつ互恵的な協定締結に向けて共に努力をしていきたいと考えています。
共に協力し、共に発展する。新しい三国時代を築くために、政府と経済界と二人三脚で協力することが不可欠です。政府としても、引き続き、経済界の皆様の提言をしっかりと受け止め、日中韓経済関係の更なる発展に取り組んでまいります。
日中韓ビジネスサミットの御盛会と、そしてビジネスリーダーの皆様の一層の御活躍、御発展をお祈りするとともに、中国側のアレンジに心から感謝申し上げまして、私のスピーチとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。