TICAD7 共同記者会見
【安倍総理冒頭発言】
エルシーシ・エジプト大統領、共同議長を務めていただきまして、ありがとうございます。
おかげさまで、横浜宣言を採択し、成功裏にTICADを終えることができました。そして、全てのアフリカの参加国、さらには、企業関係者を始め、全ての関係者の皆様に、心から感謝申し上げます。
6年前に続き、今回のTICADでも、私たちを温かく迎えてくれた林市長を始め、横浜市の皆様に、感謝申し上げたいと思います。
躍動するアフリカは、今や、共に成長するパートナー。私にとって3回目となる今回のアフリカ開発会議は、そのことを、本当に実感する機会となりました。
ビジネス・エキスポは、6年前の2倍を超える企業関係者が集まりました。アフリカに対する日本企業の投資は、この3年間で、200億ドルに上ります。アフリカこそ、正に、成長のフロンティアです。
そして、その原動力は、アフリカの若い力です。アフリカの若者たちを日本に招き、日本で学び、そして、日本を好きになってもらう。TICADから生まれた新たなイニシアティブで学んだアフリカの若者たちは、この5年間で2,500人を超えています。
ケニアの人々に健康診断を根付かせ、何かあれば、病院へ行く習慣をつくる。落雷の事故が頻発しているルワンダに、日本の避雷針を広めていく。このような、日本企業のアフリカでの挑戦を支えているのは、まさに、この日本のイニシアティブで学んだアフリカの若者たちです。
日本人とアフリカ人が共に手を携え、共に未来を拓(ひら)き、発展する。これが日本のやり方です。だからこそ、我が国は、次なる6年間も、3,000人規模で、農業、海洋警備をはじめ、幅広い分野で、アフリカの若い力、日本とアフリカの架け橋となる人材の育成に力を入れてまいります。
アフリカの皆さんが描く、アフリカの未来の実現を、全力で応援する。それがTICADです。ですからTICADは、当然、誰にでも開かれたオープンな枠組みです。今回も、日本企業だけでなく、欧州やアジアから、多くの企業にお集りいただきました。
世界中から、官民の力を結集することで、アフリカが持つ無限の可能性を開花させることができる。日本は、これからもTICADプロセスを力強くリードして参ります。
次は、3年後。TICAD8が、更なる飛躍を遂げたアフリカの地で開催されることを、今から心待ちにしております。ありがとうございました。
【エルシーシ大統領冒頭発言】
アッラーの御名におきまして、安倍総理閣下、皆様、私はここに感謝を申し上げると同時に、安倍総理におかれましては、今回の会合をホストいただき、また、御歓待をいただき、誠にありがとうございました。
また、この会合の成功のために、御尽力をいただきました全ての関係者の皆様に感謝申し上げます。これに先立ち、準備会合でお世話になりまして、各方面の協力の精神が、持続的開発を実現するための、共同行動の優先事項を反映した実施可能な会議の成果を出すことに貢献いたしました。
そして、それはAUアジェンダ2063と、持続可能な開発のための2030アジェンダに沿ったものとなっています。
皆様、TICADにより、アフリカと日本の戦略的パートナーシップが非常にレベルの高いものとなり、現代世界において特筆されるべきパートナーシップとなり、各パートナーの相互の利益を実現することとなりました。
TICAD7は、全当事者に大きな成果をもたらしました。官民対話のプラットフォームができ、AU諸国の優先課題、とりわけインフラ整備、工業、農業、保健、先進技術の導入、平和と安全などの問題に集中することができました。
AUは今後も日本及びパートナー国との協力と調整を推進し、アフリカの人々の希望を実現する今次会議の成果を実施してまいります。この観点で私たちは、アフリカ内外の市民たちは今次会議が大きな成果を上げることを期待していたところ、AUと日本の間の戦略的パートナーシップがこのように進展する中、アフリカのニーズをよりよく反映し、各国が開発のアジェンダを主体的に実現できるよう、このパートナーシップを強化していきたいと思います。
御列席の皆様、私はここに、TICADが3つの重要なポイントと、横浜宣言2019と横浜行動計画2019を通じて、今後とも持続的、包括的な開発を支援するため、歩みを続けることへの重要性を強調したいと思います。また、アフリカのアジェンダ2063と、持続可能な開発アジェンダ2030・SDGsに基づく、開発目標の実現をフォローアップするメカニズムが必要と思います。
最後にわたくしは、2022年、第8回TICADにおいて、アフリカと日本の戦略的パートナーシップがさらなる発展をすることを期待したいと思います。どうもありがとうございました。
【質疑応答】
(NHK 高野記者)
NHK高野です。安倍総理大臣にお伺いします。アフリカでは、中国をはじめ、各国が進出競争を繰り広げています。特に中国は豊富な資金力を背景に、大きな存在感を示しています。一方で、中国の過剰と指摘される融資に対しては、債務の罠(わな)への懸念も広がっています。こうした中国の支援のあり方を、安倍総理はどうお考えでしょうか。そして、日本は、中国との差別化をいかに図り、アフリカでの存在感を高めていくお考えか。
(安倍総理)
中国は、アフリカへの支援に積極的であると承知をしておりますが、同時に、アフリカ開発のための重要なアクターでもあります。日本や中国だけではなく、多くの国がアフリカの発展、開発に貢献をしていると思います。アフリカ諸国への支援にあたっては、対象国の債務負担が、支援によって、過剰なものにならないようにしなければなりません。支援対象国が持続的に発展できることが肝要であり、支援の開放性、透明性、そして経済性や、債務の持続可能性が求められます。これらについては、6月のG20サミットで、もちろん中国も含めて一致をしました。いわば、G20主要国を含めて、国際的に、この考え方について共有できていると思います。そして、この課題の対応策として、我が国は、今般のTICAD7で発表したとおり、公的債務管理のための研修や、政策アドバイザーの派遣等によって、アフリカ諸国の債務管理能力向上を支援をしていく考えです。我が国は、日本のこうした強み、日本らしさを活かして、着実な経済成長、強靱な社会、平和と安定の実現を目指す、アフリカ自身の努力をこれからも力強く支援をしていきたいと思っています。日本の支援の考え方は、共に成長していく、共に歩んでいく、という考え方であり、そのような考え方の下に支援をしていきたいと思います。
(Youm7紙 マグディ記者(エジプト))
Youm7紙のマグディと申します。大統領閣下にお伺いします。TICADではデジタル化の問題やアフリカの結びつきについて話し合われましたが、この結果をどのように活かしていかれるか。
エジプトはデジタル化を進めていますが、アフリカの他の国にも広げられるでしょうか。
(エルシーシ大統領)
お答えします。アフリカの開発において、非常に重要なテーマが話し合われましたけれども、私たちが必要としているのは、インフラの開発です。
そして、デジタル化も重要なことです。インフラについては、55か国以上が、電気や鉄道、道路、港湾などを通じて、結びつきが強まっていくことが必要です。飛行機、航空便もそうであります。
こうしたことは直接の影響を開発に及ぼすものであります。そのためにパートナーたちによる努力が必要とされています。そうしたインフラの中にデジタル分野でのインフラということもあるわけです。
私たちエジプトはこの問題で進んではいますが、デジタル化において優れた人材もありますので、教育などを通じて、この可能性を拡げていくことや、企業との協力も通じて進めていくことが重要です。
2つ目のご質問ですが、アフリカ諸国としては、枠組み合意を自由貿易について行ってきました。そして私たちは、その経済的な連携というものを進めていく取組を行っています。そして多くのサービスや商品の値段を低く抑えていく取組もあります。
自由貿易協定についてお話をしていますが、パートナーとこの問題についても協力を進めていきます。
もう一つですが、持続可能な開発については、若者たちの育成が重要になります。人口の65パーセントは若年層になります。持続可能な雇用の機会というものを生み出すことが必要になります。
最後にもう一つ触れておきますけれども、国際金融公社の役割も非常に大きいというふうに考えています。アフリカ諸国は非常に財政的に困難にも直面していますが、国際金融公社がその役割を果たしていただけることで、開発が進むことになると思います。
購買力も非常に弱いという状態ですが、そうしたものが改善していくためには、資金投入が必要になるところ、そうした各方面の役割も期待されているところです。
(西日本新聞 飯田記者)
西日本新聞の飯田です。安倍総理大臣にお伺いします。アフリカとも地理的に近い中東情勢についてお伺いします。総理は28日、イランのザリーフ外相と会談しました。それに先立つG7サミット後の記者会見では、緊張緩和に向け、イランが対話に乗ってこられる状況をつくるための外交努力が必要、との認識を共有したとして、粘り強く取り組み、できる限りの役割を果たす、とおっしゃいました。具体的にはどのようなことを考えていらっしゃいますか。米国が参加を呼び掛ける、いわゆる有志連合構想に対する検討状況も含め、教えてください。
(安倍総理)
先般、ザリーフ外務大臣は河野外務大臣とも会談し、私とも会談しましたが、これらの会談については、先般、G7サミットの後の記者会見でも申し上げましたが、緊張緩和に向けて、意思疎通を図っていく上においても、大変いい会談ができたと思っています。日本は原油の8割をこの地域に依存しているわけでありますが、その意味においても、中東地域の平和と安定は、我が国の国益に直結します。日本は、イランとの対話を重視しています。私は6月にイランを訪問したのでありますが、今後も中東の緊張緩和のために、粘り強く取り組んでいきたい。できる限りの役割を果たしていきたい。つまり、イランも含めて、対話が行える状況を作り、対話が進んでいく上において、その役割を果たしていきたいと、こう思っています。こうした考え方についても、ザリーフ外務大臣に伝えたところであります。そして、日本はローハニ大統領とは大体毎年、国連総会の際、首脳会談を行っていますが、国連総会の折に、双方の都合を調整し、そしてローハニ大統領とじっくりと議論をしたいと考えています。そして、海洋安全保障イニシアティブについてでありますが、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するために、万全を期していくことは当然のことだろうと思いますが、そのために、我が国として、どのような対応が効果的か、総合的に判断をしていきたいと思います。もちろん、安全を図るために、先般、ザリーフ外務大臣とも会談を行いましたが、こうした対話をしていく、外交努力をしていくことも含めて、総合的に判断・対応していきたいと考えています。
(フォーチューン紙 ダデッセ編集長(エチオピア))
エチオピアの者です。エルシーシ大統領に伺います。女性が人口のかなり大勢を占めているにもかかわらず、なぜこれに対する一貫した政策がないのですか。
(エルシーシ大統領)
お話しいたしました若者の役割や、持続的な発展の重要性、それはアフリカ諸国及びAUの両方のレベルで行われています。
我々としましては、益々、今後ともそういった観点からの検討、議論を進めなくてはいけませんが、毎年、関連の会合も様々に行われ、若者たちも大いに意識を喚起されて、我々と議論をしております。
しかし、基本的には、若者の参画を求めて、将来を開いていくということについては、AUの方で大きく取り上げていただいております。
女性につきましては、政治面、及び政策の実施、そういったことについて、TICADでも取り上げてきたのは御承知のとおりかと思いますが、現実として、どのような課題、目標を設定していくか、といった我々の政策の実施、施策にあたり、時間が必要なものもいろいろあります。
したがって、アフリカ諸国では、そういったことが直ちに、迅速に実施されるということではないかと思います。
(ランフォドローム紙 ディビ編集長(コートジボワール))
コートジボワールの記者です。安倍総理に質問です。日本がアフリカにもたらすことができる、特別な、特質性というのは何でしょうか。
特にアメリカやEU、特に中国、先ほどお話が出ましたけれども、それに比べていかがでしょうか。
(安倍総理)
日本は、1993年のTICAD立ち上げ以降、一貫してアフリカのオーナーシップを尊重しつつ、人間中心の開発を支援してきました。
「国の力は、人にあり。」という考え方は、日本自らの発展モデルに基づいています。今やアフリカの人口はここ5年で14パーセント増え、人口の大宗である若者の活用が重要であります。
人口が増えていく、そして若者の人口が増えていくというのは日本にとっては大変羨ましい状況といってもいいと思います。先ほど申し上げました「国の力は、人にあり。」この考えに基づいて、2013年からABEイニシアティブを開始し、既に1,200人以上が日本の修士コースで研修するとともに、日本企業でインターンを経験されています。
政府のみならず日本企業も、現地での社内研修や教育を通じて、長期的な目線でアフリカの発展に貢献をしてきましたし、これからもしていきます。アフリカの若者が技術を身につけ、そして将来に夢を託せることがアフリカ発展の鍵でありました。G20大阪サミットの際にも、この考え方に基づいて、アフリカの首脳たちから評価を頂いたと思います。
また、保健や社会福祉の分野でも、日本はアフリカの自助努力を支える。TICAD VIで提唱したUHC in Africaに基づく日本の支援も貢献していると自負をしています。例えば、日本ブランドとなった、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は着実にアフリカ各国で推進されており、ケニアやセネガルでは、貧困層の健康保険加入や、加入が飛躍的に増加をしたと伺っています。
日本はこうした、アフリカの成長の基盤となる息の長い取組によって、アフリカの成長を支えていきたいと思っていますが、先ほど、エチオピアの記者の方が、エルシーシ大統領に女性に対する政策について質問をされましたが、私もエルシーシ大統領と、女性政策の重要性については、お話もしますし、認識が一致しているところでございます。
アフリカのみならず世界中で、女性が教育の機会を得られていないという現実があります。こうした状況を変えていかなければいけないと、こう考えています。これは、私も大統領も同じなんだろうなと思いますが、日本は、6月に我が国で開催したG20大阪サミットで、全ての女性に少なくとも12年間の教育の機会を確保する旨を、G20として確認しました。
その実践のために日本はこれからも、アフリカの国々の皆さんと協力をしながら、取組をリードしていきたい。我が国は2022年までの3年間で、世界中で少なくとも400万人の女性に教育の機会を提供する考えがございます。今後とも全ての女性が輝く社会を目指すという旗を高く掲げて、世界の中でリーダーシップを発揮をしていきたいと考えています。