令和元年沖縄全戦没者追悼式における内閣総理大臣挨拶
令和元年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
先の大戦において、ここ沖縄は、苛烈を極めた地上戦の場となりました。20万人もの尊い命が失われ、この地の誇る美しい自然、豊かな文化は、容赦なく破壊されました。全ての戦没者の無念、御遺族の方々の言葉に表し得ない悲しみ、沖縄が負った癒えることのない深い傷を思うとき、胸塞がる気持ちを禁じ得ません。
沖縄戦から74年。犠牲となった方々が送るはずであったそれぞれの未来に思いを致し、こうした尊い犠牲の上に、今日、私たちが享受する平和と繁栄がある。そのことを改めて深く噛(か)み締めながら、静かに頭(こうべ)を垂れたいと思います。
我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国家として、ひたすらに歩んでまいりました。戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この誓いは令和の時代においても決して変わることはありません。平和で、希望に満ち溢(あふ)れる新たな時代を創り上げていく。そのことに不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓いいたします。
沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、何としても変えていかなければなりません。政府として、基地負担の軽減に向けて、一つ一つ、確実に、結果を出していく決意であります。
昨年引き渡しがなされた西普天間住宅地区跡地は、嘉手納(かでな)以南の土地の返還計画に基づき実現した初の大規模跡地であり、基地の跡地が生まれ変わる成功例として、県民の皆様に実感していただけるよう、跡地利用の取組を加速します。
引き続き、「できることはすべて行う」、「目に見える形で実現する」との方針の下、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。
美しい自然に恵まれ、アジアの玄関口に位置する沖縄は、今日、その優位性と潜在力を存分にいかし、大きな発展を遂げています。出生率は日本一、沖縄に魅せられて訪れた観光客は昨年度約1000万人と、6年連続で過去最高を更新しました。沖縄が日本を牽引(けんいん)し、21世紀の「万国津梁(しんりょう)」として世界の架け橋となる。今、それが現実のものとなりつつあります。この流れを更に加速させるため、私が先頭に立って、沖縄の振興をしっかりと前に進めてまいります。
結びに、この地に眠る御霊の安らかならんこと、御遺族の方々の御平安を、心からお祈りし、私の挨拶といたします。
令和元年六月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三