安倍内閣総理大臣記者会見
【安倍総理冒頭発言】
冒頭、今般の台風24号により亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、被災された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。
この夏も自然災害が相次ぎ、全国で大きな被害が発生しました。新しい体制の下、政府・与党一丸となって復旧・復興を更に加速してまいります。子供たちを守るためのブロック塀の安全対策、熱中症対策としての全国の公立小学校、中学校へのエアコン設置も緊急に進めなければなりません。この後の初閣議で補正予算の編成を指示いたします。
集中豪雨や台風の多発、被害の甚大化など、近年の急激な気象変化を踏まえて、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を3年間集中で講じていく。新任の山本順三防災担当大臣には、早速、対策の取りまとめに着手してもらいます。石井国土交通大臣と力を合わせながら、これまで国土交通副大臣や政務官としてインフラ整備に携わってきた経験をフル活用し、強靱なふるさとづくりに全力で取り組んでいただきたいと考えています。
さて、歴史的な皇位の継承まであと半年余りとなりました。その直後には、トランプ大統領、プーチン大統領、習近平主席、各国の首脳をお迎えし、日本で初めてのG20サミットを開催します。その翌年には、オリンピック・パラリンピックが半世紀ぶりに東京にやってきます。正に、歴史の大きな転換点にあって、今こそ日本の明日(あす)を切り開くときである。先般の自民党総裁選において、私は、その先頭に立つことをお約束しました。平成のその先の時代に向かって新しい国づくりの力強いスタートを切る。そのために、本日、党役員人事・内閣改造を行いました。
この5年9カ月にわたる経済政策、外交政策など、政権運営の骨格はしっかりと安定感を持って継続していきたいと考えています。二階幹事長、岸田政調会長には、今後とも党に在って政権の土台をしっかりと支えていただく考えです。これまでも様々な形で安倍内閣の土台であった加藤さんに総務会長、甘利さんに選対委員長を務めていただきます。
政府においては、経済政策の中核である麻生財務大臣にデフレからの完全脱却を目指し、引き続き全力投球していただきます。
菅官房長官には、これからも政府の要としてリーダーシップを発揮してもらうと同時に、政権の最重要課題である沖縄の基地負担軽減、そして、拉致問題を担当してもらいます。歴史的な米朝首脳会談以降、北朝鮮情勢が大きく動く中、安倍内閣の総力を結集して、最も重要な課題である拉致問題の早期解決を成し遂げる決意であります。
河野外務大臣には、地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で、一層積極的な外交を展開してもらいます。
世耕経済産業大臣には、全国の中小・小規模事業者の皆さんの生産性向上に一層積極的に取り組むと同時に、ロシアとの経済外交を引き続きリードしていただきたいと考えています。
我が国が直面する最大の課題は、国難とも呼ぶべき少子高齢化です。これに真正面から立ち向かい、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めていく。今回、新たに全世代型社会保障改革担当大臣を設けました。茂木大臣には、早速、未来投資会議において、人生100年時代を見据え、生涯現役社会を実現するための雇用制度改革について検討を開始してもらいます。
その改革を実行していく厚生労働大臣は、かつて厚生政務次官も経験した根本大臣です。第2次内閣発足時に復興大臣として霞が関の縦割り打破に強いリーダーシップを発揮したその手腕で、この大改革を牽引(けんいん)してほしいと思います。
来年10月から幼児教育の無償化、再来年4月からは真に必要な子供たちの高等教育の無償化を実現する。安倍内閣は、未来を担う子供たち、子育て世代に大胆に投資してまいります。文部科学大臣は柴山さんにお願いしました。私が幹事長時代、自民党として初めて候補者の全国公募を行ったとき、選ばれたのが柴山さんです。真面目で熱血漢、弁護士として培った経験も生かして、全くしがらみのない、正に国民目線で教育行政の立て直しに当たってもらいたいと考えています。
今回は適材適所の考え方の下、これまでで最も多い12名の方が初入閣となりました。若手からは、山下法務大臣です。当選はまだ3回でありますが、検事出身で、これまで法務政務官を務めてきました。外国人材に係る新しい就労資格の創設など、課題山積の法務行政を若い行動力で前に進めてほしいと思います。
総務大臣は、和歌山県の海南市長も務めたことがあり、地方自治に精通しているベテランの石田さんにお願いしました。
オリンピック・パラリンピック担当大臣は、2020年の招致決定直後から文部科学副大臣として組織委員会の立ち上げなどに携わった櫻田さんです。
内閣府の政務官や経産副大臣、国会の厚生労働委員長や地方創生特別委員長など、幅広い経験を重ねられてきた渡辺大臣には、全省庁の司令塔である復興大臣としてその総合力を発揮し、東日本大震災からの復興、福島の再生を更に加速してほしいと思います。
環境大臣は、原田義昭さんです。旧通産省の出身で、通産省時代、公害行政を担当した経験もあり、党の外交部会長や衆議院の外務委員長を歴任した国際派です。そうした知見の上に、地球温暖化、海洋プラスチックごみなど、国際的な課題に当たってもらいます。
安倍内閣の政策の柱である一億総活躍の担当は、総理補佐官も務めていただいた宮腰大臣にお願いしました。政治経験も豊富で調整能力の高い方ですので、沖縄・北方対策、消費者政策、さらには行政改革、公務員制度改革などの重要課題を数多く御担当いただきます。
同じく内閣の最重要課題である地方創生の担当大臣は、片山さつきさんです。旧大蔵省出身で、政調会長代理も務めた政策通であるだけでなく、フットワークも軽く、超人的なガッツの持ち主でもあります。今回、女性の入閣は1人だけですが、2人分も3人分もある持ち前の存在感で、女性活躍の旗を高く掲げてもらいたいと思います。
今回は、それぞれの政策分野一筋で経験を積んできた、いわばその道のプロにもたくさん入閣いただきました。
岩屋防衛大臣は、防衛政務官のほか、国防部会長、安全保障調査会長を歴任した安全保障の専門家です。
IT担当大臣の平井さんも、党においてIT戦略特命委員長を長年務めてきた、この世界の第一人者です。
吉川農水大臣は、農業が盛んな北海道の出身、農水副大臣も経験した農政通です。同時に、これまで党にあって農協改革の取りまとめやTPP、欧州とのEPAの対応を進めてきた方であります。持ち前の改革マインドで農林水産新時代を切り開いてほしいと考えています。
自民党では、毎日様々な部会などにたくさんの議員が集まり、朝早くから活発な議論を交わしています。その中から様々な政策を磨き上げていく。マスコミにもほとんど取り上げられることのない地味な世界ではありますが、そうした中で経験を積み、専門性を高め、そして、政治家に求められる高い調整能力を兼ね備えた人材、単にアピールするだけではなく、政策を確実に実行できる人材、正にいぶし銀の人材が自民党にはたくさんいます。未来をしっかりと見据えながら、新しい国づくりを力強く進めていく。そのためには、新しい発想力を持った次の時代を担う皆さん、華やかな表舞台の裏で地道に能力の研さんに努めてきた皆さんに、できるだけ多くのチャンスをつくっていくべきである。そう考えました。
この内閣は、それぞれのポジションで腕を磨いてきた実務型の人材を結集しました。いわば、明日(あす)の時代を切り開くための全員野球内閣であります。しっかりとした政権の土台の上に、12人の初入閣の皆さんには、これまで培ってきた経験や知見を思う存分発揮していただきたい。共に平成のその先の時代に向かって、希望にあふれ、誇りある日本を築き上げていきたいと考えています。
新しい安倍内閣のチャレンジに国民の皆様の御理解と御支援を賜りますように、よろしくお願いを申し上げます。
私からは以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官代理)
それでは、皆様から質問を頂きます。
質問は、所属とお名前を明らかにした上でお願いをいたします。
まず、幹事社の質問から、どうぞ。
(記者)
日本経済新聞の島田です。幹事社として質問いたします。
内閣改造・党役員人事についてお伺いします。党役員人事では総務会長に加藤氏、選挙対策委員長に甘利氏を起用しました。いずれも政権発足時から総理を支えた側近、盟友という顔ぶれになっておりますが、起用した理由について教えてください。
あわせて、内閣の顔ぶれでは、総裁選で総理を支持した議員の方が中心で、石破氏を支援した議員からの起用というのは1人にとどまっております。再選に向けて挙党一致の体制が整ったと言えますでしょうか。併せて御見解をお伺いします。
(安倍総理)
先の総裁選挙におきまして、私は、平成のその先の時代に向けて、正に歴史的な転換点を迎える中にあって、新しい国づくりをスタートしていくと訴えてきたところであります。そして、その挑戦をお約束いたしました。そして、新しい国づくりにチャレンジするに当たって、しっかりとした土台の上に、できるだけ多くの方々に活躍するチャンスを持ってもらいたい、与えたいと、このようにお約束をしてまいりました。
今回は正に全員野球内閣として12人の方に初入閣をしていただき、存分にその培った能力を発揮していただきたいと考えておりますが、大前提は、政権のしっかりとした土台の上に、新たに入閣をしていただいた皆さんがその能力を発揮していただきたいと、こう考えていることであります。
中でも党の四役は、全員野球内閣が全力投球をするための土台中の土台と言ってもいいのだろうと思います。二階幹事長、岸田政調会長に引き続き支えていただくとともに、政府や党の要職を歴任し、政治経験が豊富な加藤総務会長、甘利選対委員長にも加わっていただいたところでありますが、甘利さんは安倍内閣発足時に経済財政政策を担当し、まさにアベノミクスをスタートする上において各省庁と連携をとりながら、党とも調整をし、大きな能力を発揮していただきました。また、TPPを合意に導く上において、アメリカとも相当タフな交渉をしていただいた、そうした実績、手腕、調整能力、これは党内でもほとんどの方々が高く評価をしておられるのではないかと思います。来年は、正に重要な参議院選挙もあります。その前には統一地方選挙もあります。それにふさわしい人材であろうと、こう思うわけでありますが、多くの方々に党内においても賛同していただけるのではないかと思います。
また、加藤総務会長は、いわば初めての党の要職ではありますが、内閣において長らく官房副長官を務めたのでありますが、同時に一億総活躍担当大臣、あるいは働き方改革を進めていく上においての厚労大臣、相当難しいチャレンジであったと思いますが、私は法律を成立させ、法律を成立させるというのは相当調整能力がなければできません。新しい改革ですから。そういう調整能力においては、これも正に多くの方々に彼の調整能力は評価していただけると、このように思います。そうした意味で、いわば党の土台として支えていただきたいと、こう思い、登用させていただいたわけであります。
今回の党役員人事においても、また内閣においても、正に適材適所でそれぞれ人材を適用させていただいた、登用させていただいたと、こう考えています。
また、山下法務大臣でありますが、先ほど申し上げましたように当選3回ではありますが、正に検事として経験を積んできた。法務行政にも明るいし、また法務大臣政務官としてもしっかりと経験を積んできた。この人が私はふさわしいのだろうと。いわば来年においては外国人材に係る新しい就労資格の創設など、法務行政が大きく展開をしようとしているときに、若くて高い能力を有する山下大臣は正に適材であると考えております。
この点においては、総裁選において誰に投票したかということは全く考える余地はなかったということは申し上げておきたいと思います。
安倍内閣にはこれまでも、山本農林水産大臣、あるいは齋藤農林水産大臣にも加わっていただきましたが、それぞれ適材、能力のある方に、日本のために汗を流していただいているわけであります。その上で、人事がどうであれ、来年の統一地方選挙、参議院選挙においては、党一丸となって必勝を期すべきだということは言うまでもないだろうということであります。
最も重要なことは、結果を出していくことであろうと思います。正に全員野球内閣で、国民のために結果を出していきたいと考えています。
(内閣広報官代理)
幹事社から、もう一問、お願いします。
(記者)
幹事社の時事通信の大塚です。
憲法改正についてお伺いします。安倍総理は先に憲法改正案の国会提出について、公明党と調整を行いたいと発言されましたが、公明党は事前の与党協議には否定的です。今後、どう調整を進めていく考えでしょうか。
また、自民党麻生派は、来年夏の参院選までに憲法改正の国民投票を行うよう求めています。国民投票について、参院選までの実施を目指すお考えでしょうか。
(安倍総理)
憲法改正については、自民党としては昨年の総選挙におきまして、自衛隊明記を含む4項目について国民の皆様にお示しをし、そして力強い支持を得ることができました。そして、党内においては今回の総裁選挙におきまして、私自身、次の国会に改正案を提出できるよう、党を挙げて取り組むべきであるということを申し上げて、勝利を得たところであります。結果が出た以上は、党においては、下村憲法改正推進本部長の下にさらに議論を深めて、作業を加速させていただきたいと、こう思っています。
与党である公明党の調整についても、やはりこれは当然丁寧に説明をしていかなければならないわけでありますが、公明党とは、正に風雪に耐えた連立政権を、いわば築いてきたわけでありまして、その信頼関係の中において、真摯にしっかりと議論していくことが大切だろうと思いますが、まずは具体的な条文をしっかりとお示しをしていかなければ、もちろん公明党の皆様との議論も、国民の皆様の御理解も深まらないのは当然のことであろうと思います。その意味におきましては、国会の第一党である自由民主党がリーダーシップをとって、具体的な、もう既にお示しを、党で大体イメージとしては十分お示しをしておりますが、次の国会での改正案提出を目指していくべきであろうと、こう考えております。
その後のスケジュールは国会次第でありまして、予断を持つことはできないと、こう思っています。3分の2で発議をして、国民投票で過半数というのは大変高いハードルでありますが、与党、野党にかかわらず、幅広い合意を得られるように努力をしていくべきだろうと考えております。
(内閣広報官代理)
これからは幹事社以外の皆様から質問を頂きますので、御希望の方は手を挙げていただけますでしょうか。私が指名いたしますので、所属とお名前を明らかにしてお願いをいたします。
後ろの女性。
(記者)
ロイターのシーグと申します。
総理は、女性が活躍する社会、ウーマノミクスを非常に大事な政策として挙げていますが、今回おっしゃるとおり内閣改造で女性閣僚は1人しかいません。その理由を教えてください。今の時代を考えますと、ちょっと少ないと思われませんでしょうか。
(安倍総理)
そういう意味においては、確かに各国と比べて内閣における閣僚の女性の比率は少ないということについては認めざるを得ないわけでありますが、まさに日本は女性活躍の社会がスタートしたばかりでありまして、これからどんどん入閣する人材が育ってくると、こう思います。
党においては、松島みどりさんに党七役の広報本部長を務めていただくことになったわけでございますし、参議院の会長は橋本聖子さんが務めておられます。今回、片山さつきさんに入閣をしていただき、1人ということになったのですが、2人分、3人分、発信力を持って仕事をしていただけると期待しております。
(内閣広報官代理)
挙手をお願いします。では、どうぞ。
(記者)
NHKの原と申します。
今回の人事で、総理は、拉致担当大臣を、これまで厚生労働担当大臣に担当させてこられましたけれども、菅官房長官に担当を変えられました。総理は日朝首脳会談にも意欲を示されていますが、菅官房長官に具体的にどのような役割を期待されているのか、お聞かせください。
また、今回、全世代型社会保障改革担当大臣に茂木経済再生担当大臣を兼務させることにされたわけですけれども、厚生労働大臣との役割分担というのはどのようにお考えでしょうか。その点もお聞かせいただけますでしょうか。
(安倍総理)
まず、この拉致問題担当大臣については、家族会の皆様との信頼関係ということも大変重要であると考えてきました。どの人材が担うべきかについては、どの人材が、ポストではなくてどの人材が担うべきかという観点から判断をしてきたところでありまして、拉致問題の解決に向けて最善の人材ということで、長年この問題に携わってきた例えば古屋さんとか山谷さんにお願いをしてきたところでございますが、この3年間は加藤大臣にお願いをしてきたところであります。
本年6月に歴史的な米朝首脳会談がありました。トランプ大統領から金正恩委員長に対して、私の考え方について伝えていただいたところでありまして、この北朝鮮問題が大きく動く中において、次は私自身が金正恩委員長と向き合いながら、拉致問題を解決しなければいけないと固く決意をしています。
そうした新たな局面を迎える中において、官房長官を政府の要として強いリーダーシップを発揮してもらっているところでありますが、その手腕を生かして政府・与党を貫くオールジャパンの体制を強化し、あらゆるチャンスを逃さないという決意において、また、家族会の皆様ともしっかりとよく意思疎通をしながら、皆様の気持ちに寄り添いながらその責任をしっかりと果たしていってもらいたいと思いますし、一緒に官房長官とともに拉致問題の一日も早い解決に全力を尽くしていく考えであります。
また、新たな国づくりを進めるに当たって、最大の課題は、国難とも呼ぶべき少子高齢化問題でありまして、これに真正面から立ち向かい、全ての世代が安心できる社会保障を3年かけて改革を行っていきます。これは安倍内閣においては今後の最大のチャレンジと言ってもいいと思います。そのため、今回の組閣に当たっては新たに全世代型社会保障改革担当大臣を設け、茂木大臣を任命いたしました。
これまでも働き方改革、人づくり革命など、内閣の最重要課題は私が任命した担当大臣の下、関係省庁とは当然緊密に連携しながら、経済社会に及ぶ幅広い視野と省庁横断的な視座で具体案を取りまとめてもらってきました。全世代型の社会保障改革、全世代型社会保障への改革に当たっても、茂木大臣には早速、未来投資会議においてその検討を開始してもらいますが、当然、根本厚生労働大臣とは緊密に連携をしてもらわなければならないと考えております。根本大臣にも、茂木大臣と協力しながら、この大きな改革、牽引力を発揮してもらいたいと、こう思っています。つまり社会保障、全世代型の社会保障への改革というのは各省庁にまたがっていくものでもあります。ですから、担当大臣を置き、しかし、その中でかなり中核的な役割を担う厚生労働大臣とは連携しながら成果を出してもらいたいと、こう考えています。
(内閣広報官代理)
予定をしておりました時間を経過いたしましたので、以上をもちまして、安倍内閣総理大臣によります記者会見を終わらせていただきます。
皆様の御協力に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(安倍総理)
どうもありがとうございました。