内外情勢調査会全国懇談会 安倍総理講演
皆様、こんにちは。安倍晋三でございます。内外情勢調査会での講演回数においては私はお話をしようと思っていたんですが、そのネタを既に話をしていただいてしまったんですが、昨年、実は史上初の5回目という話を頂いたわけでありますが、もう5回ということでもう十分だろうという方もいらっしゃるかもしれませんが、今回また更に新記録をつくらさせていただいたところでございます。この連続5回、通算7回。親子三代。三冠王ですね。この前、羽生さんも含めて七冠に対して国民栄誉賞が贈られたんでありますが、内外情勢調査会栄誉賞でも国民栄誉賞に並ぶものを頂けるのではないのかなと期待しています。
昨年、お話したときには、まさか今年、解散総選挙に打って出ることになるとは思っておりませんでした。議席をかなり失うのではないかと予測する人もいましたが、北朝鮮の脅威、日本が抱える最大の壁、少子高齢化。この国難に挑戦するため、あえて総選挙に挑んだわけであります。
そういうことで、私の今年の漢字1字は「挑む」、挑戦の「挑」であります。先週そのように申し上げましたら、偶然にも翌日新聞を見ると、将棋の羽生善治さんも、今年の漢字は私と同じ「挑」でありました。
永世七冠、正に歴史的な偉業であります。囲碁で2度目の七冠を達成した井山裕太さんとともに、国民栄誉賞を検討することといたしました。
お二人ともそうですが、やはり挑戦なくして成果は得られない。国の未来を切り拓くことができるのは看板やスローガンではありません。政策であります。
過去自民党が選挙に負けたのも、看板が悪かったわけではありません。国民の皆様の厳しい声を糧に政策を鍛え、政策で政権交代を私たちは果たしました。この話、実は大阪ではこう申し上げました。阪神が負けたときどうしたでしょうか。名前を変えたわけではありませんよね。練習したんですよね。と言いますと、大変盛り上がりました。
その選挙では、安定的な政治基盤の上に力強く政策を前に進めよ。国民の皆様から連立与党で衆議院の3分の2を超える力強い信任を頂きました。
選挙で勝ったのは野党が分裂したからだとよく言われましたが、過去3度の総選挙で、小選挙区、比例区の双方で最も高い得票数を今回の総選挙では私たちは頂くことができました。ただただ身の引き締まる思いであります。その責任の重さを深く胸に刻んで、これからも謙虚に、選挙でお約束した政策を一つ一つ実行に移し、そして結果を出してまいります。
選挙後、APEC、東アジアサミットで、各国のリーダーとお会いしたときも、今回の選挙のことが話題になりました。世界から見れば、国内での報道ぶりは余り見えないからかもしれませんが、よく選挙に打って出たねという話や野党第一党との議席の差も話題となりました。やっぱりどうしてもお互いに選挙を経てリーダーになっていますから、お互いが選挙でどのように勝ったか、どういう戦略で選挙をやったのかということがお互いに大変これは最も興味のある話題でありますから、首脳同士ではよくそういう話になるんです。
バイ会談のオファーもたくさん頂きまして、14か国ということで日程調整に事務方も音を上げていました。海外のリーダーから見れば、選挙に勝つということは発言や約束に実行力が伴うということでありますから、国民の皆様の信任の大きさが外交での大きな力になることを身をもって感じることになりました。
先般の総選挙における大勝をお祝いする。これにより我々の計画を全て実現できることを期待する。
プーチン大統領からはこのような祝意を頂きました。昨年この場でプーチン大統領を私の地元長門にお迎えしたときの外交談義をたっぷりとお話させていただきましたが、長門合意はこの1年で大きく前進しました。
北方四島の共同経済活動について現地調査を行い、5分野のプロジェクトを来春に向け具体化できるよう、検討を加速化しています。法的、人の移動の枠組みを検討するため、来年、次官級の協議を行うことで合意しました。元島民の皆さんの航空機による墓参は9月に初めて実現しましたが、来年も継続していくことで一致しました。長門合意を着実に前進させる。そして四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結していくために、一歩一歩着実に前進してまいります。
緊迫する北朝鮮への対応についても、9月にウラジオストクでプーチン大統領と直接お会いして国連の場で協力することで一致し、その後の日露協議を踏まえ、ロシアも正式に厳しい制裁を課す新たな安保理決議に賛成してくれることになりました。
北朝鮮情勢が重要な局面を迎える中、中国の果たすべき役割は非常に大きなものがあります。習近平国家主席、李克強総理との会談では、大変友好的な雰囲気かつ寛(くつろ)いだ雰囲気の中で、率直な意見交換ができました。習主席の言葉をお借りすれば、日中関係の新たなスタートとなる会談になりました。全く私も同感であります。会談では、北朝鮮問題についても、全ての国連加盟国がこの決議を厳格に履行していくべきことで一致しました。そして、第三国において日中が協力してビジネスを展開していくことを私から提案し、認識を一致することができました。日中韓サミットを早期に開催し、李克強総理を日本にお迎えする、そして、次は私が中国を訪問する。その後に、習主席に日本を訪問していただきたい。
来年は日中平和友好条約40周年に当たる節目です。経済、文化、観光。あらゆるレベルで協力を強化し、ハイレベルの往来など交流を深めていくことで日中関係を新たな段階へと引き上げていきたいと考えています。
今回、ロシア、中国が賛成する中で、国連安保理の厳格な制裁措置を全会一致で決議しましたが、その背景には、私がロシアに働き掛け、トランプ大統領が中国へ働き掛けを行うといった、日米の緊密な連携がありました。
今年、オバマ大統領からトランプ大統領に交代し、トランプ大統領には、世界のリーダーの中で最も早く会うことができ、かなり早い段階で率直な話ができる関係を構築しました。
大統領との関係は、やはりゴルフ抜きには語れないものがあります。2月にフロリダでくたくたになるまでゴルフをして、個人的な関係がぐっと親密なものになりました。通常ですと、アメリカ大統領との会談にかけられる時間は、せいぜい1時間かそこらです。しかし、ゴルフの場合は、長時間ないし半日、松山選手のプレーに感嘆したり青木選手の話をしながらも、経済、安全保障、地域情勢など、こういうときにしか話せない世界の様々な事情について、じっくりと話すことができました。
私の祖父の岸信介も1950年代の後半にワシントンを訪問し、アイゼンハワー大統領と、日本の首相とアメリカの大統領としては初めてバーニングツリーというところでゴルフを行いました。私の祖父は余りゴルフはそれほど得意ではなかったのでありますが、ティーグラウンドに立ちますと、周りをアメリカのたくさんのマスコミが囲んでいました。そして日本から来た、敗戦からまだ12年くらいしかたっていません。日本からやってきた総理大臣のショットに注目が集まっていた。祖父がティーグラウンドでクラブを構えると、くすっという笑い声が聞こえたんですね。ちょっと振り返ると、皆にやにやしながらアメリカのプレスが見ている。日本からやって来た首相に果たしてゴルフなんかできるのかという雰囲気が漂っていたそうであります。で、祖父はなにくそと思うと同時に、この最初のショットに日本の名誉が懸かっていると思ったそうであります。そう思うとどんどん肩に力が入って、人生で最も緊張したショットを放ったそうでありますが、そのショットの行方は人生で最もすばらしいショットだそうであります。これが私の祖父の自慢話でありました。
果たしてフロリダでは私も、私のショットは人生でベスト5には入っていた。残念ながら見ていた人がアメリカ人しか見ていなかったので、これだったら日本のマスコミにも公開すればよかったのかな、こう思ったのでありますが、今回の日本でのゴルフは、私はホストでありますから、ホストはいろいろ気を遣うものであります。そうした結果、残念ながら第1ホールはちょっと残念な結果になりました。
今回の、世界中から注目を集めたゴルフ外交。印象的だったのは松山選手の華麗なる弾丸ショットの数々でありました。そしてもう一つ印象的だったのは、世界に配信された、私がバンカーの中で転倒する映像だったのではないでしょうか。まさか上空から撮影されているとは思いませんでした。バンカーショットの後は、本当はたとえ遠回りしてでも、後ろ側のもっと浅いところから出るのが一応のマナーでありまして、私もそのマナーは心得ていたのですが、あの時点ではトランプ大統領と2打差のビハインドだったものでありますから、少々焦って高いところから出てしまった。しかしあのとき私は後ろに回転しながらもその後すくっと立って、何もなかったようにプレーを続けたということは申し添えておきたいと思います。
トランプ大統領からは、安倍さんはゴルフプレーヤーとしてもすばらしいけどどの体操選手よりもすばらしかったと褒めていただきました。外交で最も重要なことは、やはり柔軟性なんです、皆さん。
ゴルフを一緒にプレーすると人柄もよく分かります。トランプ大統領はかなりフレンドリーな方で、気さくに周りの人にも声を掛ける。トランプ大統領は、考えていることを率直に非常にざっくばらんに私に話されます。私の説明もずっと最後まで熱心に耳を傾けておられる。大変私は信頼できると考えています。半世紀を超える日米同盟の歴史において、首脳同士がここまで濃密で深い絆で結ばれたことはないと、私は自負しております。
トランプ大統領との間で日米が北朝鮮問題に関し100パーセント共にあること、日本の防衛に対する米国のコミットメントが揺るぎないことを改めて確認しました。
いざというときのために日米同盟がある。同盟といえども人間と人間の関係と同じです。反対もありましたが、平和安全法制がなければこの緊迫する北朝鮮情勢にしっかり対応できたかというと、そうはならなかったでしょう。
日本を守るために、日米はお互いに助け合うことができるようになった。助け合うことのできる同盟は、間違いなくその絆を強くします。これは人間と人間の関係においてもこれは当たり前のことであります。国と国との関係においてもそれはそうであります。お互いに民主国家、お互いの国民から支持されなければ同盟はその力を発揮しません。信頼関係、お互いの強い絆がなければ同盟はただの紙切れになってしまう。その同盟を紙切れではなくて国を守るためにしっかりと機能するためには、やはりお互いの信頼関係と絆が必要であります。そして、相手に出した情報が守られる。こうした中にあって、現下の北朝鮮の脅威に対し、史上初の空母3隻との大規模な共同訓練を行い、自衛隊が初めて米艦防護の任務に就きました。
専守防衛は当然の大前提としながら、北朝鮮の核・ミサイル技術の進展など我が国を取り巻く厳しい現実に真正面から向き合い、従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたいと思います。強固な日米同盟の下、高度の警戒態勢を維持し、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜いてまいります。
国連安保理決議から3か月がたちます。石油関連製品の輸入が3割もカットされたら国民経済は成り立ちません。制裁の効果は間違いなく生じているはずです。
北朝鮮は今まで様々な挑発行動をとってきていますが、余り圧力を高めると暴発するのではないかという議論があります。しかし、そう思わせることこそが北朝鮮にとって最大の交渉力になります。我々は情報をしっかり分析し、冷静に対応していく必要があります。そして、重要なことは北朝鮮の脅かしに屈しないことです。
今月、我が国は安保理の議長国として、先週、北朝鮮問題に関する閣僚会合を開催しました。今後とも、国際社会の取組を主導していく考えであります。北朝鮮の方から対話を求めてくるまで国際社会が連携して圧力をかけ続ける。北朝鮮の核・ミサイルの問題、そして最重要課題である拉致問題の解決を目指します。
特別国会でも、会期中のミサイル発射の強行を受け、北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議する決議がなされるなど、緊張感の下で質疑が行われました。
今回の特別国会では、質問時間の与野党の配分を巡って様々な議論がありましたし、一部のメディアには与党の質問時間が増えてもヨイショ質問しかしないという批判もありました。
今となっては連日ニュースに取り上げられることとなりましたが、北朝鮮からの木造船の漂着について、生物テロや工作員の可能性を含め様々な角度から質疑を行ったのは、予算委員会においては与党の青山繁晴議員でした。
私の立場上、国会のことは国会でお決めいただくということではありますが、いずれにしても、与党、野党がそれぞれの持ち味をいかしながら質疑を行うことでより多面的な政策論議がなされ、議論が深みを増していくということではないかと思います。
今回は、野党の中でも政策をしっかり議論する議員もおられました。私の演説は大抵、やじで聞こえないことが多いのですが、所信表明では政策を議論しましょうと呼び掛けました。これからも建設的な議論を呼び掛けていきたいと思います。
先日、障害のある作家や現代アーティストが出展する展覧会に足を運びました。落ち葉から個性豊かな動物が誕生することに驚きました。私に説明をしてくれた作家、竜之介さんの絵は不思議と10代でありながらも懐かしい気持ちにさせてくれる。作家、香取慎吾さんの作品は、元気が出る、それでいて深い温かさも感じさせてくれました。
私の故郷の詩人、金子みすゞの詩にこんな言葉があります。
みんなちがって、みんないい。
若者から高齢者まで、子育て中の皆さん、家族の介護をしている方々、障害や難病のある方も、一人一人のライフスタイルが尊重され、生きがいを感じ、誰もが能力を思う存分発揮できる一億総活躍社会をつくれば、少子高齢化でも日本は成長できる。そのために、来年、労働制度を70年ぶりに抜本的に改正する法案を提出したいと思っています。
かつて私が30代の頃、24時間戦えますかというCMがはやりましたが、このキャッチフレーズは時代とともに変遷を遂げ、最近は、24時間戦うのはしんどいに変わったそうであります。労働基準法を改正し、長時間労働を禁止します。法が成立すればキャッチフレーズも24時間も戦ってはいけませんに変わるかもしれません。商工会議所の三村さんもうなずいていただきたいと思います。
同一労働同一賃金を実現し、雇用形態でなく労働そのもので待遇が決まるようにする。正規、非正規という言葉をなくしてまいります。また、専門性が高い仕事では勤務時間ではなく成果で評価されることもできるようになります。
こうした働き方改革が実現すれば、新卒で会社に入り定年で現役引退して老後の暮らしを送る。こういった単線型の人生を全員が一斉に送るのではなく、一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択を行うことができます。
年を取っても働くの?
そんな声が聞こえてきそうでありますが、今年のベストセラー、佐藤愛子さんの「90歳。何がめでたい」。年を取って身体にがたが来ることへのいら立ちから、笑いあり涙ありの美しい感動的なエッセーでありました。佐藤さんは現在94歳。88歳まで長編小説を書きあげ、のんびりしようと思ったら老人性うつになってしまった。しかしこのエッセーを書くうちに生活に張りが出てうつ病ではなくなった、のんびりしようなんて考えては駄目だということが90歳を過ぎて分かった、ということだそうであります。
私も執筆活動をやってみるのもありかもしれない。これは引退後の話でございます。実はあのときはこういうことだったんだということを思い切り書いてみたいなと、ときに思ったりします。
生涯現役というのは、人生100年時代の一つのスタンダードとなるのではないかと思います。そういった時代の中で、年を重ねても存分に能力を発揮してもらうには学び直しが必要となります。
ゲームアプリ開発者の若宮正子さん。現在82歳でおられますが、高校卒業後、銀行に就職し定年退職。その後80歳を過ぎてからプログラミングを学び始め、シニア向けのiPhoneアプリを開発、ダウンロード数は5万件を突破。Appleのイベントでシークレットゲストとして登場し、世界の脚光を浴びました。若宮さん、今は、このアプリの多言語化を目指して勉強中とのことですが、きっぱりと、人生100年時代には学齢期に受けた教育では不十分、そう言われています。
いくつになっても、誰にでも、学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。
来年の夏に向けて、雇用保険制度も活用しながらリカレント教育の大胆な拡充策について検討いたします。
誰にでもチャンスあふれる社会をつくり、少子高齢化を克服する。
2020年に向かって経済界にも御負担いただき、2兆円の財源規模で子供たちの未来に予算を振り向け、社会保障制度を全世代型へと大きく転換していきます。これだけの財源規模での恒久的な政策は、選挙で国民に信を問わなければ、とてもできるものではありません。国民の信任を得たからこそ大きな改革に踏み出すことができる。
今回の選挙では、高校生や若者たち、子育て世代の方々が街頭で足を止め、熱心に演説を聴いてくれたことが大変印象的でありました。20代、30代の若い世代の方は、子供の将来の教育費や幼稚園・保育園の費用がかかるということで、もっと子供が欲しいと思っても躊躇(ちゅうちょ)している。2020年の4月から、3歳児から5歳児の子供たちの幼児教育を無償化します。
当然ながら、待機児童の解消は最優先課題です。一刻も早く解消されるよう、今年度の補正予算も活用して子育て安心プランを前倒しし、そして2020年度までに32万人分の保育の受皿を整備していく。そのための予算を確保いたしました。
高等教育についても、最終学歴で収入に差があることは厳然たる事実であります。高校卒業と大学・大学院卒業では、生涯賃金に7500万円もの差があります。しかも、大学進学率は年収400万円以下の世帯では28%、年収1050万円の世帯では63%。貧しい家庭の子供たちほど大学への進学率が低いという事実があります。
貧困の連鎖を断ち切り格差の固定化を防ぐ。どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば、高専にも専修学校にも大学にも行くことができる。真に必要な子供たちに高等教育を無償化していきます。
人づくり革命で一人一人の能力を高め、生産性革命で2020年を目指して、正に革命的に生産性を押し上げる。賃上げの勢いを確実なものとし、持続的な経済成長につなげていきます。
IoT、人工知能、自動走行やロボット、ドローンの頭脳となり、移動、運輸、介護、医療といった様々な分野の生産性を飛躍的に向上させます。そして、フィンテックのような、これまでにない新たな産業も生み出します。
例えば農業。無人のトラクター4台が互いに通信しあって隊列を組みながら夜も畑を耕し続ける。日本のGPSにつながれば更に精度が増すそうであります。
まずはやってみる。事前の規制を取り払い、実証を重ね、あらゆるデータを収集・蓄積し、より賢い人工知能をつくることもできます。規制の制約を気にせず、大胆に発想し、新しい産業のビジネスモデルを描くこともできるようになるでしょう。こういったことを可能とする規制のサンドボックスをつくり、Society 5.0の実現に向けたイノベーションを後押しします。
生産性を大きく押し上げる大胆な投資を後押しします。2020年までを生産性革命の集中投資期間と位置づけ、賃上げや設備投資に意欲的な企業に対しては、法人税の実質的な税負担を25%にまで軽減いたします。さらに、賃上げを行いつつ革新的な技術で生産性の向上に挑戦する企業に対しては、思い切って20%にまで軽減します。コーポレートガバナンスコードも見直し、内部留保の使い道について、投資家への説明を求め、賃上げや投資に消極的な企業には、果断な経営判断を求めます。
とりわけ中小・小規模事業者の方々は深刻な人手不足に直面しており、生産性の向上は喫緊の課題だろうと思います。このピンチをチャンスに変えて、生産性革命によって中小・小規模事業者の生産性を一気に押し上げたいと考えています。
宮城県で金型をつくっているある中小企業は、ロボットを導入したところ、必要な人員が2人から1人に、生産性は2倍以上上がった。そのおかげで熟練技能者は、後継者の育成に集中してもらうことができたそうです。
しかし、設備投資は中小・小規模事業者にとっては相当ハードルが高い。結果として古い設備を使い続ける状態が続く。集中投資期間中、自治体の自主性に配慮しつつ、思い切ってゼロとなる制度を初めてつくりました。さらに、ものづくり補助金や持続化補助金など予算でも集中的に支援し、中小・小規模事業者の生産性向上に向けた設備投資を力強く後押ししてまいります。先ほどのゼロとなるのは、固定資産税がゼロとなっていくということであります。
生産性を上げる投資に並んで、中小・小規模事業者の方々は、経営課題として後継者不足を挙げる方が多い。今後10年で70歳を超える中小・小規模事業者の経営者は245万人。うち半数は後継者が未定であるという調査もあります。実は今、廃業する企業の半数は黒字企業。しかも生産性が高いんです。このまま何もしなければ、オンリーワンの貴重な技術、ノウハウが失われてしまう。今後10年程度を集中期間として、事業承継税制を抜本的に拡充し、相続税を全額猶予するというこれまでにない大胆な措置を講じることとしました。
後継者不足は、特に地方において深刻です。地方経済の担い手が中小・小規模事業者ですから、地方の雇用の場を守るためにも、今しっかりやらなければならない。そう思うわけであります。
2020年までの3年間、生産性革命と人づくり革命により、人材、設備への投資を大胆に促し、日本経済の生産性を飛躍的に向上させます。オリンピック・パラリンピックが開催される2020年、日本が大きく生まれ変わる年にするきっかけとしたい。
新しい時代の幕開けに向けた機運が高まる時期であるからこそ、憲法について議論を深め、国のかたち、在り方を大いに論じるべきだと思っています。
こうお話しすると、2020年までに憲法を改正するのかとか、中身よりも改正したいだけではないかという声を頂きます。今年5月の私の発言は、それまで停滞していた憲法の議論を後押しするために一石を投じたものです。ただ、その石が余りにも大きすぎてその後が大変でしたが、私の発言によって、党内の議論が格段に活性化したのは間違いない事実だと思っています。もとよりスケジュールありきではありません。憲法を改正するかどうか、する場合にどこを改正するのかは、国民投票で国民の皆様が決められます。与党、野党の別を問わず、それぞれの党がそれぞれの意見、具体的な案を持ち寄って、憲法審査会の静かな環境の下で議論を深めていただければと思っています。
繰り返しになりますが、憲法の場合は、最後に決まるのは国民投票によって決まる。正に国民の皆さんが決めるのが憲法であります。一般の法律については衆議院と参議院で過半数を得ればそこで終結をしますが、国会は、発議をするのが国会の役目。決めるのは国民の皆さんだろうと。そのために大いに議論を深めていく必要があると思っています。
地方活性化の鍵はSNSにあります。私の地元の元乃隅稲成神社(もとのすみいなりじんじゃ)がCNNに紹介されてから、どっと外国人観光客が増えたのでありますが、そこからSNS映えするということで近くの青海島(おおみじま)も撮影のスポットとなっているそうであります。
SNS映えするということはインスタ映えするとも言われているんですが、InstagramとかFacebookに投稿した写真が、多くの方々から称賛される、いいねを押されるということをもって、SNS映えする、インスタ映えすると、こう言われているようであります。この言葉に反応する人は若い方々、何言ってるんだという人はちょっとそういう世界とは別の方だと思いますが、私もこの言葉は最近知ったわけでありますから、余り偉そうなことは言えないんですが。
自然の景色だけではありません。旅行ニーズが爆買いといった買物中心の旅から、その場所でしか経験できない体験型に変わりつつあります。これは皆さん、地方にとって大きなチャンスなんです。先ほど私が申し上げました元乃隅稲成神社というのは、私の地元長門市の油谷町という場所にあるんですが、ここはずっと海に向かって、赤い鳥居がずっと続いているんです。確かにすばらしい景色なんですが、地元の人もそんなに気にしない場所でありまして、1年間に数千人しか訪れる人がいなかったんですが、今は40~50万人。CNNで紹介され、たくさんの人がInstagramで撮って紹介し、今、人口2万人の町に40~50万人が1年間に訪れるという場所に一変したわけでありますから、どんな地方にもそういう宝は眠っていますから、それを世界に発信することでその地域が、がんと変わっていくんだろうと、私は期待しています。
今年のうれしいニュースに、カズオ・イシグロさんのノーベル賞受賞がありました。イシグロさんの故郷長崎では、いちご、メロン、すいかといったフルーツの形をしたバス停がSNSで人気を集めています。今から25年以上前、長崎旅博覧会をきっかけに、訪れる人を和ませるために、シンデレラのかぼちゃの馬車をヒントに町が整備したものであります。フルーツ狩りならぬ、バス停狩り。若い女性を中心にドライブやピクニックに観光客が増えているそうであります。
SNS映えする街道風景を増やしていきたいと思います。
来年6月から民泊制度がスタートします。徳島県三好市、祖谷(いや)渓谷。高齢者が半分を占める山間の集落に古民家での滞在を求めて世界中から人々がやってきます。急峻(きゅうしゅん)な斜面に佇(たたず)む集落は日本のマチュピチュとして、FacebookやInstagramで世界の人々が知るところになりました。
英語で挨拶したい。
地域の食材を使った料理のケータリングや散策ツアー。地域のお年寄りが主役となり英語を学び始めました。廃村寸前の村が息を吹き返しています。
村のプロデュースを仕掛けたのは、アレックス・カーさんです。
僕がいなくてもできるようになるために共同作業がいいと思っています。全国に広げていきたいですね。
地元の住民や大工さんを巻き込んで、古民家を軸とした村の再生の取り組みを広げています。
学習型の旅というのもあるそうです。今年話題となったチバニアン。地質年代の名称として採用されるかどうかは来年決まるそうですが、早くも親子連れなど観光客でにぎわっています。この地層はまだ文化財の指定などを受けていないそうでありますが、天然記念物や、遺跡、神社といった文化財は、これまで後世に保存していくことが使命だった。もっと身近にその魅力を感じてもらう。文化財保護法の改正案を次期通常国会に提出し、文化財を観光やまちづくりに活用できるようにします。
お寺でミュージカル、竪穴式住居でお茶会、遺跡のパワースポットでヨガ。アイデア次第で地域の文化や歴史が世界から観光客を集めるキラーコンテンツに生まれ変わります。
地方の特色ある伝統・文化だけでなく、農林水産物にも世界で勝負する転機が訪れます。5年にわたる粘り強い交渉の結果、日本とEUの経済連携協定が先々週妥結しました。本当に良かったと思います。世界のGDPの3割を占める巨大な経済圏、アベノミクスの新たなエンジンが動き出しました。
日本のお家芸の自動車、家電だけではありません。アメリカで人気の日本酒、和牛。今やブリの輸出の8割超は北米であります。ヨーロッパでも人気が出ないはずがない。チーズの本場フランスでも、国際コンクールで最高金賞に輝いたのは千葉の牧場で作られたブルーチーズでした。
現状維持は衰退である。常に進化していきたい。
農家で育った高橋憲二さんは、これまで経験のなかった酪農にチャレンジして30年間の努力を実らせました。
世界への挑戦は、手間暇掛けてこしらえた質の高い日本の農林水産物にとって大きなチャンスです。地方から世界を目指す。アベノミクスは来年も地方が主役です。地方で頑張る皆さんを全力で応援してまいります。
日本を取り戻す。
この強い思いで政権に就いてあと1週間で丸5年を迎えます。毎日全力投球、一つ一つ積み重ねてまいりました。
1997年の536兆円をピークにずっと下がってきたGDPも、今年は549兆円と過去最高水準になりました。雇用は185万人増え、正社員の有効求人倍率が初めて1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず一つ以上の正社員の仕事がある。そして、この春高校や大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高水準となっています。
中小企業の倒産も、政権交代前に比べ3割減りました。今世紀で最も高い賃上げが4年連続で実現し、もはやデフレではないという状況まできました。この成長軌道の下で、賃上げの勢いを全国津々浦々にまで広げ、デフレ脱却を確実なものとする。少子高齢化であっても、日本の経済を成長させてまいります。
Buy my Abenomics.
かつてニューヨークでこのように申し上げたとき、聴衆の方々は、お手並み拝見という印象だったことを思い出します。しかし、今年のニューヨークではある投資家から、この4年半ほどスピード感のある改革が進んだことは日本ではなかった、更にスピード感を持って改革を進めてもらいたいという声を頂きました。
最も日本は遅れていると言われていた創薬・医療の分野で治験の大改革によって、今やアメリカの企業が日本でオフィスを開くようになり、世界のトップランナーになっています。
やれば、できる。
総選挙で頂いた国民の皆様からの信任を大きな力に、政策をひたすらに実行する。そして結果を出していく。来年も全力で邁進(まいしん)してまいります。
御清聴ありがとうございました。