APEC首脳会議及びASEAN関連首脳会議出席等についての内外記者会見
【安倍総理冒頭発言】
ドゥテルテ大統領、そしてフィリピンの皆さんの心温まる歓迎に、心から感謝申し上げたいと思います。10か月ぶりにやってまいりましたが、その度に変貌を遂げ、この地域のダイナミズムを実感します。
2日前まで滞在していたベトナムもまた、目覚ましい発展を遂げています。APEC(アジア太平洋経済協力)が開催されていたダナン、そしてホイアンの方々の熱い歓迎にも、この場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。
ASEAN(東南アジア諸国連合)は、発足から半世紀。これまで、多様性を尊重しながら、自由な気風の下で世界の成長センターとして、目覚ましい発展を遂げてきました。
これまで、たゆまぬ結束と連帯、発展のための努力を続けてきたASEANの国々、人々に敬意を表したいと思います。日本も、ASEANと共に歩み、共に進んできました。
そして、次の50年を見据え、この成長を持続的かつ包摂的なものとしていく。価値を共有し法の支配を進化させる。世界の平和と繁栄のためのASEANの役割は、ますます大きくなっていくことでしょう。
古来この地域の人々は、広く自由な海を舞台に豊かさと繁栄を享受してきました。航行の自由、法の支配はその礎であります。
太平洋からインド洋に至るこの地域を誰にでも自由で開かれたものにしていく。今回の東アジアサミットでも、その考え方を全ての国々と共有することができました。
この地域の平和と安定に向け、日本と中国が協力を深化させていく必要があります。今回、習近平国家主席、そして、李克強総理とも会談を行いました。日中関係の新たなスタート。習近平主席のこの言葉には、私も同じ思いであります。
経済、文化、観光。あらゆるレベルで協力を強化し、来年の日中平和友好条約締結40周年という節目に、ハイレベルの往来など交流を深めることで日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります。
ロシアとの協力も欠かせません。プーチン大統領とは、北方四島での元島民の皆さんによる墓参や共同経済活動など、長門合意を具体的に前進させていくことで一致しました。
四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結する。その大きな目標に向かってプーチン大統領との信頼関係の上に一歩一歩進めてまいります。
こうした中でこのAPECの期間中、11か国によるTPPが閣僚レベルで大筋合意に達したことは大きな前進であります。
この数年間、基本的な価値を共有する国々と、高い志を持って真剣な交渉を重ねてきました。その成果を無駄にすることなく、公正なルールに基づく自由貿易体制、正に21世紀型の世界の経済秩序づくりに大きな一歩を踏み出しました。
日本と共に共同議長を務めてくださったベトナムを始め、各国の合意に向けた努力に心から感謝いたします。早期の署名・発効に向けて、引き続きリーダーシップを発揮してまいります。
先般、欧州との経済連携協定も大筋合意に達しました。日本はあらゆる手を尽くして、質の高い公正なルールに基づく自由貿易経済圏を世界に広げていく決意であります。
一連の会議を通じて、最大の懸案は北朝鮮の問題でした。東アジアサミットでは、各国のリーダーたちとこれまでにない危機感を共有しました。
国際社会が一体となって国連安保理決議を完全に履行し、圧力を最大限まで高めていく。北朝鮮の側から、政策を変えるから対話してほしいと言って対話を求めてくる状況をつくらなければなりません。
北朝鮮による核・ミサイルの問題、そして拉致問題を解決する。国際社会の連帯を更に強固なものとするために、我が国はこれからも全力を挙げてまいります。
先日のトランプ大統領の訪日、今回のAPEC、東アジアサミット。この期間を通じて日本の立場を国際社会と共有し、各国との連携を更に深めることができたと考えています。
第四次安倍内閣においても、これまで以上に積極的に地球儀を俯瞰(ふかん)する外交を展開してまいります。
明日、帰国いたします。その後、直ちに特別国会で所信表明演説に臨みます。北朝鮮問題、少子高齢化。正に国難とも呼ぶべき課題に真正面から立ち向かい、内政に、外交に、全力で取り組んでいく。その決意であります。
私からは、以上です。
【質疑応答】
(NHK 原記者)
経済分野について伺います。総理は先ほど、TPPについて触れられましたが、TPPの早期発効とは具体的にはいつ頃を目指しているのでしょうか。通常国会での承認も求めていくお考えでしょうか。
それから、中国との関係についても伺います。習近平主席との間では、一帯一路を含め地域や世界の安定に貢献する方策を議論していくことで一致したとのことですが、一帯一路に日本としてはどのように関わっていくお考えでしょうか。また、第三国で日中が協力して進めるビジネスとは、具体的にどういったものをイメージしているのでしょうか。
(安倍総理)
TPP11については、ベトナムのダナンにおいて、我が国が主導してTPP閣僚会合において大筋合意を達成できたことは大きな前進であると思います。正に、21世紀型の世界の経済秩序づくりに力強い一歩を踏み出すことができたと考えています。
自由貿易の旗手として、自由で公正な高いレベルの経済ルールをアジア太平洋地域や世界に広げていくという我が国の力強いメッセージになったのではないかと思います。
今後、できるだけ早期に発効したい。できるだけ早期の発効に向けて関係国と緊密に連携しながら議論を主導していきたいと思っています。
そして一帯一路については、インフラの開放性、透明性、経済性、財政の健全性など、国際社会共通の考え方を十分に取り入れることで、地域と世界の平和と繁栄に前向きに貢献していくことを期待しています。日本は、こうした観点から協力していきたいと考えます。
第三国での日中ビジネス協力については、ルールに基づく自由で開かれたwin−winの関係を築いていくことが重要であります。その上で、両国企業及び対象国の発展にとって有益なものとなることを期待しています。来週から日本経済界の皆さんが約250人、合同ミッションとして中国を訪問する予定です。中国要人との面談の機会も期待しています。政府としてもこうした交流を後押ししてまいります。
日中両国の関係者の間で、食品貿易、環境・省エネ、観光のほか、一帯一路を含め日中両国が地域や世界の安全と繁栄にどう貢献していくか活発に議論していきたいと考えています。
(比デイリー・インクワイアラー紙 ディゾン上級記者)
総理、朝鮮半島情勢の緊張や中国による南シナ海での影響力拡大を受け、日・フィリピン間の安全保障協力分野において、どのような強化、改善ができますでしょうか。
(安倍総理)
シーレーンの要衝に位置するフィリピンは、海上安全保障やテロなどの課題に直面しています。さらに、北朝鮮の弾道ミサイルの射程にも入っています。
私とドゥテルテ大統領は、本年首脳会談を3回行いました。1年に3回首脳会談を行ったのは、日本とフィリピンの間では私とドゥテルテ大統領だけではないかと思いますが、こうした点を踏まえて、北朝鮮問題解決への連携はもちろん、海上安全保障やテロ、そして治安対策などの面での協力を深めていくことで一致しています。
具体的に紹介しますと、既に実施中のフィリピン沿岸警備隊に対する巡視船や高速艇の供与に加えまして、新たに沿岸監視レーダー施設の供与を決定し、昨日、私とドゥテルテ大統領の立会いの下、両国代表が署名文書を交換しました。また、今回の東アジア首脳会議において、フィリピン南部及びスールー・セレベス海の治安改善のため2年間で約150億円規模の支援を発表しました。
こうした取組を通じて、我が国の提唱する自由で開かれたインド太平洋戦略を推進していきたいと思っています。法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化し、いずれの国にも安全と繁栄をもたらす国際公共財とするため、フィリピンとの協力を一層強化していく考えであります。
(時事通信 松本記者)
北朝鮮情勢について伺います。今回のベトナム、フィリピン訪問で、総理は各国との首脳会談やマルチの会合を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めることを呼び掛けられました。国連安保理制裁決議の効果が出てくると見られる年末に向けて、北朝鮮情勢は緊迫するとの見方もあります。総理は、北朝鮮の今後の動向をどう分析なさっていますでしょうか。また、その分析を踏まえて、日本政府としてどう対処なさっていく方針なのか伺います。
(安倍総理)
9月15日以降、北朝鮮の挑発行動は行われておりませんが、言葉による挑発は続いています。過去20年間の核・ミサイル開発を踏まえると、北朝鮮は引き続き、一貫して核・ミサイル開発を継続していると考えています。
私は、北朝鮮の核・ミサイル問題について、トランプ大統領訪日の成果も踏まえて、習近平主席、あるいはプーチン大統領とも率直な意見交換を行いました。これから厳しい冬を迎える中、北朝鮮における制裁の効果を注意深く見極めていくことで一致しました。
北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。北朝鮮に全ての核・弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄させることにコミットさせなければなりません。
東アジアサミットや各国首脳との会談において、北朝鮮に対する圧力を最大限にして、北朝鮮の側から対話を求めてくる状況をつくらなければならないと強く訴えました。北朝鮮に対する圧力の必要性や拉致問題の解決について、多くの首脳から支持を得ることができたことは成果だったのではないかと思います。
我が国としては引き続き、日米、日米韓で協力して、中国、ロシアを含む関係国とも緊密に連携しながら、国際社会全体で結束して、北朝鮮の核・ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて取り組んでいく考えであります。
(AP通信 ゴメス・マニラ支局長)
総理、今、米国のコミットメントに関して懸念があると考えます。すなわち、米国がアジアにおいて強いプレゼンスを維持するかどうか、そして同盟国の安全保障を確保するかどうかという点が懸念の対象となっています。中国は南シナ海などで活動を活発化させている中、トランプ大統領は国内問題に集中しています。これらの懸念には根拠があると考えますか。その懸念を共有しているとすれば、日本は、総理のリーダーシップの下でアジアにおいてより大きな安全保障上の役割を果たす考えはありますか。そして、具体的にどのような形で日本はより強い安全保障上のプレゼンスを高めていくのでしょうか。
(安倍総理)
トランプ大統領は、APECにおけるCEOサミットで自由で開かれたインド太平洋に関するスピーチを行い、この地域への明確なコミットメントを表明しています。
日本としては、米国による地域の安全保障へのコミットメントに対して全く疑念や懸念を持っていません。これまでも、そしてこれからも、この地域の平和と安全、繁栄を確保するため、日米両国が手を携えて主導的な役割を果たしていきたいと考えています。
そして、日本としても地域の安全保障のため取組を強化していきます。インド太平洋の法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化していき、いずれの国にも分け隔てなく安全と繁栄をもたらす国際公共財とするため、日本は、自由で開かれたインド太平洋戦略を進めてまいります。
こうした考え方に賛同してもらえるのであれば、中国を含めいずれの国とも協力していけると考えています。
手法としては、これらの国々との間で、航行の自由・法の支配などの基本的価値の定着を図り、質の高いインフラの整備などにより連結性を強化するとともに、海上法執行能力の構築支援や人道支援・災害救援などの平和と安定のための協力を進めていく考えであります。
この関連で、本日の東アジア首脳会議では、私からインド太平洋地域において、海上安全、人道支援・災害救援、PKOの3分野において、人材育成、物資供与、知的貢献を拡充していく旨説明いたしました。
今後とも、インド太平洋地域の安全保障について日本も積極的に貢献をしていく考えであります。その際当然、日米同盟の下に日米で協力して貢献していくこともできると考えています。