北方領土返還要求全国大会等
令和2年2月7日、安倍総理は、都内で令和2年北方領土返還要求全国大会等に出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「令和2年北方領土返還要求全国大会の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。
本日御列席の皆様を始め、全国各地で、北方領土問題の解決に向けて熱心に取り組んでおられる皆様の日頃からの御尽力に、心から敬意を表するとともに感謝申し上げます。
戦後74年が経過した今もなお、北方領土問題が解決されず、日本とロシアの間には平和条約が締結されていない。この異常な状態に終止符を打つために、安倍内閣は全力を挙げて取り組んできております。2016年の長門(ながと)での首脳会談で、私とプーチン大統領が、自らの手で平和条約を締結するとの真摯な決意を表明して以来、新しいアプローチで問題を解決するとの方針の下、日露の間でこれまでにない協力が実現しています。
御高齢になられた元島民の皆様が強く望んでおられる航空機によるお墓参りは、3年連続で実現し、昨年は、これまで何年も訪問できなかった場所も訪問することができました。航空機によるお墓参りなど、元島民の皆様にとり、より負担の少ない往来を今後とも行うことができるよう、これからも尽力してまいります。
北方四島における共同経済活動も着実に進んでいます。昨年、観光及びごみ処理の分野のパイロット・プロジェクトを実施しました。今後とも、地元の皆様の御意見をよくお聞きしながら、日露双方の法的立場を害することなく、事業化の実現に向けて精力的に取り組んでまいります。
そして、平和条約については、こうした協力関係の進展の上に、交渉を前進させております。一昨年、シンガポールで合意した1956年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる、との方針の下、昨年9月、プーチン大統領との間で、未来志向で作業を進めることを改めて確認いたしました。双方が受け入れられる解決策を見つけるための共同作業を精力的に進め、交渉を、一歩一歩、皆様と心を一つにして、着実に前進させていく考えであります。
この全国大会の前に、先ほど、元島民の代表の方々とお会いして、故郷(ふるさと)に対する思いを直接伺ってまいりました。自由に島を訪問したい、元気なうちに何とかこの問題を解決してほしい、とのお話を伺い、改めて、交渉への意欲を強くしたところであります。皆様の北方領土への切実な思いをしっかりと胸に刻み、領土問題の解決と平和条約の締結の実現という目標に向かって、ひたすら進んでまいります。
日本国民とロシア国民の互いの信頼関係、友人としての関係を増進させ、四島を友好の島にすることが何より重要です。交渉を進展させるためには、国民一人一人が、この問題への関心と理解を深め、政府と国民が一丸となって取り組むことが重要です。引き続き、力強い御支援と御協力を賜りますように、改めてお願い申し上げまして、総理大臣としての私の御挨拶とさせていただきたいと思います。」
その後、総理大臣公邸で行われた北方領土元島民の方々との懇談会において、次のように述べました。
「皆様ようこそ公邸にお越しいただきました。今からおよそ3年前の12月の15日に長門でプーチン大統領と会談を行いましたが、それに先立ちまして12月の12日にここに居られます児玉さんと山下さんのお母様の鈴木咲子さん始め7名の元島民の皆様と懇談をさせていただきました。そこで皆様方の切なる思いを承ったところでございますが、その時に、皆様から託していただいた、鈴木咲子さんはロシア語でつづられた手紙、そして7名の皆さんが一緒に書かれた手紙のロシア語訳、その二つの手紙を首脳会談の際、プーチン大統領にお渡しし、私の目の前でその手紙を読んでいただきました。そこにつづられた元島民の皆様の故郷に対する気持ち、プーチン大統領は手紙をじっくりと読んでおられた。その気持ちが伝わったと私は思っています。また皆様からお預かりした、当時まだ四島に残っておられた島民の皆様とやってきたロシアの方々との交流を示す、温かい交流、当時もあったわけでございまして、その写真もプーチン大統領にお見せしたところでございますが、プーチン大統領もまじまじとその手紙を見ながら、当時の日本人とロシア人がこのように交流していたんだということを認識していただけたんだと思います。正に皆様がしたためていただいたお手紙、あるいは情景を示す写真、これが長門会談が合意に至り、長門合意へとなる大きな原動力となったと、こう思うところでございます。
ロシア側との現在の交渉は大変厳しい交渉でございますが、何とか皆様がお元気なうちにこの問題を解決をしていかなければならないと、元気なうちに解決してほしいという皆様のお気持ちに応えて、しっかりと交渉を進めていきたいと、こう考えています。また、日本国民とロシア国民、互いの信頼関係、そして友人としての関係を増進させ、四島を友好の島とするということが何よりも重要であると、私もこの認識を持っておりますし、私とプーチン大統領との手でこの問題を解決するという決意について、完全に心は共有しているわけでございます。領土問題を解決し、平和条約を締結し、この国としての基本方針にのっとって、何とかこの問題の解決を図りたいと思っております。
今日は、皆様と率直に意見交換をさせていただきたいと思いますし、皆様のお気持ちを率直に話をしていただき、いい懇談会にしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。」