故天野之弥IAEA事務局長を偲ぶ会
令和元年12月17日、安倍総理は、都内で開催された故天野之弥(ゆきや)IAEA(国際原子力機関)事務局長を偲(しの)ぶ会に出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「天野之弥IAEA事務局長の逝去、そして本日のお別れの会、開催されたことに対しまして一言御挨拶を申し上げたいと思います。
天野さんは2009年以来、10年の長きにわたりIAEAの事務局長として、軍縮、不拡散、そして原子力の平和利用において、大きな貢献をなされました。私も日本人として本当に誇りに思うところでございます。この間、北朝鮮の核問題、核開発に対しましてはIAEAの体制を強化し、国際社会と連携しながらしっかりとした対応をしていただきました。また、イランの核合意におきましても、その履行と検証に際しては国際社会からの信頼の下に大きな仕事を成し遂げていただいたと思います。同時にまた、平和と開発のための原子力という新しいイニシアティブをスタートされまして、農業や環境や、あるいは災害対応といった新しい分野での原子力の平和利用を進められたのも天野さんであったわけでございます。
そして、何といっても日本においては、あの福島における過酷な原発事故に際して、天野さんの冷静な、そして知識に裏打ちされた、また国際社会から信任を得たアドバイス、支援がどれほど私たちにとって勇気を与えていただいたか、また、福島の再生に大きな力となったか、言葉では言い表せないところでございます。本当に骨身を削る、そのような毎日ではなかったのかなと思うところでございます。
天野さんの御逝去に対しましては、アメリカからはボルトン補佐官やポンペオ国務長官、そしてロシアからはラヴロフ外務大臣、そしてイランからはザリーフ外務大臣、正にあの核合意の履行において全てにわたって、いかに天野さんが立派な仕事をされたか、弔意を示していただいたことも忘れてはならないだろうと、このように思います。
いま、これから世界がますます厳しい状況を迎える中にあって、もっともっと天野さんにお元気で貢献をしていただきたかった、こう思っているのは、私一人ではないんだろうと思います。
天野さんが御帰国の際には、いつもお目にかかってお話を伺いました。天野さんは日本の御出身ではございますが、全く公平に仕事をフェアになされてきました。しかし同時に、例えば過酷事故の後、世界はどのように見ているのか。あるいは世界のスタンダードはどうなんだということをしっかりと私たちに伝え、また発信もしていただいたところでございます。汚染水の問題についても廃炉の問題についても、そうでございます。天野さんが果たしていただいた役割は本当に本当に大きなものがあった。残念で残念でならないわけでございますが、病を得てからも、本当に最後の最後まで全力投球をされた天野さんのあのお姿、頭の下がる思いでございます。この遺志を私たちもしっかりと、受け継いでいかなければいけない。この思いを新たにしているところでございます。
どうか、本日御参会いただいた皆様、天野さんが愛された、今日は奥様の幸加さんも、お見送りされております。皆様方の御厚情を御遺族にも賜りますように、お願い申し上げまして、改めてもう一度、お別れの会に当たり、天野さんの御功績を称え感謝申し上げまして、お別れの言葉とさせていただきたいと思います。天野さん、本当にありがとうございました。」