東京グローバル・ダイアログ
令和元年12月2日、安倍総理は、都内で第1回東京グローバル・ダイアログに出席しました。
総理は、挨拶で、次のように述べました。
「日本国際問題研究所の設立60周年という記念すべき節目に、第1回東京グローバル・ダイアログが開催されますことを心からお慶(よろこ)び申し上げます。この会議の開催に尽くされた全ての関係者の皆様に敬意を表するとともに、海外から出席していただいた多くの参加者の皆様を心から歓迎したいと思います。
日本国際問題研究所は、1959年に吉田茂総理の提唱により設立されたものでありますが、それ以来、外交や安全保障のみならず、経済、軍縮・不拡散、科学技術など、幅広い分野において政策のあるべき姿を世に問うてまいりました。60年に及ぶ歩みを経て、今やアジア随一のシンクタンクとして、世界における存在感を一層高めております。日本国際問題研究所は、60周年記念に立ち上げる東京グローバル・ダイアログを将来メジャーな国際会議に育てていく考えだと伺っておりますが、今後の発展を大いに期待しているところであります。
世界で保護主義の動きが広がり貿易をめぐる緊張が高まる中で、私は、TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、そして日EU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)を始めとする経済連携協定を力強く推進し、先般、日米の貿易協定にも合意したところでございます。現在、国会で審議中でございますが、これにより、世界経済の6割をカバーする自由な経済圏が、日本を中心として誕生することとなります。引き続き、自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく21世紀の新たな経済圏を広げるべく、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の早期妥結を目指してまいりたいと、このように思います。
ちょうど今日の夕方、EUのフォン・デア・ライエン新しい委員長と電話で会談いたしました。二人で共に、正に意見が一致いたしましたのは、本年発効した日EUのEPAによって両国が刺激を受けているということであります。例えば、この日EUのEPAによって、我が国の牛肉の輸出も3割既に増えているわけでございます。一番心配された分野でありますが、そういう分野においても我が国は裨益(ひえき)を受けている。そして今やこの日本のワインも5割、こう増えている。1.5倍になっている。ただ元々非常に少ないですから、これから更に大きく広がっていくことを期待したいと思いますが、もちろんこれは日本だけが裨益するものではなくて、EU側も裨益している。経済連携協定とはそういうものであって、どちらかがどちらに対して、一方的に勝つものではないということは当然のことではないかとこのように思います。このように自由で公正なルールに基づく経済圏を更に広げていきたいとこう思っているところであります。
そしてまた、太平洋からインド洋に至る広大な海を、法の支配、航行の自由、紛争の平和的解決といった普遍的なルールに基づき、地域や世界の平和と繁栄の礎となる正に国際的な公共財としなければなりません。その考え方から、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを提唱してまいりました。このビジョンは、今や、米国、豪州、インド、EU、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にも共有されるようになりました。米国もインド太平洋軍という名前に名称を変えたわけでありまして、正に日本が提唱したものが世界にこのように共有されるようになったということではないかと思います。引き続き、このビジョンを共有できる全ての国々と力を合わせ、自由で開かれたインド太平洋を実践していくために、リーダーシップを発揮していきたい。大切なことは、このビジョンを実現していくことだろうと思います。本日お集まりいただいた皆様のような世界をリードする専門家の方々の間で、ただ今申し上げた分野を含め、国際社会が直面する喫緊の諸課題について自由闊達(かったつ)な議論が行われ、東京グローバル・ダイアログが大成功を収めることを期待しています。
最後に、国際問題研究所が、今後ともグローバルな視点に立ち、国際的な観点から示唆に富む政策提言に取り組まれ、シンクタンクとしてますます発展していかれますことを祈念するところでございます。
先程、中曽根元総理、自民党総裁の通夜に出席してきたところでございますが、中曽根内閣において私の父は外務大臣を長らく務めました。私もその父の下で秘書官を務めておりまして、当時は総理大臣の出張に外務大臣も同行しておりましたので、ついでに私もついて行ったことを今思い出しているところでございますが、正に当時大きな視野をもって戦略的に外交を進めておられたその迫力を間近で見ることは、今に大変役立っているなあと、こう感じるところでございますが、常に国益を担う中において、その重たい責任の中でしっかりと日本の国益の増進のために、あるいは地域や世界の平和のために貢献しようとする姿に改めて敬意を表したいとこう思う次第でございます。中曽根総理は101歳、正に天寿を全うされたわけでございまして、私はまだ65歳でありまして、まだまだ我が国のために、これは総理大臣としてということではございません、一日本人として、まだまだ貢献する道は長いとこう思っている次第でございます。
今日お集まりの皆様のますますの御健勝を祈念いたしまして、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。本日はおめでとうございました。」