パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会
平成31年4月2日、安倍総理は、総理大臣官邸で第5回パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会を開催しました。
会議では、パリ協定長期成長戦略懇談会提言について議論が行われました。
総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「昨年8月以来、有識者の皆様には、大変御熱心な御議論を頂き、本日、大変野心的な御提言を取りまとめていただいたこと、御礼を申し上げたいと思います。
気候変動という地球規模の課題に立ち向かい、脱炭素社会という究極のあるべき姿を実現するためには、従来の延長線上ではない、非連続的なイノベーションを起こさなければなりません。
本日の御提言を踏まえ、政府として本年中に、革新的環境イノベーション戦略を策定することとし、早速その検討に着手いたします。水素エネルギーのコストを2050年までに現在の10分の1以下、すなわち、天然ガスよりも割安にする。さらには、人工光合成など二酸化炭素の有効利用を図るCCU技術の商用化に向けた具体的なロードマップなどを盛り込んでまいります。
革新的なイノベーションを起こすためには、世界の叡智(えいち)を結集することが必要です。
我が国がG20(金融世界経済に関する首脳会合)議長国を務めるこの機会をいかし、本年秋に、20か国のトップ研究機関のリーダーたちを日本に招き、RD20を開催いたします。そして来年以降も、RD20プロセスを継続することを通じ、革新的なイノベーションに向けた国際協力を、我が国が力強くリードしてまいります。
最大の鍵は、民間投資の拡大であります。ESG投資が、この5年で1,000兆円以上増加するなど、世界の資金の流れが大きく変わりつつある今こそ、大きなチャンスであります。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の考え方に基づき、環境分野における企業の取組について情報開示を充実し、この資金の流れに一層の弾みをつけていく考えであります。
政府として、今後、事業会社に続き、金融機関向けにも、グリーン投資に関するガイダンスを策定します。また本年秋に、世界中の先進的な事業会社、金融機関が一堂に会するTCFDサミットを開催します。
もはや温暖化対策は、企業にとってコストではありません。競争力の源泉であります。環境問題への対応に積極的な企業に、世界中から資金が集まり、次なる成長と更なる対策が可能となる。正に環境と成長の好循環、この環境と成長というのは対立概念ではないわけでありまして、安倍政権における経済政策も、成長と分配の好循環を今、回しているわけであります。かつては、成長か分配か、対立概念にあったわけでありますが、正に成長し、その果実を適切に分配し、それがまた次なる投資を呼び、成長につながっていくということであります。双方のエネルギーをぶつけるのではなくて、ぐるぐる回っていくという意味におきましては、環境と成長、環境に先進的であることによって資金が集まり、投資によって生産性も高まり、それが成長につながっていくということではないかと思いますが、この環境と成長の好循環を更に加速することによって、世界において環境政策のパラダイム転換を起こしていきたいと決意しております。
こうした考え方の下、関係大臣は本日の御提言を踏まえ、政府としての長期戦略をG20大阪サミットまでに決定すべく、その準備を加速してください。
昨日、決定いたしました官房長官がこう掲げた新元号、令和は、梅の花が咲き誇る美しい春の情景が描かれた万葉集からの引用であります。この梅の花は環境大臣の原田さんの地元の太宰府(だざいふ)の梅をめでた32首の歌とその序文から引いたものでございますが、我が国は悠久の歴史と共に薫(かお)り高き文化、そして四季折々の美しい自然をめでる、そうした感性を受け継いできたわけであります。これを次の時代、そしてその次の世代にも引き渡していくために、世界の取組をリードしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。」