日本経済団体連合会審議員会
平成30年12月26日、安倍総理は、都内で開催された日本経済団体連合会第7回審議員会に出席しました。
安倍総理は、挨拶で次のように述べました。
「今日は麻生副総理を始め、3閣僚と打ちそろってお邪魔させていただきました。本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。中西会長、古賀会長の新体制の下では初めての審議員会でありますが、私としてはこれで6年連続の参加ということになります。正に安倍内閣の、経済最優先の姿勢に全く揺らぎがないという証明ではないかと、こう思っております。だからかどうかは分かりませんが、この審議員会を3年連続で、今御紹介いただいたように、第2次安倍内閣が発足した記念すべき日であるこの12月26日に開催していただいたんだろうと、このように解釈をしておりますが。実際は全くの偶然だと思いますが。いずれにせよアベノミクスは、本日でちょうど6年目を迎えます。
今月で73か月連続の景気回復となり、戦後最長に並んだかもしれない。こう言われています。これまでの戦後最長は、小泉内閣の平成14年2月から第1次安倍内閣を経て福田内閣の平成20年2月までの景気回復であります。しかしこの景気回復は、戦後最長なのにかつての神武景気、岩戸景気といったネーミングがない。そもそもこれだけ続いていたという記憶も余り残っていないのではないでしょうか。実際、名目GDPは当時の6年間でたった2.5パーセントしか伸びてはいません。また、地域ごとの景況感にも大きなばらつきがありました。日銀短観の地域別の業況判断では、景気が良いが悪いを上回るプラスで推移していたのは、関東と東海ぐらいであります。北海道や四国では、6年間、景況感はずっとマイナスでありました。輸出産業である製造業中心の景気回復で、長引くデフレは解消されないままに、雇用や賃金も十分に伸びず、全国津々浦々のサービス業や中小・小規模事業には温かい風は届いていませんでした。この点が第1次安倍内閣の経済政策の最大の反省点であります。他方、今回は6年間で名目GDPはあの時の4倍以上、10.9パーセント成長しました。雇用も、四半期別で4倍近い、370万人以上増加しています。そして何よりも、正に皆さんのお力によって、5年連続で今世紀最高水準の賃上げを実現することができました。第1次内閣時代の反省の上に3本の矢を放ち、経済の好循環を力強く回転させたことで、早期にデフレではないという状況をつくり出すことができました。内需がしっかりと下支えされたことで、史上初めて47全ての都道府県で有効求人倍率が1倍を超え、地方のサービス業、中小・小売り事業にも景気回復の風が次第に届くようになりました。実際、今回の景気回復は地域間のばらつきがとても少なくなっています。日銀短観の地域別の業況判断も、この5年間ずっと、北海道から九州・沖縄まで、全国の9地域全てでプラスで推移しています。もう一つ大きかったのはインバウンド消費の拡大です。外国人観光客は過去最高を更新し、本年は3,000万人の大台に乗りました。旅行収支は、大阪万博の1970年以降、単月ベースで40年以上赤字が続いてきましたが、これ40年間ずっと赤字だったんですね、それが昨年度は2兆円の黒字となりました。平成の日本経済は、バブル崩壊や失われた20年を経験し、出口の見えないデフレに苦しみました。しかしそうした中でも、物の貿易の1本足打法から、最終的には経済の好循環で内需に磨きをかけ、地方が誇る観光資源や、食文化などソフトパワーもいかす経済へと大きく構造転換を進めることができた。外的なショックに、より強靱で筋肉質な経済になったと考えています。株価の水準について、政府としてはコメントは致しません。世界経済の先行きには最近様々な懸念が指摘されていますが、日本経済のファンダメンタルズは強固なものである。そのことは明確に申し上げることができます。そして、やるべきことは明確です。経済を更に筋肉質で隆々たるものになるように鍛え上げていく。これしかありません。Society 5.0の実現に向けた成長戦略を一層力強く推進する。世界に先駆けて生産性革命を推し進めることで、経済の好循環をもっと力強いものにしていきたいと考えています。
平成の30年間で私たちの暮らしも大きく変わりました。平成元年はポケベルの全盛。携帯電話は鞄(かばん)ほどのショルダーフォンでした。それが今やスマホに代わった。30年前のスパコンに匹敵するほどの機器が、一人一人のポケットに収まる時代になりました。インターネットやSNSの発達も30年前には想像すらできなかったことです。今や小学生の将来なりたい職業トップテンにユーチューバーがランクインする時代になっています。個人が世界に向かって発信し、世界と直接つながる。正にSociety 5.0に向かって新たな可能性が生まれています。平成は人々の働き方も大きく変化しました。皆さんも覚えておられると思いますが、平成元年のヒット商品は24時間戦えますかのCMで有名になったあの栄養ドリンクでありました。この辺りには明らかに30年前の企業戦士の方ばかりが、企業戦士というか企業戦士を厳しく指揮する上司の皆さんがお集まりだと思いますが。平成の時代は、週休2日制の導入などにより1か月の労働時間が26時間減りました。15パーセントの減少です。他方、1人当たりのGDPは30年間で逆に25パーセント向上し、85万円増えました。これはしっかりと生産性を高めてきた結果です。かつて松下幸之助さんが週休2日制を導入したとき、1日休養、1日教養と言っていたそうでありますが、リフレッシュするとともに自己研さんの時間もつくる。生活が充実してくれば生産性も必ず向上するはずであります。本年は働き方改革関連法案が成立しました。長時間労働を是正し、同一労働同一賃金を導入する。70年ぶりの大改革です。女性も男性も高齢者も若者も障害や難病のある人も、誰もがそれぞれのライフスタイルに合わせて仕事ができる。そしてやりがいを感じることができる。一億総活躍の社会を目指し、平成のその先の時代に向かって、力強く働き方改革を、皆さんと共に進めてまいりたいと思います。
年が明ければ、歴史的な皇位の継承があります。来年は我が国にとって、正に新しい時代を切り拓(ひら)く1年にしなければなりません。そう決意しております。4日後にTPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が発効いたします。来年2月には欧州とのEPA(経済連携協定)も発効する。日本は自由貿易の旗手として、これからも自由で公正なルールに基づく経済圏を世界に広げてまいります。少子高齢化が急速に進む中で、人生100年時代を見据えた雇用制度改革も待ったなしです。我が国の社会保障制度を、全ての世代が安心できるものへと改革していかなければなりません。経済界の御協力も得て、10月から幼児教育を無償化します。来年の4月からは、真に必要な子供たちの高等教育の無償化も実現します。戦後の普通教育無償化以来の大改革であり、安倍内閣は子供たちの未来に大胆に投資してまいります。
その財源である消費税については、来年10月から10パーセントとなります。前回8パーセントに引き上げたときには、経済に大きな影響が出ました。その大きな反省の上に、今回は2次補正予算に加え、来年度予算でも臨時・特別の措置や大胆な減税措置を講じます。政府として、頂いた消費税を全てお返しするレベルの十二分の消費税対策を準備しました。その上で、経済界の皆様にも御協力いただきたいと思います。いよいよ来たなという感じかもしれませんが。中西会長、そしてお集まりの皆様、景気の回復基調を、より確かなものとできるような、より確かなものとできるような賃上げを是非お願いしたいと思います。先ほどの流れで、あくまで参考として申し上げますと、平成元年の賃上げ率は今年の水準の2倍ぐらいあったそうであります。だんだん空気が微妙になってまいりましたが、実際に何パーセント上がったのか、具体的な数字を申し上げることは控えた方がいいかもしれません。ちなみに5パーセントであります。ちなみにでありますが。
本年、日本は2025年の万博を勝ち取りました。改めて皆様の御協力に感謝申し上げたいと思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに続いて未来に大きな目標ができました。私は子供の頃、64年の東京オリンピック、70年の大阪万博を目の当たりにして、日本が世界の中の日本になった。そう実感したことを思い出しています。正に歴史の転換点にあって、現代の私たちも2020年、2025年を大きなきっかけとしながら、次世代の子供たちが輝かしい未来に向かって、体に大きな力を感じるような、そういう躍動感あふれる時代を、皆さんと共につくり上げていきたいと思います。どうか新年も共に頑張ってまいりましょう。そして皆様、良いお年を迎えられますことを御祈念いたしまして、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。」