石破内閣総理大臣年頭記者会見
【石破総理冒頭発言】
皆様、明けましておめでとうございます。
先ほど伊勢神宮を参拝し、本年が全ての皆様にとって、平和で、安全で、実り多い1年となりますようにお祈りをいたしてまいりました。
本年、令和7年は、戦後80年の節目の年に当たります。改めて、平和について、そして、平和国家日本の在り方について、国民の皆様と共に考える年にしていきたい、そのような思いを強くいたしたところであります。戦後80年に当たり、民主主義についても改めて考える年としていきたいと思っております。
昨年の総選挙の結果、厳しい御審判を頂き、約30年ぶりとなります少数与党となりましたが、比較第一党として、我が自由民主党は、公明党と共に国政をお預かりする立場から、現在、そして、次の世代の国民の皆様に対して責任を持つ、責任与党でなければなりません。当然のことであります。
一方で、党派を超えた合意形成を図るためには、野党の皆様方にも、これまで以上に責任を共有していただくことが求められていると存じます。それぞれが責任ある立場で議論を尽くし、国民の皆様方の納得と共感が得られるように努めることが必要だと考えます。
国政の大本について、常時率直に議論をかわし、ひたすらに国民全体の福祉をのみ念じて国政の方向を定める。正に、石橋湛山(たんざん)元総理が昭和32年2月の国会の施政方針演説において述べられた言葉のとおり、与野党の議論が日本の未来をつくっていく、その自覚を持ち、一人一人の政治家が国民の皆様のため、諸課題に真摯に全力で向き合わねばなりません。
多様な国民の声を反映した真摯な政策協議によって、より良い成案を得るという民主主義の本来の姿に立って、新たな一歩を国民の皆様方と共に踏み出してまいりたいと考えております。そのためにも、民主主義をどのように支えるか、この議論が重要であります。
昨年は、政治資金に関しまして、総選挙後に私が表明いたしました政策活動費の廃止、旧文通費の公開と残金返納、第三者機関の設置について、幅広い党派を超えた議論により、年内に法制度改革まで実現することができました。企業・団体献金禁止法案につきましても、年度末に向けて真摯に議論し、成案が得られるように努めてまいります。
この問題の本質は、民主主義のコストは誰が負担するべきなのかということであります。公費による助成、企業・団体や個人からの資金、そして、政治家本人からの支出、それらのバランスはどうあるべきか。国費による助成を受け、原則として非課税であるという特別な扱いを受ける以上、それにふさわしい政党や政治団体としての規律の在り方をどのように考え、また、その規律をどのように担保していくか。与野党の枠を超えて、議論を深めていきたいと考えます。
選挙活動につきましては、昨年のいろいろな選挙で、これまで想定されなかったことが起きております。それらを踏まえた議論も必要であります。今も昔も、民主主義とは多くの意見が、健全な言論の場において闘わされてこそ成り立つものであるということは変わりません。
政治資金にしても、選挙活動にしても、重要なことは、有権者に判断材料が正しく提供されることであり、そうした正しい判断材料に基づいて、より幅広い世代に、より多くの民意が政治に適切に反映されること、これが重要であります。そのために選挙制度はどうあるべきなのか。約30年の現行選挙制度の歴史を踏まえ、この点につきましても、改めて党派を超えた検証が必要だと考えております。
戦後80年に当たり、歴史を振り返れば、我が国は、明治維新の中央集権国家体制において、富国強兵のスローガンの下で「強い日本」を目指しました。戦後、敗戦からの復興や高度経済成長期の下で「豊かな日本」 を目指しました。
「強い日本」は主に国家が主導したものでした。「豊かな日本」は主に企業が主導したものであったと思っています。そして、これからは一人一人の人たちがそれを実現する、「楽しい日本」を目指すべきだ。それは、故堺屋太一先生が最後の著書において指摘をされたことでありました。これには私も大いに共感するところであり、第三の日本、すなわち、一人一人が実現する「楽しい日本」、これを国民の皆様方と共につくり上げていきたいと考えております。
それでは、「楽しい日本」って何なんだろう。強さ、豊かさといった先人の皆さん方がつくり上げた偉大な功績の上に、世界平和の下、全ての人々が安心と安全を感じ、信じ、多様な価値観 を持つ一人一人の国民が、今日より明日は良くなる、そのように実感をし、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける、互いが大切にし合う、そういう活力ある国家であると考えております。
第一の柱として、私は、「令和の日本列島改造」と位置付け、「地方創生2.0」を強力に推し進めてまいります。「強い日本」、「豊かな日本」を進めた時代に、国策として進められたとも指摘される一極集中を見直し、多様性を未来の力に、そのようにしてまいります。
これまで、田中角栄元総理の「日本列島改造論」、大平正芳元総理の「田園都市構想」、竹下登元総理の「ふるさと創生」など、多くの取組が進められてまいりました。これまでの取組を礎に、第三の日本をつくるという、この極めて重大な局面において、これを成功させなければ日本に将来はないと、そういう危機感を強く持って、この「令和の日本列島改造」を進めてまいります。
そのために、まずは、あえて言えば、官が一歩先に出るべきだと考えております。新たに創設を目指しております「防災庁」 も含め、政府機関の地方移転、国内最適立地を強力に推進してまいります。これまでの取組を検証しつつ、地方からの提案を改めて募り、順次結論を出してまいります。
もちろん、官だけでできることではありません。民による新たな動きとの連携、これを重視し、強化をしてまいります。若い方々、女性の方々に選ばれる地方、そのようにしていく観点から、スタートアップの地域での創業、都市部に立地する企業の本社機能の移転、多極分散などを実現する環境整備を積極的に進めてまいります。
男女に関する賃金格差や無意識の思い込み、最近、これはアンコンシャスバイアスと言うのだそうですが、無意識の思い込みの解消など、若い方々、女性の方々、そういう方々が働きやすい職場づくり、地域づくりに官民一体となって取り組んでまいります。
民の力をいかし、世界的にも大きな潜在力を持つ農林水産業や観光産業などのスマート化を徹底的に推し進め、もうかる産業にいたしてまいります。食料安全保障の観点からも、農林水産物の輸出をさらに促進をしてまいります。
交通や医療・介護などの地方の暮らしを支える生活インフラにつきましても、官民でAI(人工知能)、デジタル技術などを活用し、その機能の維持・強化を図ってまいります。
いわゆる関係人口に着目し、都市と地方といった2地域を拠点とする活動、これを支援いたしてまいります。新たな人の流れを生み出すべく、「先(ま)ずは隗(かい)より始めよ」で、国の若手職員による二拠点活動を支援する制度を新設いたします。
人口減少下におきましては、官民が連携した人づくり、教育改革により、一人一人が持つ可能性を最大限に引き出すことが重要であります。そのために大事なことは、教育の質と内容であり、こどもたちをどのように育てたいのかを明確にしなければなりません。
知識や能力だけではなく、歴史や文化、地域や周りの人々を大切にし、行動する力を有した人材を、学校だけではなく自治体や地域の人々が一体となって考え、参画して育てていくことが求められております。
再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源から生み出されるクリーンな電力、あるいは水素などの次世代燃料は、自動車や半導体などの製造過程で出るCO2(二酸化炭素)を減らし、その輸出競争力を強化する上で不可欠な存在であります。これらの供給拠点を拡大し、その周辺に新たな産業集積を進めていくとともに、電力や水素などの供給網を効率的に整備していくことは、「地方創生2.0」の重要な柱であります。こうした取組は、現在、15パーセントにとどまる我が国のエネルギー自給率を高めることにつながります。
近年、目覚ましい進化を遂げておりますAIは、今や国の競争力や社会の豊かさを左右する極めて重要な技術であります。人手不足に悩まれる地方、サービス業・製造業の現場におけるAIの活用が大いに期待をされておりますが、AIの発展を支える不可欠の要素がデータと電力であります。経済安全保障の観点からも重要な先端半導体の開発・製造力を基盤に、AI拠点、データセンター、多様な製品・サービスの製造、利用者をつなぐ情報通信ネットワークを効率的に、かつ、サイバーセキュリティを確保しつつ整備していく必要がございます。これらのGX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を支える新時代のインフラを軸として、産業拠点や生活拠点の再配置を促進してまいります。
かつて、田中角栄(元)首相の日本列島改造では、道路、鉄道、通信網の整備といったハードなインフラの整備を起点として人の流れを生み出し、国土の均衡ある発展の実現が目指されました。「地方創生2.0」は、これらを基盤としながら、官民が連携して地域の拠点をつくり、地域のハードだけではないソフトの魅力が人の流れを生み出す、そして、新しい地方と都市の在り方に沿った人づくり、インフラづくりを重ねていくものであります。私自身、そして、内閣を挙げて、できるだけ全国の現場に立ち、全国の現場にお伺いをし、各地の産官学金労言の方々との対話を深めることを実行してまいります。それぞれの地域から「地方創生2.0」の具体的な取組を次々に全国に発信し、言わば「令和の列島改造」として大胆な変革を起こしてまいります。
地域の活力と併せ、経済全体の活力を取り戻すことが重要です。コストカット型の経済から高付加価値創出型の経済に移行することで、「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済」を実現いたします。
昨年の政労使の意見交換では私から、約30年ぶりの高い水準となりました昨年の勢いで、今年の春季労使交渉におきましても大幅な賃上げを行うことへの協力を要請をいたしました。最低賃金を2020年代に全国平均1,500円に引き上げるという高い目標の実現に向け、国といたしましても最大限の対応策を講じてまいります。
デフレ経済の下、我が国企業の配当や海外投資は増える一方、国内投資や賃金は伸び悩んでまいりました。ようやく明るい兆しが現れ始めている中、企業が未来に向けた成長投資に更に踏み込む新たな環境整備を進めてまいります。
投資が賃上げにつながり、消費に結びつくという好循環を実現しますためには、社会保障制度の安心の確保は不可欠であります。手取りの増を求める声に応え、制度の持続可能性を維持・強化することが重要であります。
少子高齢化等、人口急減が進む我が国において社会保障制度の将来を設計するに当たりましては、年齢ではなく負担能力に応じて適切に支え合う全世代型社会保障の構築に加え、高齢の方、障害をお持ちの方、子育ての世帯の方、誰もが地域で生き生きと参加し、つながり、支え合う地域共生社会の実現、人手不足の中で働く人を大切にする社会の再構築、これらが鍵になります。これらは地方創生にもつながる取組であります。
医療・介護、年金などの社会保障制度 は責任を持って次の世代に引き継いでいかなければなりません。特に、長期にわたって運営する年金制度は、与党も野党もなく合意を探ることが求められております。このため、まず、年金制度改革案から各党による建設的な議論が行われることを切に期待いたしております。
能登半島地震から1年、その復興の最中に発生した豪雨から3か月経過をいたしました。元日、追悼式に参加をし、一日も早い生活となりわいの再建、被災地の創造的復興のために力を尽くすことをお誓いいたしてまいりました。災害の発生を防ぐことはできませんが、平時の備えによって被害の最小化を図るとともに、被災者の方々に尊厳がある避難生活を営んでいただくことができますよう、スフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)を踏まえた環境整備を迅速に提供していかねばなりません。これは国家の責務であります。
令和8年度中に、専任の大臣と十分な人数のエキスパートを備えた「防災庁」を設置するための準備を加速いたします。激甚化する豪雨災害に加え、首都直下型地震、南海トラフ地震などへの備えが必要であります。人命、人権最優先の防災立国を構築し、我が国を、世界有数の災害大国である我が国を、世界一の防災大国にいたしてまいります。我が国の災害対策の知や技術を海外に向けて発信し、世界の防災にも貢献するとともに、これを新たな産業の柱にしてまいります。
戦後80年の節目を迎え、国際の平和と安全を維持するために、我が国としていかなる役割を果たすべきかを改めて考え、実践する1年にしたいと思います。我が国が現在直面する安全保障環境は、戦後最も厳しく、複雑なものであります。そうした中、我が国の平和と安全、人々の暮らしを守り抜くに当たっての基本は、十分な抑止力を確保しつつ、関係国との対話を重ねていくことにあります。
何より重要なのは、我が国の防衛力が、我が国に対する戦争を起こさせないために必要な、十分な抑止力となることであります。我が国の防衛力というのは十分な抑止力でなければなりません。自衛隊は装備だけで動くものではございません。装備を動かす自衛官が十分に充足されていない、極めて深刻な課題であります。この解決に向け、政府を挙げて取り組むべき施策の方向性を昨年末に取りまとめたところであり、これを速やかに実行いたします。
抑止を論ずるに当たりましては、ともすれば懲罰的、報復的抑止に焦点が当たりますが、これを主に米国の拡大抑止に委ねている我が国におきましては、拒否的抑止力の強化が重要であります。相手方の試みを無効とするような能力を我が国が持つことで、その行動を思いとどまらせる、それが拒否的抑止力であります。私が国民保護を重視するゆえんはここにあり、シェルターの確保などを着実かつ早急に進めてまいります。
地域のバランス・オブ・パワーについても冷徹に評価する必要がございます。力の不均衡が地域の不安定化につながるリスクにつながっていないか、そうした状況が生じていると判断された場合、日本として何をすべきか、こうした問いに政府は正面から答えていかねばなりません。もちろん抑止を効かせつつも、対話を欠いてはなりません。過去の多くの戦争は、彼我の誤解や誤算に起因をいたしてまいりました。日々の外交活動の意義は、正にこの点にこそあります。我が国自身の能力を高める。日米同盟を更なる高みに引き上げる。地域の仲間とのネットワークを広げ、深める。そして、バランス・オブ・パワーが我々にとって不利な形となってはいないか、常に最大限の注意を払う。こうした努力を重ねつつ、同時に関係国との対話は十全に重ね、相互の信頼を深めて、こうした取組を本年も不断に検討し、実践してまいります。
今年は巳(へび)年であります。蛇は脱皮を繰り返し大きくなっていくことから、再生や進化の年であるとも言われております。これまで先人の皆様方がつくり上げてくださった功績の上に、今年を第三の日本、すなわち平和と安全・安心を大前提とした「楽しい日本」、活力ある日本、そのようになることを念じ、努力することを申し上げ、それを国民の皆様と共につくり上げていく年にしたい、このように考えておる次第でございます。
本年もどうぞよろしくお願いを申し上げます。
以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、皆様より御質問を頂きます。御質問の際には、社名とお名前をおっしゃった上で御質問願います。
まず、内閣記者会の代表の方からお願いいたします。どうぞ。
(記者)
産経新聞の末崎です。よろしくお願いします。着座のまま失礼します。
総理、来る通常国会における国会運営についてお聞きします。総理はこれまで少数与党として国会での丁寧な議論による与野党の合意形成を図る方針を取ってきましたが、今後の通常国会では、令和7年度予算の年度内成立のほか、与野党で見解を異(こと)にする企業・団体献金の扱い、あるいはいわゆる「年収103万の壁」に決着をつけられるかどうかが焦点になると思います。少数与党として通常国会を乗り切る鍵は何とお考えでしょうか。
また、引き続き与党にとっては厳しい政党間協議を強いられると思います。政権発足以来、いわゆる石破カラーを出しにくい状況にあると見受けられますが、具体的にどういった形で今後総理のリーダーシップを発揮されるお考えでしょうか。少数与党の現状を打開する方策として、野党との連立あるいは7月の参院選に合わせた衆参ダブル選挙というのは選択肢のうちに入っているでしょうか。
以上です。
(石破総理)
ありがとうございました。
(1月)24日にも始まります通常国会におきまして、それに臨む姿勢は臨時国会と何ら変わるものではございません。私どもは少数与党でございます。野党の方々の賛成を得なければ法案も予算案も通すことができません。野党の背後にはと言うべきかな、野党を支持された方々、あるいは無党派の方々、多くの国民の方々がおられます。私たち政府として、いろいろな問題、「103万円の壁」にしてもそうでしょう。いろいろな諸課題がそうでしょう。我々がどうしてこのように考えるのかということを本当にこれ以上ないほどまでに誠心誠意、御説明をして、多くの国民の皆様方、野党の方々を支持される方々、無党派の方々、そういう方が、なるほど、政府の言うことももっともだねというふうに思っていただく、そういう環境をつくらなければ、野党の方々に賛成していただけると私は思っておりません。多くの方々に賛成していただく。野党の方々というよりも、もちろんそうなのですが、それを支持された方々、多くの無党派の方々、そういう方々に御理解をいただくように、誠心誠意、最大限の努力を図ってまいりたいと、それしかないと考えております。
また、これから先の連立の在り方、あるいは同時選挙についての言及がございましたが、今の時点で連立というものを考えているわけではございません。大連立を考えているわけでもございません。昨年末、私はそのようなことを1回も言ったことがない。そういう可能性はありますよね、ということを申し上げたのであって、それは何のためにということが明らかにならなければ、それは意味のないことだと思っております。
あるいは解散につきましても、憲法69条は、内閣不信任案が可決あるいは信任案が否決されたとき、そのときは解散しない限り(内閣)総辞職しなければならない、これが憲法の規定でございます。衆議院の意思と内閣の考えが違ったときに主権者の御判断を頂く、これは憲政の常道でございまして、それを申し述べたにすぎません。常に判断されるべき、されるのは主権者たる国民の皆様である、そのことに対して我々は常に真摯でなければならない、そういうことを申し上げたつもりでございます。
(記者)
すみません。リーダーシップをどういうふうに発揮されていくか。1点。
(石破総理)
失礼しました。これはリーダーシップにつきましては、少数与党でもございます。本当に何を目指すかということを誠心誠意御説明するほかなくて、それしかないと私は思っております。力に頼るリーダーシップを発揮することはいたしません。
(内閣広報官)
続きまして、三重県政記者クラブの代表の方から御質問をお願いいたします。
どうぞ。
(記者)
地元の三重県政記者クラブの東海テレビの伊藤と申します。よろしくお願いします。
リニア中央新幹線について伺いたいです。静岡工区での遅れなどもありまして、2027年の品川-名古屋間の開業が断念されました。JR東海は品川-名古屋間の開業時期について2034年以降になる見通しを示していて、当初の目標である2037年の全線開業については不透明になりつつあると思います。岸田前総理も昨年夏に三重県内のボーリング調査を視察された際に、当初の目標である2037年の全線開業に向けたルート選定や技術支援などを加速させるとお話されていたと思います。政府として2037年の全線開業に向けた打開策であったり、お考え、そして、JR東海への具体的な支援策についてお聞かせいただきたいです。
(石破総理)
リニアは、いろいろなこれからの日本の新しい姿をつくっていく上において必要なものだと考えております。私どもといたしまして、岸田政権が進めてまいりました環境整備、これを更に加速をさせていきたいと思っております。リニア開業によりまして、東海道新幹線の輸送の余力が生ずるものでございます。そうしますと、東海エリアの利便性の向上によってリニア沿線地域以外にも効果を波及させるということで、リニアの議論がありましたときに、今から10年以上前のことですが、私、(自由民主党)総務会において、リニアと地方創生というのはどういう関係になるのだろうかという質問をしたことがございます。東京、名古屋、大阪は近くなるのだけれども、じゃあ、全国はどうなっていくのだろうかということであります。リニアが早期に開業することでこのような新しい日本が生まれていく、そういうようなことを「地方創生2.0」とともにお示ししていくことが必要だと考えておりまして、政府としてできるような支援はしていきたいと考えておる次第でございます。
(内閣広報官)
再び内閣記者会の代表の方から御質問をお願いいたします。どうぞ。
(記者)
外交に関して伺います。1月20日にはアメリカのトランプ次期大統領が正式に大統領に就任します。総理はトランプ氏の大統領就任後に会談を調整されているとのことですが、現時点でのスケジュール感をお聞かせください。
また、日米間の懸案事項の一つに、日本製鉄によるUSスチールの買収計画が挙げられると思います。バイデン大統領は先日、同盟関係にあるにもかかわらず、安全保障上の懸案を理由に買収中止を命じました。その受け止めをお聞かせください。今後、トランプ次期大統領には、中止命令の撤回を求めていくお考えはありますでしょうか。
加えて、今朝も北朝鮮のミサイル発射など、隣国の韓国の内政が不安定化するなど東アジア情勢が混迷する中で、日本のリーダーとして国際社会でどのように存在感を示してくお考えなのかお聞かせください。
以上です。
(石破総理)
トランプ合衆国次期大統領との会談につきましては、現在まだ確定はいたしておりません。最もふさわしい時期にふさわしい形でそれが実現するよう、調整をいたしておるということでございます。
そして、中東、ウクライナとともに、この北東アジアの状況をどのように認識するか。私はこの3つは密接に関係しておると思っております。それぞれが独立して事象が起こっているわけではございません。こういうようなことについて共通認識を持つということが重要だというふうに考えております。経済についても同様の考えでございます。
USスチールの話につきましては、経済産業大臣もコメントを出しておるわけでございますが、日本の産業界から今後の日米間の投資について懸念の声が上がっているということは残念ながら事実であります。このことは我々としても重く受け止めざるを得ないものでございます。
アメリカの国内法に基づき審査中でございました個別の企業の経営に関する案件について、日本政府としてコメントすることは不適切でありますので、コメントはいたしませんが、このような懸念があることを払拭すると、そういうふうに向けた対応は合衆国政府には強く求めたいと思っております。なぜ安全保障の懸念があるのかということについては、それはきちんと述べてもらわなければ、これから先の話には相成りません。いかに同盟国であろうとも、これから先の関係において、ただ今申し上げた点は非常に重要だと考えておるところでございます。
本日も北朝鮮からミサイルの発射がございました。我が国のEEZ(排他的経済水域)外に落下したというふうに思われておるわけでございますが、この打ち上げの頻度というものは非常に高いということだと思います。これを回数を重ねるごとにその技術は上がっているというふうに見るのが当然のことでございまして、私どもとしてこのことについては重大な懸念を持っておるということでございます。ですから、先ほど申し上げましたように、抑止力の強化に向けて、我が国としてより一層努力をしていかねばならないということであって、基本的に我が国の独立と平和、これは我が国が守るということでございます。より一層気を引き締めてまいりたいと考えております。
(内閣広報官)
最後に、三重県政記者クラブの代表の方から御質問をお願いいたします。
(記者)
朝日新聞、高田です。
南海トラフ地震対策について伺います。南海トラフ地震は、東海地方を始め広い範囲で被災し、今後30年以内の発生確率は70~80パーセントとされています。発生すれば孤立集落が数多く生まれ、長期化することも心配です。そこで質問です。1年前の能登半島地震で国はどんな教訓を得ましたか。総理は「防災庁」の設置を目指すということですが、この教訓を踏まえ、今後どんな対策に力を入れていきますか。また、災害対応の主体となる市町村や県に何を求め、国はどう支えていきますか。
以上、よろしくお願いします。
(石破総理)
能登半島震災から1年。私も先ほど申しましたように、元旦に慰霊式典に参加をいたしてまいりました。地震の予知というものを完全に行うことはもちろん不可能でございます。しかしながら、その予知能力の向上というものを放棄していいということには全くなりません。この予知能力の向上というものには更に力を尽くしてまいりたい、難しいことは百も万も分かった上で、そのように申し上げます。予知能力の向上を図っていきたいということ。
そして、日頃から備えておかなければ、いざというときにこれは間に合わないということになりかねません。日頃からどうやって防災体制を築いていくかということは、災害対策基本法に基づきまして、主に自治体の役割ではございますが、それが南海トラフでも非常に広範な範囲にわたるというふうに予想されます。それが地域によってばらつきがあっていいはずはないのであって、国として南海トラフで被災が予想される地域、この広範にわたる地域において、どの地域で南海トラフという、そういう事態が起こっても、被災を最小限にすることができるかということの点検は全力でやっていかねばならないと思っております。日常の備えというものは極めて重要であります。
ですので、「防災庁」というものは強大な権限を振るうというよりも、日頃から全国1,718市町村ございますが、そこにおいて備えはどれだけ整っているかということを常に常に点検をするという役割を担うものでございます。
そして、不幸にしてそういうものが発生した場合にも、被害を最小に抑えるということと同時に、これは、能登半島に行って、農水大臣あるいは防災庁設置担当大臣共々に被災地を訪れて思うことでありますが、例えて言えば、避難所の状況があのようなままでいいとは全く思われないということであります。どのように状況の悪いところであっても、財政の厳しいところであっても、家族を失い、自分も傷つき、職を失い、家も壊れ、そういう絶望のふちにいる人たちに最も温かい手を差し伸べるのは、私は国家の責務である、このように思っております。スフィア基準の適用は当然であります。
そして、そこから復興していく上のいろいろな手だてというものをもっと講じることはできないだろうかと。今なお水が十分に行き届いていないところというものがございます。これは防災井戸というものをどうしていくかという問題でもございます。
そして、また、いろいろな救援物資というもの、TKBと言いますが、トイレ付きのコンテナ、キッチンカーあるいはベッド、そういうものの備蓄を全国7か所、そういうところに分散備蓄をし、少なくとも48時間以内、できれば24時間以内にそういうような環境が、良好なという言い方はいけないのかもしれませんが、本当に生きていく希望を持っていただく、そういうような環境を整えることも国家の責務であると思っております。一日も早くそういう体制を整えるべく、このことに当たって政府を挙げて努力をいたしてまいります。
(内閣広報官)
以上をもちまして、石破内閣総理大臣の令和7年年頭記者会見を終了いたします。
御協力をありがとうございました。