陸上自衛隊高等工科学校卒業式 石破総理ビデオメッセージ

更新日:令和7年3月20日 総理の指示・談話など

 陸上自衛隊高等工科学校の卒業式が挙行されるに当たりまして、自衛隊の最高指揮官であります内閣総理大臣として、卒業生の皆様に対し、心からのお祝いを申し上げたいと思います。
 68期の生徒の皆さん、卒業おめでとうございます。
 皆さんは、3年前の春に、「自衛官になりたい」、「大切な人を守りたい」、「地域を守りたい」、「日本の独立と平和を守りたい」、そういうような様々な思いを胸に、ここ武山の門をくぐってくださいました。以来、勉強、部活動、訓練に一生懸命励んでいただいて、仲間と切磋琢磨をして、共に必死で駆け抜けた3年間だったことだと思っております。
 皆さんの高等工科学校での生活を振り返れば、親御さんの元を離れて、自衛官となるための訓練、規律を守る、規律の遵守、それはこれまでになく厳しいものだったと思っています。同級生で高校で進んだ友達が色々と楽しく羽を伸ばして過ごしている、それを見て、なんで、この学校はこんなに厳しいんだろうな、そういうことを思われたことも一度や二度ではなかったのだろうと思っています。それでも懸命に、同期の仲間の皆さんと共に汗を流し、涙を流して、そして今日を迎えられたと思っています。これはとても頼もしいことでありますし、心から敬意を表したいと思っています。
 今、日本は、よく言われることですが、戦後最も厳しい安全保障環境に直面をしています。周りには北朝鮮であり、中国であり、ロシアであり、我が国とは全く政治体制の違うそういう国々が核保有国として、北朝鮮は核保有国として認定をされているわけではありませんが、そういう国々に取り囲まれております。ロシアとウクライナの戦いは3年を経てもまだ終わりません。今アメリカとウクライナの関係、アメリカとヨーロッパの関係、非常に難しい局面を迎えています。ガザでの戦闘も終わることはありません。今ウクライナで起こっていることは、やがてアジアでも起こるかもしれない。多くの国民がそういうような不安を持っております。こういう時代にあって皆さんは自分から選んで自衛官に任官をして、これから全国各地の部隊において、日本国の独立と平和を守る、そういう崇高な任務に就くということになります。
 私は皆さん一人ひとりのやりがい、働きやすさを大切にしたいと思っています。働きがいを向上させる組織にしていかなければなりません。自衛官になって良かったなというふうに思っていただかなければなりませんし、これから自衛隊でいろんなことがあると思います。政府自衛官は、精強性を必要としています。若いうちに、まだばりばり働けるうちに定年を迎えると、こういうような組織であります。そうすると自衛官を辞めた後も自衛隊で学んだこと、身につけたこと、そういうものがいかされる、そういうような国にしていきたいと思っています。日本の国を守るということは本当に難しいことです。危険なこともあります。命令には従っていかねばならないということもあります。国民の大きな期待に応えていかなければなりません。最も厳しい規律を必要とする組織です。そうであればこそ最も素晴らしい処遇がなければならない。そして最も高い栄誉が与えられなければいけない。国家というのはそういうものだと私は思っています。私ども政府を挙げて、皆さん方の処遇改善に取り組んでいくと、それは国家として当たり前のことだと思っています。中谷防衛大臣とともに、そういうようなことに全力で取り組んでいきたいと思っています。
 生成AI(人工知能)、ドローン、これは飛行機でも船でも一緒であります。水中艦でも一緒の話でございます。そして陸海空の統合運用ということを更に高度なものにしていかなければなりません。サイバーなど、諸君にも身近になっている先進技術は、戦争の在り方を、戦闘の在り方を一変するほどになっております。皆さんの知識、技術が我が国の独立と平和、そして国民の命と平和な暮らし、そして戦争のない世界、それをつくっていくことになります。平和を守ることになります。これから、皆さん方一人ひとりが、本校で磨きあげた人格、学んだ知識・技術を元に、更なる人間としての成長を続けて、次のステージに向かって大きく飛躍されることを強く望んでおります。
 御家族の皆様、本日この日を迎えられて、心よりお祝いを申し上げます。大切な御子息が高等工科学校に入学をして、生活を送っていかれる中で不安を抱かれることもあったのではないかと思いますが、ご覧のように立派に成長して、本日無事に卒業を迎えることとなりました。これから様々な場面において活躍をする御子息達の雄姿を、今後もどうか温かい眼差しで見守っていただきたいと思っております。
 時に厳しく、しかしながら、深い愛情をもって生徒諸君の指導に当たって来られた篠村学校長はじめとする教職員各位に敬意を表しますとともに、本校に多大な御理解と御支援を頂いております関係者の皆様方にも心より感謝を申し上げます。
 卒業生諸君の今後益々の活躍、高等工科学校の一層の発展、心からお祈りいたしまして、お祝いの言葉といたします。おめでとうございました。これからもどうぞ頑張ってください。以上であります。