全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会
令和6年11月23日、石破総理は、都内で全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会に出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「初代の拉致議連の会長をいたしておりました内閣総理大臣石破茂であります。本日の国民大集会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
先ほど来、お話がございますように、先月17日、拉致被害者家族会及び救う会の皆様方と官邸において、お目にかからせていただきました。御家族の皆様方からは、いまだに肉親と再会することができないという苦しみ、あるいは拉致被害者の帰国実現まで決して諦めないという切実な思いを聞かせていただき、もう時間が残っていないという切迫感を共有したところでございます。私からも、この内閣におきます拉致問題の解決に向けた決意をお伝えをいたしました。本日改めて切実なお声を聞かせていただいたところであります。
もう22年も前のことになりますが、2002年に当時の小泉総理が訪朝をなさいました。帰国されたときに飯倉公館あるいは首相官邸において御家族の皆様方にいろんな情報が伝えられました。それを聞かれたときに、今日も御臨席をいただいている、先ほど御挨拶をなさいました、横田早紀江さんが、私はその場面はありありと覚えているのですが、『私は信じない、そのようなことは信じない。めぐみは生きている。』というふうに叫ばれた、あえて叫ばれたと申し上げますが、それが私のこの問題に取り組む原点でもあります。あの言葉は耳に残って離れることがありません。私はその時、今は亡き横田滋さんの隣に座らせていただいておりました。本当に繰り返しになりますが、あの叫びを忘れることはないし、これは全ての日本国民が共有せねばならないことだというふうに思っているところでございます。
いまだにそれ以降、御帰国が実現をいたしておりません。それはなぜ実現をしなかったのかということをきちんと我々は検証していかねばならないと思っております。こうして国民集会が開かれ、全国各地において思いを共有する方々が大勢おられるにもかかわらず、なぜ実現をしていないのか。今、古屋会長のお話もございましたが、我々政府としてどのようにして北朝鮮と向き合うべきなのかということ、そのことをもう一度よく検証し、方策というものを考え、実現に向けて努力をいたしてまいります。
日朝平壌(ピョンヤン)宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するということは基本方針でございますが、私ども日本人は国家主権って何だろうかということ、つまり学校で、小学校でも中学校でも高等学校でも国民主権ということは教わるんですが、国家主権とは何かということをきちんと教わったという人はあまり多くないのかもしれません。国家主権の要素って三つありまして、一つは領土です。一つは国民です。一つは統治の仕組みです。この三つをもってして国家主権の3要素というふうに申しております。
拉致問題は、国家による我が同胞の拉致なのであって、それは国家による拉致なのですから、これは単なる誘拐事件ではございません。日本国の国家主権の侵害以外の何物でもないということであります。したがいまして、御家族が御高齢となります中において、時間的制約のあるこの問題は、日本国民全ての国家主権の侵害であるという共通認識の下に、解決に向けて心を一つにしていかねばならない、かように考えている次第でございます。そしてまた、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の方々の一日も早い御帰国を実現をしていかねばならないと思っております。政府として、政権として断固たる決意の下、皆様方と連帯をしながらこの問題の解決に向けて取り組んでまいります。
また今、古屋会長からも言及がありましたが、北朝鮮とロシアとの関係、これは決して看過すべき問題ではございません。なぜこの2か国が連携をしておるかということ、そのことは我が国の独立にかかわる重要問題であります。このことをよく認識しながら国際社会と連携をしながら取り組んでまいります。
先般、ペルーを訪問をさせていただきました。APEC(アジア太平洋経済協力)あるいはG20で多くの首脳と会談をしたところでありますが、合衆国のバイデン大統領、あるいは韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領、そういう方々とこの問題について意見交換をし、緊密に連携をする、単なる連携のみならず解決に向けて共に取り組むという意識を共有させていただいたところであります。中国の習近平国家主席とも会談を行いました。そこにおきましても、この問題を提起をし、意見交換を行ったところであります。多くの国々と国際社会と共に連帯をしながら取り組んでまいります。
長引けば長引くほど、日朝が新しい関係を築こうとしてもその実現は困難だというふうに考えているところでございます。相互不信の連鎖があることは間違いございません。そしてそれにより状況は複雑化をいたしております。もう一度、日朝平壌宣言の原点に立ち返り、22年前に思い描きましたそのような思いを、大局観を持っていかに実現をするかということが重要であります。この機会を逃すことがないよう、金正恩(キム・ジョンウン)委員長に対しても呼び掛けてまいります。
個人と個人の関係でもそうでありますが、実際に会いもしないで、見もしないで、相手を非難していてもこれは始まるものではございません。私は本当にこの、正面から向き合うことによって、皆様方と共にこの思いを実現してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。多くの歴史を振り返ってみましても、首脳による戦略的な決断に基づく実行が時代を動かすというふうに思っております。先頭に立ち、この問題の解決に取り組んでまいることを申し述べる次第であります。
本日は大勢の方々が全国からお集まりになりました。これが国際社会を動かし、国民世論を統一をし、この問題の解決に向けた大きな力になるというふうに心から思う次第でございます。
時間はあまり多く残っておりません。政府として国家主権の問題であるというふうな認識の下、この問題解決に取り組んでまいります。どうぞ今後とも皆様のお力を賜り、国家としての尊厳を、そしてまた一人一人の人権を確実にするために共に戦ってまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。」