日韓首脳会談等についての会見
【岸田総理冒頭発言】
先ほど、日韓首脳会談を行いました。尹(ユン)大統領との首脳会談は、2年前の9月以来、12回目となりました。この2年間、両国関係の強化に強い思いを有する尹大統領という信頼するパートナーを得て、全力で取り組み、日韓関係、新たな章を開くことができたと感じています。
そして、日韓両国は、これからもこの歩みを続けていかなければなりません。そのためには、両国の首脳が形式にとらわれず頻繁に往来して、難しい課題も含め、率直な議論を続けることが不可欠であると思っています。私と尹大統領が再開し本格化させた「シャトル外交」は、こうした日韓関係のあるべき姿を体現しています。今回の訪問も、正にその信念を形にしたものであります。
本日の首脳会談では、これまでの日韓関係の進展を総覧しつつ、議論を行いました。その中でも触れられたことですが、この2年間で、年間最多ペースとなる両国民の往来など、若い世代を含む交流が大きく拡大をしています。また、政府間においては、尹大統領との信頼関係の下、多岐にわたる協力や対話が積み重ねられてきました。今般、外交当局間で、第三国における緊急事態の際に自国民保護について協力することを確認する覚書が署名されました。これも、両国間の信頼の高まりを示す例であると考えています。
尹大統領とは、この大きく飛躍した日韓関係の果実を、来年の国交正常化60周年も契機として、両国国民が具体的に実感できるようにすることが重要であるという考え方において一致いたしました。特に、人と人との交流を後押しするための方策など、日韓間の協力と交流を持続的に強化していく方針を確認いたしました。現下の戦略環境の下、日韓の緊密な連携は、地域の平和と安定のために欠くことはできません。
本日の会談では、朝鮮半島の平和と安定の問題について、深い議論をすることができました。その上で、広い分野での日韓米協力を強化していくこと、国際社会の諸課題について積極的に連携をしていくこと、こうしたことの重要性を確認いたしました。
こうした諸課題につき日韓が連携することは、日韓双方に利益をもたらし、国際社会からの期待に沿うものであると考えています。この後、晩さん会においても更に語り合うこととなりますが、今回は、未来の日韓関係に向けた深みのある議論ができたと感じています。私からは以上です。
【質疑応答】
(第三国における自国民保護についての覚書や入国手続の円滑化に関する方策以外の具体的な成果について、また、拉致問題を含めた北朝鮮への対応や徴用工を巡る問題、慰安婦問題といった両国の間にある懸案についてどのような議論が行われたのか、そして、事実上最後の日韓首脳会談になると思われるが、これまでの「シャトル外交」で築いてきた日韓関係の改善の流れ、日米韓3か国での連携を次の政権にどのように引き継いでいきたい考えか)
まず今回の成果、大きな意味で言えば、「シャトル外交」の実践により、日韓関係の本来あるべき姿を尹大統領と共に示し、来年の国交正常化60周年を見据えた、両国の協力・交流強化の方向性を示したこと、さらには、地域や国際社会の諸課題に、日韓が連携して取り組むこと、それが日韓双方に利益をもたらし、国際社会からの期待に沿う旨を示したこと、これが大きな意味としてあると思いますが、まずはこうした協力の意義を、日韓両国の国民が幅広く理解していただけること、これを心より望んでいます。
そして具体的な成果についての御質問ですが、第三国における自国民保護についての協力覚書、これを日本としては初めて結ぶものであります。それを韓国との間において交わす、こうした覚書であります。また来年は、日本で大阪・関西万博が予定されています。そして韓国はAPEC(アジア太平洋経済協力)の議長国を務めます。そして日韓の間では国交正常化60周年を迎えます。
こうした年に向けて、お互いの入国手続の円滑化において具体的な取組を検討することを開始する、これを確認した、こういったことは大きな具体的な成果だと思いますが、それ以外にも、成果ということで申し上げるならば、これは朝鮮半島の平和と安定、あるいは、日韓における様々な関心事項や懸念について様々な成果を挙げることができるとは思いますが、例えば、朝鮮半島の平和と安定についても深い議論が行われました。ただ、これについての具体的なやり取り等について申し上げることは控えなければならないと思っています。
ただ、そのやり取りの中で尹大統領の考えを伺い、そして意見交換できたことは、日韓、日米韓で更に連携を強化していくに当たって、大変有意義なことであったと思います。言うまでもなく、拉致問題に関しても意見交換を行いました。その中で尹大統領から力強い支持を頂いた、これは改めて確認できたことであります。
そして日韓間においては、御案内のとおり、隣国であるが故に様々な懸案も存在いたします。それについても、具体的な内容を申し上げることは控えますが、率直なやり取りができた、このことも大きなことであったと考えています。
いずれにせよ今後とも、日韓関係の重要性、いささかも変わりはない、このように確信しています。私としても、これからもいかなる立場からも、日韓関係をより堅固で、そして幅広いものにしていくべく、力を尽くしていきたいと考えています。私からは以上です。
(自民党総裁選挙について、小泉元環境大臣が立候補を表明したが、旧岸田派の支持候補を岸田総理自身は個々の所属議員の判断に委ねる考えか、また、自らの支持候補を明らかにする考えはあるか、さらに、茂木幹事長や石破元幹事長から、岸田政権の方針からの転換をにじませる発言も出ているが、各候補者の訴えについてどう感じているか)
まず今回の自民党総裁選挙、これは派閥解消後初めての総裁選挙であります。派閥単位ではなく候補者同士が真剣勝負の論戦を行う、政策本位の総裁選にしていかなければならないと思っています。そして、その結果として、自民党の国会議員一人一人が自立した議員としての判断、見識が問われる、こうした総裁選挙になると思います。そういった思いで、各議員が自らの判断をしなければならないと考えています。私自身もしっかりと判断し、自分自身の一票を投じていきたいと思います。
御質問は、自分の支持候補を明らかにするのかという質問ですが、今後、いろいろな状況が総裁選挙の中で起こり得ると思っていますが、いずれにせよ、まずは自分自身の一票をどうするか、これを判断するのが先だと思っています。
そして政策について御質問がありました。政策については、各候補が今、次々と出馬を表明している。そしてその中で一部の政策が明らかになっている。そういった状況であります。ですから、これからまだまだ政策について明らかになり、そして何よりも論戦が行われる、こういったことでありますので、今の段階で、個々の政策、一つ一つの政策についてコメントすることは控えなければならないと思っていますが、いずれにせよ総裁選挙の候補者である皆さんには、責任政党・自民党のトップに立つという自覚、そして覚悟、これが問われなければならないと考えています。政策については、今の段階ではそこにとどめます。以上です。