広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式参列等についての会見

更新日:令和6年8月6日 総理の演説・記者会見など

(司会者)
 それでは、ただ今から、岸田内閣総理大臣の記者会見を始めさせていただきます。広島市市政記者クラブから代表質問をお願いします。

(記者)
  広島市市政クラブから代表質問をさせていただきます。まず、核兵器廃絶についてです。岸田総理には就任当初から核兵器廃絶に関して期待する声がありましたが、ライフワークの核なき世界は遠く、核抑止を前提としたNPT(核兵器不拡散条約)体制は機能していないという指摘もあります。唯一の戦争被爆国の総理としてどのようにリーダーシップを取っていかれますか。一方で、核なき世界の出口と位置付ける核兵器禁止条約の来年3月の締約国会議にオブザーバー参加する可能性は検討されるのでしょうか。

(岸田総理)
 先ほど被爆者の方々との意見交換においても申し上げさせていただきましたが、御指摘の核兵器禁止条約と日本政府が目指すもの、共に核兵器のない世界を目指す目標、山頂は共有していると思っています。その中で、日本政府としては、核兵器国を具体的に巻き込み、動かしていかなければ、現実は変わらないという考え方に基づいて取り組んでいかなければならないと思っています。
 今、御質問の中でNPT体制は機能していないのではないかという指摘がありましたが、NPT体制は、核兵器国も同じテーブルについている、具体的な、現実的な議論の場であります。これを機能していないというのであるならば、機能させなければならない、これが核兵器国を巻き込んで現実を変えていこうとする日本の基本的な立場であると考えております。
 そして、どのように動かしていくのかということについて、これも先ほど申し上げさせていただきましたが、前回のNPT運用検討会議に私自身が出席する中で、「ヒロシマ・アクション・プラン」という五つの柱に基づくプランを提案させていただきましたが、その提案に従って、さらには、昨年のG7広島サミットの際の広島ビジョン(核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン)の考え方に従って、現実を動かしていく、これが求められていると考えています。
 その一例として、一昨年の国連総会においては、CTBT(包括的核実験禁止条約)フレンズの首脳級会合を提案させていただいた。日本が主導して開催した。そして、今年3月には、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)フレンズを、アメリカ、イギリス、フランスといった核兵器国も参加する形で立ち上げて、今年の秋にはハイレベルの会合を開いていく、こうした取組を主導していこうと思っています。核兵器をなくすということについて、核実験を禁止する、あるいは核兵器用の物質そのものを禁止する、そうした具体的な取組を具体的に進めることによって、核兵器のない世界を目指していく、これが日本の基本的な考え方です。
 そして、結果として、核兵器禁止条約も目指す、核兵器のない世界に核兵器国をできるだけ近づけていき、そして、大きな目標を達成していく、こうした流れにつなげていきたいと考えています。以上です。

(司会者)
 それでは、次の質問をお願いします。

(記者)
  次に、被爆80年に向けた取組についてです。被爆者が高齢化する中で、被爆体験の継承が大きな課題となっています。被爆者なき時代が近づく今、被爆地選出の総理としてどのように被爆の実相を伝えていきたいと考えておられるのでしょうか。来年の被爆80年に向けて具体的な取組やお考えがあれば、お聞かせください。

(岸田総理)
 被爆の実相を伝えるということ、来年は被爆から80年を迎え、被爆者の方々の平均年齢も85歳を超える、こうした状況の中で、被爆の実相を国境や世代を超えて伝えていくということの重要性は更に強まっていると考えています。
 そのために、広島市、長崎市においてデジタル技術を活用した啓発活動の推進など、一層の支援の充実を図っているところですが、国としてもこうした取組をしっかり後押ししていきたいというふうに思っておりますし、被爆の実相を伝えるということにおいても、先ほど申し上げました「ヒロシマ・アクション・プラン」においても、あるいはG7首脳広島ビジョンにおいても、指導者、若者等の被爆地訪問を呼び掛ける、こうした内容を盛り込んでいるところですが、それに基づいて、昨年、我が国が拠出し、そして、国連が立ち上げたユース非核リーダー基金のプログラム、これが始動しています。
 今月26日から広島、長崎を各国からの参加者が訪れることになっています。是非こうした世界の若いリーダーに被爆の実相に触れてもらう、これを具体的に日本が後押しする、こうしたプログラム、これもしっかり進めていくことも重要であると考えています。引き続き、こうした被爆の実相の正確な理解を世代と国境を越えて促していく、こうした取組においても、日本はリードしていきたいと考えています。以上です。

(司会者)
 時間となっておりますので、広島市市政記者クラブからの代表質問はこれで終了させていただきます。続きまして、内閣記者会からの代表質問をお願いいたします。

(記者)
 内閣記者会幹事社の時事通信の平田です。よろしくお願いします。日米両政府は、先月の2プラス2(日米安全保障協議委員会)に合わせて、核の傘提供を含む拡大抑止に関する閣僚会合を開き、連携・強化をすることで合意しました。被爆地からは、首相が掲げる核兵器のない世界に逆行するとの批判が出ていますが、こうした声にどう応えますか。
 また、核軍縮に関するG7首脳共同文書・広島ビジョン発表から1年以上がたちましたが、機運が高まっているとは言えません。9月後半に出席されると思われるニューヨークでの国連総会の機会を含め、今後、各国にどのような働き掛けや訴えをするお考えでしょうか。

(岸田総理)
 まず、拡大抑止についてですが、今、我が国が戦後最も複雑で、そして、厳しい安全保障環境にあると言われている中にあって、国民の命や暮らしを守るために、日米において拡大抑止協議を通じて、その実態を共有し、そして、信頼関係を高めていく、これは大変重要な取組であると思います。御指摘は、核兵器のない世界に逆行するのではないか、そぐわないのではないかという御指摘ですが、私はそうは考えておりません。
 アメリカを始めとする核兵器国と厳しい現実を共有するとともに、信頼関係をしっかり築いていくことは、アメリカも日本も、それぞれのリーダーが核兵器のない世界を目指すということを確認しているわけでありますから、核兵器のない世界に向けて日本とアメリカが協力する上においても、こうした信頼関係というのは土台になると思っています。
 事実、私も、総理になる前に「核兵器のない世界へ」という本、著書を書きました。その中に、正に日本とアメリカが核の実態をしっかりと共有し、そして、信頼関係を築くことによって核兵器のない世界を共に目指していく、こういった道筋を考えるべきだということを提案させていただいておりましたが、そうした考え方に沿って、日本とアメリカが未来に向けて核兵器のない世界に向けて協力をしていく、こういった道筋を描いていくことが重要であると考えています。
 そして、秋に向けてどんな取組をということですが、これについては先ほども触れましたが、やはり具体的には、CTBTやFMCTの枠組みを再活性化させることが重要であると思います。FMCTも昨年、かつてアメリカのクリントン大統領が提案してから30年たちました。是非、この枠組みを再活性化しようということで、日本は声を上げて、そして、今年の3月にアメリカ、イギリス、フランスを始めとする核兵器国も参加する形で、FMCTフレンズを立ち上げた。これを更にハイレベルの協議につなげていくべく、秋に向けて努力していきたい、このように思っています。以上です。

(司会者)
 それでは、次の質問をお願いいたします。

(記者)
 次に、9月に見込まれる自民党総裁選についてお伺いします。派閥の裏金事件を受けて、お金のかからない選挙を求める声が上がっています。自民党青年局は、前例に捕らわれない選挙期間の確保や地方での討論会、双方向の討論会などを提言しました。このような声を受けて、どのような総裁選の在り方が望ましいと考えるでしょうか。また、御自身が立候補するお考えはあるでしょうか。いつまでに出馬の有無を判断するお考えでしょうか。
 一方で、日経平均株価についてもお伺いさせていただきます。昨日、史上最大の下げ幅となる4,451円安となりました。急速に進んでいる円高や米国経済の悪化に対する警戒感が指摘されますが、政府としての見解や対応についてどうお考えでしょうか。

(岸田総理)
 まず、自民党総裁選挙についてですが、御指摘のように、自民党青年局を始め、様々な関係者があるべき姿について提案・提言をしていると承知しております。ただ、総裁選挙については、御案内のとおり、総裁選挙管理委員会において中立・公平な立場で具体的な内容を決めていくことになっています。この管理委員会においてあるべき総裁選挙の日程、やり方等について決定していくことになると思っておりますが、しかし、いずれにしても、自民党、政権与党として、これから秋以降、様々な政策を実現・実行して、責任を果たしていかなければなりません。
 そして一方で、政治の信頼、これが基本であるということ、これは当然のことであり、自民党の刷新に向けても議論を深めていかなければならないわけでありますし、それ以外、外交、経済、社会を始め、骨太の政策が真剣勝負で論じられなければならない、大変重要な総裁選挙であり、開かれた総裁選挙が望ましい、これは当然のことであると思っております。
 そして、私自身どうするかということでありますが、これは、従来から申し上げておりますように、今、経済、外交を始め、先送りできない課題について結果を出すべく、今、全力で取り組んでおります。今の段階でそれ以上申し上げることはいたしません。
 その上で、株価について御指摘がありました。内外の経済・金融市場の動向ですが、まず、今朝発表された6月の実質賃金はプラス1.1パーセント、27か月ぶりプラスとなりました。そして、春闘において33年ぶりの賃金、賃上げ率高水準の数字が示されている。また、最低賃金も過去最大の上げ幅となった。また、過去最大の設備投資、企業収益も上がっている。こういったことから、日本経済は新たなステージへの力強い移行が続いていると認識しております。
 昨日の株価の動きの御指摘ありましたが、今日も株価はまた動いております。こうした状況を冷静に判断していくことが重要であると考えています。引き続き、緊張感を持って注視するとともに、日銀と密接に連携しつつ、経済財政運営を進めていきたいと考えています。以上です。

(司会者)
 時間となっておりますので、内閣記者会からの代表質問はこれで終了させていただきます。それでは、以上をもちまして、岸田内閣総理大臣の記者会見を終了いたします。ありがとうございました。

(岸田総理)
 ありがとうございました。

  

関連リンク

これまでの総理の演説・記者会見など