スタンフォード大学における日韓首脳討論会 岸田総理スピーチ

更新日:令和5年11月17日 総理の演説・記者会見など

 皆さん、こんにちは。日本の内閣総理大臣の岸田文雄です。私は、小学校の頃、ニューヨークで生活していました。その頃、ニューヨークの私の周りではベースボールが大変人気でしたが、ここスタンフォードでは、特にアメリカン・フットボールの人気が高いと聞いてきました。
 ちょうど、明日、UCバークレー校とのBig Gameが開催されるそうですね。学生の皆さんは楽しみで、そわそわされているかもしれませんが、尹(ユン)大統領と私にとっては、今日がBig Gameです。是非、最後まで、お付き合いいただきたいと思います。
 本日のテーマは、科学技術の未来です。私は、かつて、日本の科学技術担当大臣を務めたことがあります。その頃から、科学技術に強い関心があるのですが、近年の科学技術の変化は、目をみはるものがあります。
 私が特に注目しているのは、Chat GPTなどの生成AI(人工知能)。生成AIは、本当に便利ですよね。今や、AIに聞けば、立ち所に、「それらしい」演説や、スピーチの内容が出来上がります。
 でも、安心してください。今日は、Chat GPTではなく、しっかり自分で考えたことをお話しさせていただきます。
 こうして、尹大統領と並んで、皆さんとお話しするのは、感慨深いものがあります。というのも、今年の初めまで、日韓関係は、大変厳しい状況にあったからです。しかし、今年3月に、尹大統領と私で、日韓でシャトル外交を再開することを決断しました。我々トップ同士の決断が、日韓関係を大きく「変化」させました。
 尹大統領とは、今年だけで7回も会談しています。文字どおり、「新記録」です。我々の共通点は、おいしい食事とお酒が大好きだということであります。3月に東京に来ていただいた際には、すき焼きと、ハンバーグステーキのお店を「はしご」して、日韓の未来について、長い間語り合いました。ソウルでは大統領公邸ですばらしい韓国料理をごちそうになりました。
 今年8月には、バイデン大統領にキャンプデービッドにお招きいただき、日米韓の「新時代」の幕開けとなる重要な首脳会談を行いました。
 今のこうした状況を、昨年まで、誰も想像しなかったと思います。国のリーダーが決断し、行動することで、世界は「変える」ことができる。それが、私の信念です。
 私は、今、日本で「変化」を強調しています。私は、日本のリーダーとして、日本に「変化」をもたらし、それを「力」に変えたい。そのように考えています。
 30年ぶりの高い水準の賃上げ、過去最高の国内投資、先進国トップの名目GDP(国内総生産)の伸び。「変化」の兆しは、確実に日本に生まれ始めています。
 本日は、数々のイノベーションを起こし、世界を大きく変えてきた、スタンフォードの皆さんと共に、「世界を変える」ための議論をしたいと思います。
 地政学的競争、気候危機、ロシアによるウクライナに対する侵略。キャンプデービッドで、日米韓は、こうした歴史の転換点となる大きな「変化」に対して、連携して行動していくことを確認しました。
 「どの国も1か国では、国を守ることができない」。それが、安全保障の世界では共通認識になっています。だからこそ、これまで以上に同盟国や同志国との連携が重要になっている。そうした中での歴史的な会合でした。
 科学技術の分野でも、同じことが言えます。これからは、「世界を変える」イノベーションは、「一つの国」だけでは起こせない。そうした認識を持つことが重要です。
 例えば、半導体や、量子、AI、日本の部素材技術、韓国の量産技術、米国のAIチップ。イノベーションを起こすには、一つとして欠かすことはできません。
 気候変動などの地球規模課題も、人類の叡智(えいち)を結集しなければ解決は困難です。
 技術の社会実装も同じです。例えば、生成AI。イノベーションと、安全・安心な利用のバランスが課題です。日本がG7議長国として国際的なルールづくりをリードしている「広島AIプロセス」。これは、そのバランスを探るための取組であり、国際連携が必要なテーマです。
 新しい発想は、多様で多層的な人的交流の中で育まれます。国境を越えた人のつながりを強化し、グローバルな、スタートアップのエコシステムを構築していくことも重要な課題です。
 科学技術分野での連携は、「変化する」日韓関係を象徴する領域となります。日韓そして日米韓が連携し、「世界を変えていく」。今日の議論は、その契機となる。そう期待しています。この後の議論も、楽しみにしています。ありがとうございました。

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