日独共同記者会見
【岸田総理冒頭発言】
シュタインマイヤー大統領の御訪日を心から歓迎いたします。シュタインマイヤー大統領との間では、お互い外務大臣であった頃から現在に至るまで、立場を変えながら、数多くの会談を重ねてきました。今回、総理大臣としてフランクをお迎えできたことを嬉(うれ)しく思っております。
政治、経済、文化、学術等、地理的に離れた日独両国を結びつけてきた絆(きずな)は多岐にわたります。しかし、160年を超える両国の交流の歴史の中で、ロシアのウクライナ侵略を受けて国際社会が大きな岐路に立つ現在ほど、両国が共有する基本的な価値という絆の重要性が認識されたことはありません。
正に現在、基本的価値を基礎として、国際社会を牽引(けんいん)するG7の役割が再評価されています。
ドイツから明年、我が国はG7議長職を受け継ぎます。
本日の会談では、そのような背景も踏まえつつ、日独両国の関係の更なる発展はもとより、幅広い国際的課題への取組における両国の連携強化に向けて率直に議論を行いました。
まず、4月にショルツ首相との間で立ち上げに合意した日独政府間協議が、日独関係を更に高いレベルに導く枠組みとなることを期待し、両国政府間で早期の開催に向けて調整を進めていくことを確認いたしました。
また、安全保障分野での協力についても議論を行いました。欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分です。ロシアのウクライナ侵略を受け、ドイツが国防費の増強やNATO(北大西洋条約機構)の防衛力強化に取り組むと同時に、インド太平洋地域への関心・関与を強化していること、これを高く評価いたします。
さらに、私から、日本も5年以内に防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当額を確保する決意であることを伝えるとともに、日米同盟を基礎としつつ、同志国との多層的な安全保障協力を進めていく考えであることを伝え、日独間での連携の強化を確認いたしました。
ウクライナについては、ロシアによる東部地域の違法な併合を含め、同国の主権と領土一体性を侵害する行為は決して認められないということをフランクとの間で確認いたしました。また、私から、ロシアがウクライナにおける核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態であり、広島と長崎に原爆が投下されてから77年間、核兵器が使用されていない歴史をないがしろにすることはあってはならず、仮にロシアが核兵器を使用することがあれば、それは人類に対する敵対行為であり、国際社会としてその行為を決して許すことはないことを強調し、ロシアによる核兵器をめぐる威嚇的な発信に対する強い懸念を共有いたしました。
さらに、ロシアによるウクライナ侵略を一刻も早くやめさせるべく、同志国の緊密な連携の下、強力な対露制裁とウクライナ支援を継続していくことが重要である点を確認いたしました。
そして、3日にドイツで開催予定の日独両国の外務・防衛閣僚による2+2などを通じ、自由で開かれたインド太平洋、さらには法の支配が貫徹される国際社会の実現に向けた日独間の協力を更に強化していきたいと考えています。
また、経済安全保障についても両国が連携を強化していくことで一致いたしました。
この後の夕食会でも、続けて、幅広いやりとりを続けられればと思っております。
改めてフランクの御訪日に感謝を申し上げます。