福島県訪問等についての会見
(今回の訪問の狙いと受け止め及び被災地復興の現状について)
まず、おっしゃるように本日は総理就任してから7回目となりますが、福島を訪問させていただきました。そして東日本大震災また原発事故の被災地であります双葉町、浪江(なみえ)町、そして南相馬市を訪問させていただきました。まず、双葉町では、先月30日に復興拠点の避難指示が解除され、そして、この発災以来初めて役場業務が町内に戻ってきたこと、これをこの自分の目で拝見させていただきました。そして、町の将来を担う若手職員の方3名の方からお話を聞かせていただきました。新庁舎を新たな街づくりのきっかけにしたい、こうした力強いお話を聞かせていただいた次第です。また、浪江町では、昨日の復興推進会議において、福島国際研究教育機構の立地場所を決定させていただきましたが、その立地場所を視察し、地元の熱意とか期待感、これを実感させていただきました。また南相馬市では、この機構の重要な実証フィールドとなります、福島ロボットテストフィールドの入居企業や福島で頑張っておられる起業家の方、そして移住されてきた方、また学生の方からもお話を伺いました。福島と共に成長していきたい、福島の地で社会課題を解決し、スタートアップの先進地としていきたい、こうした思いを聞かせていただきました。こうした皆様方の思いを聞かせていただきまして、改めて東北の復興なくして日本の再生なしとの思いを新たにさせていただきました。福島国際研究教育拠点を国内外から優れた研究者が集まり世界最先端の研究を行う、世界に冠たる拠点とするべく、努力をしていきたいと思っています。そして、機構を中核として研究開発、あるいは産業化、さらには人材育成、こうした成果をしっかり波及させ、福島の創造的復興を加速させていく、こうした取組を進めていきたいと思っています。そして、こうした多くの皆さんの努力・協力によって復興あるいは再生への取組は進んでいるとは思いますが、まだまだ、残された課題は大きく、そしてたくさんあるとも感じています。例えば、この拠点地域以外の避難指示は、解除されていないわけであります。そういった地域において、帰還を希望される方を1日でも早く自らの故郷(ふるさと)、あるいは自宅に戻っていただけるような課題に向けても、政府として地元と心を合わせながら努力をしていかなければいけない。こうした現状につきましても、改めて感じた次第であります。
(国際研究教育機構での研究開発や産業化、人材育成などへの世界的な人材の十分な確保について及び機構の整備効果の日本国内への波及にかかる今後の計画について)
まず、御指摘のとおり、世界に冠たる創造的・復興の中核拠点と機構をするためには、国内外から、優秀な人材を集めること、これが必要なことであります。そのために、施設ですとか、あるいは設備の整備、さらには柔軟な給与の設定、すなわち処遇や人事制度の整備、こうしたことを行うことは大事だと思いますが、今日の意見交換の中にもありましたように、世界のクリエイティブな優秀な人材が生活する上でも魅力ある地域をつくっていくこと、これが大事だと思っています。ですから、こうした設備や人事制度と併せて、魅力的な街づくりに取り組んでいく、こういった視点も大事だと思います。こうしたことを合わせて行うことによって、より優秀な人材を集めていく、こういった発想が大事だとも思っています。また、その成果につきましてもできるだけ広範囲に広げていくことが重要であるという点、これも御指摘のとおりだと思っています。研究開発、産業化、あるいは人材育成といった成果を、まずは浜通り地域全体に広げる、そして福島県全域に広げていく、そしてそれを日本全国、さらには世界へと波及させていく、こうした発想が重要だとも思っています。そのために機構においては、できるだけ県や市町村と連携を図ってもらう、さらには大学を始めとする関係研究機関ともしっかり連携をしてもらう、こうした様々な交流、刺激を与え合う取組が重要なのではないか、このように思っています。そのためにも、まずは地元のニーズやシーズ、これをしっかりと把握するところから、今言った大きな方向性を目指してもらいたいと思っています。
(一部報道であった、海外からの高度人材の誘致を拡充していくための受け入れ制度改正について、及び今後の高度人材を受け入れるに当たっての目標について)
今、世界的な課題として、世界各国が優秀な外国人材を取り込むための人材の獲得競争、こうしたことにおいてしのぎを削っている、人材獲得競争の時代を迎えている、こうした認識があります。先ほども申し上げたように、この福島にも優秀な人材をしっかり惹きつけていかなければならない訳ですが、世界に目を転じますと、シンガポールにおいても、インドネシアにおいても、またニュージーランド、またフランスやイギリス、こういった国々において、より高度な人材をそれぞれの国に取り込むために、在留資格制度、優遇する制度、こうした制度を取り入れている、これが現実の今の世界の状況です。日本においても、従来から高度人材のポイント制度ですとか、あるいはスタートアップビザ制度ですとか、こうした制度を導入して高度な人材を集めようという努力は続けてきましたが、世界の状況を見る限り、まだまだ日本は足りないと、もっと努力をしなければいけない、このように思っています。そして、制度においてもより工夫をしていきたいと思いますが、あわせて、先ほども話が出ましたが、高度な人材を集めるためにはより魅力的な生活環境も併せて用意しないと、優秀な人材は集まってこないというのが現実です。ですから医療ですとか教育ですとか、さらにはコミュニティの開放性ですとか社会の雰囲気、こういったものも含めて、質の高い高度人材に魅力的な生活環境を作っていく、こうしたことも考えていかなければいけない。こうした制度面における人材受け入れと、そして質の高い生活環境、これを2つの柱として、人材獲得に日本も努力していかなければならないと思っています。そういった発想をもって、制度についても考えていきたい、こういった思いを先日、申し上げさせていただきました。具体的にはよくしっかりと詰めた上で、一つ一つ積み上げていきたいと思っています。
(それは、新しく制度を作るのか、今ある制度を改正するのか)
両方です。
(本日17日で日朝平壌宣言の署名から20年を迎え、今後政府として拉致問題にどう取り組むかについて)
まず、我が国は従来から一貫して、日朝平壌宣言に基づいて、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す、こうした考えであり、この方針は今後も何ら変わるものがないと思っています。日朝平壌宣言については、日朝双方の首脳が議論をし、そして、その結果として、日朝関係の今後の在り方を記したものです。両首脳により署名された文書であり、北朝鮮側もこのことは否定はしておりません。我が国としても日朝平壌宣言に基づいて確認された事項が、誠実に実施されることが重要であると思っています。そして、御指摘のように2005年に5名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していないということ、このことについては痛恨の極みであると思っております。解決を強く求める御家族の切迫感、これをしっかりと政府として受け止めなければならない。このように思っています。そのために、まずは米国を始めとする関係国と密接に連携をしていくことは重要でありますが、何よりも我が国自身が主体的に取り組むことが重要であると思っています。私自身、条件を付けずに金正恩(キム・ジョンウン)委員長と直接向き合う決意を述べてきているわけですが、先ほど申し上げました、我が国の基本的な方針に基づいて、あらゆるチャンスを逃すことなく全力で行動をしていかなければならない、こうした20年という節目の時を迎えまして改めて感じているところです。