令和4年沖縄全戦没者追悼式における内閣総理大臣挨拶
令和4年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れられた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
先の大戦において、ここ沖縄は、凄惨な地上戦の場となりました。20万人もの尊い命が失われ、沖縄の美しい自然、豊かな文化は容赦なく破壊されました。
平和の礎(いしじ)に刻まれた全ての戦没者の無念、御遺族の悲しみを思うとき、胸塞がる思いを禁じることができません。
今日私たちが享受している平和と繁栄は、命を落とされた方々の尊い犠牲と、沖縄の歩んだ苦難の歴史の上にある。
そのことを深く胸に刻みながら、静かに頭(こうべ)を垂れたいと思います。
本年5月、沖縄の本土復帰から50年を迎えました。県民のたゆまぬ努力もあり、この間、沖縄は様々な困難を乗り越えながら、着実に発展してきました。沖縄経済は成長し、県民生活も大いに向上いたしました。
しかしながら、一人当たり県民所得の向上、子供の貧困の解消などの課題は、今なお残されています。
アジアの玄関口に位置する地理的特性。亜熱帯の美しい自然。「万国津梁(しんりょう)」の地として諸外国等との交流を重ねる中で育まれてきた国際色豊かな文化や伝統。これらはいずれも沖縄ならではの魅力、そして優位性です。
その潜在力を最大限に引き出し、強い沖縄経済が実現されるよう、そして、沖縄が21世紀の「万国津梁」の地となるよう、改正沖縄振興特別措置法等を最大限に活用しながら、沖縄振興に取り組んでまいります。
沖縄の皆様には、今もなお、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいています。政府として、このことを重く受け止め、引き続き、基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。
在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小を進めており、基地負担軽減の目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げてまいります。
戦後、我が国は、一貫して、平和国家として、その歩みを進め、世界の平和と繁栄のため、力を尽くしてまいりました。戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを貫き、世界の誰もが平和で心豊かに暮らせる世の中を実現するため、不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓い申し上げます。
結びに、この地に眠る御霊の安らかならんことを、そして御遺族の方々の御平安を心からお祈りし、私の挨拶といたします。
令和四年六月二十三日
内閣総理大臣 岸田文雄