内外情勢調査会全国懇談会 岸田内閣総理大臣講演
本日は、内外情勢調査会の講演会、講師としてお招きにあずかりました。誠にありがとうございます。
私が自民党総裁選挙に立候補を表明いたしましたのは、今年の8月26日でございました。つい昨日のことのような気がいたしますが、その後、大変激しい総裁選挙を経て、9月30日に自民党総裁に選ばれ、そして10月4日に第100代内閣総理大臣に就任させていただきました。しかしその時点で、衆議院議員の4年の任期、間もなく切れるという情勢でありました。政治空白、できるだけ短くしなければならない、さらには新型コロナの感染状況、また与野党の政治状況、いろいろなことを勘案して、できるだけ早く衆議院選挙をやらなければならない、解散をしなければいけない、こういった状況にありました。結果として、10月4日、総理に就任しまして、10日で衆議院を解散いたしました。恐らく歴史上最短ではないかと思います。
その後、第49回衆議院選挙となったわけですが、マスコミの皆様の予想、どこも、自民党は過半数に届かないと、大変厳しいと、そういった情勢でありました。
もし、あの選挙に負けていたならば、恐らく私は就任して30日程度で退陣ということになっていたでありましょう。日本の歴史上、最も短い内閣、昭和20年の東久邇宮(ひがしくにのみや)内閣、54日間というのが最短と聞いておりましたので、あの選挙負けたならば、恐らく歴史上最短記録を塗り替えるという、大変有り難くない称号を頂いたかと思いますが、大変有り難いことに、多くの皆さんのお力添えを頂いて、選挙、261議席、絶対安定多数を頂いて、101代目の総理大臣、引き続き、務めさせていただいている、こうしたことでございます。
そして、こうして年末を迎えるわけですが、総理就任以来、国内外の情勢、本当に目まぐるしく変わっています。機動的に対応しなければいけない、スピード感を持って対応しなければいけない、そうした思いで、新型コロナ対応、経済対策、外交・安全保障、様々な課題に取り組んできました。
その際に心掛けていたこと、それはやはり判断の物差し、これは何といっても、国民の皆さんにとって、ためになるか、良いことか。国民の皆さんの立場というものが物差しだと、心に再三、刻んできました。
多少御負担をお掛けすることがあっても、国民にとって必要であれば決断する。一度決まった方針であったとしても、情勢が変わったならば、前例にとらわれず、躊躇(ちゅうちょ)なく柔軟に対応する。こうした方針で臨んできたところでございます。
本日の講演におきましては、新型コロナ対応について、足下の動き、簡単に紹介させていただいた上で、今後の日本経済再生の要である新しい資本主義、そして今後の外交・安全保障について、重点的にお話させていただきたいと思ってまいりました。
まず新型コロナ対応ですが、新型コロナ対応を行う中で、今一番の懸念は、感染力が極めて高いと言われていますオミクロン株であります。
オミクロン株について、情報が初めて明らかになったのは先月末でありました。即座に、外国人の新規入国停止という、G7の中でも最も厳しい水際対策を講じ、慎重の上にも慎重を期して対応を行ってきました。
この措置は、念のため、臨時・異例の措置ということで行ってきましたが、現在に至ってもなお、このオミクロン株の感染力、あるいは重症化リスク、科学的な評価はいまだ確立しておりません。このため、年末・年始の状況をしっかり見極めた上で、その先についても考えたいと思っています。
こうした中、水際対策については、年末・年始を見極めた上で、先を考えるという態勢でおったところ、昨日、大阪府において、海外渡航歴がなく、感染源とのリンクが追えない、いわゆる市中感染の事例が発生した、こうした報告を受けました。今日は京都で、また新たな市中感染が報告された、こうしたことも聞いております。
国内の感染抑え込み策を強化していかなければならないということで、感染性、あるいは伝播性(でんぱせい)の高さが指摘されているオミクロン株に対応するため、引き続き、全国の国内感染者について、オミクロン株の検査を行うということで、早期探知、これを徹底してまいりたいと思います。また、オミクロン株の濃厚接触者に対しては、自宅ではなくして、宿泊施設で14日間の待機を要請するなどの対策を講じているところであります。
そして無料検査については、ワクチン接種を受けられない方を対象に、年内から、予約不要の無料検査、全ての都道府県で開始いたします。特にオミクロン株の市中感染が確認された大阪、そして今日確認された京都、そして米軍基地で集団感染が発生した沖縄では不安が広がっています。こうしたオミクロン株の封じ込め対策が必要な地域については、不安のある全ての方を対象に無料検査を実施できるようにいたします。
そして、飲める治療薬については、オミクロン株にも極めて効果が高いと言われています。メルク社のモルヌピラビルについては、明日の専門家会議で可とされれば、直ちに承認した上で、週末より全国に20万回分の配送を開始し、来週から使えるようにいたします。
そして、3回目のワクチン接種の前倒しについては、医療従事者と、重症化リスクの高い、65歳以上の高齢者、約3,100万人の方々を対象に行ってまいります。
そして、医療提供体制については、新型コロナ対策の全体像として示した方針に基づいて、感染力が、今年の夏の2倍になっても対応できるように、病床の確保や、緊急時における医師や看護師の確保に努めております。そうした体制を既に準備し終えております。この医療提供体制が、状況に応じて、即座に稼働できるよう、昨日、厚生労働省から各都道府県に対して、医療提供体制の点検・強化、これを行うように要請したところであります。
そして、平時に近い経済社会活動を取り戻すには、今、現状見る限り、もう少し時間が掛かると考えます。それまでの間は、断固たる決意で、国が、新型コロナでお困りの方々の生活、事業、そして雇用を守っていかなければなりません。
事業規模78.9兆円のコロナ克服・新時代開拓のための経済対策、この経済対策には、そのための政策をしっかり盛り込みました。今週、裏付けとなる補正予算が成立いたしました。一刻も早く、国民の皆さんにお届けしてまいります。
そして、このコロナ禍を乗り越えた先に、日本経済の再生を考えていかなければなりませんが、日本経済再生の要である新しい経済モデル、新しい資本主義について、お話させていただきます。
人類が生み出した資本主義は、今日まで、市場を通じた効率的な資源配分と、市場の失敗がもたらす外部不経済への対応という、この二つの微妙なバランスを常に修正することで、進化を続け、長い間、世界経済の成長の原動力となってきました。
こうした中で、市場や競争に任せれば、全て上手くいくという、新自由主義的な考え方は、1980年代以降、世界の主流となり、世界経済の成長の原動力となってきた。しかし一方で、資本主義のグローバル化が進むに伴い、その弊害も顕著になってきました。
市場に過度に依存したことで、格差や貧困が拡大したこと、自然に負荷を掛け過ぎたことによって、気候変動問題が深刻化したこと、これらも一例だと思います。
そうした中、世界各国で、こうした弊害に対応するために、新たな資本主義のモデルを模索する、こうした動きが始まっています。
その背景には、新自由主義的な考えが生んだ格差、貧困、こうしたものの拡大が、分厚い中間層の毀損を生み、分厚い中間層に支えられて育まれてきた健全な民主主義を脅かそうとしている、こういう危機感があるのだと思います。
米国におけるビルド・バック・ベター、またEU(欧州連合)の次世代EUといった政策、これらはこうした問題意識に基づく、新たな資本主義モデルの模索の動きであり、私の新しい資本主義も、これらの動きと軌を一にするものであると思います。
世界を見回しますと、資本主義は、権威主義的な国家を中心とする国家資本主義とも呼べる経済体制からの強力な挑戦に直面しています。こうした挑戦に対抗していくためにも、我々は、自ら資本主義をバージョンアップしていかねばならない、こういった点も指摘しておきたいと思います。
かつて資本主義の進化の動きは、いずれも欧米発の動きでした。私は、我が国において新しい資本主義をいち早く実現することで、今回の進化では、我が国が世界をリードしていきたいと考えています。これから、世界の首脳とも、このような問題意識を共有し、グローバルな議論に積極的に貢献していきたいと考えます。
これから、我が国で実現していくべき、新しい経済社会のモデル、すなわち、新しい資本主義の中心となるコンセプトは、成長と分配の好循環です。
しかし、成長と分配の好循環、これは今までも度々言われてきたところであります。
今回の新しい資本主義においては、市場や競争に全てを任せるのではなくして、官と民が、経済社会変革の全体像を共有しながら、協働していくこと、これが重要だと考えています。
岸田政権では、市場の失敗や外部不経済を是正する仕組みを、成長戦略と分配戦略の両面から、資本主義の中に埋め込んで、資本主義がもたらす便益を最大化してまいります。
すなわち、市場や競争に全てを任せるのではなく、官民協働で、成長戦略においては、気候変動問題等の課題を成長のエンジンに変えていく。また分配戦略においては、格差の問題にしっかり向き合っていく。そして、これらを循環させることによって、経済を持続可能なものにしていきたいと考えています。こうした取組によって実現する成長と分配の好循環による持続可能な経済こそが、日本において追求していくべき、新しい資本主義であると考えています。
まずは、成長戦略ですが、デジタル化、気候変動問題への対応、経済安全保障、イノベーション・科学技術など、この世界的な潮流の中で、我が国が克服しなければならない新時代の課題を、これからの成長分野にしていくという発想で取り組んでまいります。弱点を、強みに転換していくということであります。
これらの分野において、集中的に、官による投資や、規制改革を行うことや、国が新たな市場拡大の見通しを指し示すことで、民間投資を呼び込みます。これにより、課題解決を進めるとともに、新たな成長を実現させてまいります。
成長戦略の柱となる、デジタル化、気候変動問題という切り口から、より具体的なイメージを説明したいと思います。
まず、デジタル化です。私は、デジタル田園都市国家構想という構想を打ち出しています。社会全体で、デジタル化を進めていかなければならないということ、これはもちろんですが、デジタルの力を最もいかせるのは地方であると確信しています。
地域が抱える、人口減少、高齢化、また産業空洞化、こうした課題を、デジタルの力を活用することによって解決してまいります。デジタルによる地域活性化を進め、さらには、地方から国全体へ、ボトムアップの成長を実現してまいります。
これからの時代の成長を支えるのは、社会全体のデジタル化の基盤となる、5G、光ファイバー、データセンターといったデジタルインフラです。来年3月までに、全国のデジタルインフラ整備計画、これを作成いたします。その計画に沿って、官民で投資を行い、インフラ整備を進め、日本全国どこにいても、大規模大容量のデジタルサービスを活用できるようにしてまいります。
自動配送・ドローン宅配・遠隔医療・教育・防災・リモートワークなど、地域が抱える様々な課題を解決する新たなデジタルサービスへの投資を促すためにも、規制改革、極めて大事です。
年末に定めるデジタル原則に合っているかという観点から、4万件の法律、政省令、通知の見直しを進め、来春には、規制の一括見直しを行うためのプラン、これを取りまとめます。
さらに、デジタル化を進めるに当たっては、誰一人取り残されず、全ての人がデジタル化のメリットを享受できるということも大切です。高齢者を始め、デジタルに不慣れな方などをサポートするため、1万人以上のデジタル推進委員を、全国津々浦々に展開いたします。
次に、気候変動問題です。2030年度46パーセント削減、2050年カーボンニュートラルの目標、もちろん堅持いたします。
私は、気候変動問題は新しい資本主義の中心に位置する問題であると考えています。
エネルギー基本計画といった、供給側目線での目標を出すだけではなく、経済社会や産業全体が直面する、数世代に一度の変革を、我が国がどう成し遂げるか、経済社会変革の全体像と併せて、道筋を丁寧に示してまいります。
地方が主体的に進める、脱炭素化の取組を後押しすることも重要です。複数年の予算を確保し、脱炭素化に向けた先進的な地域づくりを支援することで、先の見通しを持たせ、地域や民間の投資、呼び込んでまいります。
次に、分配戦略の方ですが、成長によって得た果実を、一部の人や企業だけが独占するのではなくして、幅広く分配することで、格差や分断といった課題に向き合ってまいります。官と民が役割分担しながら協力することで、全ての国民、地方、あるいは中小企業などに、しっかりと成長の果実が行き渡るようにしてまいります。これにより、成長を支える新たな需要を創出し、次の成長につなげてまいります。
分配戦略の柱は、企業による賃上げと人への投資であると思っています。
企業による賃上げについては、あらゆる手段を講じて、企業が賃上げしようと思える雰囲気を醸成してまいります。
賃上げを通じた人への分配は、コストでなく、未来への投資です。きちんと賃金を払うことが、企業の持続的な価値創造の基盤にもなるという考えを、官民広く共有していくことが大事です。
また政府も、大胆な賃上げ税制、国による公的価格の引上げ、中小企業の価格転嫁対策など、あらゆる政策を動員していきます。
人への投資も分配戦略の重要な柱です。デジタルトランスフォーメーション、グリーントランスフォーメーションといった大きな変革の波の中にある今、新たな付加価値の源泉として、創造性やイノベーションを生む、人の重要性、これがますます高まっています。
これからは、人の力をいかに引き出すか、企業価値創造、そして、経済全体として成長を実現していくために、最も大切な要素になると考えます。
そして、人への投資が進めば、企業の成長だけでなく、結果として、更なる賃上げを実現する、これも可能となります。
企業による賃上げと人への投資、この両面から分配を進めてまいります。
こうした4つのポイントを中心に、成長と分配の好循環を実現し、経済の持続可能性、しっかりと維持していきたいと考えています。
そして次に、外交・安全保障について、少し申し上げます。
我が国を取り巻く安全保障環境、厳しさ、そして複雑さをますます増しています。外交・安全保障の巧みなかじ取り、そして安定政権の確立、これが以前にも増して求められています。
私が育ってきた宏池会(こうちかい)は、リアリズムの外交を掲げてきました。日中国交正常化の大平外交。PKO(国連平和維持活動)法を作った宮澤政権。私は、リアリズムの外交をバックボーンに受け継ぎながら、未来への理想の旗をしっかり掲げ、我が国として主体的な外交を展開していきたいと考えています。一言で言えば、新時代リアリズム外交、こうしたものを進めていきたいと考えています。
具体的には、普遍的価値の重視、地球規模課題の解決に向けた取組、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組、この3本柱で取組を進めていきたいと思っております。
第1に普遍的価値の重視ですが、私の政権では、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値、さらには航行の自由、自由貿易といったルールを重視し、これを守り抜くために、同盟国・同志国と連携し、しっかり声を上げてまいります。
中谷元国際人権問題担当総理補佐官を任命いたしました。中谷補佐官の下、国際社会の人権問題に省庁横断で取り組んでいきたいと思います。
最重要課題である拉致問題については、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく全力で取り組みます。
また、我が国が提唱し推進する、自由で開かれたインド太平洋は、今や国際社会の多くの国から支持を得ています。自由で開かれたインド太平洋実現に向けた最も重要なパートナーは、米国です。私は、早期に訪米して、バイデン大統領と会談し、協力を新たなレベルに引き上げてまいります。
また、豪州、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)、欧州などと連携し、また日米豪印、いわゆるクアッドも活用してまいります。
こうした外交を進める上で、中国やロシアとどう向き合っていくのか、これもしっかり考えていかなければなりません。
中国に対し、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、対話を続け、共通の課題については協力し、建設的かつ安定的な関係構築、これを目指してまいります。
ロシアとは、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針の下、日露関係全体の底上げ、発展を目指してまいります。
そして2つ目の柱、地球規模課題への解決に向けた取組ですが、気候変動、核兵器のない世界、新型コロナ対策、防災。こうした地球規模課題の解決に向けても、積極的に取り組み、我が国の存在感を、そして発信力を高めていきたいと思います。
人類共通の課題である気候変動問題の解決に向け、アジアのゼロエミッション化を進め、途上国の脱炭素移行を推進いたします。
また、核兵器のない世界に向けた取組は、私のライフワークであり、被爆地出身の内閣総理大臣として、全力で取り組んでまいります。
被爆2世である寺田稔(みのる)衆議院議員を核軍縮・不拡散問題担当総理補佐官に任命いたしました。年明け、NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議を始め、しっかり取り組んでもらいたいと思っています。
私は、4年8か月の外務大臣の経験から、核兵器国を実際に動かさないと物事は何も進まない、こうしたことを痛感してきました。だからこそ核兵器国が参加するNPTを重視しており、NPTを動かすことが現実的な取組であると確信しています。NPT運用検討会議の成功のために、全力で取り組んでまいります。
そして、外交・安全保障の3本目の柱、我が国の平和と安全を守り抜くための備えの強化ですが、我が国を取り巻く安全保障環境がかつてないスピードで厳しさを増す中、国民の命と暮らしを守り抜いてまいります。
ミサイル技術の著しい向上、経済安全保障といった新しい時代の課題に対応するため、概ね1年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定してまいります。
いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化していきたいと思います。
そして最後に、自民党総裁として、憲法改正について一言申し上げます。
憲法改正、これは自民党の結党以来の党是であり、来年は積極的にこの課題にも取り組んでいきたいと思っています。この臨時国会で、私が総理になって初めての憲法調査会が開催されたこと、これを歓迎いたします。次期通常国会では、更に議論が深まることを心から期待いたします。
改憲を実現するためには、何よりも、国民の理解が大切です。来年、自民党は、全国で、自民党が掲げる改憲4項目を中心に、憲法改正に関する国民との車座対話を進め、国民的な議論を喚起していきたいと考えています。
そして、今日申し上げたコロナ対応、経済対策、そして外交・安全保障、さらには憲法、こうした様々な政策を力強く推進していくためにも、最も重要なことは、国民の信頼と共感です。そのために、国民の声にしっかりと耳を傾け、丁寧で謙虚な政治を行わなければならないということを申し上げてきました。
自民党は、責任政党として、国民の信頼と共感を得られるよう、自ら変わっていけるということを示していかなければなりません。
役員定年制の導入、若手登用、政策立案の仕組みなど、自民党総裁選の際に、20項目の党改革の提案を私は行いました。これらの項目を踏まえ、しっかりと党改革を進めてまいります。
今年も残すところ、あと9日となりました。残りの期間も、年度内の予算編成を目指し、そして、年明けからスタートダッシュを切れるように、今から政策の仕込みを行うため、手綱を緩めず、年越しまで走り切ります。
そして来年は、やはり新型コロナ対策。何としても、新型コロナとの戦いに勝ち抜きます。そして、経済再生、外交・安全保障を軌道に乗せていきたいと考えています。
そしてその先には、参議院選挙があります。その戦いにもしっかりと勝利を収め、日本の再起動、新しい時代を切り拓いて行くための道のりを、描いていく覚悟です。
本日は御清聴いただきましたこと、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
(新しい資本主義の実現及び成長と分配の好循環に向けての日本銀行との協力・連携の在り方について)
まず政府と日銀との関係ですが、結論から言うのならば、この両者、しっかりと連携しながら政策を進めていくことが重要であると思っています。
11月2日ですが、確か鈴木財務大臣と山際大臣と黒田総裁との間で再確認が行われて、2013年の政府と日銀の共同声明の考え方に基づいて、デフレからの早期脱却、物価安定の下で持続的な経済成長の実現に向けて、それぞれ役割を果たしながら、緊密に連携していく、これを確認したということがありました。
日本銀行においては、2013年の共同声明の考え方に基づいて、引き続き、物価安定目標2パーセント実現に向けて努力されると期待しております。
政府においても、先ほどの講演の中で申し上げました、成長と分配の好循環に基づいて、賃金の持続的な上昇、これをしっかり取り組んでいきたいと思います。
日銀の金融政策と政府の財政・経済政策、この二つがうまく連携することによって、日本の経済は健全に、また活力を取り戻していくということになるのだと思いますので、この両者の連携、意思疎通、これをしっかり図ることが重要である。その結果、どういった政策を進めていくかということは、世界の情勢、コロナ禍の動き、様々なものがありますが、当面は今言ったような形で連携を続けていくことが重要であると思っています。
(参議院選挙の主要な争点及び通常国会の施政方針演説でどのようなメッセージを発するのかについて)
まず、参議院選挙に向けてですが、まだ半年以上先のことですから、参議院選挙における争点等について、今まだ、申し上げるのは早いのかと思いますが、ただ当然のことながら、新しい年に向けて、コロナ禍、どういった状況になっているのか、それに対して政府がしっかり国民の理解、協力が得られるような対策を進めていることができるかどうか、そしてできるだけ早い時期に、できるだけ平時に近い経済社会活動を取り戻す道筋を示すことができるか、これは大変大きい、何といっても国民にとって最も大きな関心事だと思います。
参議院選挙の時点で、どの段階にあるかというのはなかなか難しいと思いますが、コロナ対策の評価というのは当然、大きな関心事でありましょうし、そしてできるだけ平時の経済社会活動を取り戻す、こういった道筋が見えたならば、そこから先の、先ほど言った新しい資本主義等を始めとする、経済対策、これが大きな争点になるのではないかと想像はいたします。
憲法改正については先ほども言いましたように、何といっても国民の理解が重要だと思っています。日本の法典の中で唯一、国民投票が定められている法典、これが憲法であります。ですから憲法の改正には、最後は国民投票が求められる。国民の理解が必要ですし、今、憲法の議論は、実際のところ、主戦場は既に国会に移っていると思います。衆・参の憲法審査会での議論が今や主戦場になっていると思いますが、この国会の議論とて、国民の雰囲気、これが大きく影響すると思いますので、国民の理解を得ながら、丁寧に取組を進めていくことが肝要だと思っています。
自民党が掲げている4項目、これはどれも現代的な課題ばかりであり、国民にとって大きな関心事であるはずだと思っていますが、その辺りを丁寧に国民に示していきながら、憲法改正について、議論を進めていくことが重要であると思います。憲法については、自民党は毎回国政選挙において、一応公約の中に憲法は乗せてはおりますが、具体的には今言った丁寧な取組が必要であると思っています。