GZEROサミット2021における岸田内閣総理大臣挨拶

更新日:令和3年12月8日 総理の演説・記者会見など

 内閣総理大臣の岸田文雄です。Gゼロサミットが、オンライン形式とはいえ、今年も盛大に開催されることをうれしく思います。十倉経団連会長、櫻田経済同友会代表幹事、そしてイアン・ブレマー氏の下で、今後の世界の展望を開く活発な議論が交わされることを期待いたします。
 人類が生み出した資本主義は、効率性や起業家精神、活力を生み、長きにわたり、世界経済の繁栄をもたらしてきました。
 歴史を振り返ると、資本主義は、そのメリットとデメリットの間の微妙なバランスを取りながら、進化してきました。20世紀半ばに行われた福祉国家建設に向けた取組、その後の新自由主義の広まりは、いずれも、そうした資本主義の進化の過程でした。
 今、資本主義は、更なる進化を求められています。
 1980年代以降、世界の主流となった新自由主義的な考えは、世界経済の成長の原動力となった反面、多くの弊害も生みました。
 市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大し、また、自然に負荷を掛け過ぎたことで、気候変動問題が深刻化しました。
 世界では、米中関係を始め、地政学的緊張が高まる局面にあり、Dr.ブレマーが指摘するGゼロの度合いが強まっています。この緊張のひとつの本質は、経済社会そのもののバージョンアップの立ち遅れにあります。
 これまでの市場偏重・株主偏重の資本主義がもたらした歪み(ゆがみ)が、選挙ポピュリズムや偏狭なナショナリズムの形で、健全な民主主義にしわを寄せています。
 また、権威主義的な国も、格差拡大や権力と富の癒着という歪みにさらされ、軍事的拡張、国民への監視強化などの形に、しわを寄せています。
 これ以上、問題を放置することはできないというのが、主要先進国共通の思いではないでしょうか。米国ではビルド・バック・ベター、欧州では次世代EUという新たな資本主義モデルを模索する動きが始まっています。
 これらの政策に共通するコンセプトは、資本主義が生む様々な弊害を是正しながら、力強い成長を実現し、国家を、そして、国民を豊かにするというものです。
 岸田政権では、私のイニシアティブの下で、人への分配を強化することや、今後の成長分野でもある気候変動や、デジタル化、経済安全保障といった分野に、官と民が共に役割を果たしながら、大胆な投資を行うことで、成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現する方針を打ち出しました。
 来春には、新しい資本主義のグランドデザインを公表し、世に問うつもりです。世界に向けて発信し、同じ問題意識を持つ主要国の首脳と共に、グローバルの議論を牽引(けんいん)します。
 今回、Gゼロサミットでは、健康安全保障、国際ルール、気候変動問題が、主な議題だと聞いています。
 いずれも、経済社会の持続可能性に関わる重要な論点であり、私が掲げる新しい資本主義の議論と、極めて親和性が高いテーマです。
 経済社会の持続可能性こそが、私の問題意識の根幹です。
 健康安全保障、国際ルール、気候変動など、経済社会活動の持続可能性を脅かすリスクに対応しつつ、官と民が役割分担をしながら、協働して、国家、そして国民が豊かになるための経済社会システムを作っていきます。
 そのための第一歩として、私は、以下の取組を行います。
 第1に、健康安全保障です。我々は、新型コロナの脅威を、社会全体として、可能な限り引き下げます。そのために、ワクチン、無料検査、飲める治療薬の普及に取り組み、予防、発見から早期治療までの一連の流れを抜本的に強化します。
 今回の経験を踏まえ、我々は、国内ワクチン、治療薬の開発・製造に5,000億円を投資することにしました。こうした取組により我が国のレジリエンスを高めるとともに、新たな成長の種を生むことを狙います。
 第2に、国際ルールについてです。新しい資本主義の時代に求められる重要な国際ルールは、デジタル分野におけるルールです。信頼性のある自由なデータ流通、DFFTの実現に向けた国際的なルール作りを主導し、自由で公正な経済秩序を構築し、世界経済の回復、新たな成長を後押しします。
 国内的には、新しく設立したデジタル庁を司令塔として、早急にデジタル原則を定め、社会全体のデジタルトランスフォーメーションを進めます。
 第3に、気候変動の問題です。気候変動問題など人類共通の社会課題を新たな市場を生む、成長分野へと大きく転換していきます。
 2050年カーボンニュートラル及び2030年の46パーセント排出削減の実現に向け、再エネ最大限導入のための規制の見直し、及び、クリーンエネルギー分野への大胆な投資を進めます。
 火力発電のゼロエミッション化に向け、アンモニアや、水素への燃料転換を進めます。我が国の技術やインフラの力を高め、同じようなエネルギー事情を抱える、アジアを中心とした国々の脱炭素化に貢献していきます。
 世界において、Gゼロの傾向が強まる中で、日本は米国、ASEAN(東南アジア諸国連合)、豪州、インドなどと共に、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)を実現し、また、QUADを更に実りあるものにしていく責任を強く背負っています。我が国は、堅固な日米関係を基軸としながら、地政学的緊張や気候変動を始めとする地球規模の課題を、イノベーションとダイナミックな活力、そして、フリー・フェア・オープンな価値観の浸透によって解決していくソリューション・パワーとして、地域のリーダーシップを採ることで、全力を尽くしてまいります。
 改めて、このように、盛大にGゼロサミット2021が行われることを心からおよろこび申し上げ、開会に当たっての御挨拶とさせていただきます。

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