東京栄養サミット2021 岸田総理大臣スピーチ
御出席の皆様、東京栄養サミット2021へようこそ。世界各国から皆様をお迎えし、このサミットを開催できることをうれしく思います。
世界は、一方で栄養不足、もう一方で栄養過多という課題に直面しています。現在、栄養不足のため、世界で1億4,000万人以上の子供たちが発育阻害に苦しんでいます。5歳未満の子供の死亡の約半数が栄養不足に起因しています。
同時に、先進国のみならず、途上国においても、肥満の問題も記録的なレベルにあります。世界の約20億人が、糖尿病など食生活に関連した病気に苦しんでいます。
栄養不足と栄養過多という、この栄養不良の二重負荷は、世界共通の問題です。
さらに、新型コロナの影響も甚大です。新型コロナにより、重度の栄養失調に苦しむ子供たちが1,360万人増加しています。
日本も戦後、栄養不良に苦しみました。しかし、栄養調査や栄養士制度、学校給食、栄養指導など、科学的なエビデンスに基づいた栄養政策を進め、国民一人一人の栄養状況を改善しました。そして、健康長寿社会を築いてきました。
御出席の皆様、2030年までに飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進するというSDGs(持続可能な開発目標)の目標を、今ここで思い出しましょう。今こそ、私たちの行動が必要です。
日本は、今後3年間で3,000億円、28億ドル以上の栄養に関する支援を行うことを表明いたします。自らの経験に基づく知見を共有します。人間の安全保障の理念の下、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成や、科学技術も活用した持続可能な食料システムの構築の実現に貢献します。
栄養の力で人々を健康に、幸せにする。これは、日本栄養士会会長の中村丁次(ていじ)氏の言葉です。日本は、この思いを世界に広げます。
日本はまた、国内において、イノベーションやデジタル化の推進、科学技術も活用しながら、栄養と環境に配慮した食生活、バランスの取れた食、健康経営等の推進を通じ、国民の栄養状況を更に改善していく決意です。
各国政府のみならず、国際機関、民間企業、市民社会、学術界など、全ての関係者の力を結集する必要があります。本日の東京栄養サミットを通じて、全ての関係者が資金と政策の双方に関する野心的なコミットメントを発表することを強く期待いたします。
我々が栄養問題に向き合うとき、誰一人取り残してはなりません。日本は、栄養問題に全力で取り組み、人類の未来に貢献していきます。
そのためにも、まずは新型コロナの克服が重要です。日本は、COVAX(コバックス)に対し、合計10億ドルの財政拠出を表明しています。オミクロン株の発生も踏まえ、特に喫緊のワクチン需要があるアフリカに対し、国際機関などと調整の上、日本として1,000万回分をめどとしてワクチン供与を行います。
今こそ、この東京から、世界中の皆さんの英知と決意を結集し、栄養改善に向け、大きく踏み出しましょう。ありがとうございました。