岸田総理によるドイツ「ハンデルスブラット」紙への寄稿文

更新日:令和6年7月12日 総理の指示・談話など

「ドイツと日本 - 自由な世界の重要な基盤」

 今般、欧州・G7の大国であり、日本の重要な戦略的パートナーであるドイツを訪問する機会を得たことを大変うれしく思います。日本の総理大臣によるドイツへの二国間訪問は2017年以来7年ぶりとなります。
 現下の厳しい国際情勢の中で、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であることはますます明らかとなっています。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて両国が担うべき役割や連携の重要性が高まっていると考えます。
 今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない。G7唯一のアジアの国である日本は、ロシアのウクライナ侵略を受け、厳しい対露制裁とウクライナへの最大限の支援を実施しています。また、ドイツがNATO(北大西洋条約機構)・自国の防衛力強化に取り組むと同時にインド太平洋地域へのコミットメントを強化していることは心強い限りです。
 160年以上の長きにわたる日独交流の歴史の中で、自由、基本的人権、法の支配といった両国を結びつけてきたきずなの基盤が今ほど重要となったことはありません。活発な要人往来を通じ、約9,000キロメートル離れた日独の関係はかつてないほど緊密で強固なものとなっています。
 両国が「時代の転換」に対応し、新たな脅威に対応しながら協力を深めるべきフィールドは経済分野にも及びます。従来の経済合理主義に基づく資源の供給元や製造拠点の選択は、特定国への過度の依存をもたらし、長期的に経済安全保障上のリスクをはらむことがますます顕在化しています。日独両国は、国家安全保障戦略の中に経済安全保障を位置付け、経済関係の多角化を含むリスク低減に取り組んでいます。
 こうした背景から、昨年3月、ショルツ首相と6名の関係閣僚を東京に迎えて開催した第1回日独政府間協議では、経済安全保障を中心的なテーマとして、日独間の協力の強化に向けて率直に議論を行いました。同協議の成果も基礎としながら、ドイツとの間でこの分野における連携を更に強化していきたいと考えています。
 同志国が連携し、抜け穴を防止しながらこうした取組を効果的に進める上で、共に高度な技術力を成長の基盤としてきた両国の産業が、対立的な競合関係に陥ることなく、信頼できるパートナーとして連携することが不可欠です。一部独企業の中にある、アジアにおける拠点機能を日本に移転することを検討する動きを歓迎します。
 また、経済安全保障上の取組に加え、研究・技術協力の促進も重要です。この点に関し、気候変動対策の鍵となる水素、クリーンエネルギーに加え、半導体や自動車産業におけるデータ共有等の分野で両国の企業等が高度な技術力と知見を持ち寄り、相乗効果を生み出すために連携する動きがあることを歓迎します。また、両国の間でスタートアップ企業の進出・誘致の促進に向けた取組も行われており、日本政府として、民間企業間の連携強化に向けた取組を更に後押ししていきたいと思います。
 来年は関西・大阪万博が開催されます。ドイツパビリオンのテーマである「わ!」は、サークルや人と人とのつながりを意味することに加え、日本では、いたずらで人を驚かすときに用いられる擬音語でもあります。この万博を、未来の社会像を示し、世界中の人々を驚かせる機会にしたいと思います。