岸田総理によるコリエレ・デッラ・セーラ紙への寄稿文
6月13日開幕のG7プーリア・サミットの機会に、イタリアを訪問できることは、私にとって大いなる光栄だ。国際社会は歴史的な転換点に立っている-私は、議長として臨んだ昨年のG7広島サミットに際して、このような認識をもって臨んだが、1年を経て国際社会は緊迫の度を一層高めている。広島サミットでは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化と、グローバル・サウスを始めとするG7を超えたパートナーとの関係強化という二つの視点を柱に据えて臨み、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現に向けて、G7としての結束を示すことができた。また、国際社会が直面する様々な課題について、グローバル・サウスとも協力して具体的な行動をとっていく姿勢を示すことができた。さらに、被爆地であり、平和の象徴でもある広島において、G7首脳で率直に議論を行い、「核兵器のない世界」に向けたコミットメントを確認するなど、大きな成果を挙げることができたと考えている。
しかしながら、ロシアによるウクライナ侵略は開始から2年以上が経過した今も続いており、また、ガザにおいては、全ての人質の即時解放と持続的な停戦が求められるとともに、パレスチナの人々が置かれた人道危機への対応が喫緊の課題となっている。地球全体に目を向ければ、気候変動・エネルギー、食料、開発等の様々な分野における我々の間の協力、そして、経済安全保障やAI(人工知能)などの新たな課題への対処も一層重要になっている。
本年のG7議長国イタリアのメローニ首相は、こうした昨年からの継続性を担保しつつ、アフリカや移住といった新たなプライオリティを設定し、プーリア・サミットに向けてG7の議論を精力的にリードしてきた。私は、こうしたメローニ首相のリーダーシップに敬意を表したい。日本としては、イタリアの取組を全力で支持し、プーリア・サミットでも積極的に議論に貢献していく考えである。
ロシアによるウクライナ侵略については、昨年末のウクライナへの即時の財政支援や本年2月のウクライナ経済復興推進会議といった日本独自の貢献に基づき、G7として引き続き対露制裁とウクライナへの支援を強力に推進していくことを確認したい。
中東情勢については、パレスチナに対する人道支援や、イスラエル、アラブ諸国、イランを含む地域各国の指導者への働きかけなどの日本としての取組を説明しつつ、G7として緊密な連携を確認したい。
また、インド太平洋について、昨年に引き続き「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現に向けたG7のコミットメントを確認し、G7としてこの地域との協力を強化していきたい。中国をめぐる諸課題への対応や、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応についても、G7としての緊密な連携を確認する機会となる。
昨年議長国として日本がG7でリーダーシップを発揮した経済安全保障やAIについては、情勢の変化も踏まえながら、G7の協力の着実な進展を図っていく。
それぞれ昨年と今年のG7議長国である日伊間の協力も深まっている。昨年の広島サミットに続き、今年2月に東京でメローニ首相をお迎えし、G7議長国間の引継ぎを直接行うことができたのは大変有意義だった。また、日伊間では、防衛分野では日伊英3か国による次期戦闘機の共同開発、近年の伊海軍及び空軍によるインド太平洋へのアセット派遣や共同訓練が実現した。経済分野では社会保障協定の発効、文化分野では日伊映画共同製作協定等、様々な分野で具体的な協力が進展している。この強固な日伊関係を、一層進展させていきたい。
国際社会が緊迫の度を一層高める中開催されるプーリア・サミット。G7が一丸となって国際社会が直面する課題に対する解決策を議論し、グローバル・サウスを含むパートナーと協力して取り組む姿勢を示していきたい。メローニ首相を始めとするイタリア政府、そして、プーリア州の皆さんとお会いできることを楽しみにしている。