岸田総理によるマティチョン紙、デイリーニュース紙への寄稿文

更新日:令和5年12月15日 総理の指示・談話など

「信頼に基づき共に創るインド太平洋の未来」

 タイ国民の皆様にご挨拶申し上げます。日本国総理大臣の岸田文雄です。今週、私は日本ASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力50周年特別首脳会議を主催します。この歴史的節目に、ASEANの原加盟国であり、「バンコク宣言」によるASEAN生誕の地であるタイから、セター首相を東京にお迎えすることを大変嬉(うれ)しく思います。現在、タイはASEANにおける対日調整国として、50周年の成功のため、重要な役割を果たしてくれています。

 世界に先んじて1973年にASEANとの対話を開始してから半世紀、日本は、ASEANの発展と統合の道のりをタイをはじめとするASEAN諸国と共に歩んできました。日本はこれまで様々な分野での開発協力を通じ、ASEAN地域の発展を支えてきました。また日本とASEANは互いに主要な貿易相手であり、日本はASEANにとって、米国に次ぐ第二の直接投資国です。近年、日本からASEAN諸国に対し、毎年平均して約2.8兆円規模の直接投資がなされています。ASEANにおける日本企業の事業所数は約1.5万を数え、成長著しいASEANの活力を日本経済にとりこむとともに、ASEAN各国で製品、サービスそして雇用を生み、経済発展に貢献しています。特に、ASEANの中でもタイは、約8万人の日本人が居住し、約6,000社の日本企業が進出する日本にとって重要な拠点です。日本企業によるタイへの投資は、過去40年間の累計で約3.5兆バーツに達し、外国投資の約4割を占めるなど、両国の経済関係は非常に強固です。

 日本とタイをはじめとするASEANの関係はビジネスにとどまりません。日本とASEANの真の友人としての関係の基盤となっているのは、「心と心」のふれ合う相互信頼関係です。それは、広範な分野における人的交流によって長年にわたり育まれてきました。官民双方で、様々な青少年交流、留学生交流などの具体的な取組が続けられてきました。

 また、日本とASEANは、1997年のアジア通貨危機、2004年のスマトラ沖大地震及びインド洋大津波、2011年の東日本大震災、2019年からの新型コロナのパンデミックなど、多くの試練を経験する中で、互いに手を差し伸べ合い、「信頼できるパートナー」であることを示しました。

 現在、国際社会は歴史の転換点にあり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は重大な挑戦を受けています。また、我々は気候変動や格差、公衆衛生危機、デジタル化、AI(人工知能)ガバナンスなど、複雑で複合的な課題に直面しています。私は、誰もが尊厳を持って生きられる平和で安定した世界、持続可能で繁栄した未来を「共創」するために、強固な「信頼」に基づき、これまで以上に緊密にASEANの皆様と協力していきたいと考えます。

 記念すべき50周年の締め括(くく)りとして、ASEAN諸国の首脳をお迎えする特別首脳会議では、過去半世紀の日ASEAN関係を総括し、将来のための新たなビジョンと具体的な協力を打ち出したいと思います。

 特に、日本として、「心と心」のパートナーを次世代に繋(つな)げ、強化するための包括的な人的交流プログラムや、我々の経済・社会が共有する課題への解決策を共に創造するための新たな取組、アジア・ゼロエミッション共同体構想のさらなる推進などの気候変動対策の取組、産業面での協力などを提案したいと思います。

 この歴史的な特別首脳会議を、我々の「輝ける友情」を次世代に繋げる「輝ける機会」としたいと思います。また、日ASEAN協力のみならず、セター首相が訪日される今般の機会を捉え、エネルギー分野での協力等、緊密な両国の経済関係を更に発展させるとともに、地域が直面する課題についても率直に意見交換を行い、600年にわたる交流の歴史を有する日本とタイの友情をさらに深めていきたいと思います。