岸田総理によるビエンチャン・タイムズ紙への寄稿文
「信頼に基づき共に創るインド太平洋の未来」
ラオス国民の皆様にご挨拶申し上げます。日本国総理大臣の岸田文雄です。本年は、日本ASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力50周年の歴史的節目です。日本が世界に先んじて1973年にASEANとの対話を開始してから半世紀、ASEANは拡大し、統合し、飛躍的に発展しました。ラオスは1997年にASEANに加盟し、2回のASEAN関連首脳会議を成功裏に開催し、いよいよ来年は3回目の議長国となります。日本は、ラオスがASEAN議長国として大きな成功を収めるよう、力強く支援していきます。
日本はASEANの発展と統合の道のりをラオスをはじめとするASEAN諸国と共に歩んできました。日本はこれまで様々な分野での開発協力を通じ、ASEAN地域の発展を支えてきました。また日本とASEANは互いに主要な貿易相手であり、日本はASEANにとって、米国に次ぐ第二の直接投資国です。近年、日本からASEAN諸国に対し、毎年平均して約2.8兆円規模の直接投資がなされています。ASEANにおける日本企業の事業所数は約1.5万を数え、成長著しいASEANの活力を日本経済にとりこむとともに、ASEAN各国で製品、サービスそして雇用を生み、経済発展に貢献しています。ラオスにおいても、約160社の日本企業がビジネスを展開し、人材育成や技術移転を通じてラオスの国内産業の発展や雇用の創出に貢献しています。
日本とラオスをはじめとするASEANの関係はビジネスにとどまりません。日本とASEANの真の友人としての関係の基盤となっているのは、「心と心」のふれ合う相互信頼関係です。それは、広範な分野における人的交流によって長年にわたり育まれてきました。
官民双方で、青少年交流プログラムJENESYSをはじめとする様々な交流の取組を続け、これまでASEAN地域から約4万人の国費留学生を受け入れてきました。さらに、1965年に世界で初めて青年海外協力隊が派遣されたラオスでは、これまで1,000人以上の隊員が各地で活躍してきましたほか、「文化のWA」プロジェクトの下での日本語パートナーズ派遣、その他民間の交流事業も長年にわたり実施されてきました。今後は、投資や観光を通じた人的交流の促進にも取り組んでいく考えです。
日本とASEANは、1997年のアジア通貨危機、2004年のスマトラ沖大地震及びインド洋大津波、2011年の東日本大震災、2019年からの新型コロナのパンデミックなど、多くの試練を経験する中で、互いに手を差し伸べ合い、「信頼できるパートナー」であることを示しました。
現在、国際社会は歴史の転換点にあり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は重大な挑戦を受けています。また、我々は気候変動や格差、公衆衛生危機、デジタル化、AI(人工知能)ガバナンスなど、複雑で複合的な課題に直面しています。私は、誰もが尊厳を持って生きられる平和で安定した世界、持続可能で繁栄した未来を「共創」するために、強固な「信頼」に基づき、これまで以上に緊密にASEANの皆様と協力していきたいと考えます。
記念すべき50周年の締め括(くく)りとして、ラオスをはじめASEAN諸国の首脳をお迎えする特別首脳会議では、過去半世紀の日ASEAN関係を総括し、将来のための新たなビジョンと具体的な協力を打ち出したいと思います。
特に、日本として、「心と心」のパートナーを次世代に繋(つな)げ、強化するための包括的な人的交流プログラムや、我々の経済・社会が共有する課題への解決策を共に創造するための新たな取組、アジア・ゼロエミッション共同体構想のさらなる推進などの気候変動対策の取組、産業面での協力などを提案したいと思います。この歴史的な特別首脳会議を、我々の「輝ける友情」を次世代に繋げる「輝ける機会」としたいと思います。
先日、日本政府はODA(政府開発援助)による「チャオ・アヌウォン・スタジアム改築計画」を決定しました。このスタジアムが両国の友好の象徴として象や桜とともにラオスの方々に愛され、広く利用されるよう期待します。今回、ソーンサイ首相と2025年の日・ラオス外交関係樹立70周年の機会を捉えた両国の中長期的な「戦略的パートナーシップ」の深化・拡大についても意見交換したいと考えています。今後日ラオス関係がいよいよ緊密に深化していくのを心から期待しています。