岸田総理によるフィリピン・スター紙、マニラ・ブレティン紙、フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙への寄稿文

更新日:令和5年12月15日 総理の指示・談話など

「信頼に基づき共に創るインド太平洋の未来」

 フィリピン国民の皆様にご挨拶申し上げます。日本国総理大臣の岸田文雄です。先月、私は、総理大臣に就任後初めて、フィリピンを訪問しました。フィリピン国民の皆様のおもてなしに感謝いたします。
 今週末、私は日本ASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力50周年特別首脳会議を主催します。この歴史的節目に、フィリピンから、マルコス大統領を東京にお迎えすることを大変嬉(うれ)しく思います。

 世界に先んじて1973年にASEANとの対話を開始してから半世紀、日本は、ASEANの発展と統合の道のりをフィリピンをはじめとするASEAN諸国と共に歩んできました。日本はこれまで様々な分野での開発協力を通じ、ASEAN地域の発展を支えてきました。また日本とASEANは互いに主要な貿易相手であり、日本はASEANにとって、米国に次ぐ第二の直接投資国です。近年、日本からASEAN諸国に対し、毎年平均して約2.8兆円規模の直接投資がなされています。ASEANにおける日本企業の事業所数は約1.5万を数え、成長著しいASEANの活力を日本経済にとりこむとともに、ASEAN各国で製品、サービスそして雇用を生み、経済発展に貢献しています。
 日本とフィリピンをはじめとするASEANの関係はビジネスにとどまりません。日本とASEANの真の友人としての関係の基盤となっているのは、「心と心」のふれ合う相互信頼関係です。それは、広範な分野における人的交流によって長年にわたり育まれてきました。官民双方で、様々な青少年交流、留学生交流などの具体的な取組が続けられてきました。
 また、日本とASEANは、1997年のアジア通貨危機、2004年のスマトラ沖大地震及びインド洋大津波、2011年の東日本大震災、2019年からの新型コロナのパンデミックなど、多くの試練を経験する中で、互いに手を差し伸べ合い、「信頼できるパートナー」であることを示しました。
 現在、国際社会は歴史の転換点にあり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は重大な挑戦を受けています。また、我々は気候変動や格差、公衆衛生危機、デジタル化、AI(人工知能)ガバナンスなど、複雑で複合的な課題に直面しています。私は、誰もが尊厳を持って生きられる平和で安定した世界、持続可能で繁栄した未来を「共創」するために、強固な「信頼」に基づき、これまで以上に緊密にASEANの皆様と協力していきたいと考えます。
 記念すべき50周年の締め括(くく)りとして、ASEAN諸国の首脳をお迎えする特別首脳会議では、過去半世紀の日ASEAN関係を総括し、将来のための新たなビジョンと具体的な協力を打ち出したいと思います。
 特に、日本として、「心と心」のパートナーを次世代に繋(つな)げ、強化するための包括的な人的交流プログラムや、我々の経済・社会が共有する課題への解決策を共に創造するための新たな取組、アジア・ゼロエミッション共同体構想のさらなる推進などの気候変動対策の取組、産業面での協力などを提案したいと思います。
 この歴史的な特別首脳会議を、我々の「輝ける友情」を次世代に繋げる「輝ける機会」としたいと思います。

 共通の価値と原則を共有する戦略的なパートナーである日本とフィリピンの関係は、本年、飛躍的に発展しました。2月にはマルコス大統領が訪日し、11月には私がフィリピンを訪問させていただくなど、様々なレベルでの往来がありました。特に11月の訪問時には、日本の総理大臣として初めて、フィリピン議会において演説を行う機会を頂きました。今回、改めて訪日するマルコス大統領との間で、安全保障、経済、人的交流等の幅広い分野における具体的な二国間協力や、地域・国際的な課題への対応について、両国の連携を更に深化させていきたいと思います。皆様、良いクリスマスを。