岸田総理によるアハラーム紙への寄稿文

更新日:令和5年4月30日 総理の指示・談話など

100年後の繁栄に向けて、エジプトと手を携えて

 4月29日から、総理大臣に就任して初めてエジプトを訪れます。約1週間に及ぶアフリカ歴訪の最初の目的地をエジプトとしたのは、日本としてエジプトとの関係を重視しているからに他なりません。なぜ、日本は、エジプトとの関係を重視しているのでしょうか。

 第一に、共に数千年の歴史を有し、豊かな文化、伝統を有する両国は、かけがえのない友人としての道を手を携えて歩んできました。日エジプト間の協力は1年後や10年後でなく、50年後、100年後のエジプトの繁栄を見据えたものです。アフリカの知的拠点を担うエジプト・日本科学技術大学(E-JUST)や1万人以上のエジプト人児童が学ぶエジプト日本学校(EJS)に代表される、未来を担う若者たちへの投資、大エジプト博物館(GEM)やオペラハウスといった文化施設、スエズ運河に架かる「平和の橋」や、カイロメトロを始めとする交通インフラ建設に係る質の高いインフラ協力は、いずれもこうした長期的視点に立った協力です。また、「四方(よも)の海」に囲まれる日本と、物流の大動脈であるスエズ運河を擁するエジプトは、海洋の平和で安全な利用という面でも共通の利益を有しています。日本は今後も、「自由で開かれたインド太平洋」を発展させ、エジプトの発展のために、海の連結性強化、海上交通の安全に向けて、エジプトと緊密に協力していきます。

 第二に、エジプトは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していく上で大切なパートナーでもあります。ロシアによるウクライナ侵略は、国際社会が多くの犠牲を払って築き上げてきた平和と繁栄の礎を根本から揺るがすものです。また、その結果引き起こされた食料不足やエネルギー価格の高騰により、エジプトを始め世界で多くの人々が苦しんでいます。我々の子孫が将来にわたって平和と繁栄を享受できるようにするためには、ウクライナ侵略のような力による一方的な現状変更の試みが容認されることがあってはなりません。今こそ、国連憲章の原則を再確認するとともに、エジプトをはじめとするアフリカの発展をしっかりと後押していくことが重要です。現在、G7議長国と国連安全保障理事会の非常任理事国を務めている日本として、国際的な議論をリードしていく考えです。また、平和と繁栄に向けて国際社会が一致した歩みを進めていけるよう、今回の訪問では、エジプトと共に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持に向けて協働することを確認できることを楽しみにしています。

 両国は、長年の友好関係が培った強固な信頼関係の下に、中東・アフリカ地域、さらには世界を視野に入れて、その平和と繁栄のために協働する戦略的パートナーとして歩み出す時期に来ています。エルシーシ大統領とはそうしたビジョンを共有し、政治・安全保障・経済・教育・文化・スポーツなど、幅広い分野で両国関係を強化していきます。約60年前、エジプトの国家プロジェクトだったスエズ運河大改修に参加した日本の企業は、戦争による工事中止や、「悪魔の岩盤」と呼ばれる固い岩盤に直面しながらも、知恵と技術をもって果敢に取り組みました。これまでも、そしてこれからも、日本はエジプトに官民双方で寄り添い、今後100年にわたるエジプトの繁栄に向け、いかなる困難をも共に乗り越える用意があります。そして、「ナイルの水を飲んだものはエジプトに戻る」の喩(たと)えどおり、再びエジプトで、両国の友情の絆(きずな)が強く紡がれていく様子を見ることを楽しみにしています。