岸田総理による外交専門誌「外交」への寄稿文
ロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみの問題ではなく、国際社会全体のルール・原則そのものへの挑戦であり、正にポスト冷戦期の世界の終焉(しゅうえん)を我々に告げるものでした。日本が厳しい安全保障環境に直面する中で、力による一方的な現状変更の試みが行われている現実を目の当たりにし、私は、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」との強い危機感を覚えました。だからこそ、昨年私は、日本の総理大臣として、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援によって侵略に毅然(きぜん)と対応する決断を行い、G7を始めとする同志国とともに、積極的な外交を展開してきました。
そして今年、日本はG7議長国を務め、5月19日~21日は広島でG7サミットを開催します。ロシアがウクライナ侵略の中で核兵器の使用を示唆していますが、広島と長崎に核兵器が投下されてから77年間、核兵器が使用されていないという、この歴史をないがしろにすることは決して許されません。日本が、世界の恒久平和を希求する広島でサミットを開催することは大きな意味を持ちます。
サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないものとして断固拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く ———私は、G7議長として、議論を牽引(けんいん)し、こうしたG7の強い意志を、歴史に残る重みを持って、力強く世界に示したいと考えています。
さらに、グローバル・サウスと呼ばれる新興国・途上国が様々な課題に直面する中、エネルギー・食料安全保障を含む世界経済、ウクライナやインド太平洋を含む地域情勢、核軍縮・不拡散、経済安全保障、さらには、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題など、広範な課題を解決していくべく、議長国として議論を主導していきます。そして、G7広島サミットで達成した成果を、インドが議長国を務めるG20に引き継ぐとともに、友好協力50周年を迎えるASEAN(東南アジア諸国連合)との特別首脳会議(12月、日本開催)に繋(つな)げ、アジアから世界に向けた発信を強化していきます。
G7広島サミットは、日本や世界の若者や子供たちが、国際社会の課題に目を向け、行動する貴重な契機にもなります。次世代を担う若年層が、様々な交流や学習を通じて、サミット関連行事に何らかの形で関わるような場を設けていきます。
国際社会が歴史的な転換期を迎えている現在、G7議長国として、サミットと閣僚会合の成功に向けて、そして国際社会の明るい未来に向けて、最大限の努力を尽くす考えです。
(本総理大臣メッセージは3月12日時点のものです)