岸田総理によるグローバル・メール紙への寄稿文

更新日:令和5年5月18日 総理の指示・談話など

「G7広島サミット:国際社会が直面する複合的危機への対応」

 国際社会は、今、歴史的岐路にある。日本の総理として、G7サミットで達成したいことが多くあり、トルドー首相を始めとするG7の各首脳と結束し、国際社会が直面するこれらの危機に立ち向かう決意である。

 金曜に始まるG7広島サミットでは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するG7の決意を示したいと思う。また、我々は、主権や領土の一体性の尊重、紛争の平和的な解決、武力の不行使など、国連憲章上の原則を守るというコミットメントを確認する。

 2番目の優先事項は、G7のグローバル・サウスへの働きかけを強化することである。途上国や新興国への関与を強化すること。ロシアによるウクライナ侵略は、途上国を始めとする世界の人々への暮らしに大きな打撃を与えた。彼らが直面する課題に耳を傾け、その解決に取り組まずして、彼らとの信頼関係を構築することはできない。そして、国際社会の諸課題は、こうした国々との協力なくして解決することはできない。こうした観点からも、G7に加え、途上国や新興国の国々を中心とする8か国の首脳と7つの国際機関の長を招待し、アウトリーチ会合を実施する。

 広島サミットでは、ウクライナ情勢、インド太平洋を含む地域情勢、経済的強靱(きょうじん)性・経済安全保障、核軍縮・不拡散、食料・エネルギー安全保障を含む世界経済、気候変動、国際保健、開発といった地球規模課題について議論する。

 まずは、ウクライナについて述べる。3月21日、私は、ウクライナを訪問した。なぜ、私はウクライナを訪問したのか。これはロシアによるウクライナ侵略が単に欧州だけの問題ではなくグローバルな問題であり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦だからだ。我々は、力による一方的な現状変更やその試み、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないものとして断固として拒否しなければならない。

 広島では、私は、G7のウクライナへの揺るぎない連帯を示したい。私は、ゼレンスキー大統領をサミットでの議論に参加するよう招待した。ロシアに対し、全ての軍及び装備をウクライナから即時かつ無条件に撤退させることを求めるとともに、G7として厳しい対露制裁及び強力なウクライナ支援を継続することを確認したい。

 我が国はG7の中で唯一アジアの国である。インド太平洋は、将来の世界成長を牽引(けんいん)する重要な地域であるが、安全保障や経済面で多くの課題にも直面している。私は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に関するG7のコミットメントを確認するために、G7首脳らと議論する機会としたい。また、中国や北朝鮮を含む地域の課題に対して、G7が足並みを揃(そろ)えて対応できるよう、しっかりとした議論を行っていくことも重要である。

 日本は、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くという目標を掲げて、インド太平洋への協力を充実させていく。インフラ面において、我が国は、2030年までに民間投資や円借款を通じて官民合わせて750億米ドル以上の資金をインド太平洋地域に動員する。

 カナダは日本と普遍的な価値を共有するインド太平洋地域の重要な戦略的パートナーである。本年1月、私がオタワを訪問した際、トルドー首相からG7広島サミットの成功に向け、全面的に支援するとの力強い言葉を頂いた。カナダとG7広島サミットにおいて協力し、自由で開かれたインド太平洋への実現に向け引き続き連携していきたい。

 今日、世界がパンデミックやロシアによるウクライナ侵略といった危機に直面する中、我々の経済の強靱性が問われている。G7サミットでは、経済的強靱性や経済安全保障についてG7首脳間で率直な議論を行いたい。

 核軍縮・不拡散は、広島出身の総理大臣である私のライフワークである。私は、G7サミットを広島で開催することにしたが、それは広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えたためだ。広島と長崎に原爆が投下されてから77年間、核兵器が使用されていない歴史をないがしろにすることは決して許されない、とのメッセージを力強く世界に発信したい。「核兵器のない世界」の実現に向け、G7首脳と議論を深めたい。3日間のサミットにおける議論で、国際社会が直面する複合的な危機に対応するため、私は、リーダーシップを発揮する。