旧優生保護法国家賠償請求訴訟原告団等との面会
令和6年7月17日、岸田総理は、総理大臣官邸で旧優生保護法国家賠償請求訴訟原告団等と面会しました。
総理は、冒頭の挨拶で次のように述べました。
「内閣総理大臣の岸田文雄でございます。一言御挨拶申し上げさせていただきます。まず、私としては、皆様方にお目にかかるべく、どこへでもまいる覚悟でおりましたが、皆様方の要望も踏まえて、本日は官邸にお越しいただくこととなりました。暑い中、遠路よりお越しいただきましたこと、心から御礼申し上げます。
旧優生保護法の規定を憲法違反とし、国家賠償法上の国の責任を認める7月3日の最高裁判決を大変重く受け止めております。
旧優生保護法に基づき、あるいは旧優生保護法の存在を背景として、多くの方々が、心身に多大な苦痛を受けてこられたことに対し、私自らお目にかかり、反省とおわびの言葉を直接お伝えしたいとの思いから、本日の面会とさせていただきました。正に、謝罪の意を表明する機会を頂戴したものと認識しております。
旧優生保護法に基づく施策によって、昭和23年から平成8年までの約48年間において、少なくとも約2万5千人もの方々が、特定の疾病や障害を有すること等を理由に、不妊手術という重大な被害を受けるに至ったこと、このことは痛恨の極みであります。
旧優生保護法は憲法違反であり、同法を執行してきた立場として、その執行の在り方も含め、政府の責任は極めて重大なものがあり、心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪申し上げます。
優生手術等は、個人の尊厳を蹂躙(じゅうりん)する、あってはならない人権侵害であり、皆様方が心身に受けられた多大な苦痛と、長い間の御苦労に思いを致しますと、その解決は先送りできない課題です。
国会とも相談しながら、新たな補償の在り方について、可能な限り早急に結論を得られるよう、加藤大臣、小泉大臣に対して、検討を進める旨指示をしており、先日より、超党派の議員連盟における議論も開始されたと承知しております。
この問題の速やかな解決にむけて、全力を尽くしてまいりますが、本日は、まずは皆様のおつらい経験と思いを真摯にお伺いさせていただきたいと存じます。その上で、政府として方向性をお示ししたいと考えております。
改めて、皆様方お一人お一人に、深く深く謝罪申し上げます。」
また、締めくくりの挨拶で次のように述べました。
「本日、皆様方の筆舌に尽くし難い御経験を直接お伺いし、改めて痛切な気持ちを抱きました。心より深く謝罪申し上げます。
今日、この機会を迎えることなく亡くなられた原告の方々の動画も拝見いたしました。改めて国の重大な責任を痛感するとともに、心から御冥福をお祈り申し上げます。
7月3日の最高裁判決を踏まえた賠償金の支払事務を昨日終えたところですが、本問題が先送りできない課題であり、可能な限り早く解決しなければならないとの思いを強くしております。
訴訟におけるこれまでの政府の主張について、御意見も頂きました。最高裁判決では、国が皆様方からの損害賠償請求権の行使に対して除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されぬとしています。これまでの判例を踏まえた主張であったとしても、政府の様々な主張自体が、皆様方のお気持ちを傷つけるものであったことについて、皆様方が感じられた思いを重く受け止めたいと考えております。
政府のこのような姿勢が問題の解決を遅らせたとの指摘も真摯に受け止め、それであればこそ早急な訴訟の解決が政府の責務と考え、皆様方と直ちに協議を進めてまいります。
現在係属している、最高裁判決以外の訴訟については、除斥期間による権利消滅の主張は撤回し、優生手術の実施が認められる訴訟については、和解による解決を速やかに目指してまいります。
今般の最高裁判決の内容を踏まえ、現在訴訟を起こされていない方々も含めた幅広い方々を対象とした補償とすること、本人のみならず配偶者の方々が受けた苦痛も視野に入れ補償を検討すること、確定した判決に示されている金額も踏まえつつ十分かつ適正な補償の額とすること、これらを基本方針として新たな補償の仕組みを創設することとし、超党派の議員連盟と調整しながら、議員立法の検討を進めてまいります。
加えて、こうした新たな補償の仕組みが、被害者の皆様に広く届くことも必要であり、その周知徹底の在り方についても、御要求を踏まえた検討を進めてまいります。
さらに、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現に向けて、政府として、最大限の努力を尽くしてまいります。
違憲とされる国家の行為が約半世紀もの長きにわたって合憲とされてきたという重い事実を踏まえれば、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証に加えて、優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けた恒久的な対策が不可欠です。
国会においても様々な議論が行われていくものと承知しておりますが、政府として、国会とも相談しながら、御要求を踏まえた、より客観的な検証を実施すべく、その在り方を検討してまいります。
優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けては、これまでの取組を点検し、教育・啓発等を含めて取組を強化するため、全府省庁による新たな体制を構築してまいりたいと思います。
被害の回復を含め、今申し上げた様々な課題に関して、皆様方と協議させていただきたいと考えており、関係府省と皆様方との継続的な協議の場も設けてまいります。
本日、このように皆様方の思いと貴重な御意見を賜る機会を頂き、暑い中、また遠路はるばるお越しいただいたことについて、重ねてお礼申し上げます。
改めて、皆様方の苦難と苦痛に対しまして、お一人お一人に深く深く謝罪申し上げます。」