保険監督者国際機構年次コンファレンス
令和5年11月9日、岸田総理は、東京都内で行われた保険監督者国際機構(IAIS)年次コンファレンスに出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「皆様、こんにちは。内閣総理大臣の岸田文雄です。本日、日本で初めてIAIS年次コンファレンスの開催に当たりまして、心よりお祝いの御挨拶を申し上げます。また、海外から御参加の皆様方に対しまして、ようこそ日本にお越しくださいました。心より歓迎の言葉を申し上げさせていただきます。
近年、世界は、気候変動、自然災害、少子高齢化に伴う人口動態の変化など、多くの社会課題に直面しています。私たちは、課題先進国として、こうしたテーマに日々向き合っています。
岸田政権では、官民の連携によって、社会課題を成長のエンジンに転換する新しい資本主義を進めています。社会課題を解決し、持続可能な成長を実現するために、金融の力が不可欠であると考えています。こうした考え方に立って、世界初となる、国としてのトランジッション・ボンドの発行等によるグリーン・トランスフォーメーションの推進、社会課題の解決に貢献するスタートアップの支援、また非財務情報の開示等を通じた人的資本の充実、資産運用業及びアセットオーナーシップの改革による資産運用立国の実現に向けた取組など、多岐にわたって金融資本市場の変革を進めています。
その中にあって、皆様が携わっておられる保険は、人々や企業が直面する様々なリスクを分散し、より良い暮らしや持続可能な成長を支えるための強力なツールです。また、機関投資家としての保険会社は長期の資金の出し手として極めて重要な存在です。このことを鑑みると、先ほど申し上げた社会課題に取り組んでいく上で、保険や保険会社の役割、ますます大きくなっていると考えています。
新しい資本主義を実現していく上でも、保険や保険会社の役割には大いに注目し、そして期待しています。特に、グリーン・トランスフォーメーションや高齢化に伴う社会課題の解決において、リスクに対する保障や長期資金の提供を通じたサポートは、他のセクターでは容易に代替できない、保険会社ならではの役割であると考えています。
そして、保険がその役割を発揮するためには、保険会社の財務の健全性、高度な経営管理、そして消費者・契約者からの信頼を維持することが必要です。そのために、監督当局による実効的な規制・監督の枠組みが果たす役割は極めて大きいと言えます。
さらに、例えば気候変動や自然災害への対応のように、公的セクターと民間セクターが協調した形で社会課題の解決に向けたアクションを取っていくことも、今後ますます重要になってくると考えています。
このようにグローバルに共通した課題に立ち向かっていく上で、世界の保険規制・監督当局が連帯して議論を深めていくことは大変重要であり、改めてIAISのこれまでの活動に敬意を表します。
今回、日本で初めて年次コンファレンスが開催され、また金融庁の有泉 秀(ありいずみ しげる)金融国際審議官が新たに執行委員会の議長に就任しました。今後の有泉新議長のリーダーシップに期待するとともに、日本としてもIAISの活動に一層の支援と、そして貢献を行っていきたいと考えております。
さらに、先ほど述べたような世界共通の課題に立ち向かう上で、地域内で知見を持ち寄りつつ当局の政策立案能力を高めていくことが極めて重要であると考えています。アジア初となる今回の議長就任を契機として、アジア地域の金融監督当局とのハイレベル・セミナーを来年開催し、保険市場の在り方を含めた域内の対話活性化、そして連携強化をリードしていきます。
本日は、規制・監督当局者、民間保険会社、様々なステークホルダーの皆様など、世界各国から400名を超える方々にお集まりいただいていると伺っています。本日の場が、皆様の経験や知恵を持ち寄って議論いただき、また皆様の間の交流を深めていただく有意義な機会となりますことを祈念申し上げて、私の御挨拶とさせていただきます。御清聴、誠にありがとうございました。」