東京グローバル・ダイアログ
令和5年2月20日、岸田総理は、都内で開催された第4回東京グローバル・ダイアログに出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「日本の総理大臣の岸田文雄です。今日は、岡会長、そして佐々江理事長、そして御列席の皆様方、4年連続4回目の東京グローバル・ダイアログの開催、心からお慶(よろこ)びを申し上げます。
今回のテーマはポスト冷戦時代の終わりと伺っております。ロシアが開始したウクライナ侵略は、欧州のみの問題ではなく、国際社会全体のルール、そして原則そのものへの挑戦であり、正にポスト冷戦期の世界の終焉(しゅうえん)を我々に告げるものでした。そして、日本が厳しい安全保障環境に直面する中で、力による一方的な現状変更の試みが行われている現実を目の当たりにし、私は、『ウクライナは明日の東アジアかもしれない』、こうした強い危機感を覚えました。だからこそ、昨年私は、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援によって侵略行為に毅然(きぜん)と対応する決断を、日本の総理大臣として行い、G7を始めとする同志国と共に、積極的な外交を展開してきました。
今年日本は、G7の議長国として、また、国連安保理非常任理事国として、ロシアによる侵略行為と戦うウクライナへの支援、そして法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するための世界の取組を、主導していく立場にあります。こうした考え方の下、日本はこれまでもウクライナへの支援を行ってきたところですが、戦争により生活の基盤を奪われた人々への支援や破壊されたインフラの復旧など、依然支援を必要とするウクライナに対して、今般新たに55億ドルの追加財政支援を行うこととし、今後、関連する法改正等の国会承認を得るべく取り組んでいくことといたしました。また、G7首脳が引き続き結束してウクライナ侵略に対応するべく、侵略開始から1年を迎える今週24日に、ゼレンスキー大統領も招いてG7首脳テレビ会議を主催し、5月の広島サミットへ議論をつなげていくことといたします。
ロシアの言動により、世界は今また、核兵器による現実的な脅威に直面しています。こうした中、G7のリーダーが被爆地広島に集結し、核軍縮について議論を行うことは大きな意義があります。また、G7首脳を始め、世界に被爆の実相をしっかりと伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要です。この観点から、広島サミットの日程についても、平和記念資料館への訪問を始め、しっかりと検討しているところです。広島と長崎への原爆投下以来、核兵器が使用されていない歴史をないがしろにすることは、決して許されません。被爆地広島の地から、このメッセージを力強く世界に発信していきたいと思っています。
日本を取り巻く安全保障環境は、東シナ海・南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮による核・ミサイル活動の活発化など、戦後最も厳しく、そして複雑な状況にあります。こうした現実に向き合うべく、昨年末に新たに国家安全保障戦略等を策定し、安全保障政策を大きく転換する決断を行いました。しかし、言うまでもなく、まず優先されるべきは、外交努力です。首脳レベルを含め、現実的な外交を積極的かつ力強く展開してまいります。各国首脳と意見交換を重ねる中で、国際社会から、我が国に対する期待の大きさと、その裏返しとして責任の重さを改めて感じています。
こうした中で開催される広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みを断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志を、世界に示していきたいと考えています。あわせて、エネルギー・食料安全保障を含む世界経済、インド太平洋を含む地域情勢、経済安全保障、また、気候変動、保健、さらには開発といった地球規模の課題についても、G7首脳との間で胸襟を開いて議論することを考えています。歴史的転換点にあって、国際社会が直面する諸課題を解決するには、あらゆる国、人々が経済規模や発展段階、異なる価値観や利害関係を超えて、努力を結集することでこそ、次の時代を切り開いていくことができると考えます。その観点から、日本はG7議長国として達成した成果をG20(金融世界経済に関する首脳会合)に引き継ぐとともに、あらゆる国との対話と協力により、新たな時代を共に築いてまいります。
日本、そして国際社会が先例のない新たな課題に取り組む上で、東京グローバル・ダイアログが、ポスト冷戦時代のその次の時代の道筋を示す一助となることを祈念し、私の御挨拶とさせていただきます。
御清聴、誠にありがとうございました。」