時事通信社 新年互礼会
令和4年1月5日、岸田総理は、都内で開催された時事通信社の新年互礼会に出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「皆様、新年あけましておめでとうございます。内閣総理大臣の岸田文雄でございます。御列席の皆様方におかれましては、健やかに、令和4年、新しい年をお迎えになられましたことをお喜び申し上げます。
今年の干支(えと)は、壬寅(みずのえとら)ということですが、壬寅は、『新しい動きが胎動し、大いに伸びる』という意味を持つとされています。同時に、寅(とら)という字には、『慎む』という意味があり、大いに伸びるときこそ、普段以上に慎重でなければならない、こうした教えが込められているということでございます。
私は、本年を、大胆に挑戦を行う年とし、新たな時代を切り拓(ひら)くための1年としたいと思っておりますが、一方で、慎重であるべきところは、慎重に物事を進めていく。こうした謙虚さも忘れてはならないと肝に銘じております。
特に慎重でなければならない点は、新型コロナ対応です。慎重の上にも慎重を期し、最悪を想定しながら、新型コロナ対応を進めてまいります。昨年末から、最大限の警戒感を持って状況を見守っていたオミクロン株について、市中感染の発生が各地で明らかになっています。我が国では、G7の中でも最も厳しい水際対策を講じたことで、時間を稼ぐことができ、その間、3回目のワクチン接種を開始し、全国で無料検査体制を展開し、経口治療薬についても全国の現場にお届けする体制を作り、そして、医療提供体制についても充実させるなど、国内感染の増加に備えるための準備をこの間に進めることができました。
多くの皆様方の御協力に感謝を申し上げる次第ですが、これからは、水際対策の骨格は維持しながらも、対策の軸足を国内対策へと移してまいります。今後、万が一、急激に感染が拡大したとしても、医療のひっ迫を招くことがないような体制を作っていきたいと考えております。その前提として、安心できる宿泊・在宅療養体制を整えてまいります。新型コロナ陽性と判断された場合には、迅速に健康観察、訪問診療を行うことができる体制を作ってまいります。また、経口治療薬、パルスオキシメーターについても直ちにお届けできるようしてまいります。今年は、何としても、新型コロナを克服していきたいと思っております。そして、その先に、日本経済再生の要である、新しい資本主義の実現を果たしていきたいと考えています。この新型コロナというピンチをチャンスに変える。デジタル、炭素中立といった切り口から、経済社会の変革に向けて、大胆に挑戦をしていく取組を進めていきたいと考えております。そして、成長と分配の好循環を実現することで、持続可能な経済を作ってまいります。
第1に、地方発のデジタル社会への変革に取り組んでいきたいと考えます。そのために、私は、デジタル田園都市国家構想を打ち出しました。この構想のポイントは、デジタルの力で地方が抱える課題を解決するとともに、地方から全国へ、ボトムアップの成長を実現させるというところにあります。インフラ、規制、行政、三位一体でデジタル社会に適合したものにしていくための全体像を示し、民間投資を呼び込みながら、政策資源を集中投入してまいります。規制改革についても、単に規制緩和を行うのではなく、自動運転や自動配送などの新しいルールを作ることで、市場を新たに作っていく。こうした工夫を進めて行きたいと考えます。自治体によるデジタルを活用した地域活性化の取組への支援、オンライン診療の恒久化、GIGAスクールの推進、また、スマート農業の支援などを進め、地域におけるデジタルサービスの社会実装を推進してまいります。
第2に、炭素中立型社会への変革に取り組んでまいります。私は、気候変動問題は、新しい資本主義の中核に位置する問題であると捉えています。今の時代に求められる炭素中立型社会への変革を進めるには、単に、エネルギー供給構造の変革だけではなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会の大変革が必要だという認識を持って取り組んでいかなければならないと考えております。この変革を成し遂げることで、新たな成長を生み出してまいります。
第3に、中間層への分配にも正面から向き合います。成長の果実をしっかりと分配することで、経済の好循環が生まれ、次の成長につながります。中でも、未来への投資という意味を持つ、企業の皆さんによる賃上げは、今後の経済成長のためにも極めて重要です。税制による賃上げ支援や、国が率先して、公的価格の引上げなどに取り組むことで、賃上げしやすい雰囲気を醸成してまいります。さらに、次世代を担う、子育て・若者世代の世帯所得に焦点を絞って、倍増を可能とするよう制度改革に取り組んでまいります。
そして最後に、外交・安全保障についても一言申し上げたいと思います。厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、外交・安全保障の巧みなかじ取りと安定政権の確立が、以前にも増して求められていると感じています。こうした環境下において、私は、未来への理想の旗をしっかりと掲げ、現実を見据えながら、1つは普遍的価値の重視、2つ目として地球規模課題の解決に向けた取組、3つ目として国民の命や暮らしを断固として守り抜く取組、この3つを3本柱とした新時代リアリズム外交を進めてまいります。その中で、米国、あるいは中国等、様々な国との関係を考えてまいります。この1年は、日本外交のしたたかさが試される1年になるのではないかとも感じております。
本年、こうした新しい時代を切り拓いていくという私の挑戦が、いよいよ本格化いたします。是非、皆様方にも、私の考えを御理解いただき、御協力いただければと思っております。コロナ克服、新しい経済の再生、そして、外交・安全保障など、様々な課題に立ち向かっていくためにも、何よりも求められるもの、これは強固な統治能力であると思います。これは、安定政権の確立なくしてあり得ません。その意味で、来る参議院選挙は、日本の未来が懸かる選挙であり、これまで以上に、多くの皆様方の御支援をお願い申し上げる次第でございます。
最後になりましたが、御列席の皆様方の御健勝と、そして、それぞれの1年の御発展を心から御祈念申し上げて、新年の御挨拶とさせていただきたいと存じます。本年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。」