○井村会長 それでは、予定の時間になりましたので、ただいまから第11回目の「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」を開催いたします。
お忙しい中、本日も、またお集まりいただきまして、大変ありがとうございました。
また、今日は急に時間を変更したりいたしまして、御迷惑をおかけしたんではないかと思いますが、協力を賜わりありがとうございます。
北村委員は、もう東京の空港には着いておられるようでありますので、少し遅れておいでいただけるというふうに思っております。
また、田村委員、広井委員は欠席でございますが、御意見はいただいておりますので、また必要であれば申し上げるということにしたいと思います。
それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。
前回の会合でとりまとめの報告書案につきまして、より広く国民の意見を聞くために、パブリック・コメントにかけるということを御了承いただきました。それで、かなりの意見が集まりましたので、これにつきまして、事務局の方から最初に説明をしていただきたいと思います。
○小島事務局次長 それでは、私の方から資料2に基づきまして、パブリック・コメントの結果について御報告いたします。
資料2でございますが、まず、意見募集は、資料2の1.にありますように、前回の会合の後、10月20日〜11月4日までの2週間、ホームページに意見募集を掲載するということによって行いました。
その結果は、3.にございますように、合計で24件、団体から14件、個人から10件の御意見をいただきました。それぞれいただきました御意見につきましては、その後、別添の1に団体の意見、それから18枚目ぐらい後の別添の2に、個人からの意見をそれぞれいただいた御意見をそのまま整理してございます。委員の先生方には、事前に配付させていただいております。
それから、いただいた御意見につきましては、本日とりまとめの報告書の参考とさせていただいております。
続きまして、3枚ほどの資料でございますけれども、資料3に、パブリック・コメントでいただいた主な意見と、それに対する考え方を整理してございます。後ほど報告書案の中で考え方については詳しく御説明いたしますが、主な意見とそれに対する考え方ということで、資料3に基づいて御説明をいたします。
いただいた主な意見のうち、まず1.といたしまして「医療方法全般を特許の対象とすべきである」という御意見につきましては、報告書におきましては、ここにございますように、本専門調査会では、医療の特質に鑑み、医師の行為に係る技術を特許の対象とすることには慎重な配慮が必要であることなどから、医師の行為に係る技術は検討の対象から除外することとしたということでございます。
また、2.の「『医療機器の作動方法』として対象となる範囲をより明確にすべきである」ということにつきましては、この下にございますが、報告書においては、このため、これらを踏まえ検討した結果、医療機器の作動方法については、検査機器への医療機器のみならず、広く治療系その他の医療機器についても、その開発推進を図ることが重要であることから、本専門調査会としては、医師の行為に係る技術を含めないことを前提に、医療機器の作動方法全体を特許の対象とすべきであるとした。
その上で、医療機器の作動方法とは、個々の患者や症状などに応じて医師が医療機器をどのように操作して処置するか、あるいは人体にどのように作用するかなどという医師の行為に係る技術ではなく、人体に対する作用や人体からのデータ収集などの一定の目的のために、医療機器自体がどのように機能的・システム的に作動するかという物に由来する技術であって、医療機器の性能・機能として備わることとなるものを言うとし、更に、その下の脚注20におきまして、医療機器の作動方法には、医師が症状に応じてどのように機器を操作して処置するとか、機器が患者特定の部位をどのように切開・切除するか、あるいはどのような手順で縫合するかといった医師の行為や、機能、人体に対する作用は含まないということで、特許請求の範囲に医師の行為に係る技術が含まれているものは、特許保護の対象としないということを明確にしております。
3.でございますが「特許の対象の拡大のいかんに拘わらず、医師の行為を免責とすべき検討を行うべきである」という御意見に対しては、報告書において、「このため、本専門調査会としては、・・・特許権の効力制限などの特許法上の扱い・・・を明確にするため、さらに検討を行い所要の方策を講ずることが望ましいと考える」としております。
4.の「医療方法に関する審査基準による現行運用には明らかに限界があり、立法的解決を図るべきである」との御意見に対しては、本報告書において「このため、本専門調査会としては、医療に関する基準の特許保護の範囲・・・などの特許法上の扱いや特許審査の運用基準等を明確にするために、さらに検討を行い所要の方策を講ずることが望ましいと考える」としております。
3ページ目にまいりまして、5.の「裁定制度が円滑に活用されるようその運用について工夫すべきである」という御意見につきましては、報告書において、この資料の4行目でございますが「この制度の円滑な運用のための方策を必要に応じ検討し、公共の利益に反するような独占の弊害が生じないよう適切な運用を図るべきである」ということになっております。
6.の「後発品に対する影響の問題や特許権の切れた一部の効能・効果のみでの後発品の非承認の問題などを検討すべきである」という意見につきましては、報告書において、「『医薬の新しい効能・効果を発現させる方法』の技術に物の特許による保護を与えたとしても、その特許権の効力は、既存の方法の技術に用いる医薬には特許法上及ばないので、後発品に影響を与えることはない」としております。
7.は「その他」でございますが、説明は割愛させていただきます。
以上がパブリック・コメントについての説明でございます。
○井村会長 ありがとうございました。皆さんからいただいた意見を、ここに整理してまとめたというだけでありますけれども、何か御質問等がありますか。
いろんな意見をいただきました。それをできるだけ含めるようにしながら、事務局で、委員の皆様とも相談をしながら最終的な調整をしていただきました。
最終的なとりまとめの詳細につきましては、後ほど事務局から説明をしていただきますが、基本的には医療機器については、医療機器の作動方法を認めることになります。
それから、医薬については、この場での議論の対象となった方法の特許ではなくて、当面は物の特許保護の拡大で対応するということにさせていただきました。
加えて、方法の特許の方の可能性については、今後とも検討して努力をしていくということになっております。
また、医療への悪影響ということが繰り返し問題になりました。確かに医療関係の特許では、それが医療に悪影響を及ぼすということがあっては困りますので、特許の対象となる技術を医師の行為に係る技術とは明確に区別しました。
利益相反につきましても指摘はございました。これについては、各機関具体的な方策を講じていただくことになろうかと思います。利益相反については、むしろ産学連携とか、そういうことの方が大きな問題になりますので、大学においても、現在、検討がなされているところであります。また、悪影響が及ばないように、今後フォローアップをしていくということもここに書いております。
そういうような点に留意しながら、最終的なとりまとめ案をまとめていただきましたので、これから事務局から説明をしていただきたいと思います。
○小島事務局次長 それでは、資料1「医療関連行為の特許保護の在り方について(とりまとめ)(案)」について御説明をいたします。
先ほど井村会長から御紹介がありましたように、パブリック・コメントの際に提示しました案に、パブリック・コメントで出された意見や、それから委員の方々からいただきました御意見を踏まえて、パブリック・コメントに出された案について手直しを行い、最終的なとりまとめとしたものでございます。主な点を御説明いたします。
まず、報告書の1ページから4ページまでの「1.はじめに」の部分、それから5ページの「2.検討の背景−先端医療技術への期待−」につきましては、内容的には前回と基本的に変わっておりませんが、先ほど申しましたように、パブリック・コメントや委員の皆様からの御意見を踏まえ、若干表現が冗長だったり、不明確であった部分を修正してわかりやすくしております。
続きまして、「3.特許保護の現状について」の6ページから8ページ、それから9ページ以下につきましても基本的には変わっておりませんが、1点だけ補足しますと、10ページの脚注のところでございます。
先ほども御説明いたしましたけれども、脚注20のところで医療機器の作動方法のところについて、より正確を期す、あるいはわかりやすくするために、脚注を補充しております。
12ページ以下の「5.『医療機器の作動方法』及び『医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法』の特許保護について」ということでございますが、ここの構成について、今の資料では(1)と、15ページの(2)となっておりますが、前回までの資料は、この(1)と(2)が前後逆でしたけれども、論理的にわかりやすくするために、(1)と(2)を前後入れ替えております。
まず、12ページの「(1)特許保護の在り方について」でございますが、まず、(イ)の医療機器の作動方法につきましては、1)から2)、3)、この部分は医療機器の作動方法の特許保護の必要性や意義を説明したものでございまして、前回と変わっておりません。
13ページに行きまして、4)、5)が前回までの御議論、それから委員の皆様方の意見を基に最終的に調整をしたものでございます。
4)は「本専門調査会での議論においては、上記のような認識の下に、『医療機器の作動方法』を特許の対象とすべきであるとの意見が多数あった。他方、現時点で欧州よりも広い領域にまで特許保護を拡大するのは性急であり、欧州と同様に検査方法の一部のみを特許の保護の対象とすべきとの意見があった」
5)は「このため、これらを踏まえ検討した結果、『医療機器の作動方法』については検査系の医療機器のみならず、広く治療系その他の医療機器についてもその開発推進を図ることが重要であることから、本専門調査会としては、医師の行為に係る技術を含めないことを前提に『医療機器の作動方法』全体を特許の対象とすべきであるとした」ということでございます。
それから(ロ)の「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」についでございますが、この部分の13ページから14ページにかけての1)、2)、3)は、先ほどと同様に、医薬の新しい効能・効果を発現される方法の技術の必要性や意義を説明したもので前回と変わっておりません。
14ページから15ページの4)、5)が、前回までの御議論を踏まえ、委員の皆様方と最終的に調整した結論でございます。
4)が「本専門調査会での議論においては、上記のような認識の下に、複数の医薬の組合せや投与間隔・投与量の変更のような『医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法』を特許の対象とすべきであるとの意見が多数あった。他方、これらの方法について医師の行為との区別が運用上明確にできるかどうか現時点では決めかねるので、まずは物の特許としての保護の拡大の可能性を可能な限り追及し、その後、運用の状況等を踏まえて方法の特許による保護の拡充を考えてはどうかとの意見があった」
5)「このため、本専門調査会としては、まずは前進することを最優先に考え、当面は、『医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法』の技術について、物の特許による保護の拡大の可能性を、他分野の例や医薬における特許例などを参考に権利の効力の問題にも配慮しつつ可能な限り追及し、それを審査基準等に明確化することにより、物の特許として保護すべきであるとした。
なお、この場合でも、物の発明と方法の発明とではその対象範囲や効力が異なり、物の発明だけで保護することには限界があるため、これらの技術を発明の本旨に従い方法の特許として保護することについて、関係当局においてその可能性を追及する努力を続ける必要があるとした」ということでございます。
15ページの真ん中当たりでございますが「(2)新たな特許保護に伴う医療への影響や懸念に対する具体的対応」ということでございまして、この部分につきましては、先ほど井村会長から御説明がございましたように、この医療への悪影響を及ぼさないための具体的措置、具体的対応について、慎重に検討したわけでございますが、その結論として「これらの技術を新たに特許保護の対象とする際には、まず何よりも、医師と患者との信頼関係に悪影響を及ぼさないよう十分に配慮することが必要である。このため、本専門調査会では、新たな特許保護に伴う医療への影響や懸念について慎重かつ多面的な検討を行った。
その結果、医療に悪影響を及ぼさないよう万全を期すため、まず、これらの技術については、医師の行為に係る技術とは明確に区別すること及び医療機器や医薬という形で薬事制度や診療報酬制度の対象となるものに由来する技術に限定することとするとともに、公共の利益のための特許の裁定制度の適切な運用を図るほか、様々な具体的方策を講ずることとした。さらに、現時点では予見し難いような影響や懸念もありうるということにもかんがみ、医療に悪影響を及ぼさないようフォローアップを行うなど引き続き慎重に配慮していくことが必要である」としております。
そして、先ほどのさまざまな具体的方策として、1)から10)が15ページから17ページにかけて記述してございますが、パブリック・コメントや委員の皆様方の御意見を踏まえまして、若干それぞれに補足ないし、表現を改めた部分がございます。
その部分だけ御紹介しますと、16ページの「5) 独占による弊害の問題」の項でございますが、末尾の3行でございます。「この制度の円滑な運用のための報告を必要に応じ検討し、公共の利益に反するような独占の弊害が生じないよう適切な運用を図るべきである」。
それから「6) 後発品への影響」。先ほども御説明しましたが「医薬の新しい効能・効果を発現させる方法の技術に物の特許による保護を与えたとしても、その特許権の効力は、既存の方法の技術に用いる医薬には特許法上及ばないので、後発品に影響を与えることはない」。
17ページの一番最後でございますが「10) フォローアップ調査の実施と具体的対応」ということで「制度の運用(出願、審査の状況等)、医療コストや医師の行為への影響その他の懸念等についてのフォローアップ調査を関係省庁、産業界等が協力して適宜適切に実施し、必要に応じ具体的対応をとるべきである」としております。
以上、17ページまでが、前回までの資料にあった部分でございますが、18ページから21ページまでございますが、これはこれまでの御議論あるいは報告書全体につきまして、その要点を要約して、結語としてとりまとめております。全体を要約した結論的な部分でございますので、「6.結語」につきまして全文を読み上げさせていただきます。
(資料1 18ページ1行目〜21ページ3行目まで朗読)
以上でございます。
○井村会長 どうも大変ありがとうございました。この専門調査会は、昨年の10月から1年余りの長きにわたりまして、委員の皆様方には大変お忙しい中を参加していただいて議論をしていただきました。
医療に関する特許の難しさというのは、私も大変よくわかりました。それぞれの委員の方の御意見は傾聴すべき点がたくさんあったわけであります。しかし、この専門調査会といたしましては、一定の合意点を見つけるということが大変重要でありますので、委員の皆様それぞれ個人的には御不満の点もあろうかと思いますけれども、現時点で最大の努力をして、こういうまとめとさせていただいたわけであります。
それから、まとめの段階で委員の皆様の御意見をそれぞれ伺いまして、それらをできるだけ生かすようにいたしました。
事務局の方は、ここしばらくの間大変な努力をしてくれまして、簡単にはまとまりそうにないところを、一応このようにまとめてもらったわけであります。
この報告案につきまして、事前にそれぞれ御意見を伺っておりますけれども、これを専門調査会の報告案としてよろしいかどうか、その辺をお諮りしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
よろしゅうございますか、何かありますか。
○森下委員 非常に事務局の方で頑張っていただきまして、私としてはいい案に落ち着いたんではないかと思います。個人的にはいろいろと言わせていただきましたけれども、非常にいい案で、もし、この案で皆さん御異論がなければ、よろしいんではないかと思います。
○井村会長 どうぞ。
○野中委員 私がお話をしないと、なかなか収まらないと思いますので。一応、事務局がいろいろとりまとめに御苦労され、さまざまにお話をしていただいたことに関しては感謝します。私は途中第6か第7回目からお邪魔して、前半の議論を議事録にて理解することしかできなかったもので、いろいろ議論が不十分でその為、さまざまな方には不快な面もあったと思います。日本医師会としましては、直接侵害、間接侵害、それから利益相反、その辺に関しましては、まだまだ検討すべきとは思っています。しかし、最終的には、やはり医療の現場において、治療を必要とする患者さんが、適切に医療を受けられることが、私たちの望みでございます。進歩することによって、患者さん方に対して適切な治療ができることも、私たちは見なければいけません。しかし、物にはいつも光と影がございますから、その影の部分に対して、悪影響がないように、今後とも関係者が慎重に配慮されることを望んでおりますので、どうぞよろしくお願いします。
日本医師会としまして、議事録を見てみますと、澤常任理事が発表されたということもありますし、その知識を集大成しながら、日本医師会としても今後さまざまな方々の御意見を踏まえながら、このことについては改めて別に意見を発表する機会をつくりますので、どうか御検討いただきたいと思います。
最終的に、このとりまとめに関しましては、事務局、関係の皆さん方が御努力されたことを理解をして、一応了解するという方向でいます。今後も悪影響に対しては、今後とも検討するということを確約していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○井村会長 ありがとうございました。おっしゃるとおりで、医療は国民の健康を守るために非常に重要な国家の事業であります。だから、それに悪影響があっては勿論いけないわけでありますが、他方では日進月歩の医療技術をどのように日本で開発し、発展させていくのかということも非常に大きな問題であります。
私は、数年間総合科学技術会議におりまして、いろんな技術開発を見ておりますと、医療面では日本は、ここ20年ぐらいの間に大変遅れてしまったという印象を強く思っております。これはいろんな要素があったわけでありまして、例えば日本の大企業が医療技術開発に余り熱心でなかったとか、日米間のいろんな摩擦の問題とか、いろいろあったと思います。それをこれから是正していって、高齢化社会ですから、やはり国民が一番医療を早い時期に得られるようにしていくということも大変重要ではないかと思いました。両方の問題をうまくバランスを取っていくということが国としても大切ではないかということを考えておりましたので、この専門調査会の会長を引き受けたわけでありますが、委員の皆様の御努力によりまして、1つのまとめをすることができたということを大変うれしく思っております。
田村委員、広井委員は本日御欠席でありますので、あらかじめ事務局の方から意見を伺っておりますが、それにつきまして何かありますか。
○小島事務局次長 田村委員からは、前回の会議でも作動方法を、それから医薬については方法あるいは物でということでいうことでしたけれども、今回の案につきましても、これで結構ですという御了解をいただいています。
広井委員からも、医療機器につきましては、ヨーロッパ式の検査方法の一部という意見を自分は申し上げていたけれども、全体としてこういう形になることについては異論はないということで、現在の案、医薬についても、現在の案で結構ですということで御了解をいただいております。
○井村会長 それから、今、北村委員から電話が入りまして、タクシーでこちらに向かっておりますが、渋滞につかまっているということで、構わずに進めてほしいということでございました。
今日、厚生労働大臣が大阪の循環器センターを訪問されるため、遅れるかもしれないということで今朝電話をいただきまして、そのときにこの内容についての御意見を伺っておりますが、この内容で特に異論はありませんということでございました。もう来られるかもしれませんが、構わずに進めてほしいということですので、一応皆さんの御了承を得たということで、この報告案を内閣府の知的財産戦略会議に時期を見て報告させていただきたいと思います。どうも大変長い間、いろいろありがとうございました。
そこで、報告書がこういうことでまとまりましたが、やはり皆さんいろんな問題をお感じになったんではないかと思います。先ほど野中委員が少しおっしゃいまして、医師会としてはまた意見を発表される。確かに、澤委員が一度詳しく話をしておられます。それぞれの立場でいろんな御意見があったと思います。あとは個人の意見ということで、何かこの機会に言っておきたいということがありましたら是非お伺いをしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
上田委員、どうぞ。
○上田委員 大変妥当な内容だと思いますし、悪戦苦闘の後がよく読み取れる内容だろうと思うんです。私も、野中先生おっしゃったように、勉強しながら議論を深めていったという面がございまして、勿論法律のプロでもなかったわけですが、考えれば考えるほど、今のやり方、状況では、医工連携、産学連携が非常にしにくいと、これが本来あるべき姿に十分であるとは思っておりませんけれども、一定の前進を見たということは間違いない。今後は、こういったことが成果として上がったわけですから、十分に活用して、井村先生が御指摘になったような現状を、現場の人間としては責任を持って改善していくというふうな段階に入るのかなというのが、私の今の認識でございまして、よく勉強させていただきました。ありがとうございました。
○井村会長 ほかに。どうぞ、平田委員。
○平田委員 私、2回ほど出られなかったものですから、一応意見書を出させていただきました。結論としてはやはりいろんなとりまとめに御苦労されたこの内容でよろしいと思いますけれども、率直な感想を言いますと、当初はもうちょっと比較的簡単に進むんではないかと思いました。ただ、やはり医療ということだけに、知的財産とは本質的に違う問題、例えば安全・倫理とかそういう問題からも議論されたということで、この特許保護というものと裏腹である懸念材料についても、私自身も随分勉強する機会をいただきました。
確かに、現在の医療に十分満足してない患者さんや、十分なQOLの改善をもたらされてない患者さんはまだ多いわけで、そういう患者さんの視点に立つと、やはり先端医療というものに対する期待は非常に大きいと思うんです。ですから、それに応える研究、技術開発を推進するインフラ整備という面で、この知的財産の保護に対する期待は大きいと思います。
今回、かなりの前進は見たわけですけれども、例えば、とりまとめ案の結語(6)の後段にも今後の課題ということで触れてありますけれども、やはり細胞、遺伝子、またはそのプロダクトを用いるような新しい医療開発、こういう先端医療という視点から見ますと、まだ大きな課題が残されています。今回、医薬について主に議論されたのは、既存の医薬品の使用に関するところが大部分でありまして、実は再生医療とか遺伝子治療というのは、まだこれからの問題ということで比較的未知の問題がある中で、なかなか議論しにくいところがあるわけです。特に私が申し上げたいのは、こういうバイオテクノロジーの分野というのは、ITとか物理的なものに比べて、非常に企業が参入するときのリスクが大きいということです。非常に長期間、しかも過大な研究投資が必要なわけですから、かなりしっかりした権利の保護がされてないと、その入口で参入に大きな障害があることになります。
特許保護を拡大した場合の懸念というのは、むしろ後で実施するときに起こるわけですけれども、研究開発のインセンティブという面では、入口でかなり長期的な視点で、本当に投資が還元されるかどうかということが法的にも明文化されてないと非常に参入が難しいという特徴がございます。特にバイオテクノロジーの場合、幾らわかったとは言え、生物というのはまだまだブラックボックスですから、その成功の不確実性というのは非常に高いわけです。
ですから、そういう点を考えると、やはり運用方法である程度保護はできると言っても、その法的な権利保護はかなりはっきりしてないと参入しにくいという問題、これはかなりこの分野に固有の問題だと思います。その辺が今後どう変わるかわかりませんけれども、例えば米国では医師の免責の例外規定としてバイオテクノロジー関係は除外されていますけれども、私はそこまで医師の免責の範囲を狭くしなくてもよいと思います。米国の場合はそれだけ権利意識が進んでいるわけですが、そういう事業環境の差を考えるときに、やはり特許、知的財産権が十分に保護されてないところには、新しい技術の創出は難しいということです。当然我々も中国のようなケースを考えたときに、新しい技術のトランスファーというのは、非常に慎重になるわけです。
そういう意味で、患者さんが新しい技術開発の恩恵に早く浴するためには、やはり権利保護の整備というのは是非必要で、今回は一歩前進ですけれども、是非こういう先端医療という面に限ってさらに検討されるべきであろうと思います。
○井村会長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○見城委員 どうもお疲れ様でございました。この検討委員会の結論は明快にすべきというのが私の考えでした。あいまいな表現はさけて、あくまでも責任はこの検討委員会が検討したところまでは、責任を持てるというところでの文章に仕上げていただいたということでは、最後までいろいろ御意見申し上げましたけれども、ありがとうございます。
今回の検討会を通して感じた事ですが、各現場で研究をされている先生方の御意見から、特許がとれる状況が本当に必要なんだろうということもわかるんですが、ここにこれだけのものが一応まとめられた訳です。今後この成果が現場でどう生かされていくのかということが重要です。これをなぜここまで時間をかけてまとめたかということは、やはり現場の医師の方々がいろんな発案をされても、それがどうしても医療行為と混同されることによって発展していかないというところが一番問題だった訳ですが、今後特許の範囲が拡大したのですからこれを仕組みとして実行段階できちんと遂行されていくということを切に願います。
それから、ある意味ではこれが出たことによって、覚悟していただきたいというのは、日本の医療機器メーカーはこれで一つ言い訳が言えなくなるわけですから、やはり発展していただかないとなりません。いろんなことを言い訳として遅れを取ってきたということは重々もうわかりましたが、やはり特許の部分でこれだけ一応拡大されたわけです。解釈が明快になったわけですから、私はそういったことでは本当に医療機器メーカーの方々もしっかりやっていただきたいというのが一つ。
それから、国の在り方として、産学共同でやっていくということは、各分野で行われているんですが、どれだけ研究コストをかけるかというところで、やはり国がコストの面での最終責任をとる位の本気を持っているのかというのをもう一度考えていただきたいと思うんです。
先ほど、平田委員からおっしゃったように、企業側がまだこれでも研究コストをかけていくことに非常に不安を考えるわけです。それに対して、産学共同で知的産業をどんどん発展させようと言っている割には、国はどれだけ、例えば、最初のコスト、研究費をかけて、それがだめでもよいというくらいの意気込みを持って頂きたい。半分半分持つというのかわかりませんけれども、本当にそういう意味での具体的なコストをかける。これを実行していただきたいと思うんです。そうでないと、これができたとしても、やはりだれがコストの責任取るのかということで、このとりまとめ案が生かされていかないのではないかという懸念がありますので、そこを是非お願いしたいと思います。
○井村会長 今の後者の問題ですけれども、国の方としてもいろんな施策をここ2、3年やっています。例えば、マッチングファンドというのがありまして、これは国が半分、それから企業が半分出してやる。企業の中で中小企業の場合には3分の1でいい。そういうことで、新しい技術開発にお金を出しておりまして、勿論生命科学の分野にも出ております。
そのほか、いろんな形の研究費を増やしております。その点、まだまだ足りないと言われればそうかもしれませんが、やはり難しいのは日本のいろんな社会制度にあります。例えば、大企業が手を付けないようなものは、ベンチャーでやらないといけない。それが失敗したときに、日本ではもう立ち上げれないというふうな問題点、そういう日本の一般的な社会通念と言いますか、そういうものをこれからどう変えていくのかということも1つの大きな問題です。
10月の終わりごろに、京阪奈の学研都市で国際シンポジウムがありまして、私もレクチャーを頼まれたんですが、これは、世界の知的クラスター、あるいは科学クラスターをどう育てるかということが議題でした。その中で勿論既成の企業の参加も必要だけれども、それ以上にベンチャーこそが新しい知的開発の主役になるので、それをどうやって育てていくのかというのが、非常に大きな課題だというふうな意見が多く出ました。
その点は、また国の方でも今後ともいろいろ考えていただけると思いますが、ほかに何かございましたら、どうぞ。
○秋元委員 一言言わないといけないような雰囲気なので、本当にまずもって長い間私ども産業界の説明等を我慢して聞いていただいたということ、それから、事務局も大変御苦労されたということについて、本当に心から感謝申し上げますし、本日の結論に対して何ら異存もございません。
ただ、皆さんの中から何人かの御意見もありましたけれども、物で保護するという形であっても、保護範囲の拡大であるとか、権利行使時の効力の問題、こういうことをきちっと関係当局は考えていただいて、物であったとしても、やはりアメリカが目標でございますから、ヨーロッパより同じでは困る訳です。物であっても、やはりヨーロッパと一歩踏み込んだような形で、何とかアメリカと競争できるような形の、前向きのベクトルで対処していただきたい。その結果を見た上で、将来本当に国民のコンセンサス、それから関係諸団体のコンセンサスが得られれば、これはやはり方法という形で考えていくことも必要ではないかと思っております。方法として考えていく、そういうようなコンセンサスが醸成されたら、あるいはその前にいろいろな医療機器、あるいは医薬の発展というものが、やはりどうしても日米間で差が出てきてしまう。アメリカと比べて差が出てきてしまうということであれば、またそのときに国民にうったえ、あるいは関係諸団体のコンセンサスを得た上で考えていく必要があるだろうと思っております。再度申し上げますが、今回につきましては私どもの意見も十分にご配慮いただきましたので、何ら異存はございません。
○井村会長 どうぞ。
○片山委員 一歩前進だと思いますので、私、全く異存ありません。これは、知財戦略の一環として、このテーマに取り組まれたわけです。日本の将来を考えていきますと、そこは積極的に挑戦していかなければいけない分野であることは間違いないと思うんです。
したがいまして、このことによって医療産業が是非発展していただくように、心よりお願いいたします。また、これは専門調査会の報告でございますので、その結論ができるだけ実現するように、是非立法の方もよろしくお願いしたいと思います。
本件の委員会について言いますと、やはり考え方がいろいろある場合に、なかなか難しいものだなということは、感じました。本来ですと、法律家がそういう場面で一番役に立たなければいかぬのでしょうけれども、この委員会で私はどの程度役に立てたかやや疑問でございます。なお、ちょっと気になりましたのは、やはりスピードという問題が、特にこの分野では重要な要素になりますし、日本の企業がこれから勝っていくためには、新しいものをつくると同時に、新しいものをつくっていくスピードが非常に大事だろうと思うんですが、そういう意味では残念ながらちょっと時間が、これは結果論でございますが、かかり過ぎたなという感じは持ちました。
ただ、いろんな委員の先生方のお話、先端のお話、あるいは医療現場のお話を伺って、私自身としては大変いい勉強になりました。どうもありがとうございました。
○井村会長 森下委員、どうぞ。
○森下委員 結論に関しては、先ほど申し上げたとおりなんですけれども、今回の議論の中でいろんな方からお話を聞きますと医療機器メーカーからも結構黒船論というのが結構強く出てきたんです。これは、本来日本がこの分野で生きていく中で、開国するか、しないかという、非常に後ろ向きの議論でとらえられている方がかなり多いと。やはりこういう状況ですと、見城委員言われたように、開国しても負けてしまうと思っている方が非常に多いということで、やはりそれは情けないと状況だと思うんです。
実際勝ち組と言われている元気がある企業とか、ベンチャーの方からは多く、是非積極的に認めてほしいという意見があって、非常に業界の中の意見というのも二極化しているんだなという印象を持ちました。
これは、製薬メーカーが以前薬の方でも同じような議論があったというふうに聞いておりますけれども、やはり国の研究開発の推進なりを通じて、そういう情けない意見が出る国では困るかなと。是非、制度含めて、その辺ベンチャーなり、あるいはそうした外に積極的に新しい薬品をつくっていこう、医療機器をつくっていこうというメーカーを支援するような制度をもっと充実しなければいけないということで、先ほど見城委員が言われたとおり、その辺りのところはより拡充が必要なんだろうと思います。
何か長い間鎖国をして、ちょっと負け組というか、負け犬根性がかなり身に付いているところもあるのかなという、ちょっとこれは悲しい現実もあるかなと思いました。
もう一点、野中先生が言われていたことの独占による弊害の部分なんですが、これはやはり今後どうしても特許というものがそういう性質を持つのは間違いないので、活用の要素というのをより強めていただきたいと思います。これは知財本部の中でも、別の分野ではかなり活用という話が強く出ておりますが、やはりこの医療の分野において、あるいはバイオ産業においても、特許を使って当然それを保護するという部分もあると同時に、それが弊害になっている部分というのを、より活用するような制度をつくっていく必要があるだろうと。この辺りは、今回そこまでの議論はできませんでしたけれども、是非、特に大学では現在リサーチツールを使った問題というのが、特許庁の前回の通達でいきなり大問題が起こってきておりまして、ちょっと現状まだはっきりしないということで、皆さんかなりびびっているところがあると思うんです。そういう分野も含めて活用という部分をもう少し丁寧にやっておく必要があるんではないかと思っています。
今回の内容としては、一歩前進ということで、いろいろ個人的な御意見はありますけれども、非常に先生方の御意見等もよくわかりますし、非常にいい結論になったんではないかということで、事務局の方、各先生に非常に感謝しております。
どうもありがとうございました。
○井村会長 どうぞ。
○野中委員 もう言うことはないんですけれども、実は私の担当は介護保険、医療保険ですから、医療と産業とは、どうも相いれない部分があります。先ほど平田委員から、患者さんのQOLという話がありましたけれども、QOLを改善するのは必ずしも先端の医療だけではなく、やはり患者さん、すなわち不幸にも病気を抱えた人に対する社会保障制度ということを強く思っています。アメリカの医療と日本の医療を考えたときに、確かに先端な技術はあると思いますけれども、それが本当にその方々に使えているかというと、私は必ずしもそうではない。そういう部分の中で、是非いわゆる我が国の社会保障制度はさまざまな問題がありますが、進んだ制度だと思っていますし、介護保険制度もあります。
実は、この2、3週間、介護保険でいろいろ仕事がありまして大変だったわけですけれども、その中で発明と特許の話には、なかなか解け込めなかったわけです。しかし、そういう面では国民が一人でも、不幸にも病気を抱えた方が適切な医療を受けられるためにと判断した部分もございます。
なぜ不幸にも病気ということをあえて言ったのか、是非御理解ください。やはり、元気な人が不幸な人のことを考えるということが、私は原点だと思います。どうかそういう部分で、今後とも悪影響を理解してその対処に対して推進していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○井村会長 ありがとうございました。実は、先週京都でサイエンス・アンド・テクノロジー・イン・ソサエティー・フォーラムというのがありまして、小泉総理も開会式には出てこられました。各国の科学技術担当大臣が集まりました。その中で、やはり医療は1つの問題になりました。私もパネルで意見を申し上げたんですが、大変難しい両面性があります。
1つ問題になったのは、やはりエイズの薬をどう考えるのかということです。これに対して、アメリカの製薬企業は、ワン・バイ・ワンで議論をして、人道に反しないようにしていきたいということでした。既に2種類の薬はインドでつくって、一定の国には特許をかけないで配布するというところまでやっているようです。
それから、アメリカは自由市場ですから、いい薬が非常に高い。このごろは、カナダでつくって、カナダからそれを密輸入するということが起こっているということも問題になりました。しかし、他方では、アメリカの委員は日本はもっと早く最新の医療が導入できるようにしないといけないのではないか。日本の患者さんが困っているという話をたくさん聞くという意見も出ました。
だから、そういう両面性が確かにあるわけで、その中で一番賢明な方法をつくって、取っていくべきだろうと私は考えております。
私個人の意見は余り申し上げないでおこうと思いますが、ただ一つ感じましたことは、どうも日本はいろんなことを運用で拡大してしまう傾向がある。憲法すらそうなっているわけですが、これはこれから非常にグローバル化が進んでいく中で、私は法律はだれが読んでもそのとおりだというものにしていかないといけないだろうと思っております。今回は、そこまで行けませんでしたけれども、今後とも検討を重ねていただいて、改善すべき点、法律を改めるべき点は改めていく。そして、外国の人が読んでも非常にわかりやすい日本の特許制度というものにしていかないといけないのではないかということを、常々感じておりましたので、最後にそのことを申し上げておきたいと思います。これは特許庁始め、各省への宿題ということでございます。
北村委員がまだお着きになれないので、メッセージが来ておりますが、ちょっと事務局から読んでいただけますか。
○小島事務局次長 北村委員から、交通渋滞に巻き込まれて、まだ路上にいらっしゃるようでございますので、以下のことを伝えてほしいというメッセージが来ておりますので御紹介します。
第1点は、この専門調査会で意見の一致を見て、私としてもハッピーです。
第2点は、これによってみんなが安心して前進できることを喜んでいます。
第3点は、井村会長、それから事務局にも御礼を申し上げたいということでございました。
○井村会長 それでは、まだ少し予定の時間を残しておりますが、いつも20分ぐらい延長しておりましたので、最後ぐらいはちょっと早めに終わるということで、この専門調査会の印象が少しでもよくなればありがたいと思っております。片山委員から、大変痛いところを突かれまして、スピードが遅いということでございましたが、これは偏に会長の私の責任でございますので、お許しをいただきたいと思います。
ようやく、我々も新しい出発点に立つことができました。先ほどから多くの委員の方がおっしゃいましたように、これを生かしていかないといけない。そして、日本の医療が少しでもよくなるようにしていかないといけないわけでありますので、そういう点で今後とも特許庁を始め、各省の方々の御努力に期待するところが大きいわけですし、我々としてもそれを側面から支援できる点は、できるだけ支援していきたい。是非いい制度にしていきたいと思います。
先ほど、平田委員がおっしゃいましたように、医療技術は大変な勢いで進んでおりまして、私どもが想像できないような新しい技術が今後出てくる可能性もあります。そういうものに対しても対応できるように、是非考えていただきたいと思います。これは今後とも知財戦略本部の仕事ではないかというふうに思っております。
長い間にわたりまして、大変御尽力をいただきまして、ありがとうございました。これで今日は終わらせていただきます。
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