○阿部会長 それでは、おそろいのようでございますので、ただいまから第8回の知的創造サイクル専門調査会を開催させていただきます。本日もお忙しいところおいでいただきましてありがとうございます。
なお、本日、板井委員と加藤委員は御欠席という御連絡をいただいておりますし、また知的財産戦略本部の野間口本部員は本日も御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。
それでは早速ですが、議事に入らせていただきます。国際標準総合戦略についてでございます。前回の御議論を踏まえまして、事務局の方で取りまとめをしてくれました。委員の皆様の御意見あるいは関係府省の意見も調整をして報告書案をつくりましたものが資料1でございます。
スケジュールを申し上げて恐縮でありますが、本日の本専門調査会でこの報告書案を御決定いただきましたら、12月の総理の出られる本部会合にお諮りしたいと考えております。そういうことでございますが、まず報告書案について事務局から説明してもらいます。お願いします。
○藤田次長 資料1をごらんいただきたいと思います。前回の専門調査会でいただいた御意見、あるいは各省との協議を踏まえまして、前の会合でお示しした案を修正したものでございます。主な修正点を御説明申し上げます。
まず1ページでございますけれども、これは前文でございます。修正点のところにはアンダーラインが引いてございますけれども、1ページの上から4行目のところで、いかに優れた製品を作ろうとも標準に合致していなければ市場を獲得できない時代になったと書いてあったわけでございますが、全部が全部必ずしもそう言えないのではないかという御指摘もございまして、「必ずしも市場を獲得できない」というような言い方に少し和らげてございます。
次に、5ページをごらんいただきたいと思います。前回の資料では「3つの目標」となっておりましたけれども、「目標」というにはやや具体性に乏しいという御指摘をいただきまして「3つの視点」と直させていただきました。
それから、1の「イノベーションを促進する」のところのイノベーションの定義をめぐっていろいろ御議論がございましたので、「研究開発の成果を、国際標準により市場と社会に展開することによって、イノベーションを実現する」という言い方にしてございます。 次に、7ページをごらんいただきたいと思います。真ん中辺りのアンダーラインのところですけれども、これはすべて追加をしてございます。一番上のところは「研究開発の最前線で標準が行われる時代となり、標準化戦略と、研究開発戦略、知財戦略とを切り離して考えることができなくなった。
国際標準はイノベーション促進の観点からも重要である。研究開発の成果を、国際標準により市場と社会に展開することによって、世の中に変革をもたらすイノベーションの実現が可能となる。
また、自己の技術を国際標準化することにより、研究開発投資の早期回収を図り、新たな研究開発の資金とするサイクルを確立することができる。 更に、先端技術分野における国際標準化は、技術開発の方向性における不確実性(いわゆる「死の谷」の問題も含め)を減少させ、国際標準化により創出された共通のプラットフォームに基づく更なるイノベーションの創出を促進する面もある。」ということで、前回何人かの委員の方からいただいた御意見を加えてさせていただきました。 次に10ページでございます。真ん中辺りの6のところですが、前回の資料ではマネジメント分野の規格だけここに書いてあったのですけれども、マネジメント分野のみならずサービス分野とか食品安全、さまざまな分野で広がってきているものだという御指摘をいただきましたので、そういう広い書き方に変えました。
次に12ページの真ん中辺りですけれども、「国際的な特許権の取得とあわせ、国の研究活動と国際標準化活動を一体的に推進する」ということで、この下線の部分を追加いたました。
それから次の13ページ、上の四角の中の1行目でございますが、国際標準案の提案数などにおいて、我が国が欧米主要国に比べて遜色なくリードできるようにするということで、「国際標準案の提案数」という表現を加えました。前回の案ではなかったのですけれども、できるだけ具体的な目標を定めるという観点から標準案の提案数というものを例示させていただきました。現在、欧米主要国に比べますとISOなどにおいては日本の提案数は半分くらいの水準でございますので、これが2015年までに今の提案数を倍に増やすというくらいの意気込みで対応していただきたいということでございます。
次に14ページでございます。真ん中辺りですけれども、国際標準化の情報収集でアンダーラインのところですが、「また、諸外国の国際標準化への取組に関する情報の収集も欠かせない」という部分、それから四角の中の「在外公館やJETRO等を活用し」、それから「諸外国の取組に関する情報も含め」、情報の収集、幅広活用を図るということで、御指摘を踏まえて追加をいたしました。
次に15ページでございまして、真ん中の四角の中の2つ目の丸を追加いたしました。「国際標準人材育成セミナー等における知財研修の強化、知財運営における国際融合人材育成の取組との連携などにより、国際的に通用する高度な技術管理者の育成を促進する。」それから次の丸の部分ですが、これは参考人からいただいた御意見を踏まえて「工業会や公的機関における再雇用等の促進など」ということで、民間企業でせっかくその経験を積んでこられた方々をできるだけ活用するという観点から加えてございます。
それから下から3行目のところですが、これは若手にもチャンスを早い段階から与えるべきだという御指摘がございましたので、「将来国際標準化活動の中心となる若い人材を育成する観点からも」ということで加えさせていただきました。
次に16ページでございます。真ん中の四角の中の3つ目の丸でございますけれども、御指摘を踏まえて、知財分野におけるマネジメント研修あるいはMOTなどにおいて国際標準に関する内容を盛り込むように自主的な取り組みを促進するというふうに加えてございます。
次に18ページの「アジア・太平洋標準化イニシアチブ」の真ん中のところでございますけれども、不適切な標準化に対処するための協調的行動など、アジア・太平洋地域が国際標準化をリードするための基盤整備に向けた戦略が必要ということで、そのアンダーラインの部分を追加いたしました。
次に19ページでございます。RAND条件についていきなり前の案では出てきていたんですけれども、ちょっとわかりにくいということで、一番下のところにRAND条件の意味を注書きで付記をいたしました。
次は22ページでございます。ここは最初の段落で、特許権を含む標準が、最初の案は「常識化しつつある」と書いてあったのですけれども、「常識化しつつある」と言いながら次の段落では、これから知財の確保を図っていくことが大事だということで、ちょっと矛盾しているように見えるのではないかという御指摘がございましたので「増加する傾向にある」というふうに上の段落の最後のところを変えました。それから、次の段落では知財権の「適切な確保と活用」と、「活用」というところを加えまして、2つの段落に矛盾がないようにしてございます。
それから最後ですが、24ページで(6)の「ISOの活動範囲の広がり」というところで、これも最初の案はマネジメント規格のところのみ書いてあったのですけれども、それ以外にも分野は広がっているということなので、このようにサービスとか食品安全、観光サービス、格付けサービス、こうした実態について書き加えさせていただきました。修正点は以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。非常によくなったと思いますが、なおここをこうした方がいいという御意見がもしございましたらお伺いいたしたいと思います。いかがでしょうか。特にございませんか。
○野間口本部員 大変内容がよくなってありがたいと思います。本文の意味としては十分に主張できているわけですけれども、産学官連携という点ですね。これはどこかいいところにキーワードといいますか、産学官連携推進会議等でも国際標準への貢献、6月の京都会議でも私も出席したのですけれども、議論が出たように思います。
最近私が関係していますMEMS協議会、マイクロ・エレクトロニクス・メカニカル・システムの新しい分野での評価手段というか、方法みたいなものですね。これは産業界の提案ではいけませんで、大学の先生方とのきちんとした理論的な裏付け、背景も伴いながら国際的に提案する。これは日本がリーダーシップを取っていると、私が会長なものですからそう思っているのですが、そういうものを見ますとそういう動きが各所に見られつつあるというのは大変喜ばしいことだと思います。
そういった意味では、大学間連携とかアジアとの連携、それから大学での活動の重要性をうたってありますので、意味としては入っているのですが、キーワードとして産学官連携の重要性みたいなものをどこかに入れていただくといいのではないかと思います。
○阿部会長 どこかという御提案はございますか。場所は特にございませんか。
○野間口本部員 場所はお任せします。
○阿部会長 御趣旨は結構かと思いますが、どういうふうに織り込むかということはございますけれども、いかがでしょうか。
それでは、特に御反対の御意見もないようですし、おっしゃる趣旨は非常に大切なことだと思いますので、どこかに入れるべくお任せをいただくということでよろしゅうございますか。
ありがとうございました。それでは、事務局とも相談してやらせていただきます。ほかの点はいかがでしょうか。
それでは、もしよろしければ国際標準総合戦略案を専門調査会として決定をいたしまして、今の修正の上ですが、次回の本部会合にお諮りをしたいと考えますが、よろしゅうございますか。
ありがとうございました。それでは、そうさせていただきます。
次に知的創造サイクルに関する課題の分野に入らせていただきますが、野間口本部員にもなるべくいていただければありがたいと思います。
本日の知的創造サイクルについての課題は、御案内のように保護分野であります。保護分野でありますけれども、2つに分かれておりまして、いわゆる保護分野と模倣品・海賊版対策の2つの項目がありますので、これを前半と後半に分けて御議論いただいたらと考えております。
これについても今まで推進計画でいろいろ御提案をいただきまして、また各省の協力も得て進んでいるわけでありますけれども、更にこの点をということで、事務局がまとめてくれましたので、まず事務局から前半の保護分野について説明をしてください。
○藤田次長 資料2をごらんいただきたいと思います。
まず1ページ目でございます。今、阿部会長からもお話がございましたけれども、これまでの推進計画に盛り込まれていない新規の分野のみ資料2で取り上げてございます。そのほかにも保護分野は特許審査の迅速化を始め継続的な課題はたくさんあるわけでございますけれども、それまで入れますと大変資料が大部になりますので、本日は新規項目についての資料になってございます。
1ページでございます。まず第1番目は「迅速・的確な特許審査の実現」で「情報提供制度の充実」ということでございまして、四角の中をごらんいただきたいと思いますけれども、特許審査の迅速化あるいは特許の質の維持・向上を両立させるために「情報提供制度」、この制度はもともと現在もございます。同じページの下の米印の1のところに注書きがございますけれども、「特許庁に継続中の特許出願について、誰でも、公開公報等の「書類」を提出することにより、その出願が新規性や進歩性を有しない旨の情報を特許庁に提供できる制度」になってございます。今、年間7,000件くらいの情報提供がこの制度に基づいて寄せられているわけでございますけれども、審査の迅速化あるいは質の向上ということを図るために、よりこの制度を活用しやすくしてはどうかという提案でございます。
上の四角の中に@、Aとございますが、今は書面によって提出しなければいけない情報なのですけれども、これをオンラインによっても情報提供可能としてはどうかということです。
それからAございますが、「特許審査着手見通し時期照会」という制度がございまして、現在は出願人あるいは代理人のみがこの照会ができます。自分が出願した特許がいつごろ審査されるかがわかるようになっているわけでございますけれども、この照会制度を第三者も使えるようにする。そうすると、第三者がこの特許はそろそろ審査が始まるということがわかって、それに間に合うように情報提供しようということで、ある種のインセンティブとしてそれが働くのではないかということでございます。
次に5ページでございます。「特許制度調和と世界特許の実現」に向けて「One Applicationの更なる推進」ということであります。
(1)の4行目をごらんいただきたいと思いますけれども、本年5月より三極特許庁の作業部会における検討が開始されまして、特許の出願様式の統一の作業が進んでいます。実は、たまたま今朝、新聞などには合意されたと書いてございますけれども、今、三極特許庁会合を日本でやっておりまして、正式に書面でサインをするのはちょうど今ごろかと思います。
そういうことで、様式の統一については合意がなされてきたわけでございますけれども、まだ具体的な運用の面では違いがございます。例えば(2)の@ですけれども、「多数従属請求項の取扱いの統一」、ちょっと技術的で恐縮でございますが、例えば1行目の括弧の中に書いてございますが、●●を備えた請求項、つまり特許のクレームでございますが、その1、2、3というものがあって少しずつ違う。それでまず特許のクレームをして、その1、2、3に何か別のものをプラスアルファしたものを請求項の4とする。その請求項の4と、それからまた別の請求項の5というものがございまして、4と5にまたプラスベータしたものを請求項の6とするという孫引き的な請求項の扱い、書き方がアメリカあるいはPCT規則では認められていない。日本やヨーロッパでは認められているということで、こうした実際の書き方の違いというものがございます。
あるいはAですけれども、請求項数に関連する料金体系の統一が必要ではないかということで、次のページをごらんいただきますと、真ん中くらいのところに表がございます。「料金体系の違いによる平均請求項数の違い」ということで、日本は審査請求料に請求項の数掛ける4,000円という審査請求手数料になっているわけですけれども、アメリカは700ドルプラス20を超えた分について掛ける50というような料金体系です。あるいはEPOですと2,335ユーロに10を超えたものについての請求項掛ける45となっております。
そうすると、やはり料金体系が請求項の数に如実に影響を与えておりまして、アメリカは20くらいでそれが平均になるということで、EPOは10ちょっとくらいが平均、日本はそれよりも少ないということで、こういう料金体系なども整合させていくことによってワンアプリケーションの実行を確保できるのではないかということでございます。
次の項目は7ページでございまして「審査官の長期派遣による「日米国際連携審査」」ということで、(1)の「背景」のところをごらんいただきますと1つ目のポツにございますが、日本の特許庁とヨーロッパのEPOとの間では継続的な審査官の交流が行われております。ところが、日本とアメリカの間でそうした交流が行われていないということで、一番関係の深い日米間でそうした交流を深めるべきではないかということでございます。 (2)の1行目から書いてございますけれども、日本からアメリカに例えば6か月程度の長期にわたる審査官を派遣しまして、日米に共通で出願された案件について共同で審査することをしてはどうかとうことでございます。分野によっていろいろ日米の運用の違いの大きいところもございますので、当面はそういう運用の差が少ない分野、例えば機械ですとか、電気ですとか、そうした分野からこうしたことを始めてはどうかという提案でございます。
次の項目が10ページでございます。「地域団体商標の登録率の向上」ということでございまして、(1)の1つ目のポツのところに書いてございますが、本年の4月から地域団体商標、いわゆる地域ブランドを認める商標制度の出願の受付が開始されまして、これまでに600件以上の出願が行われてございます。
一方、4月に出てきた374件のうち第1陣といいますか、先日発表された登録査定が52件にとどまっているということでございます。できたての制度でございますので、まだまだ書類に不備があるとか、要件を十分に満たしていないとか、あるいは出願をされる方が要件を十分に認識されていないという問題があるようでございます。そこで、もう少しいろいろ親切に対応することによって、せっかくできた制度を地域の振興に大いに生かしていただこうという趣旨で、上の四角にちょっと戻っていただきますけれども、2行目のところにございますが、主要な拒絶理由を類型化した出願前チェックフローチャートの配布・利用促進、あるいは地方面接審査というのは地方に行って実際に出願する人と面談をすることで、郵送とかでやっていますと、これはだめと言って突き返して、また書類を変えて戻ってくるのに大変時間がかかってしまう。そういうことをなくすために、例えばフェイス・トゥー・フェイスで審査をするというようなことをしてはどうかという提案でございます。
11ページの(3)の参考のところに全国地域別の出願件数が地域ごとに書いてございますが、ごらんのように全国津津浦浦に広がっておりまして、必ずしも弁理士さんがこうやって全国にまんべんなくおられるわけでもなく、まだまだ十分にその制度の周知が図られていないということで、よりこの制度の使い勝手をよくしていくという趣旨でございます。 以上が資料2の前半部分でございますけれども、参考資料として後に色刷りの資料が入ってございます。参考資料1というものを御参考までにごらんいただきたいと思います。保護分野の最大の課題でございます特許審査の迅速化につきましては、経済産業省がこのような新たな特許行政の基本方針というものを10月19日に発表いたしました。経産省は経産大臣を本部長として特許審査迅速化・効率化推進本部というものを設けております。
参考資料1の右側の四角の中をちょっとだけごらんいただきますと、まず上の方の四角ですが、「特許審査迅速化の目標」ということで、点線の中に小さくて恐縮ですけれども、「審査順番待ち期間を2013年に11カ月に短縮し、最終的にゼロを目指す」という目標の下に取り組みが行われておりまして、その下の赤い字で「特許審査効率化の目標」というものを定めて、例えば審査官1人当たりの年間処理件数というものを22年度に1,400項にする。5年間で30%増やそうということで、18年度は1,300項、前の年度に比べてプラス14.3%を目標にする。あるいは次の丸のところですが、先行技術の調査の外注を拡大するということで5年間で25%増にしていく。
それから、下の四角に移りまして「審査当局による取組」ということで1つ目の丸ですが、任期付き98人を含む審査官の定員増、あるいは2つ目の丸で日米間の特許審査ハイウェイの試行の開始。
それから2番のところですけれども、産業界等との取り組みということで、例えば大臣と有識者の意見交換を行う特許戦略懇談会の開催、あるいは2つ目の丸のところにございますけれども、技術流出防止を図る観点からも先使用権の制度を、より使い勝手をよくするべきではないかということで、これは是非関係の方はごらんいただいたらと思いますけれども、今年の6月に相当立派な事例集を特許庁が公表をしております。
それから3つ目の丸ですが、審査請求を取り下げるときには全額審査請求料をお返しするというのを時限措置として導入する。あるいは、今年の特許の年報の中で出願者上位200社の特許査定率や海外出願率などを全部表にして発表をするというようなことに取り組んでおります。
それから最後の3番の「中小企業に対する配慮」のところでは、早期審査制度の手続きの簡素化とか、一番下の丸ですが、「知財駆け込み寺」を全国の商工会・商工会議所に設置をしたというようなことで、こういう取り組みが進んでおりますので、引き続きこうした取り組みについては知財本部としてもしっかり見守って支援していきたいと思っている次第でございます。
御説明は以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。
では、模倣品・海賊版に対しては後回しにさせていただきますが、保護分野について事務局から説明をしてもらいました。お聞きになっておわかりのように、かなりテクニカルなことが多い今回の内容でありますけれども、自由に御意見をいただければありがたいと思いますので、よろしくお願いします。どこでも結構です。どうぞ。
○下坂委員 2ページの「具体的方策」というところでございますけれども、ここに「オンラインによる情報提供の可能化」と、2番に「「特許審査着手見通し時期照会」とのリンク」というものがございます。これは実務上、大変ありがたい御提案で、現実には審査請求をして、それからすぐ内容証明などが特許法65条のもので送られてきます。そうしますと今、異議申立制度がございませんし、無効審判では既に権利が発生しているということから、大至急その内容証明に対抗するために情報提供の準備を始めます。
ところが、審査請求がされておりまして、例えばそれが本年3月ごろ審査請求されているというような場合、もう既に審査に着手されているのではなかろうか、いつ結論が出るのだろうか、などの心配が常に頭の方にありまして、非常に落ち着かない。特にIT関連特許出願などは情報提供の書類の準備が大変でございまして、日にちが相当かかるということもございます。
それで、進行状況を是非知りたいのですけれども、私ども情報提供者は第三者ということになりますので、現在は見ることができないという状況でございます。この2番目の時期照会とのリンクで情報提供を可能化にしていただければ大変仕事上助かりますので、是非これをお進めいただきたいと考えております。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。特に添削の御意見ではないわけですね。
○下坂委員 はい。お願いでございます。
○阿部会長 ほかにいかがでしょうか。
では、田中委員お願いします。
○田中委員 現在、三極特許庁会合が行われており、世界特許やハーモナイゼーションについて積極的に議論が交わされていることは、非常に評価したいと思いますけれども、新聞等の内容に多々不確かな記載があります。例えば、出願様式について、どこまで議論をされて、それがいつから実施されるのか、といった重要な部分が記載されておりません。
また、アメリカが先発明主義についても合意しそうだという記事がありましたが、次のステップとしてアメリカの中で議会の承認を得なければ、アメリカでは批准されないわけです。新聞を見ていますとすぐにでも実現するような雰囲気で書かれているわけですが、現実はそうではありません。我々としては、その後どういうプロセスを通していつごろその可能性が出てくるのか、そういうこともきちんと含めた情報を知るような仕組みが欲しいということでございます。
よろしくお願いしたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。これは国際的ないろいろな議論の中身の情報と、それからその行方に対する見込みみたいなものがどうなのかということですが、どうでしょうか。そういうことについて非常に関心が強いということは理解できますが、具体的に御提案としてどこがどういうことをやったらいいということはございますか。
○田中委員 特許庁が、新聞記事等に関して補足的な情報を付け加えて公表するような仕組みを作ることも、一つの手段であると思います。
○阿部会長 もう一歩踏み込んでですね。
○吉野委員 最低限どれぐらいのプロセスが必要かというような話ですね。
○阿部会長 さっきおっしゃった議会を通さなければいかぬとか、そういうことですね。○田中委員 例えば世界特許について、新聞を読んだ人は明日にでもそれが実現するかのように捉えるわけです。こちらは責任部署ですから社内から問い合わせを受けることになるのですが、それについてはまだ議会を通さなければいけないこと、実施は当分先であることを説明しています。このように、新聞記事には非常に誤解を与えている部分があります。それを少しでも解消していった方がいいだろうと考えます。何か支援することがあれば我々も協力するところが出てくるだろうと思います。
○阿部会長 具体的に特許庁という名前も出ているのですが。
○久保利委員 それに関連して、要するに産学官とか、いろいろ皆、協力してということではあるのですが、今日もお見えかもしれませんけれども、マスコミが実際は非常にレベルが低いんです。したがって、今みたいなものは本当は正しい記事を書こうとすれば田中委員がおっしゃるとおり、こういう手続がこの後必要ですということまで書かなければ本当は記事になっていないはずなんですけれども、その辺を非常に手抜きをするものですから、特許庁にこれをやれ、あれをやれという話が出てくるので、本当はメディアがもっとちゃんとした報道をすべきだというメッセージをむしろこのワーキンググループとしては出すべきではないか。
ついこの間もある新聞に、エンタメロイヤーは4人しかいないと言われまして、何のためにエンタメロイヤーズネットをつくったんだという問題になったことも実はありますので、是非正確な報道、そして国民がそれを読んでなるほどとわかるような国民教育にもなるような記事を出していただきたいということをひとつお願いをしておきます。
○妹尾委員 しり馬に乗ってもう一つ申し上げます。
以前も申し上げたのですが、いわゆる知財ジャーナリストの方の育成が非常に遅れています。これは今、先生がおっしゃられたように限られた情報の中でのマスコミ報道を正確に行ってもらうことだけではなくて、知財ジャーナリストの方自身が増えなくてはいけないわけです。そして、その方々には最先端の深い知識を持っていただかなければいけません。
○阿部会長 これは科学技術政策全体に関わることと密接に関係があるのですが、第3期基本計画の議論の中でも出てきているんですけれども、例えば科学技術インタープリターみたいなものをどう養成していくかとか、メディアの役割というのは非常に大きいですけれども、やはり専門家と、それから一般市民の間のインタープリターみたいな人が非常に少ないということも大きいところですし、妹尾先生のおっしゃったこととも関係があるのですが、科学技術がどんどん進歩して専門性が高くなればなるほど、最終的には一般市民の選択によらなければいけないにもかかわらずギャップが出てきてしまう。恐らく、知財についても政策の方がどんどん急速に動いていくと専門性も含めてそういうことが起きてくるだろうと思います。
これは多面的にいろいろな工夫をしていく必要があると思いますので、そういう御提案をどんどんしていただくということは私は非常に重要なことではないかと思いますし、御提案だけではなくて実行、実施をすることも必要なのですが、なかなか難しい問題もあるかと思います。
○中山委員 私もマスコミとのおつき合いが結構長いのですが、基本的には久保利委員のおっしゃっていることと同じなんですけれども、それにプラスして、往々にしてこういう会議で決定する前にマスコミに記事が出てしまう。実は今日の決定事項はもう新聞に出ています。これは決して珍しくなくて、これから議論をする、あるいはこれから決定するときにもう出ていて、しかもそれがかなり不正確なものが多い。つまり、出す方にも問題があるので、正確な時期に正確な情報を出すというふうにしていただきたいと思います。
といいますのは、マスコミで知的財産だけを専門にやっているということは到底人的に無理なので、これもやり、あれもやっている中の一つなんですね。したがって、まずこちらの方が正確な時期に正確な情報を出すということが一番大事ではないかと思います。
○阿部会長 ありがとうございます。そのとおりだと思います。
○八田委員 10ページの地域団体商標制度についてご質問したいと思います。例えば農産物の産地がきちんとわかるということは重要ですが、商標制度が農協の恒久化につながるとまずいと思います。特定の組織ではなくて、産地を認定することが重要な場合もあると思います。10ページから11ページに「その使用にあたっての地理的範囲や生産方法」ということがありますから、その地理的範囲をきちんと認定するということです。
農村では農協に入らないと肥料も何も入らないから嫌々ながら入るという人もいるけれども、断固独立にやるという人も結構いるわけです。その断固独立にやった人が同じ地域で同じ品質のものをつくっているならば、これはやはり認めてやるべきじゃないか。そのための具体的な方法としてはどういうことを考えていらっしゃるのか伺いたいと思います。
例えば、地方公共団体にこういう登録するものを認めるというようなことが可能なのか。あるいは、農協組合員でなくてもその地域で生産されたことが認められるならばやはり認農協がその事実を認定するとか、もろもろあると思うんですが、例えばどういうことを考えていらっしゃるのか。もし例示できるのならばお願いします。
○藤田次長 先生が御指摘のように団体が出願をしてまいりますので、その団体の中には農産物については農協が出願人になっているという例もたくさんございます。それで、審査の過程で特許庁が大変苦労していることは、例えばある地域ブランドがかなり有名になってきているけれども、それが農協の努力によってそういうブランドが確立してきたのか、実は農協ではない別の人たちによって確立されてきたものを農協が代表的に出願を出してきているようなこともあるのか。
したがって、表現はやや不正確で恐縮ですけれども、出願をしてきた団体が本当に自分のブランドとしてこれまで育ててきたのかどうかということも審査の対象になっておりまして、そこはなかなか判断が難しいところも恐らくあるんだろうと思います。
一方、仮に団体のアウトサイダーであっても、今までその地域ブランドを出していて出荷しているという方はもともとの権利がありますので、その方々はその団体のアウトサイダーであってもそれを使ってはならないということにはならないということであります。○八田委員 特に天候とか土壌とかが関係あるようなものならば、できるだけ新規の人たちが、入れるようにしていただきたいんですが、例えば何とか農協ブランドというふうにするならば、これはわかりやすいと思うんです。特定の団体だけを非常に有利にしてしまって新規の参入を難しくすることだけは避けていただきたいと思います。
○阿部会長 ありがとうございます。
○下坂委員 実は地域ブランドに関しまして、私自身は専門調査会に所属させていただいている身ではありますけれども、52件の14%、それから4件か5件、昨日、一昨日で登録になっておりますので少し増えているのですが、14%で本当のところほっと胸をなで下ろしたところでございます。現実には地域ブランドか、それともいわゆる普通名称プラス地域の名前かということで、その使い勝手が非常に難しいところがございます。それで、地域ブランドの登録になりましたもの、出願中のものなどを全部リストで手元に置きまして、単純な一例なんですが、ある会社が例えば松坂牛のコロッケの文字を使いたい、大丈夫だろうかと言ってきたような場合に、松坂牛は出願されていないか、最初の使用は4月1日前かどうかとかなどいろいろな要素を考えながらそれが地域ブランドに引っ掛からないかどうか、もし登録になってしまったものがあればどのようにアプローチして、どのようにライセンスを受ければいいのか、彼らが金銭を要求するかどうかなどを考えることになります。例えば店が使おうという商標を30くらい選択しますときには、従来でしたらもうとんとんと、これは普通名称だということでいけたところが大変な苦労をしております。
それでお願いをしたいことは、地域ブランドの新制度は地方の活性化のためにとてもいいことであって、根本的には私も大賛成なのですが、地方ブランドがもう少し確立した段階で、商標権の効力などについて、中山委員などにお知恵を拝借しながら、どのように解決していけばいいかということを、是非検討していく必要があると思っております。
○阿部会長 非常に難しいケースがたくさん出てくるのは想像できますね。
それでは、前田委員お願いします。
○前田委員 7ページ目の「審査官の長期派遣による「日米国際連携審査」」についてですけれども、先ほど審査官を派遣する際に、なるべく共通の電気分野等がよろしいのではないかという意見がお話であったと思いますが、どういう分野の方に行っていただくかといことに関して、私の個人的な意見としては、例えば、むしろ日本が遅れているライフサイエンスの分野のところで行ってもらうというのも一つの手ではないかと思いました。
例えば、デジカメなどのような、日本の得意な分野で行くことは、当然王道ではありますが、あえて、ライフサイエンスの分野などの日本が少し遅れている分野でも派遣を行うことで、アメリカの特許を日本に導入するというのも一つの手ではないかと思いました。例えば、以前ビジネスモデル特許は、法整備が先に進んだのではなくて必要性から既成事実の方が先に出て、後から法整備をしたような形がなされたように私は理解しているのですが、ライフサイエンス分野等も、審査官の方がアメリカへ入って学ばせていただいて、それを日本に導入してもらうという形もありなのかなと思いました。
○阿部会長 ありがとうございました。今、考えているのは、双方合わせて60名以上というのはもう実績ですね。
○藤田次長 はい。
○阿部会長 現在のところ、日本から行っている審査官でライフサイエンスというのはその中でどのくらいかわかりますか。
○藤田次長 アメリカにはまだ出て行っておりません。今はゼロでございます。
○阿部会長 全然行っていないんですか。そうすると、これからということでライフサイエンスの分野を優先して打ち出していただくことが必要ではないかということだと思います。お話を聞いていると、なるほどなと思いますけれども、具体的な制度設計のときに、もうそういう準備が多少行われているんですか。
○藤田次長 まだ全く行われておりません。
○阿部会長 では、そういう御意見も踏まえて準備をするということですね。わかりました。
では、どうぞ。
○中山委員 この派遣の目的ですけれども、日本の弱い分野をアメリカに行って学んでこさせるという目的ではなくて、ここに書いてあるとおり、審査官相互の信頼感の醸成とか、あるいはちょっと色の違っているところはなるべく一緒にできないかとか、そういう目的であるとすれば、弱い分野を向こうに送ってということよりは、先ほど事務局から説明があった方がむしろ合理的なのではないか。何が目的で派遣するのかということだと思うんです。
○前田委員 中山委員のおっしゃるとおりだと思います。この文章を読むと、合意をするために、三極全部一致させるために審査官が行きますので、やはりなるべく同じ分野のところで合意が取り付けられるところの分野の人が中心だとは思います。ただ、せっかくこのような制度があるのであれば、そこの中にライフサイエンスの方も入るというのも、既成事実をつくるという違う目的なのかもしれないのですけれども、そういうような何か突破口にならないのかなと個人的に思ったものですから。
ただ、目的が何かということを明確にするという意味では、どちらの国においても有利というものがない、同じぐらいのレベルのところで行ってもらうのが順当だと私も思っております。
○妹尾委員 素朴な疑問です。日独、日韓、日英、日スイス間でも少人数では行われているということなのですが、将来関係が深くなるはずの中国との間はどういうふうになっているのでしょうか。
○藤田次長 中国との間でも今、特許庁はいろいろな交流をしておりますけれども、むしろ知財制度というものがまだ確立される過程という面が中国にはございますので、例えば日本の審査のやり方などを研修し、できれば調和的になればいいということでやっております。したがって、共同で審査するという段階にはまだ至らずに、もう少しトランスファーの段階に今はあるのではないかと思っております。
○妹尾委員 いわゆる技術指導に行っているというような感じですね。
○藤田次長 はい。
○阿部会長 御参考になるかどうかわかりませんが、日英とか日米とかの先進国の話ですけれども、日本とバイラテラルに協定を結んで共同に何かやりたいというときに、科学技術の世界ですけれども、大体向こうは日本の強いところを日本と一緒にやりたがるんです。それだけではだめですよということをいつも気が付いたらコメントするようにはしていますけれども、それぞれの国によってメリットのあるところを望んでくるというところはありますから、そこは一種の多面性を担保する必要があるのではないかと思います。
いろいろ御意見があろうかと思いますが、もし時間がありましたらまた戻らせていただくということで、次の模倣品・海賊版対策に移らせていただきます。これもまず事務局から説明をしてください。
○藤田次長 先ほどの資料2の12ページをごらんいただきたいと思います。
「模倣品・海賊版対策」の1つ目の項目は、「海賊版の広告行為を権利侵害とする法制度の検討」ということで、四角の中でございますけれども、著作権法において著作権を侵害する海賊版を販売するための広告行為は現状では権利侵害を構成することにされておりません。一方、商標、意匠あるいは特許などもそうですけれども、他の知的財産権は広告行為自体が権利侵害となっております。昨今、いろいろなインターネットオークションとか、ウェブサイトなどで著作権を侵害する、例えば大っぴらに海賊版の映画のDVDが売られるというようなことも多発してきておりますので、ほかの産業財産権に合わせて著作権法においても海賊版を販売するための広告行為そのものを権利侵害とするように法制度の整備を行ってはどうかということでございます。
2つ目は15ページでございまして、「著作権法における「親告罪」の見直し」でございます。親告罪というのはこの四角の次のところに書いてございますけれども、被害者が告訴しなければ公訴を提起することはできない罪ということでございまして、例えば過失侵害ですとか、名誉棄損ですとか、あるいはストーカー被害ですとか、そうした犯罪については親告罪になっております。それで、現在著作権の侵害についても著作権法上、親告罪とされているわけでございます。
ただ、同じ15ページの下の方をちょっとごらんいただきますと、例えば海賊行為が非常に巧妙になっていたり、あるいは権利者の関係が複雑になっていて、告訴権者による侵害の立証、関係者の調整が困難、あるいは負担が大きな場合が出てきている。あるいは、中小企業やベンチャー企業にとってはなかなか告訴をする人的、資金的な余力がないという場合もあること。あるいは、親告罪というのは刑事訴訟法によりまして犯人を知った日から6か月を経過してしまいますと告訴が不可能になるということで、いろいろ立証の準備をしているうちに6か月を経過してしまうような事態も起こり得るということから、この際、親告罪ではなく非親告罪とするということを検討してはどうかということであります。 ちなみに、ほかの国の立法令を見てみますと、アメリカなどは17ページのところに書いてございますが、職権起訴が可能である。あるいは、ドイツは原則親告罪なのですけれども、特別な公益上の必要を認めた場合には職権起訴が可能であるというようなことで、EUの指令も同じような提案が今なされておりますので、国際的な調和の観点からもおかしなことではないと考えられるのではないかということでございます。
次が18ページでございますけれども、「インターネットオークション対策」です。(1)の背景のところをごらんいただきたいのですが、権利者がインターネットオークションへの権利侵害品の出品を発見した場合、現在はプロバイダ責任制限法、これは俗称でございまして、正確には特定電気通信役務云々という法律が2001年に制定されております。これはネットオークションへの対応のみならず、ネット上で例えば名誉棄損あるいはプライバシーの侵害などが横行するのを防ぐというような目的も含めて、この法律がつくられたわけでございます。
ネットオークションの関係ではこの下の@に書いてございますが、出品者情報の開示と、それから次のページのAにございます出品削除と2つの問題がございます。
@の出品者情報の開示というのは権利者、例えばルイ・ヴィトンですが、例えば、ヤフーのオークションで権利侵害品を発見した。それがオークションにかけられている。そうすると、それを一体どんな人が出品しているのか、その情報の開示を求めることができるということが法律で書かれているわけでございますけれども、@に書いてございますようにオークション事業者自身が権利侵害が明白であるということを審査することが現状では求められている。もし間違ってその情報を開示してしまいますと、今度は出品者に対してオークション事業者が責任を負うことになります。
一方、次のポツですけれども、仮にオークション事業者が開示請求に応じないことにより、権利者にその損害が生じた場合の賠償責任は、オークション事業者が故意または重過失がある場合に限られるということでございまして、普通の過失であれば賠償責任も負わない。
加えて3つ目のポツですけれども、権利者から開示請求を受けた場合にはその出品者の意見を聞かなければならないということも法律で定められておりまして、かなり情報の開示を求める権利者にとってはハードルが高い規定になっているわけであります。
次の19ページの方は出品の削除ですけれども、この出品の削除も相当の理由がある場合には、出品削除をしたときにはオークション事業者は免責が受けられるということになっているわけですが、その判断が微妙な場合は権利者からの削除の申出があっても出品者に照会をして7日間の期間を経過しなければ、仮に削除したことによって出品者に損害の請求を受けた場合、オークション事業者は免責にならないということで、こうした面からも実際に削除をするのは難しいというか、ハードルが高い状況になっているわけであります。 同じ19ページの真ん中辺りにアメリカのノーティス・アンド・テイクダウン制度というものを紹介してございますけれども、アメリカの著作権法では権利者から一定の形式的な要件を備えた侵害通知を受けた場合には、これに従って送信防止措置を行ったプロバイダは免責を受けるという規定がございます。アメリカの場合にはこの一定の形式的要件というのは、例えばどういうものであって、あるいはこれが権利侵害であると判断した理由を述べて、もちろん当事者の氏名とか住所とか、そうしたものを満たしたものを出せば、プロバイダはそれによって出品を削除してしまっても、あとは出品者と権利者との間で争っていただくということで、プロバイダは免責を受けるという規定になっております。
日本においてもこういう類似の規定を導入することができれば、オークション事業者は自分の責任は逃れるわけですから、権利者からそういう要求があればそのネットから削除する、あるいはその情報を開示するということがしやすくなるのではないかということでございます。
その権利者が真の権利者でない場合にはそれが濫用になるおそれもございまして、なかなか実際の制度を手直しするのはいろいろ難しい点はあろうかと思いますけれども、こうしたことも検討してはどうかということでございます。
次が23ページでございまして、消費者に対する啓蒙活動を強化するということで、前々回の会議でもちょっと御紹介申し上げましたけれども、今年の8月に世論調査をいたしましたら、一般の消費者の方々の半分近い方々が、模倣品・海賊版を買ってもいいんじゃないかという答えをされておられる。真正面から聞かれて半分くらいの人がいいんじゃないかと言っているわけですから、実はいいんじゃないかと思いながらも、やはりそれはいけませんよねと答えている人も相当いると思うので、結局日本の国民のかなりの部分の人たちは模倣品・海賊版を内心許容しているのではないかということで、買う人がいるから売る人も出てくるという面もあるわけでございます。
世界最高レベルの知財立国を目指そうという日本でございますので、もちろん売らせない、つくらせないということもあるわけですけれども、買う人たちにも、それはいけないことなんだ、創作をした知的財産の価値をつくった人たちの権利を奪う、あるいは努力を無にする行為なんだということをより周知することによって、そういう模倣品・海賊版のマーケットを小さくしていくという努力が必要ではないか。こういうことで、下の方に少し小さい字で、例えば外国における購入を抑制するために旅行の申込みのときとか、あるいは出入国、出国のときに啓発活動をするとか、あるいはガイドさん、添乗員の方がこういうものを買って日本に持ち込むのは法律違反で没収されるおそれがありますよということをよくツアーの人たちに言ってもらうとか、学校でも子どもたちにそういう教育をして違法なダウンロードなどはしないように、してはいけないことなんだということをちゃんと理解をしてもらう。こういう啓蒙活動を強化すべきではないかということでございます。
恐縮ですが、参考資料の2−1から2−3というものがございますので、簡単に御紹介を申し上げたいと思います。
模倣品・海賊版の拡散防止条約の件につきましては、9月15日の模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議という関係省庁の局長級の会議がございました。この場所で外務省、経産省のみならず各省、皆で協力をして、せっかく日本から提案をした条約でございますので、これが実現するように政府一丸となって取り組んでいきましょうということで申合せをしてございます。
参考の2−2は今、御紹介した啓発活動の強化についてで、特にこの啓発活動については別立てでパッケージをつくっておりまして、関係省庁が何をするということをここで全部列挙いたしまして啓発活動を強力に推進しようということの申合せをいたしました。
参考資料の2−3は「模倣品・海賊版対策アクションプラン2006」ということで、これはさっきの条約あるいは消費者啓蒙以外の外国市場対策でございますとか、あるいは水際での対策でございますとか、そうしたものを全部各種の施策を取りまとめて強化をしていこうということで、こういう申合せもしたところでございます。御参考までに資料を配布させていただきました。
御説明は以上でございます。
○阿部会長 ありがとうございました。難しい話がたくさん出てきているわけですけれども、議論の時間に入らせていただきたいと思います。どこからでも結構でございますが、中山先生は関わることがたくさんあるのではないかと思いますが。
○中山委員 権利を強化しようとするときはとかくプラス面だけ強調されがちなんですけれども、全体を見てこういうマイナス面もあるということを申し述べるのが法律家の役割ではないかと思いますので、あえて申し上げたいと思います。
まず著作権侵害物品の広告の話ですけれども、これにつきましては結果的には私は余りマイナス効果はないのではないかと思います。つまり、うっかり強化するとチリングエフェクトが生じて産業界にマイナス効果を与えるものもあるわけですけれども、これに関してはいろいろ考えてみましたが、特にこれといった弊害はないと思われます。プラスはここに書いてあるとおりのプラスがあるわけです。
同様の規定は特許等にもありますが、それを見ておりましても別にこれといった弊害はない。むしろインターネットという最新の技術ができたことによって、やはり広告も規制する必要があるのではないかと思います。したがいまして、この点はこれで私は賛成でございます。
親告罪なんですけれども、これはちょっと考え直す必要があるのではないかと思います。ただ、結論的に言いますとどちらに転んでも社会はそれほど大きく変わらないだろうと思います。特許権は先年、これを非親告罪にしたわけですけれども、非親告罪にしたから何か変わったかというと全く変わっていないんです。というのは、強盗や殺人ですと警察がすぐ動いてくれますけれども、知的財産権侵害というのは基本的には民事の話ですから、うっかり警察が動くともう民事はすっ飛んでしまいますから民事不介入が大原則で簡単には動いてくれません。親告罪にしようが、非親告罪にしようが、ちゃんとした証拠を持っていて、こうこうこうですということを言わなければなかなか動いてくれないので、実際はほとんど影響ないのかなという気はいたします。
ただ、著作権は特許と比べますと侵害の範囲が広いというか、あいまいな面が多いわけです。翻案などがありますから、どれが侵害かわからない。窃盗などの場合は窃盗犯は自分は窃盗をやっているということがわかっているわけですからいいんですけれども、侵害かどうかわからないというときに、しかも第三者が告訴をして、仮に警察が動いてしまった場合にどうなるのか。権利者の方は、これは黙認しようとか、まあいいやと思っていても、実は第三者が告訴をするという場合もあり得るわけです。特に著作権は近年では全国民的に関係を持っている法律になってきましたので、こちらの方は特許とはまたちょっと違って場合によっては弊害が生ずる可能性もあるのかなという気がいたします。
確かに親告罪だと6か月という制限はあるわけですけれども、別に告訴をしておいて後から証拠を出してもいいわけですし、知的財産の場合はそれほど大きな問題はないのではないかと思います。それよりもむしろ何かマイナスの効果の方が大きいのではないかという気がいたします。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。
○久保利委員 それに関連して親告罪の問題ですけれども、むしろ私は見直しをしていただくことは、それ自体はマイナスではないのではないかと思います。
ただ、中山先生もおっしゃったとおり、今どういうふうになっているかというと、親告罪ですから告訴権者が必死になって証拠をそろえて訴えに行くわけです。そうしますと、基本的にはリジェクトされるわけです。やりたくないんです。それから、やる能力も余りないんです。したがって、捜査当局はなるべくならばこの著作権問題には触れたくないというふうに思っていますから、なかなか受けてくれないのですが、あれやこれや証拠書類をそろえてどうだ、これでもかと言って持って行ってもし警察がやらないのならば、それこそマスメディアに発表して警察はこういう犯人を甘やかそうとしていると言いますよというくらい脅かさないと、なかなか引き受けてくれない。その代わり、引き受けてくれたら警察のメンツにかけてもやってくれるわけです。
ということは、それだけ本気になった侵害された人がいれば警察は結局は渋々ながらでも動いてくれるというのは、実は親告罪だからそうなっているわけで、親告罪でないということになると告発はしましたよ、親告罪ではないけれども一応御通知しましたよ、捜査の端緒を与えましたと言っても、さあ動くのか。動くときに親告罪で告訴を受理してしまうと、あとはその事件をどうしたかということを報告し、内部できっちり検査をしなければいけなくなりますから、やることはやってくれますが、何もないとなるとやってくれるのかなというところがあるわけです。その意味では、私も親告罪にするということが直ちに捜査当局が非常にやりやすくなるということにはならないだろうとは思います。
ただ、もう一つ逆の手立てを立てて、例えば交通事故撲滅月間とか、交通安全週間などと同じように、とにかく著作権事件摘発強化月間みたいなものをつくって、この間できるだけそういう事件に特化して各警察は頑張りなさいというふうなことになって、今までは親告罪だったので告訴がこないと動けなかったけれども、今度は動けるようになったんですから、積極的に国民に対する啓発も含めて、捜査当局よ頑張りましょうという話がセットで出てくるならば、これは逆に効果的になるかもしれないという意味で、実は捜査当局の能力とやる気をいかに担保するかというところにかかっている。
それを何もしなければ、私は中山先生と同じ考えにならざるを得ないわけですし、そこがすごく強化されるということであればそれはプラスになる。したがって、親告罪の見直しというのは、何か別の強化策とセットにならないと真の効果は上がらないような気がいたします。以上です。
○阿部会長 田中委員、どうぞ。
○田中委員 確かにCDやDVD等の海賊版が大量に出回っているという現実がございますが、親告罪とするかどうかという点については、非親告罪にしても今、両先生がおっしゃったように本当に機能するのかなという懸念があります。一番の懸念は、法制度を変えた際に、実際にだれがどのようにきちんとハンドリングしていくのかという点です。ただ、法制度を変えただけでは済まない問題であり運用する仕組みをきちんと構築していかなければなりません。ですから、是非、運用の仕組み作りも合わせて検討していくべきだろうと思います。
○中山委員 関連で、今ここで大いに問題になっている海賊版ですね。これだけ考えると、私も久保利先生などがおっしゃるとおりだと思うんですけれども、微妙な事件がある。日本ではまだパテントマフィアみたいなものは余りいないんですけれども、著作権の場合はパテント以上に、先ほど言いましたようにあいまいなところがあるので、非親告罪にするともしかすると変なところで変なことが起きるのではないか。そちらの懸念がちょっとあるということをもう一度申し上げたいと思います。
○八田委員 制度の構築が必要だという今の皆さんの御意見に賛成です。しかし制度をつくるというのは大変なことなので、それが仮にできないとしても、この6か月というのは短過ぎると思うので、少なくともこれは変えていただけないかと思います。 例えば、大学で、先生が学生の論文を剽窃したというようなときに、学生は先生を在学中に訴えるのは非常に難しいと思うんです。それで、それは卒業を待ってからやるというようなことはあると思います。
それから、ほかの大学の先生が何かを剽窃したというときに、親告罪だから自分は訴えることができるのだけれども、まずは、向こうの大学の処分を見たい。そして、それが非常に甘かったら自分としては告訴したいというときに、大学の決定なんて6か月ぐらいすぐたってしまいますから、結局機を逸してしまってまずいことになるというようなことがある。だから、私はほかの分野はよくわかりませんけれども、こういう学術的なものに関しては6か月はちょっと短いと思います。
○中山委員 この6か月は刑訴で決まっているんですけれども、これは私も調べていないんですが、例外はあるんですか。
○久保利委員 強姦罪の場合には別ですね。強姦罪も含めて罪名によっては期間が違うものもありますから、この関係は6か月にしないという八田先生のような御意見は決して憲法違反の法律でもないし、そういう意味では可能だと考えられます。
○中山委員 知的財産法で決めれば、多分それは刑訴の特別法ということですね。それは可能だと思うんですけれども、ただ、現実には先ほどの大学のようなところはそういうもので刑事になったというのはほとんどないので、多分それは民事で訴えて社会的なサンクションを受ける。それにプラスしてなかなかそういう事件で刑罰というのは余り聞いたことはないし、多分これからも余りないんだろうと思いますけれども。
○八田委員 それならばそもそも告訴をすることを認めなければいいわけです。やはりこれは告訴をする必要がある場合もあるだろうと想定しているわけでしょう。だとすれば六ヶ月で切る合理的な理由がないと思います。その場合にすぐ告訴に走らないで他の対応を見たい。しかし、もしほかの対応をしてくれないのならば告訴もやむを得ないという非常に強い気持ちを持つ場合というのはあり得ると思うんです。そういう場合に、やはり6か月というのは短いのではないかということです。
○藤田次長 事実関係だけ御紹介を申し上げますが、刑事訴訟法の235条は親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月を経過したときには、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴についてはこの限りでないということで例外が2つ認められております。1つは性犯罪の関係、それからもう一つは外国の元首、使節等が行う告訴あるいは外国使節等に対する侮辱、名誉棄損関係の告訴、この2つについては例外が認められております。○久保利委員 刑訴法を変えなければだめだということですね。
○中山委員 でも、理論的には刑訴法でなくてもあり得るんじゃないですか。ただ、さっきの例でいくと多分刑訴法でしょうね。
○阿部会長 難しい議論ですが、ほかの方いかがでしょうか。別なところでも結構でございます。
○下坂委員 模倣品23ページの「関係省庁が一体となった戦略的な広報活動の展開」のところで、模倣品・海賊版につきまして既に2、3年いろいろな発言がありましてから世論調査などを含めて行われております。非常に面白いことは、これら調査の初めから今回の調査までを含めて模倣品に賛成、反対が50、50の綱引き状況です。かなりの啓蒙活動費を使っていると思うんですけれども、このまま5年やっていったとしてもまた世論調査をしたら50、50ということになりかねない。
それで、前の特許の基盤に関する専門調査会のときに武田委員から出された、ちょっとした簡単な法案があったのでございますけれども、そういうものの法案の検討というのはその後いかがなっているか、もしわかればというか、知財研などでも検討されていたとは思うんですが、もう一度お考えいただいてもいいのではなかろうか。
もちろん反対の委員は十分存じ上げているんですけれども。車も最近道路わきに放置してはいけないと言うことになって、三田通りなどでも2日間ほどはきれいだったのですが、ただ今はまたすごく車が置かれている。ルールをつくったとしてもそういうことになるのかもしれないとは思うんですけれども、ただ、若い人たちが面白がって買うようなときに、これをやるとこういうことになりますよと、いうことは非常にいいんじゃないか。シンガポールのたばこポイ捨てを1万円にしたらきれいになったということもあるんですが、ちょっと次元は違いますけれども、そういうものをもう一回検討されてもいいんじゃなかろうかという気がしております。何も警察国家を標榜するつもりは毛頭ございませんけれども、一応そのように考えております。
○阿部会長 ありがとうございます。そういう御意見もございますが、50%というのはやはり大きいですね。
では、前田委員どうぞ。
○前田委員 法整備のことではなくて雑談に近いのですが、昨年、中国に行ったときに上海に駐在している電気会社の方に「ちょっと面白いところに連れて行ってあげる」ということで、ある所へ連れて行っていただきました。すごく汚い長屋みたいな家の台所の横を通り、裏口を開けて、そこから2階に上がっていったら、この部屋の半分ぐらいの部屋全部に、にせ物ブランドが所狭しと置いてありました。買いに来るのはおもに日本人だそうです。やはり罪の意識がすごく希薄なのだなと思いました。
○妹尾委員 昨年度の知財人材育成の戦略をやったときに「知財民度」という概念を提示させていただきました。今回の調査は、その知財民度の具体的な数字が出てきているといえそうです。
「知財民度」とは何かというと、「オリジナリティの尊重」だということで提起させていただきました。そのためにはDo`s(ドゥーズ)とDoNots(ドゥーノッツ)があります。ドゥーズとは「創意工夫の奨励」です。ドゥーノッツはこういう「海賊版や模倣品の排除」です。そこで、この問題は、広い意味での知財人材育成あるいは知財民度の向上ということだろうと思います。
それで、各省庁の取り組みを拝見しますと、やはりキャンペーンを張る以外に何も手がないのか、もう少し工夫があってもいいなという感じですね。それと、本当にこの連絡会議で温度差がないのでしょうか。政府一丸となってという先ほどの言葉がそうなのかということがあります。各省庁のキャンペーンは悪くないのですが、各省庁がどれだけ本気で取り組んでいらっしゃるのか、少し見てみたい気がします。要するに、各省庁の政策にどれだけウェート付けされて入っているのか。政府で一丸ということの意味は、キャンペーンを皆がやっているから一丸という話ではないはずです。各省庁がどこまで政策上ウェート付けをしているのかということを少し洗ってみたいという気がします。
もう一つは、罪の意識と今、前田先生がおっしゃったんだけれども、余りそれが高じると精神論だけになってしまいかねない。例えばキャンペーンをやるとしたらにせ物はだめだというドゥーノッツのキャンペーンとともに、本物を買おうというドゥーのキャンペーンが恐らくあるはずですが、本物を買おうというキャンペーンは何もやられていないんです。これは経団連さんが中心になってやっても良いのではないかと思います。やはり本物の方がすごいよねという話にするのです。
もう一つは、罪、罪ということだと個人の問題になってしまいますが、今の我々の議論でいけば、これが"あちらの方々"の資金源になるということが問題なんです。非常に大きい社会的な問題で、反社会組織の資金源になるというところが国民はわかっていないのです。ですから、それこそ麻薬等に代わる反社会的な人たちの資金源になることを我々自身が関与するのはやめようよというスタイルでストーリーを展開することもあるのではないかと思います。
いずれにせよ、これは一律のキャンペーンだけで一応教えましたというような教育の話ではないのではないでしょうか。少し掘り下げに向かってもいいのかなという気がします。
○八田委員 全く同一の意見なのですが、要するにこれは悪いことだというポスターを置いても説得性がない。なぜ悪いかという理由を簡明でいいからとにかくどのポスターにも説明する必要があるのではないか。理由は2つあります。
第一は、悪いと思わないということは極く自然の情だからです。有名なブランドの会社は安い原価の製品を高く売って暴利をむさぼっていると普通は考えるわけです。本当は安くできるものをそんなに高い値段でとんでもないじゃないかと皆、内心思っている。実は、既に出来上がったデザインは元来はただで出来るだけ多くの人に使ってもらうべきなんだけれども、知的財産権を守らなければ新しいデザインは出てこないから、常識的に言えば、暴利をむさぼる機会をあえて与えているわけです。そのことはここにいらっしゃるような方には当たり前だけれども、普通の人にはそれを厳格に守ることが新しいデザインをつくることなんですと知ってもらう必要がある。
2番目は、実は個人輸入を利用して暴力団の組織的な団体が資金稼ぎをしています。だから、個人で輸入しても取り締まらなければいけませんということを知ってもらう必要がある。
その2点は簡明にしかし説得的にポスターに入っていれば随分効果は違うのではないかと思います。
○阿部会長 ありがとうございます。吉野委員は数年前からこれに御尽力をいただいていますが。
○吉野委員 被害はともかく、さっきおっしゃいましたけれども、オリジナリティを大事にするというところにかなりのウェートを置いたさまざまな活動が必要ではないかと思うんです。そういう面では、先ほど話題になりましたメディアの方々の力もやはり相当動員といいますか、力を出していただいて、日本はとにかく子どものときから皆と同じようにやりなさいとか、オリジナリティをつぶしてしまう風土がずっと伝統的にあると思うんです。そういうものを変えていくぐらいの全体的な活動を組まないとだめではないかと思います。
○阿部会長 オリジナリティは私も非常に今まで何回か深刻な目に遭っていまして、模倣品のルイ・ヴィトンとか、そういう世界ではなくて科学技術の世界ですが、ここ10年くらい大分よくなってきたようには思いますけれども、やはり研究のオリジナリティというものをほとんどリファーしないという風土が根強いような気がします。そういうこととも多分密接に関係があるのではないかと思っておりますので、そういう面も含めてキャンペーンを張っていく必要があるかもしれません。
○前田委員 娘が高校生なんですけれども、彼女たちの憧れのエビちゃんとか、押切もえちゃんとか、若いモデルが芸能界にどんどん出ていて、若い子が読むファッション雑誌の『ノンノ』、『JJ』、『CanCam』で20万、30万のバッグを持っていて、それらが流行しているわけです。それはやはり本物を持とうとしたらいわゆる「パパ」を見つけるのというような状況もまずいと思いますし、でも私たちが止められるものでもないですし、高校生で今のいじめにも関係するんですけれども、みんなと同じものを持ったり、かわいいと言われているファッションリーダーの子と同じものを持ったり、同じ行動をすることが格好いいという風潮があるんです。
それに全く興味を示さないで男の子みたいな格好をしている子が、逆にあの子は変わっているねというのでどちらかといったらいじめを受ける側にいるので、ここでそういう話をすべきではないのかもしれないですし、ちょっと場が違うのでしょうけれども、高校生、中学生のうちにオリジナリティのあることの大事さみたいな教育が日本にないことも原因だと思います。
○吉野委員 小学生ですよ。
○前田委員 そうですね。小学生ですね。そういう風土がないので、幾ら言ってもなくならない。研究者のオリジナリティを重んじないということもそうでしょうし、人と変わったことをするということが認められないとか、皆と同じバッグが持ちたいというところにどうしてもいってしまうのだなということがあって、やはり子どもの教育に戻ってしまうのかなという感じがします。
○阿部会長 確かに日本も大分進歩してきているわけですが、そういう風土というのはつくっていくもので、現在こうだからというので現状肯定してしまうとどうにも進まなくなりますから、今の高校生の話などは私は新鮮で、そういう子どもがいないものですから全く別世界のような感じでお話を伺いましたけれども、ほかの点いかがでしょうか。前に戻っていただいて保護でもどこでも結構です。
○田中委員 プロバイダのオークション業者の取扱いの話で、18ページから始まるところです。アメリカと同じようにノーティス・アンド・テイクダウン制度なども参考にするということで、現在のプロバイダ責任制限法から新しい制度に少し変えていった方がいいという議論でございます。これは、中身については多分、皆さん御存じだとは思いますが、アメリカの512条につきましても必ずしもプロバイダ責任がすべて免責されるわけではありません。開示を促進させるのは大賛成でございますが、そのためにプロバイダがすべての面において免責されるような雰囲気で書かれているのが気になります。 アメリカでも、ティファニーが訴訟を起こしたとか、大きな問題になりつつあります。ですから、新しい制度にして促進していくということは非常に大事だと思いますけれども、プロバイダがすべてにおいて免責されるという考え方は避けた方がいいだろうと思っております。出品する人たちからお金を取っているわけでございますから、やはりプロバイダにも責任がある。
これは蛇足になりますけれども、中国にある日本のプロバイダの出資している会社ですが、キヤノンの消耗品等を買って確認したところ、ほとんど100%模倣品でした。そういうプロバイダというのは歴然として活動していますし、それを利用して出品者が模倣品をばらまくということを平気でやっています。ですから、プロバイダ自身にも何らかの形できちんと処罰なり、ある責任を取っていかせなければいけないと思います。以上です。
○阿部会長 ほかにどこでも結構ですので、どうぞ。
○妹尾委員 インターネットに関することではないのですが、保護分野ということで一つ申し上げます。つい先日ある世界的中小企業の機械産業の自動機のメーカーに行きまして社長さんからショッキングな話を聞きました。中国の南京で行われたそういう機器展に展示をしたら、ほとんどが侵害品だった。しかも、それは実は、その前の年のとき同様だったので訴えて、そのいくつもが中国でも侵害品であるという認定をされた。にもかかわらず、翌年また同じように出品されている、ということなのです。
要するに、侵害品と認定されてもそれを排除する実行力がないということです。これはどうしたらいいでしょうねという話になったんです。権利化して保護をしても、それを執行する力がどこまで及ぶかというのはこれから大きい問題になってくると思うんです。権利化できました。保護しました。だけど、本当に保護し切れましたかということを国内だけではなくて海外でもやはりやらないといけない。日本の中小企業は大変なので、そこのところはそろそろ次の手を打たなければいけないのかと思います。
○阿部会長 吉野さんなどは昔から自力でかなりいろいろなことをやってこられましたけれども、多分中小企業はホンダさんのようにはいかないですね。しかし、自動車と言っても国レベルでいろいろ対応しなければいけないところもある。それはある程度進んではいるのですが、今おっしゃったように現実は機能していないところがたくさんあるということなんでしょうね。
○前田委員 オークションのネットを常に見張っている機関とかはあるのですか。権利者が自分で見て訴えるというのが基本ですけれども、それを見張っていて忠告したり、取消しの指示をプロバイダにしたりする機関というのは公にどこかにあるのでしょうか。
○藤田次長 そういう公的な機関で見張っているということはありませんけれども、大手のオークション事業者が自主ガイドラインをつくりまして、場合によっては100人を超えるような要員を絶えず張り付けてそれを見張り、怪しいものはどんどん消していくということはやっております。
これは大分効果が上がっておりまして、かつてあるブランドの商品について調べてみましたら、出品されているものの65%がにせ物だった。それが自主ガイドラインの実行に入って一挙に下がりまして、一時は2、3%まで下がったわけです。今は揺り戻しが少しあるようですけれども、それにしても10%は超えていないということで、法律で強制されているわけではありませんけれども、そういう取り組みは行われております。
○前田委員 オークションというのは落札した人、出品した人が意見を書く欄があって、落札する前に警告を出すというものもあって、各々お互い同士が見張り合っているというようなシステムはあります。しかし、明らかににせ物だとわかっていて買う人がいるのを取り締まれてはいないのが現状だと思います。
私はスマップが好きなんですけれども、ジャニーズから出ているものではないのは明らかに違反ですが、それが堂々と売られて買われてという状況なわけです。そういうのは今でもオークション業者は消していませんから、やはり公的機関で見張るところが本当はあってもいいのかなというような気も、時々見ていて思います。
○田中委員 以前にも議論したと思いますが、これは個人輸入とか個人所持についての話と関係する話でございまして、法律上禁止してしまえば今のような議論というのはほとんどなくなるわけです。
非常に難しい議論だということはわかりますけれども、例えば麻薬というのは法律上禁止されているわけです。模倣品や海賊版については、やはり個人所持は法律的にも禁止するということを明確に言わない限り、個人の良識に訴えるという議論だけでは何ら解決にならないだろうという感じがいたします。非常に難しい問題だと思いますけれども、明確な基準をつくった上で、必要であれば法律的に禁止した方がいいのではないかと思います。
○阿部会長 ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
さまざまな御意見をいただきましたが、事務局から何かございますか。
○藤田次長 消費者啓発に関する御意見がいろいろ出ましたけれども、御参考までに御紹介申し上げますが、特許庁が今年の12月に相当集中的に模倣品・海賊版のキャンペーンをやるということで、3年間でにせ物容認派を30%以下まで減らすことを目標とするという意欲的な目標を掲げております。
そのキャンペーンの方向性もかつては、模倣品は犯罪です、売ってはだめ、買ってはだめとか、そういうことであったのを、例えば今年はテロ活動、犯罪組織とのつながりというものをメッセージの中心に据えるということで、テロ活動、犯罪組織の資金となっている事実を伝えた上で、それを容認しない。だから私は買わないとか、そういうキャッチコピーにしたいということで、テレビCMとか広告、ポスターですとか、あるいは航空会社の機内誌とか、そういうところでキャンペーンを張るということでございますので、単に良心というか、罪悪感に訴えるだけではなくて、そういうメッセージも出そうとしているということを御参考までに申し上げます。
○妹尾委員 もう一点、今日は、実は国内でどこで売られていて、それがどれだけ摘発されているかという話が余り出てこなかったと思います。これは難しい問題がありまして、どこの町が一番海賊版を売っている町だとわかると、皆そこに行ってしまうのではないかという逆効果もありえるからです。でもインターネットの世界だけではなくてリアルで売られているところがあるわけですね。昔は新橋駅前というのはすごいところだったわけですし、一時期、我々が小さいころのアメ横はやはりそれなりでした。今、秋葉原はどうかと言われると私も自信はないのですが、やはりリアルなところでのちゃんとした摘発を行わなければならない。警察各署がでどれだけ力を入れているのかというようなことも統計的に整備する必要があるのではないかと思います。
インターネットの話と、海外から出てくる話が主だったので、国内の拠点もちゃんと見なければいけないぞ、という点を少し指摘させていただきます。
○久保利委員 それに関連して、テロ組織あるいは犯罪組織の資金源になっているというのは私もそうだと思います。現場で幾つかの事件を追っていくとそうなんですが、では模倣品販売についてそのことが捜査当局によって発表され本当にここで行った金がこれだけこういきましたということが、振り込め詐欺の五菱会のような感じで本当にマスメディアにちゃんと書かれたことがあるのか。この金はこう流れてこうでしたという客観的な事実がなければ、幾らキャンペーンを打っても国民は信用しないと思うんです。
ですから、そういう意味でどこでリアルを売っているか。それをだれがどう摘発をして、追及していったら結局この暴力団に流れていました。このテロ組織に流れていましたということを公表すべきだと思うんです。そうするとニセ物を買うことはいけないということで、最後は国民の一人ひとりが、やはりにせ物を買うのはよそうというところに結び付くんだという事実をもって説得する方法がまだ欠けているのかなと思います。
○阿部会長 それでは、たくさんの御意見をちょうだいしておりますので、それを踏まえて事務局で新しいバージョンをつくってもらうようにいたします。それにしても、更に追加の御意見があろうかと思いますので、どの場所でも結構でございますので、日にちだけお願いしたいのですが、11月中に事務局へメモを御提出いただければありがたいと思っております。
ここで、専門調査会の今後の進め方について事務局から説明をしてもらいます。
○藤田次長 資料3をごらんいただきたいと思います。2番の「検討スケジュール」のところでございますけれども、今日が11月17日ということで、今年度に入ってからは3回目の専門調査会を開いていただきましたが、次回は1月26日午後2時から、知財サイクルの活用分野、それから人材分野について御議論をいただきたいと思います。
それから、今後の知的創造サイクルの推進方策についての案をお示しをして御議論いただきたいと思います。
2月26日月曜日に次の会合を開いていただきまして、最終的な推進方策の取りまとめをお願いできればと思っております。
それを受けまして、知財本部にその取りまとめたものを報告をし、その後、知財本部の検討を経て、2007年の推進計画にそれを盛り込んでいくという段取りで考えております。○阿部会長 ありがとうございました。ただいま説明がありましたように、次回は1月26日金曜日でありますので、是非御出席をいただきたいと思います。14時からで、本日と同じこの会議室で行います。次回は、中小・ベンチャー企業の支援と地域の振興も含めた活用分野と人材分野の推進方策について御議論をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
ここで、荒井事務局長から御発言がありますので、お願いいたします。
○荒井事務局長 今日は、国際標準総合戦略についておまとめいただきまして本当にありがとうございます。これは阿部会長が、数年前からこの標準問題の重要性について指摘されたものであり、来月には政府全体として取りまとめを行う段取りとなりましたことは、大変画期的なことですのでお礼を申し上げます。
更にこの場をお借りして恐縮でございますが、私は11月20日、来週の月曜日に退任することになりました。阿部会長を始め知財サイクル専門調査会の委員の先生方には大変お世話になりましたことに心からお礼を申し上げます。
私の後任には小川洋が参ります。彼は知財戦略会議、それから知財基本法をつくるときの内閣審議官をやっておりまして、その後、特許庁長官を務めたりしておりますプロでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本当にお世話になりました。ありがとうございます。
○阿部会長 我々としては大変残念なのですが、いろいろな国全体の人事の中で今回御退任されることになったようですが、荒井さんの御功績は私が申し上げるまでもなく大変大きく、今日まで機関車の役割を果たしていただいたと思うわけであります。
今後、事務局長はお辞めになりますけれども、何らかのお国のために尽くしてくださるのではないかと期待をしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
お一人おひとりから送別のお言葉をいただくべきかもしれませんが、少し本会から逸脱しますのでこれで終わらせていただきますけれども、本当にありがとうございました。
それでは、ちょっと早いですが、本日の会合はこれで閉会をさせていただきます。どうもありがとうございました。
○荒井事務局長 本当にありがとうございました。
|