○牛尾座長 では、定刻になりましたので、ただいまから「コンテンツ専門調査会第2回デジタルコンテンツ・ワーキンググループ」を開催したいと思います。
本日は、前回に引き続き、デジタルコンテンツに関する政策について検討してまいります。
本日は、お二人の参考人にお越しいただいておりますので、御紹介を申し上げます。
元ソニー・ミュージックエンターテインメント社長で、現在、音楽のインディーズを中心とした新しいビジネスを手がけていらっしゃいます株式会社に・よん・なな・みゅーじっく代表取締役の丸山茂雄参考人です。
次に、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で有名な株式会社ガイナックス代表取締役の山賀博之参考人です。
後ほど、お話をちょうだいしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入ります。
では、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。
○荒井局長 それでは、資料の説明をさせていただきます。
資料1は、事前に御確認をいただいておりますが、第1回会合の議論の整理をしたものであります。
資料2は、第1回の資料を基に一般から意見募集を行い、寄せられた意見をとりまとめたものであります。
意見募集は、前回の会議終了後、11月2日から15日までの2週間、ホームページへの掲載によって行いました。
その結果、提出されました意見は143 件に上りまして、そのうち個人から提出されたものが134 件、団体から提出されたものが9件であります。
資料2の2ページ目からは、いただいた意見の概要を記載してあります。意見の全体につきましては、今回、委員の皆様にのみ席上配布しておりますが、別途、首相官邸のホームページに掲載する予定です。
続きまして、資料3は、第1回で委員の皆様から提起していただきました意見、意見募集において寄せられた意見等を参考に、事務局で作成いたしました「デジタルコンテンツの振興戦略(課題と解決の方向)(案)」でございます。
1ページからは「目標1:ユーザー大国に向けた課題」であります。
3ページからは「目標2:クリエーター大国に向けた課題」であります。
5ページからは「目標3:ビジネス大国に向けた課題」であります。
また、資料4として委員の皆様からの配布資料であります。
なお、資料5として、今後のスケジュールの予定を配布しております。
資料の説明は以上でございます。
○牛尾座長 どうもありがとうございました。
では、続きまして、参考人の方のお話をちょうだいしたいと思います。その後、各委員からの御発言をちょうだいすることになっておりますが、まず丸山参考人から、大体5〜6分ぐらいの感じでお話をお願いいたします。
○丸山参考人 参考人の丸山です。今日、いただきましたのは、クリエーター大国に向けての課題ということで、自分の今やっていることを話してみなさいということだったので、お話しいたします。
第1回等々で資料を読ませていただきました多くのところに、基本的に問題点というのが出ていると思っています。ただ、その中で、何もデジタル時代ということではなくて、コンテンツをつくる側あるいはクリエーターの側から見た場合に、ここにある問題点というのはずっと長いことあった問題点でありまして、何も今の時代に急に起こったことではないということが基本的には大部分だと思っています。
こういうふうに、クリエーター、あるいは物をつくる側が常に何十年と困っていた問題等々がこういう形で取り上げられる時代が来たのだなという感は深くいたしますが、この一つ一つの問題についてお話しすると言いますと、この場にそぐわないと思いますので、デジタル時代というところに絞ります。
今のデジタル時代というのも、いろいろ幅が広いんですが、特にここのところ、昨今問題になっているのは、通信といいますか、インターネットあるいはブロードバンドといったところに焦点を当てた方がいいと思っています。
その部分で言いますと、従来型と全く違うのは、私、もともとソニー・ミュージック・エンターテインメントにおりました。それから、ソニー・コンピュータエンターテインメントでゲームのビジネスも立ち上げました。その立場から言いますと、従来型というのは、私どもの立場というのはクリエーターがつくったものを私どものビジネスのスキームに乗せて、それをユーザーに広げるということです。私どものその仕組みを持っているところがなかなか絶大な力を持っていたわけであります。
それは、映画の部分も、映画のクリエーターがどんなに映像をつくったとしても、配給網を持っているメジャーの大きい会社にはどうしても頭が上がらない。ですから、そこのところで権利そのほかというのをどんどん渡していかなければいけなくて、クリエーターの方に対するリターンが少ない。あるいは今も一生懸命、皆さんがアニメをおつくりになっているけれども、それは、例えば放送局にかなりの利益を収奪されてしまう。音楽もまことにそうであります。
私どもも、やはりクリエーターとの配分の仕方が、私どもの方が多いとは言っても、私、元ソニー・ミュージックエンターテインメントにいたんですが、このスキームというのを維持していくということになると、クリエーターに対するリターンというのがどうしても少なくせざるを得ないというのがあって、これは私企業でありますから、不公平なまでに利益を取っているかどうかというのはなかなか難しい問題がありますが、少なくとも私どもは、まずまずのところで利益は取っているとは言っても、そういう形で配給、つまり個人のクリエートしたものをユーザーにまで持っていくというところの間には、何らかの仕組みがないとユーザーまで届かなかったというのが従来型です。
ところが、今、起こっているのは何かといいますと、インターネット、ブロードバンドというのが何かといいますと、1というクリエーターがユーザーにそのまま届けられるという事態が出てきたわけですが、ではそれをうまく機能しているかといいますと、まだ機能していないというのが現状だと思っています。
私が、今、mF247 という会社を立ち上げて、音楽の無料配信からスタートしようというふうに思っていますけれども、それは何かといいますと、クリエーターがつくったものをユーザーに届けます。それが、今、仕組みはあるんです。個人個人がホームページで発信するのは何ら問題ないんですが、検索というのが勿論ありますけれども、まず、そのクリエーターの名前を知らなければいけない等々の問題がありますから、それをがっと集めて、ユーザーに見てもらって、ユーザーがその中から新しいものを発見するという仕組みにしようと思っています。
これが、もしうまくいったとすると何が起こるかと言えば、逆に言いますと、この資料をお配りしましたように、今までだとユーザーに届けるその手前でユーザーが何をチョイスするかというのは、業界人。放送局であれば放送局が選ぶし、レコードであればレコード会社が選ぶし、映画であれば映画の配給会社が選ぶわけですが、それを、その前に「b)インターネット型」で言えば、どんとユーザーの方に選んでもらって、それをもう一回一回りして、通常の今のマス媒体の方に乗せていくということが可能になります。
簡単に言いますと、一般的には一番のプロトタイプをまずユーザーが評価して、そこに従来型のビジネスの人が集まってきてもいいし、あるいは全く、第1回目で問題になっていましたけれども、投資ファンドの方々や何かがそこにお金を投じて、もう少し作品をディベロップする、上位の方に持っていくということが可能になるということなんだろうと思っています。
ですから、今までの従来型の間に入っている企業が若干中抜きされる可能性が出てくる。ないしはビジネスモデルを変えなければいけないという時代が来ているので、そういうインターネット、ブロードバンドの新しい使い方ということを考えれば、そう悲観的なことではないのではないかというふうに自分は考えているということで、私の話を終わります。○牛尾座長 アメリカなんかと比べて、クリエーターの方が物の配分が特に少ないとか。○丸山参考人 いろんなケースがあります。音楽であれば、そもそも同じだと考えていただいて結構です。
ゲームもそんなには変わらないでしょう。映画の方は、私は全くそちらの方に関して疎いので、発言は差し控えます。
○牛尾座長 それから、契約とか仕組みが非常にインフォーマルといいますか、きちんとしたものでないというようなお話もよく聞くんですが、口頭で済ませてしまうところもありますね。
○丸山参考人 それは、アメリカでもアーティストとマネージャーとの関係というのは、口頭というのもなくはないんです。だけれども、基本的にはこんなに厚い契約書になります。
ただ、アメリカでいいますと、基本的にはロイヤーがものすごく力を持っていますから、すべてアメリカのやり方が正しいとも言い切れないというところはあります。
○牛尾座長 わかりました。どうもありがとうございました。
では、続きまして、山賀参考人、よろしくお願いいたします。
○山賀参考人 アニメ会社をやっております。今日は現場の人間として、参考人としてお話しするということで参りました。
私自身、会社をやっていますし、いろいろアニメ以外にもゲームなども手がけていますけれども、一応、あまり話が広がってもしようがないので、アニメの現場という視点からだけお話しします。
私が初めてアニメの現場に入ったのは、今から24〜25年前です。そのころアニメ業界というのは確かに今より小さかったです。でも、それなりに本数も増えてきて、アニメブームがちょうど起こっていたころです。「機動戦士ガンダム」というロボットアニメがヒットして、それからマーチャンダイジングで大変いろんな物が売れて、アニメは金になるというようなことが言われ始めたころでした。そのころ、確かにお金の再分配というものは大変不透明なもので、現場から見れば、そんなものはほとんど行われなかったと言ってもいいぐらいです。
ただ、そんなのはわかり切った上で現場の人間というのは入ってきますから、そういう賃金体系なんだ。それは承知の上で一生を過ごしていますので、むしろ一個一個の単価の、例えば原画1枚書いたら幾らとか、1カット幾らであるとかそういうことの方にみんな関心が行っていました。
ただ、そのころは、ある意味ナンセンスなんですけれども、学歴とか、あと年功序列とかというものがまだしっかりありました。例えば、美大を出ているとちょっと上乗せがあったり、あと高卒、中卒で入ってきた人間は何となく待遇が低かったり、それはやっているうちにだんだん是正されるんですけれども。あと、それと同時に年功序列というのがやはりありました。例えば、テレビシリーズの監督になるのにはやはり30代でもまだ早い。劇場アニメの監督をやるといったら40代だろう。実際、宮崎駿さんもたしか30代の半ばぐらいで初めて監督をやられていると思います。
実は、それを蹴飛ばしたのは私たちなんですけれども、そういうものがあまりにも理不尽である。才能がなくても年齢が上がっていけばいいポストが与えられてお金が入ってくる。才能があって若い人間というのもいるんですけれども、大変安い給料でやっている。それは理不尽であるということで、自分たちでまず会社をつくって、直接スポンサーと交渉する形を取って、それを崩してしまったんですけれども、一遍それが崩れると、当たり前ですけれども、もともと理不尽だというものがあったものですから、簡単にいってしまうと収拾がつかない状態になったわけです。年功序列とかそういうヒエラルキーの面から見た場合です。そうなってくると、結局、年寄りも若い者も同じ土俵で闘うしかなくなってしまうわけです。
当たり前ですけれども、アニメの分野で若い連中に勝つのはなかなか難しいです。勿論、全然そんな泣き言を言っているわけではないんですけれども、ただ、そういうふうになってくると、やはり一生の仕事としてやっていく上で、どうしても世間一般の年功序列的な、30代になったらこれぐらいの収入があった方がいい、40代になったらこれぐらいの収入が欲しいという世界からはどうしても、取り残されているわけではないんですけれども、取り残された感触を、多分、現場の人は持っていると思います。
でも、これはその人の能力の質を決める方法というのは大変難しくて、昔はスポンサー自体が大変少なかったものですから、スポンサーの側から決めていったんです。誰々さんはまだまだ劇場アニメなどやるような人ではない。誰々さんは、そろそろやってみたらどうだ。これはスポンサー側から与えていったヒエラルキーだったんですけれども、これ自体も実際のところ、スポンサーというものが大変細かく林立するようになりまして、実際、弊社も少しスポンサーの仲間入りをさせてもらっていたりするぐらいですから、現場のスポンサーというのもあるぐらいですから、そうなってくると、スポンサーから与えられるヒエラルキーもなくなっていくわけです。
要するに、もともと入ってくるお金がどうであるかという以前に、その再分配というのが大変難しい問題としてありまして、結局、ピラミッド構造をどうつくっていくかというのは、私の個人的な課題にはなっています。
業界としても、例えば、今、日本のアニメ業界で一番は誰だといったら、宮崎駿で、それはいいでしょう。多分、あまり文句を言う人はいないと思うんですけれども、宮崎駿がトップだとしても、実際のところは中間層という、あのぐらいの中間にもうけていたら、家の1件や2件建てられるという中間層があまりないんです。1個成功した人がいる。あとは平たく、みんなアパート住まい。そんなものなんです。そこのところが少し、簡単に言ってしまうと、私どものような位置がもう少し充実しないと。これは自分自身の課題なんですけれども。
○牛尾座長 なぜなんですか。
○山賀参考人 なぜなんでしょう。結局のところは、ヒットというのが単発で発生するからなんです。だって、ヒットメーカーがずっとヒットを出し続けるケースというのはまずほとんどないわけです。これは弊社にとってもそうです。
ところが、宮崎駿という人は、そのヒットをずっと積み上げていって、自分のブランドをつくったわけです。そうしたら、実はアニメ業界と関係ないわけです。宮崎駿という業界があるだけですから。そうなると、そこにはヒエラルキーというものは存在しないわけです。そういう中で、自分としてはもう少し、なぜだと言われて答えられないように、実はまだまだ課題として持っているものなんですけれども。
○牛尾座長 その平屋には、どのくらいのそういう集団の数がいるんですか。
○山賀参考人 アニメーターという者まで含めれば、最近増えたと思いますけれども、1万人超えるぐらいではないですか。昔、私が入ったころには4,000 人と言われていましたけれども、今は多分、1万人を超えているでしょう。
○牛尾座長 1万人が何集団ぐらいに所属しているんですか。
○山賀参考人 それは数え切れないぐらいです。大手はあります。
○牛尾座長 個人業なんですか。1万人というのは個人個人が。
○山賀参考人 個人個人にやっている方もいますし、会社としてやっている場合もありますし、基本的に業界の形がすごくアメーバ的でして、1作品をつくるたびに変わるんです。 1社で1作品をつくるケースは、まずほとんどありません。大体、いろんな会社が結び付いて、集団を形成してつくると。
○牛尾座長 そういう仕事が韓国などに流れているという話は、どういうことなんですか。○山賀参考人 これは、東映動画さんが開発されたと思うんですけれども、実は、韓国というのはもう40数年前から、国境はありません。韓国便というものを出すときには、国内便を出すときと全く同じように出しています。これは昔からそうです。
○牛尾座長 1万人というのは、韓国も含めてですか。
○山賀参考人 いえ、入っていません。
○牛尾座長 では、すごい量なんですね。
○山賀参考人 そうですね。特に最近、作品が多いんです。100 本近い作品が同時に動いている状況がありますから。
○牛尾座長 やはり、向こうの方が安いんですか。
○山賀参考人 いえ、変わらないです。
○牛尾座長 お値段は高いですか。
○山賀参考人 むしろ、高くつくぐらいです。国内の安いところに出したら、もっと安くつきます。質も変わらないです。だから、全く国境がないんです。もう40数年間のそういうやりとりの中にできている、国境を越えた集団となっていますから。
○牛尾座長 実力も同じぐらいですか。
○山賀参考人 そうですね。だめなところはだめですし、いい人はものすごくいいし、そういうのも全く一緒です。韓国だからだめというイメージを、例えばアニメファンの方は実は持たれているみたいなんですけれども、実際に働いてみるとわかるんですが、韓国便に出すというのはそれだけ、それなりの質が保証されるものです。
○牛尾座長 こういうのを使う人は、日本が多いんですか。
○山賀参考人 そうなんです。そこが昔から不思議だったんですけれども、なぜこれだけ一緒にやっているのに、韓国の方から作品が出てこないのかと思っていたんですけれども、最近、アニメに関しては韓国のクリエーターが、ちょうど、今、20代から30代の前半の方が結構出てきています。内容的に言っても、それは日本と、センスという意味でそんなに何か変だというのは。
○牛尾座長 量では8対2ぐらいですか。
○山賀参考人 いや、もっと少ないです。
○牛尾座長 9対1ぐらいですか。もっと少ないですか。
○山賀参考人 もっとでしょう。
○牛尾座長 では、ほとんど日本が手がけてしまうわけですね。日本以外の国はないわけですか。
○山賀参考人 アニメを発注している国ですか。アメリカがあります。
○牛尾座長 アメリカが日本・韓国集団に発注すると。
○山賀参考人 そうです。だから、韓国人のアニメーターからすると、アメリカの仕事を取るのか、日本の仕事を取るのかは、大体、値段と難しさで決めているようです。
○牛尾座長 これはすごいグローバルですね。
○山賀参考人 地域的なグローバルですけれども、そういった意味では韓国という件に関しては、私自身は国内と同じように見ています。
ヨーロッパは何かあるかと思って見に行ったところ、あまり現場的なものはなかったです。芸術的なアニメをつくっている人たちはいますけれども、アニメ産業というものはヨーロッパにはありませんでした。
○牛尾座長 こういうところがつくった作品を評価する主体というのは、どこにあるんですか。例えば、宮崎さんはいいぞということを評価する人はだれなんですか。
○山賀参考人 結局、売れたやつが勝ちという、何本売れたのか、あるいは何本出たのかというのは常に話されていて。
○牛尾座長 売れたものがいいということですね。
○山賀参考人 そうですね。視聴率はあまり言われません。結局、DVDの本数、初回何本出たかというのは毎回話題になります。誰か、とにかくほかの会社の人に会ったら、あれ何本ぐらい出たのというのは必ず言います。
だから、さっきも言いましたように、ヒエラルキーが消えてしまっているので、ステータスというのはそれぞれ持っているので、誰が偉くて、誰が偉くないのかがよくわからないんです。ただ、本数だけは数字ではっきり出ますから。
○牛尾座長 山賀さんがやったやつは、割とよく売れるぞというようなレピュテーションというのはあるでしょう。
○山賀参考人 イメージですね。それはわかりません。つくって、それがどのぐらい、またどういう環境でつくって、どういうターゲットを狙ってつくってというのは毎回違いますから、これはわかりません。
私の方からは、そんなところなんですが、すみません。
○牛尾座長 だけれども、丸山さんがおっしゃったような、ユーザー側とか、ユーザーとの間に入るとかそういうような話は、この世界にはないわけですね。要するに、インターネットになった場合には直接に行けるようになったとか。
○丸山参考人 まだないでしょうけれども、多分、さっき言ったように、ヒエラルキーがないという世界で、山賀さんに対して不満を持っている山賀さんの部下がいたとします。山賀さんがOKしないとつくらせてくれない。そうしたら、どこかでそれをこつこつ自分でやって、今までですと多分、例えば放送局の決まった30分枠の中で、それもシリーズでつくらないと、作品というのはつくっても意味がないんですが、今度ブロードバンドになれば、たとえ7分でも、4分でも、尺は関係なくなりますから、勝手につくって、そこのところにきらりと光るものをつくったら、親分の山賀を追い抜けるぞという期待といいますか、野心を持っているのはこちらの下にたくさんいると思うんです。
だから、音楽は明らかにそこになっていますから、ひっくり返してやろうというやつがどんどん出てきているわけで、だから、それが多分、アニメーションの世界にも来るだろうし、実写の世界にも来ると思うんです。
○山賀参考人 実際、アニメーションの世界は、今、資金がだぶついている状態になっていまして、インターネットの時代を待たずして、そのような現象は実際に起きています。 昔はアニメーターなどが企画を考えるわけです。毎日毎日絵を描いているだけのアニメーターが、私はこんなファンタジーがやりたいんだと、大体、寝ぼけたような企画書を書いたりするんですけれども、それは通らなかったんです。それはまず、スポンサーの段階でシャットアウトされてしまうし、放送局にも上がっていかないんです。それでシャットアウトされていたんですけれども、今は、昔だったらこんな企画は絶対通らないと思うような企画が普通にテレビシリーズとして通っています。それだから、テレビシリーズの数が増えているんです。
○牛尾座長 発表する場面も増えていますしね。ブロードバンドでどんどん増えてくるから。
○山賀参考人 ただ、それでやはり問題が起きています。粗製濫造になってしまうんです。
○角川本部員 テレビ局は、以前は、大体週に40本のアニメ番組を放映していたんです。
○丸山参考人 番組が40本もあるんです。
○角川本部員 それが、今、山賀さんのお話のように、週に100 本出るようになったんです。
○山賀参考人 毎週毎週、どこかで100 人の監督が100 人の主役に対して、もしくは100 人のサブアクトに対して打ち合わせをしたり、レコーディングをしたり、それが毎週毎週あるわけです。
○牛尾会長 だけれども、これは言葉だけ変えれば、最終的にはグローバルなマーケットに登場するわけでしょう。
○丸山参考人 いけるものもあるし。
○山賀参考人 いえ、ほとんどいけないです。
名前は伏せますけれども、日本のアニメを売っているアメリカの会社が大量に在庫を抱え過ぎて、倒れそうになったことがついこの間ありました。それは、私の目から見て、もう少し目ききを置いて、ちゃんと選んで物を仕入れないと、幾ら倉庫がでかかろうが何だろうが、これだけの在庫を抱えてはまずいでしょうというようなものでした。
○角川本部員 ですから、山賀さんのお話の重要な点は、従来のヒエラルキーというものがクリエーターの権利とか生活を全く保障しない形であったわけです。旧来のクリエーターのヒエラルキーというものがつぶれてみたら、無法状態みたいになってしまっていて、ある種のもう一つ新しいヒエラルキーが本当は必要なのではないか。それが本当に健全な、理想的なヒエラルキーは何かということが、今、問われているのではないですか。
○山賀参考人 そうですね。私の考えだと、健全というところまでまだわかりませんけれども、ただ何らかの形でヒエラルキーがないことには富の再分配も行い得ないですから、実際、10年前に弊社でつくりました「新世紀エヴァンゲリオン」という作品がヒットしまして、一応、会社で権利を持っていますから、その権利の料金として会社に入ってくる分があるわけです。これを現場に分配したいんですけれども、誰がどのぐらい貢献したかというのは、実は社長である私でもわからないわけです。
現場の責任者に聞いてみないと、誰にどのぐらい分配したらいいと思うかというのは、結局、現場に任せましたけれども、それは、そういった意味では監督に落とすのか、プロデューサーに落とすのかというのも、多分いろんな考え方もあると思うんですけれども、実際のところ、1人で作品をつくっているわけではないわけですから、なかなか、では監督の次に誰が来るんだとか、役職名を見たら、すごい高い役職名であっても何もしなかった人というのも実際にいるわけです。
○牛尾座長 わかりました。
では、参考人のお話を聞いた上で各委員の御発言をちょうだいするわけですが、初めにペーパーを出されている角川本部員からお願いします。その後、前回出ていらっしゃらない小川委員に、やや長目に話していただければと思います。
○角川本部員 前回、途中で退室したものですから、私の説明も十分でなかったのではないかと思う部分がございます。
今回、私の資料は、カラーの資料4−3と、それから白黒の追加資料がありますが、これは総務省の情報通信政策研究所によるコンテンツ産業の最近の動向を調査している資料を転用したものであります。
これをご覧になっていただくと、なかなかこのグラフが物語っている世界が広いと思うのですが、横軸が業界の市場規模です。縦軸がどれだけワンソース・マルチユース、つまり、ブロードバンド時代あるいはニューメディア時代、マルチメディア向けて転用して、いろんな使い方ができるかという可能性を示しているというふうに思っていただいていいと思います。
そういう点では、例えば書籍のコミックとか、一番わかりやすいのは衛星テレビ番組です。これなどは、2000年から2003年までの3年の間に横軸、つまり市場規模は増えているけれども、マルチユースの度合いは上がっていない。つまり、衛星テレビ番組というのは幾ら使ってもほかのメディアの人たちは余り使わないものだということです。あるいは権利がいろいろ難しくて広がっていなかったということも言えるかもしれません。
その点では、例えば映画ソフトだとか、同じように映画から始まったビデオソフトなどは3年の間に市場規模も上がっているし、マルチユースの度合いも上がっているということが言えると思います。
○牛尾座長 衛星テレビなどでやられている映画などは、どちらの分類ですか。
○角川本部員 これは映画の方に入っております。ですから、ビデオソフトは主にオリジナルテレビドラマなどを指しています。そんなふうにご覧になってください。
ここで見ていただきたいのは、音楽です。この音楽は、3年の間に飛躍的にマルチメディアの使い方が増えておりますけれども、市場規模はむしろ下がっております。
○牛尾座長 どういうことですか。
○角川本部員 つまり、産業規模として音楽業界はシュリンクしているということなんです。マルチユースは進んでいるんですけれども、産業界の売上げは下がっているということなんです。
○牛尾座長 全体事業は減っているわけですね。
○角川本部員 そうなんです。
それから、もっと顕著なのはゲームソフトです。ゲームソフトに至っては明らかに売上げが3年間の間に下がっていて、なおかつ、一方ではマルチユースが進んでいる。つまり、ネットワークゲームが、今、非常に脚光を浴びているんですけれども、そのネットワークゲームの結果、産業としては売上規模が上がっているかといいますと、実は上がっていないということなんです。
ですから、こういうふうにして同じエンターテインメント・コンテンツの世界でも、マルチユースによって、あるいはデジタル化によって市場規模がアップできる、期待できる世界と、むしろリスクであるという世界があるということです。私が前回、チャンスでもあるけれども、リスクが高いところもあると申し上げたことが、この分野別にこのグラフに出ているのではないかと思うんです。
そういう点で、私の結論として、それでは音楽が間違っていたとか、ゲームソフトのデジタル化が間違っていたとかということではなくて、もう一回、原点に戻って、今、山賀さんや丸山さんがおっしゃったことと通ずるんですけれども、「ユーザーにも幸せで、しかも産業規模が大きくなって、分配も平等に取れるようなブロードバンドの時代のデジタルコンテンツのつくり方は何か」ということをここできちっと考えてみる必要があるのではないかということを申し上げたいわけです。
○牛尾座長 この前、金丸さんがおっしゃったトータルの時間というのは増えなければ、どこかが減ったらどこかが増えるということになるということはあるわけですね。
○金丸委員 それもあると思います。
広い意味でいいますと、日本のGDPが減っていて、可処分所得も減り、税金が上がっていて、保険料が減るわけで、ファミリーで見ても、私は男の子が3人いるんですけれども、彼らに小遣いを渡して、その中からいろんなものをやるわけです。
選択肢が、我々のころはアニメといっても漫画を買ってきたのが、さっき言われたように、テレビで無料の放送を見てきて、そのメニューも豊富に増えて、しかもものすごいクオリティーが高い、大人も楽しめるようなアニメとかも出てきているわけで、そうすると、基本的にはマクロに見たら、ファミリーの財布の中にどれだけ支持を得られる、しかもかつてよりもよりよいサービスだったり、そういう進化を遂げなければいけないと思うんです。
多分、今回のこの話は、要するにハードウェアというもので競争していた時代から、いよいよハードウェアというもので競争していく限りにおいては、中国だとか韓国だとか結構強い。では、そうすると、我々は日本人のアイデンティティーだとか、文化だとかを考えたときに、この知財という中におけるこういう音楽であるとか、アニメだとかというのは有力な産業になるでしょう。
だから、有力産業にしていこうとするからには、過去のいろんなものについてまずい点は変えなければいけないし、それはどういうところかと思うんですけれども、基本的には日本で、まず今よりも健全な市場になるためにはどうしたらいいかということと、その健全な市場になった先は、多分、先ほど産業で、山賀さんはヨーロッパの方はまだそんなにないとおっしゃいましたけれども、だからこそ、まだ輸出の芽というのが、可能性としては期待でき、国内では配分についてはいろんな言い分があるかもしれませんけれども、海外市場に国としてはまとまって出ようぜということになると思うんです。
この間、私が申し上げたのは、自分でもそうなんですが、一日の時間の使い方が変わってきた。だから、そういう中でもしマーケットとして増えるのであれば、余剰時間といいますか、我々が収益だとか何だとかとディペンドしない分野が考えられます。そういう過ごし方が変わってくると、収入が、デジタルコンテンツ産業は増えるかもしれないけれども、多分そのときは、それを提供していた違う人は減るかもしれない。
だから、みんなでパイはでかくするというところ以外によりどころはないと私は思うんです。そういう意味で輸出というような、だから戦略を国外と国内で分けて考えた方がいいではないかと。
○山賀参考人 ヨーロッパですけれども、ヨーロッパで日本のアニメを売っている人たちの声といいますか、現状を聞くにつけ、結局のところは海賊版に苦しめられているんです。それはほとんど中国製品ですけれども、見るとパッケージまでまねているんですけれども、明らかにフォントが中国フォントなんです。
そういうものでは、民間で、たとえどんな大企業であっても、取り締まれるかといったら、それは無理ですから、それはやはり国家規模で何かやっていただかないと、これはどうしようもないところです。それは、かなりの部分、やはり安い値段で、3分の1の値段で出ますから、その3分の1の値段に正規品がかなうわけはなかなかないんです。
○牛尾座長 最近、ハード、ソフト込みで日中の間の海賊版は、日本に送らないで、第三国で全部、日本で押さえた分だけ第三国に行っているんです。だから、発見にも時間がかかるし、ハードもそういうのはひどいです。
○山賀参考人 イタリアの会社が、一遍、手紙をくれと言ってきたんです。何の手紙かと思ったら、正規なライセンスを私たちは受けていますという証に手紙をくれと。その手紙を送ると、その手紙を警察に見せて、私たちが正式なライセンス所持者であって、あとは海賊版ですから取り締まってくださいということを警察に言える。それがないと、自分たちがいくら本物だと主張したところで、サプライセンスとサプライセンスで教えていますから、向こうでもわからないわけです。それで手紙をくれと言われたことはあります。
○角川本部員 今、山賀さんがおっしゃったイタリアというのは、今、日本の巨大ロボットの大ブームが起こっているんです。つまり「鉄人28号」だとか「新世紀エヴァンゲリオン」、「機動戦士ガンダム」、それから、昔懐かしい永井豪君のロボットアニメは、今、イタリアでアニメ界を席巻しておりまして、巨大ロボットブームというのが起こっているんです。
○牛尾座長 それはにせものなんですか。
○角川本部員 そのほとんどがにせものだということです。100 人中99人が海賊版なんです。余りにせものが横行しているために、今、山賀さんがおっしゃったように、そのうち1人に、「私が正式な許諾を受けている」ということを証明しないと、警察はお前も海賊版だろうと言う世界だからこういう話が出るわけです。ですから、今、海賊版の世界というのは中国だけと言われていますけれども、実はイタリアがまた全盛なんです。
また、実は、アメリカも結構やっているんです。アメリカは、外に対しては厳しく取り締まりますけれども、国内に対しては余り取締りを厳しく言いませんから、本当はアメリカも問題があるんです。それについては、小学館の久保さんから「ポケモンもアメリカで3種類ぐらいの海賊版が出ている」という話が、以前にも出たと思います。
○牛尾会長 中国は、上海ガニのにせものが多いというんです。最近デジタルのマーカーを付けているんです。
それでは、そういう雰囲気で、小川委員どうぞ。
○小川委員 インデックスの小川です。前回は欠席して、また、今日も遅刻しまして、どうもすみませんでした。
私の方から、資料4−1ということで、簡単なレポートをまとめておりますけれども、まさに、今、議論されていたことを少し私もコメントを付け加えさせていただくならば、本当にビジネスの規模という観点で、何をもってビジネスの規模を図るのかという、まず尺度を、要するに売上高で見たときに、もしかしたらネット化の流れというのを売上高のかさは若干減らす方向にムーブメントとしてはあるのかなという気がしますので、もしかしたら、この統計数字はどういうふうに取られているのか、私も把握していないんですけれども、もしくはあまり比較的になる必要もないのかなという気も若干するんです。
一方、市場は国内だけではなく、海外にも求めなければいけないというのはまさにそのとおりでして、ここから先、デジタルコンテンツの振興をより拡大化するのであれば、いかに日本のコンテンツを海外に流通させていくかということを視野に入れないと、恐らく本当の意味での発展はないのではないかと思っています。
本題に入るんですけれども、私ども、モバイルコンテンツを営む会社ではあるんですが、iモードが1999年に始まりまして、これは本当に世界に誇る新しいコンテンツ流通のメカニズム、日本がいち早く確立した成功例ではないかと思うんですけれども、当初はモバイルコンテンツというのはいろんな制約が、それを実現するためには、例えば白黒画面に直さなければいけないとか、例えば着信メロディーを1つ取っても、今みたいな着うたなどというのは当然あり得なくて、非常にシンプルな着信音をつくらなければいけないというところでのコンテンツ加工の必要性があって、我々のようなモバイルコンテンツプロバイダーというものの市場が大きく立ち上がってきたわけですけれども、現状はインフラ、ネットワークが非常に大きくなったり、携帯電話の端末自体も非常に高度化してくる中で、必ずしも加工が必要ではない。コンテンツがそのまま流通できるようなレベルに達している中で、我々のモバイルコンテンツの定義もすごく変わってきたというのが実情としてあります。
今の着信メロディーの例で言いますと、着うたないしは音楽配信が直接できるわけであって、勿論、着信メロディー自体の存在もこれから残るとは思うんですけれども、随分モバイルコンテンツの定義がこの5〜6年の間に変わってきたという背景がございます。そういうところで、今後モバイルコンテンツという事業を我々としてどういうふうに考えていくかという観点から、やはり、先ほど角川本部員もおっしゃられたように、マルチユースという観点に立って、モバイルコンテンツだけではなく、もう少し幅広い流通を視野に入れたコンテンツの作成とか権利の確保というものをしていかないといけない時代に来ていると考えております。
その際に、マルチユースといいますと、ハリウッドがもしかしたら原点かもしれなくて、それは映画を中心とした、映画で劇場で封切られて、そこから何日間遅れでパッケージメディアが売られたり、ペーパービューがされたり、テレビ放送がされたりという一連のこういう流れがハリウッドを中心にできたんでしょうけれども、今後、日本では日本ならではの、新しいマルチユースのコンテンツ流通の仕組みとかやり方というものを確立していって、それをもっと世界にどんどん存在感を示していければいいのではないか。
これは、コンテンツの提供側だけの発想ではなくて、ユーザーの方も非常に成熟してきていまして、コンテンツをいろんなウインドーで楽しむ。場合によってはお金を払ってもいいというのは、我々が考えている以上にユーザーの方は抵抗なく、とりわけ日本は成長してきていると思いますので、これはコンテンツを出す側だけの発想ではなく、ユーザー側から見ても新しいマルチユースを前提としたコンテンツビジネス、コンテンツ配信のやり方というものをもっともっと発展させていくべきではないかと感じております。
最後に、その際に1つ、やはりボトルネックになっているのが、著作権の処理ですとかそういったところで、もともとはコンテンツの権利者を守るために著作権の管理というものの仕組みがいろいろ議論され、つくられてきていると思うんですが、若干、最近、本末転倒しているところもあるのかなと。コンテンツを管理するための管理みたいなところが議論の中心になっていて、結果的に権利者よりは、まずは権利を管理する団体のビジネスになっているような現状もあるのではないか。ですから、実際にコンテンツの権利者にももう少し幅広く、きちんと利益がもっと楽に配分されるような仕組みをトータルで考えていければいいのではないか。
結局、そういうものができ上がらないと、先ほどの話に戻って、海外にマーケットを求めていく際にも、必ず権利者とのあつれきというところでネックになって、うまくいかないという現状から脱皮できないのではないかと思いますので、そういった点も今後改善していく必要があると感じております。
以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
御意見のある方は、ネームプレートを立ててください。
どうぞ。
○金丸委員 山賀参考人に質問したいんですけれども、アニメの世界で、先ほど家を例えてそういう表現があったんですけれども、宮崎さんというスーパースターは別にして考えると、例えば野球選手だと、では日本のアニメ界で一流選手というのはどれぐらいの収入があるのですか。
○山賀参考人 結局、原画をやっている限りは、もしくはそれの作画監督がそうなんですけれども、ぺーぺーの新人だろうが、超一流だろうが、単価は一緒なんです。ただ、うまい人を確保したいので、固定給にしてみたり、いろんな上乗せをそれぞれの会社、要するに制作会社が現場的にそれを考えてやったりしますけれども、そうすると、やはり漫画を描いたり、権利が発生するキャラクターデザインをやったりするのがやはり一番収入がいいわけです。
その辺りになると、売れれば、要するに毎年何千万円か入ってくるようなクラスにもなれるでしょうけれども、ただ、それは技術がいいからというよりも、たまたま当たった作品のキャラクターデザイナーとして名前が登録されているから、もしくは素性のいい制作のシステムの中で仕事をしたためにちゃんと権利がもらえているからということになってしまいます。
○牛尾座長 素性のいいというのはどんな感じですか。
○山賀参考人 要するに、素性が悪いとお金が流れてこないわけです。
○金丸委員 仕組みではなくてですか。
○山賀参考人 仕組みは作品ごとにつくられるものなので、その作品ごとの仕掛けがひどい仕掛けだと、全く権利はやってきませんし、それはいい仕掛けでやっていればちゃんとお金はやってくるんです。だから、作品ごとになっているんです。
○牛尾座長 どうぞ。
○國領委員 そのいい仕掛けというのが、具体的にどういう仕掛けがいいかというところがすごくポイントなんだと思うんです。一つの流れとして、やはり権利というのをクリエーターも、しかも割合部分を担っているような方にまで権利という考え方を入れて、きちんと処理しましょうというのが流れになってきていると思うんですけれども、現場感覚から言って、どれくらいリアリティーがあると思いますか?どういうような仕組みだと一番動くと思っていますか。
○山賀参考人 まず、お金は誰でもみんな欲しいですから、現場の人の意見を聞けば、例えば100 人聞けば100 人ともお金がなくて困っているんだと言うと思います。
ただ、お金は欲しい人にいいように渡していったら、単に平べったく、先ほど言いましたようにヒエラルキーがありませんから、平べったく数十円ずつが積み重なっていくことになりますから、それはある程度、どこかに集中しないとしようがないと思います。
だから、現場の、では、あなたはこのキャラクター10人のうちの1人はあなたのキャラクターデザインだから、では、このキャラクターデザインの料金の10分の1の部分はあなたのところに渡しますみたいなすごい煩雑なことをやったところで、意外と喜ばれないと思います。
それよりも、先ほど言った素性のいいというのは、結局、弊社でやっているのはどういうことをやっているかといいますと、出資するんです。出資すると制作委員会の中に入れますから、発言力が持てますので、その中で権利として受け取るお金も勿論ありますけれども、それは大した額ではありません。ただ、投資していますから、それでもうけが出た分は制作委員会からのバックがあります。その形で何とか食いつないでいるというのが弊社の現状であります。
○國領委員 個々のクリエーターには、それはどう配分されるんですか。
○山賀参考人 結局のところは、本当に個々で、例えばある程度の年齢になってきて、あちこち渡り歩くのが嫌になったようなフリーの人は、では社員になって固定給にするから、うちに落ち着きなさいという声のかけ方をしたり、あとは単価を上げるから、あなたぐらいうまい人は確保したいので、単価を上乗せしますからやってくださいとか、本当に個々のケースに合わせてやっています。
○牛尾座長 どうぞ。
○浜野委員 山賀さんの会社は特殊なので、一般の会社の補足をします。昔、常勤として雇われたていたアニメーターが会社では寝ていて、アルバイトで稼いでいたといったことなどもあり、アニメーターについてはほとんど、出来高払いの契約制になりました。フルタイムでアニメーターを抱えている制作会社は非常に少ない。
社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が去年、307人のアニメーターに対して調査を行い、83人から回答を得て、報告書「芸能実演家・スタッフの活動と生活実態調査報告書2005年版:アニメーター編」を出しています。「動画」の平均年収は100万円以下が大半でした。ただ、その結果について、著名なアニメーターの方々に確認したところ、アニメーターにも責任があるとのことでした。
先ほど山賀さんがおっしゃったように、今、アニメーション業界は仕事が多く、いろんな異業種からの参入があって、能力のない人までアニメーターとして雇うケースが少なくないとのことです。もともとアニメーターは給与を低く言う傾向があり、そのため平均年収が極端に低くなっているという指摘もありました。きちっと食べている人もちゃんといるという話でした。
富の再配分ということでいうと、ハリウッドではユニオンが最低賃金を厳密に決めて自らの生活を守っていますが、一方でユニオンがあまりにも強いため、ユニオンが必要もない人員を押しつけて、仕事もしないでブラブラしている人が増えて、制作費が高騰し、ハリウッドから制作が流出するランナウェイ・プロダクションという現象が起こっています。ですから、ハリウッドのやり方が正しいわけではなし、日本でも富の再配分がうまくいっていないことも確かで、新しいモデルが必要だと思います。
○牛尾座長 荒川委員、どうぞ。
○荒川委員 角川本部員に御質問なんですけれども、マルチユースを許したから市場が小さくなっているというように読み取れるような資料でしたけれども、もしネット配信なり、マルチユースがされなかったという状況下で、パッケージメディアが市場規模を守れたのかということについてはいかがなんでしょうか。
○角川本部員 それは、御質問の中身自身が本当に誤解でして、マルチユースをしてはいけないとは一言も言っているわけでもないんです。ですから、先ほども申し上げたように、この表から見ても、映画やビデオソフトというのはマルチユースをすることによって上がっているわけですから、そういう点で音楽やゲームソフトの一部を見てネガティブに受け止められるというのは私の本意ではないんです。これをまず基本に押さえてください。
では、映画だとかビデオソフトというのはなぜこうやって市場規模もマルチユースの度合いもうまく上がってきているのかということです。私も業界人なので、正しい言い方として受け止めてもらえるかどうか少し不安ですけれども、率直に言って、第1回目のこの会議で申し上げたように、うまくいっている分野というのは、ビジネスモデルがきちっとしていて、そこにはやはりそれなりのヒエラルキーがあって、その上でマルチユースをしているからパッケージの利益とネットワークの利益とがうまく取り込めて増えているんだということを申し上げたいのです。
一方、非常に革新的な、あるいは破壊的と言ってもいいんですけれども、そういうデジタル化やネットワーク化というものが業界を壊してしまうようなことになれば、つまり、卵が欲しいばかりにめんどりまで殺してしまうようなことになれば、卵が生まれてこないではないか、ということを申し上げたいのです。このめんどりというのが何かといえば、今お話をしている現場のクリエーター、アーティストたちです。ですから、アーティストたちの生活が保障できないようなデジタル化、ネットワーク化であれば、これはかえって卵、つまり新たなコンテンツが生まれてこないのではないかということです。
○牛尾座長 どうぞ。
○平澤委員 マルチユースに関してですけれども、前回、私がお話ししたときに音楽パッケージの周辺の話をしたんですけれども、1996年、6,800 億円あったマーケットというのが、昨年度は3,800 億円、約半数近くにCDパッケージというのが激減していたんです。それに対して、JASRAC収入というのが逆に同年度で900 億円から1,100 億円に伸びている。その明細を見てみると、CDパッケージ等に関わる純増部分というのがあるんですが、明らかに新たなマーケットが生まれているんです。これがいわゆるマルチユース、すなわち着メロ、着うたマーケットなんです。
このマルチユースという見方というのもあるんですけれども、ちょっと見方を変えると、マルチプラットホームになっているということだと思うんです。だから、今のいろんな議論の中で著作権処理云々というのが勿論あるんですが、マルチユース、すなわちマルチプラットホームになったときに仕組みが変わったにもかかわらず、クリエーターに対してどうやって適正な配分をしていくのかというルールを決めないと、既存の形で配分するような方法では全部クリアーできないのではないかというのが少しあるのかなというふうに私は思っています。
○牛尾座長 どうぞ。
○荒川委員 私も、平澤委員と同じ意見を持っているんですけれども、更に、私もあるレコード会社の社外役員をやらさせていただいているので、パッケージメディアは音楽に関して言えば、やはりだんだんと減ってきていて、別にマルチユースをしなくても恐らく減ったのではないだろうかというふうに思う。それに対して、プラットホームを多様化していくことによって減りを抑えている、またはそれの転換点を迎えていて、逆に増えつつあるような状況下に変わってきているのではないかというように思える。これはいろんな立場があると思うので、私はそんなふうに思います。
一方で、映画ソフトなどは、私などが自分が買う立場等々で考えても、昔は映画館で見る、ビデオで買うといってもなかなか高くて、全部を買っているわけにはいかなかったものが、1本千数百円で買えるという映画のDVDソフトが広がるということによって、当然、買う人たちもたくさん増えているということで、今までなかったパッケージがどんどん広がっていて手軽になっているから、単に広がっているのではないだろうかというふうにも思えるんですが、その辺がちょっと切ったときに違うのかなということ。
それと、先ほど金丸委員がおっしゃられていたように、消費者の財布は一緒なので、明らかに携帯電話の通信料金だとか、そこに費やされるお金が増えて、それ以外のところの消費が減っているということは起こっているのではないかというふうに思うので、ほうっておけば全体が減る可能性は結構あって、要するにお財布の取り合いをやっている。
もう一つは、時間の取り合いをやっている。これも金丸委員が前回のときにおっしゃられたと思うんですけれども、時間の取り合いを行っている。時間などはどんなふうにしたら増やせるのかというようなことを工夫していくと、市場が広がる可能性があるんだねというようなことなのではないかというふうに思うんです。
○牛尾座長 どうぞ。
○久保利委員 丸山参考人に御質問なんですが、今、いろいろ議論されていることと、丸山参考人の今回の御説明とどういうふうに絡むのか。少なくとも、丸山参考人のペーパーを拝見する限りは、要するに創造のサイクルの保護というのはメジャーの論理だということが2ページ目の真ん中辺に書いてあり、インディーズは違うということです。そうすると、要するに丸山参考人がおっしゃっているのは、未知の情報に金を払ってもらうのは無理なんだから、情報を集めようとしている人たちには、これはただで配るしかない。それが本当に作品になったらばチャージができるんだねという話だと思います。
そうすると、例として挙げていらっしゃるのが2004年にも100万枚、200万枚といったメガヒットアルバムが出ている。これが、情報が愛すべき作品になった場合がこういうふうに流れていったんだという前提だと思うんですが、私がよくわからないのは、この100万枚、200万枚買っている人が、ただで情報を集めた人が変質し、作品を愛することによって買ったということを直ちに言えるのだろうか。
極端に言いますと、インターネットにアクセスもできないような人たち、あるいはアクセスはしても、やはり物としてのものが欲しい人たちが買っているのであって、そのニーズは必ずしも情報が作品に転化するということとは必ずしもイコールではないのかもしれないという気がするんですけれども、その辺りについてもう少し詳しく御説明いただけるとありがたいです。
○丸山参考人 ごめんなさい、少し話は長くなりますが、私は長いこと音楽をやっています。音楽というのは、基本的にははやりものなんです。ビジネスははやりものからビジネスが成立します。
とはいうものの、実ははやりものというのは、一体誰がはやるところまで押し上げるかというのがあります。押し上げるのは、トレンドセッターという言い方をしますけれども、一番初めに、これはいいというごく少数の人が必ずいるわけです。それがトレンドセッターですから、その人たちの周りに人が、あの人が言うんだったらというのでだんだん広がっていって、最終的に何だかわからないけれども、はやっているから買う。それで、実はビジネスははやっているから買うという人たちによって支えられている。これがこういうソフトのビジネスの基本。多分、ファッションも同じだと思います。
現状でいいますと、インターネットに接続していろんなことをやるというのは、どちらかといいますとトレンドセッターだと私は思っているんです。現状、例えば音楽というのはFMラジオで聞かれるか、テレビで新しい音楽を聞くことができるかといいますと、音楽そのものとしてはそれを聞くことができない。何でかといいますと、先ほど言いましたように、時間があるとかないとかという話もあるんですけれども、基本的にははやっている音楽しかラジオではかからない。はやりそうな音楽をかけてくれないです。
そのために何をしているかといいますと、有名なはやっているミュージシャンは新しい音楽を今月つくるといったときに、必ずタイアップというのを取るようにします。つまり、音楽はコマーシャルの附属品であるか、あるいはドラマ、あるいは番組の主題歌という形でユーザーというのは新しい音楽を手に入れることができる、聞くチャンスが増えるというサイクルで、それがどうなるかといいますと、ほとんど回転しているのは、いわゆるロングテールの頭の部分という、ここにいる皆さんだったらおわかりだと思いますけれども、はやっている頭の方のところだけで、今、ぐるぐる回転しているというのがこの2〜3年の傾向だと思っています。
新しいものが世の中に出てくるというのは、ロングテールの下の方にあるわけで、そこの中から次の新しいものというのは出てきます。ですから、そのロングテールの下の部分を世の中に知らしめるという方法論がなくなっているのであれば何とかしないと、というのが基本にあって、それであれば、まず音楽を聞いてもらわないことには誰もわからないんだから、聞いてもらうのを優先しようではないかというところです。
よろしいですか。それでも、まだ弱いですか。
○久保利委員 いや、弱いというのではなくて、そういうことなのかもしれませんけれども、そのことと、逆に言いますと、大半の曲はついにトレンドセッターから評価されずに終わるわけです。しかし、ある人たちは、トレンドセッターは評価しないけれども、私は好きだというのはあり得て、その人たちは結局、今の話だと、売れているから買うという人がCDを買うんだとすると、その人は結局、ただで録音をした、それを繰り返し聞くだけで満足をしてしまうと、売れない曲というのは永久にCDとか有料化することによってメリットを得ることはあり得ない。
したがって、常に売れ筋というのをつくり出す、あるいは誰かがそれに目を止めるための、言わば販促手段としてインターネットというのはあって、ここからはついに、金は入ってこない。そういう手段というのが、今までのテレビの主題歌というものとは別に、もう一つルートはできたけれどもということにすぎないのでしょうかという質問なんです。
○丸山参考人 すぎないと言われてしまえばすぎないという、その程度のことしか私はやっていないんですけれども、基本的にはインターネットという部分では、聞こうと思うのであれば聞くことが可能であるということです。ですから、今、ユーザーはその手段を奪われているわけで、唯一あるとすれば、タワーとか外資系の大きいレコード会社のレコード売場に視聴機があるので、あそこにへばりついて聞くという、皆さん、そんな体力と時間はお持ちですかということで、それを自宅の中で可能になるということは、多分、ロングテールの下の方にいる人たちにとってはチャンスだろう。
私は、この部分で言えば、それぞれの人のビジネスを考えていますから、アルバムすべてをそこのところに落としなさいと言っているわけではなくて、3曲までで止めておきなさいというふうにしていますから、そのうちの、結局はあらゆる音楽というのはアーティストの代表曲を聞いて、それが気に入ったらばアルバムを買うという、現在の消費者の消費性向から言えばそういうことになるわけですから、そういう形を取るのが、今の段階では多分いいだろう。だけれども、このビジネスモデルが、こんなものはビジネスモデルではないと随分多くのアナリストや何かに言われるんですけれども、こういう仕組みというのが未来永劫続くとは金輪際思っていなくて、多分、4〜5年の部分だろう。また新しい方法が出てくるだろうと思います。
こういうデジタルといいますか、こういう時代というのがいろんな方法がいろんなやり方で出てくるので、一つのやり方というのが、今までのビジネスというのは30年サイクルぐらいあったわけですけれども、多分、それの6分の1ぐらいにしかならないだろう。それで、時代を過ぎたら潔く撤退して、次の新しいものを考えるべき。こういう時代に入っているんだろうと思っています。
○久保利委員 わかりました。
○牛尾座長 どうぞ。
○金丸委員 このデジタルコンテンツといいますか、この市場というものが混成した形でもあるんですけれども、顧客接点から見ると、顧客接点の多くが、これだけ自由なインターネットという顧客接点を持ったものが出てきたにもかかわらず、規制業種、免許制の放送局ということを通じて、我々は若い人も含めて全国で触れているわけです。
でも、このテレビ局は、NHKを除いて無料で出しているわけですから、でも、この免許制の人たちがよく週刊誌とか経済誌とかで、この間ランキングとかが出ていましたけれども、年収のトップにいるわけです。テレビ局というような人たちがトップにいて、一方で、さっきの浜野委員の話では年収100 万円ぐらいのクリエーターがいて、この産業は誰が支えているかといいますと、私はやはりテレビ局ではないと思うんです。
テレビ局は、むしろそういうサポーターに本来はなるという意識がもっと強くあれば、私はパブリックとか、公共性とかがあると思うんです。だから、クリエーターの人たちをもっと国として応援していて、クリエーターの人たちが免許制のテレビ局に使われている立場から、それこそ立ち上がって、インターネットの世界に行けばいいと思います。と、それは平澤委員などの意見によると、要するに少額の課金だとダイレクトにお金が取れるわけですから、そんな大組織に売り切りで、たかだかちょっとのお金でやるぐらいだったら、だから、私はクリエーターの人たちがいわゆる新しいプラットホームにどっと動いてきたらもっと大きく変わるような気もするんです。そこに、例えば音楽の世界だと、そういう既存の世界を熟知した丸山参考人が起業なさって、音楽の世界でも無料配信をなされたのは私はすばらしいことだと思うんです。
だから、私は免許制のテレビ局が持っている規制については、規制か何か、参入障壁か何かよくわかりませんけれども、私はそこはもっと議論されないといけないのではないかと思うんです。特に、私は今回のメディアと何とかの統合のどちらかの立場ということでなく、インデックスの小川委員もいらっしゃるのであれですけれども、要するに免許制を持っている人が、私も男の子が3人いますけれども、親としてろくな番組ではないと思うんです。私、ろくな番組をつくっていないと親として思う人が年棒で上位に来るというのは昔、それが金融の人たちがどっと上位に来ていたんですけれども、金融の人たちがどっと下がってしまって、誰が汗を流しているんだというと、テレビ局の中の人も流していらっしゃるんでしょうけれども、何であんなに収入が高くて、それ以外が低いのかというのが不思議です。
○牛尾座長 どうぞ。
○山賀参考人 金丸委員がおっしゃられることはよくわかるんですけれども、ただ、自分が一消費者になったときに、今どんな曲がはやっているのかというときに、まず真っ先にテレビにかかっているかどうかというのは、テレビに対しての問題意識は私もありますけれども、一消費者になったときには、あのCMでかかっていた曲はいいねとか、最近、歌番組見ていないから、歌のことはよくわからないんだとか、かなり自分を振り返ってみても、音楽に接するスタイル自体が、テレビが一種の権威として、権威というのも変ですけれども、テレビを基準に売れている、売れていない、売れているから聞いてみようというふうなスタイル、まだまだそういうスタイルの人が圧倒的に多いと思うんです。それにはてなということを言い始めている人は、確かに割と先進的な人たちの間では、そのはてなはどんどん大きくはなっている。
○牛尾座長 ラジオがテレビよりもぐっと増えていましたね。
○山賀参考人 そこのところのライフスタイルの問題ではないかと思うんです。テレビの問題である以前に、私たち視聴者側のライフスタイルとして、まだテレビから脱出することはちょっと難しいと私は考えています。
○牛尾座長 どうぞ。
○丸山参考人 先ほど言った大部分のテレビ局の問題点、免許事業でありながらといったことの部分というのは、先ほども言いましたけれども、すごく前からあって、免許制度なのに、私どもが音楽をつくると、テレビのドラマの主題歌をやってやるんだから、その出版権をよこせとか、あるいは原盤権をよこせとか横暴な態度を取っていて、これはデジタル問題とは全然関係なく、すごく昔からあるんです。だけれども、本当はこの問題が30年前に議論されていれば、もうちょっと私たちとするとやりいい30年だった。これは隣の山賀さんだって一緒ですね。
○山賀参考人 一緒です。
○丸山参考人 そうなんですけれども、でも、それは何かといいますと、家庭のモニターに絵を映すという、あの魅力的な技術というは地上波の放送というものがないと、あそこを通さないと我々のつくったコンテンツというのは家庭に届かないというのがあったから、やむを得ず、私たちは30年も、40年も本当によくないお代官さんの言うことを聞いていたんです。
それで、今問題になっているのは何かといいますと、ブロードバンドになって家庭のモニターに、今はパソコンのモニターですけれども、あっという間にテレビと同じモニターにいろんな画像が届くようになるでしょう。チャンスではないですか。だから、そこのところに三木谷さんや堀江さんが殴り込んでくるという気持ちもわかりますけれども、でも私は、テレビ局のところに入っていくよりも、そういう方々が新たに自分で新しい権利関係をクリアーして、自分でつくってみてやるというのがないと、新しいコンテンツの新しいタイプというのは出てこないと思っているんです。
今、既に過去に決まってしまっている仕組みの部分をもう一回入れ替えるとか何かしろと言っても無理があります。実はコンテンツはTBSがつくっている、フジテレビがつくっているといっても、つくっていないんです。今、言っているように、アニメは山賀さんがつくっているわけですし、音楽は我々がつくっているわけで、実はテレビ局の持っているコンテンツというのはいろんな著作者の単なる集合体であって、テレビ番組をやるときにだけあなたに使ってもいいですという約束事で決めているわけですから、それを堀江さんや三木谷さんや小川さんが取りに行ったとしても、小川さんたちに渡すときに、私たちは個人の権利者として、勘弁してということになります。あれはテレビだから私は許したけれどもという、それが、今、最大にもめている最中で、それがIT系の方々が誰も理解できないところです。
だから、面倒くさいから放送局を買ってしまおうと言っても、私たちはそれでも勘弁してくれと抵抗します。私は、テレビに渡したけれども、そういうふうに渡す気はないと言うのが私たちですから、そこのところで、では私たちが一番望むのは、コンテンツをつくっている方から言えば、そんなことを言わないで、小川さん、三木谷さん、堀江さん、私たちに金を出してと。私たちの方に金を流してくれれば、私たちはいいものをつくりますということですね。
○山賀参考人 全くそうです。
○丸山参考人 だから、ブロードバンド時代に入ったときに考えなければいけないのは、全く新しい仕組みでやりましょうということで、平澤委員のところがすばらしかったのは何かといったら、音楽をおやりになっているんですけれども、基本的に、この前、発言していますね。つまり、つくった者はレコード会社に何も頼っていません。それで、小川さんのところも最初はそうですね。何もレコード会社の権利をちょうだいと言いに行かないから、スピードがあって立ち上がったわけです。
だから、こういう新しい時代に来たのだったらば、新しい仕組みで、新しい枠組みで、前のことは切り捨てて、放送局など放っておいてというふうにやった方がよくて、どうも参考人の割に自分の意見を言い過ぎですね。放送と通信の融合などとわけのわからないことで、私には全く理解できないですから。
○山賀参考人 全く同感です。
○牛尾座長 小川委員、どうぞ。
○小川委員 ITの会社も、それを多分理解していないわけではなくて、例えばテレビ局さんが持っている権利の範囲というのは限定されているということもよく理解しているつもりなんですけれども、言い方を変えると、うまくテレビの持っている既存の力を利用して新しいコンテンツづくりをしていくべきなのではないかと。
やはり、結局、年間何千億というお金を使って。
○丸山参考人 テレビ局は、ブロードバンドで怖いと思っているわけ。だから、自分たちの持っているのを何とか権利をクリアーにして、本当はその方がいいんだと思うんですけれども、それを何とか皆さんの方にお渡ししようという気は全くないです。だって、自分のビジネスが壊れるんですから。
だから、全くないものを何とかそういうふうにするように努力するということをやるのはばかばかしくて、それよりも新しい枠組みをおつくりになった方がいいのではないですかということを私は言いたいわけです。
○小川委員 そのとおりなんです。コンテンツをつくる立場の視点で見たときに、とは言っても、大きな予算を持っているテレビ局さんもうまく活用して、新しい枠組みの中でいろんな新しい流通方法も、先ほどちょっと舌足らずでしたけれども、新しいマルチユースの流通の流れというのは、ハリウッド型のこういう流れではなくて、新しいアプローチを考えるべきではないでしょうか。
そのときに、テレビは悪者ですと。テレビではないところで全部やりましょうというのではなくて、やはり、確かに一家に一台、ウインドーを押さえているわけですから、かつ、そこにかける予算というのはやはり大きいです。それをうまく我々は利用していくべきなのではないか。新しく生まれてきているコンテンツをつくる会社、ないしはコンテンツを流通していく会社を活用していくべきなのではないかというのが私の視点なんです。
もう一つ、確かにテレビ局さんのお給料は高いという問題も勿論あると思うんです。テレビ局さんを弁護するつもりはないんですけれども、免許事業だから許せないというのは確かにあるとは感情的に思うんです。でも、例えば、別にデジタルコンテンツではなくて、普通のメーカーさんでも、例えば最近、メーカーさんの利益よりも流通業者の利益の方が多く出ているという実情もあるのではないかと思うんです。
よく、普通の飲料とかそういう消費物のメーカーさんと話しているときに、流通さんの方が強くなってしまって、ものづくりしづらいというような話も聞いたりするので、これはデジタルコンテンツに限った問題ではなくて、どうしても流通が強くなっていったときに、ある程度の比率を押さえられたときに起こる問題なのではないかというふうには感じています。
○牛尾座長 どうぞ。
○丸山参考人 人間ですから、はっきりわかりやすく言いますと、今まではテレビ局がもうかって本当に冗談ではないと。簡単に言いますと、でもお代官様だからしようがないと。基本的に言いますと、ああいう身分になれたら悪くないというふうに思っているわけです。
それで、最近、ITが出てきました。ITは金があります。簡単に言いますと、人間、ジェラシーです。だから、私たちから見れば非常にジェラシーが強いわけです。だから、どんな理屈を言われても、結構素直に、はい、わかりました、あなたの言うことを聞きますかといったら、多分聞きません。
しんとしてしまいましたね。だけれども、つまり物事の、多分、今あるのは、放送局は放送局で、今度はITに関してジェラシーを感じていてという部分があって、根源的なそこのところの部分があるから、それを理屈で片付けようといっても、それは無理なので、相手がそういうふうに思っているんだということをベースにしながら話をしていかないと解決しませんね。
○牛尾座長 最終的には、ユーザーが決めるんでしょうね。
○丸山参考人 きれいにまとめましたね。
○牛尾座長 では、あと1分ずつぐらいでどうぞ。
○荒川委員 私は、既存の事業者さんを否定しているわけではなくて、要するに市場を広げるためにはどうしたらいいのかとか、競争力を日本として上げていくためにはどうしたらいいのかということを考える時期にそろそろ来ているのではないかというふうに思っているんです。
ですから、別に角川本部員にも反対しているわけではなくて、一番重要なのは、やはり著作権管理の在り方というのを、今度はネットワーク時代、デジタル化の時代にもう少しきちんと規定した方がいいのではないですかというところに尽きるのではないかというふうに、だから、ここの委員会があるんだと思うんですけれども、著作権管理で必要な要素をどうやってデジタルの中に入れていくのか。
デジタルライツマネージメントの標準化というのが、実は日本として最も早く取り組まなくてはいけないことであって、これを日本独自とかという話ではなくて、国際標準に持っていけるぐらいメーカーさんもいらっしゃるわけですし、強いコンテンツクリエーターさんたちもいらっしゃるわけですから、その人たちが一体となればそういうモデルというのはできるのではないですか。
デジタルライツマネージメントは、特定のメーカーさんの技術に依存するとかという話ではなくて、アメリカがDESという暗号の標準を決めるときに、パブリックに公募したんです。それで、皆さんから提案してくださいと。その代わり、採用されたものに関しては、基本的に著作権ですとか、特許権というのを放棄してくださいと。そのアルゴリズムに関しては放棄してくださいと。それをどう実装するか。どんなふうにチップ化するかとか、ソフトウェア化するかというのはそれぞれの企業が自由に商品化していいですと。それで統合してできたのがDESという暗号で、今、新しい暗号もそれでつくられていて、次世代のもう少し強いものもそれでやられていて、非常にうまくいっている。
それの暗号の強さ、安全性というのは、第三者の大学ですとか研究所でいろいろと調査をしてもらってコメントを出すという形で最終的な標準が決められる。同じような形でDRMもできるのではないですか。そういうふうにしてしまえば、コピーを許す許さない、コピーの履歴を取る取らない、そういうことまで含めて、全部その中に入れます。しかも、電子化のような技術をきちんと入れておけば、コピーされたらコピーされたとわかってしまうわけです。
だから、どこからどういうふうに出たかということもわかるということで、認証をきちんとしない限りによってはネットにつながっているとわかってしまいますと。または、ネットにつながっていなくてもコピーされたものを調べれば、それの出どころがわかってしまいますというような形にしておいて、それをどう取り締まるかというのは法整備もあるでしょうし、またはそういう仕組みをつくっていくということが大事になるとは思うんですが、まずそういうことができるようにしていくべきではないかというふうに思います。 それから、放送の公共性について先ほど出ましたけれども、放送網ももう伝送路に恐らくよらないですね。電波だとか、ブロードバンドだとか。そのときに、私は逆の問題がすごく出てくるのは、公共的な番組であるのにもかかわらず、もしそれのにせ、成り済ましのようなものが出てきたら、ニュースで世の中を騒がせるみたいなことだってできてしまう可能性があります。だとすると、やはりDRMはすごく大事で、それが本当に認証された番組なのか。だから、これは公共番組ですと。ニュースだとか報道というものは公共番組ですということを何かプロテクトする仕組みといいますか、認識する仕組みとしてDRMというのも活用できる。
ですから、著作者のためでもあり、ユーザーのためでもありというようなことができていくのではないか。こういうことを早く取り決めて、これを世界標準にしていくぐらいの取組みをしていけば、メーカーさんも、コンテンツクリエーターさんも、ユーザーさんにとっても非常によくなるのではないかというふうに思うんですけれども、ネットで無料配信しているだけではなくて、1回限り使えます。でも、次は聞くのだったら買ってくださいみたいな話もできるではないですか。
○牛尾座長 まだ皆さん、御発言の御希望があるんですが、時間が来ましたので、今日の議論はこれで一応終了としたいと思います。
今日は参考人の方、大変にすばらしいプレゼンテーションで、非常に盛り上がりまして、実はテレビを中心とした技術や仕組みを握っている人とクリエーターとの間の配分の不公平といいますか、透明性とかというのは2年前からこの本委員会で取り上げておりまして、その後、いろんな事件が起こって、今も起こっているわけですが、初めはここの席でクリエーターさんの方はほとんどしゃべらなかったんですが、回が進み、議論が活発になり、どんどん発言されるようになったんです。
どんどん発言するようになって、そういう意味では、この世界の明るさといいますか、近代化にはこの委員会が貢献していると思います。なかなか収まりそうにありませんけれども、私はやはり、これからブロードバンドや携帯電話などの大型化で、テレビ離れが相当進んでくると思うし、しかも、持ち時間は金丸委員のようにそう急に増えるわけではないので、多様化して、細分化してくる過程において、やはりいい形になっていると私は思っております。経営者というのは楽観的な職業ですから、そういうふうに思うんですけれども、大変に今日は有意義な会合であったと思います。
次回の会合は、デジタルコンテンツをめぐる対応策について引き続き議論をいたしまして、参考人をお呼びしてやることになっておりますが、ちょっと参考人の数がどんどん増えてきて、手に負えませんので、今日のような形はもう一回やりますけれども、あと、もう二人ぐらいは、この中で学識委員である浜野委員と國領委員にヒアリングをしていただいて、結論を我々に報告してもらうという検討作業を、お二人の先生、申し訳ありませんが、やっていただいて、とりあえず2月か3月に結論を出します。
この委員会は常々、5〜6か月で結論を出すのが特徴です。これはデジタルワーキンググループですが、2月には3つの分野を全部一緒にしてやります。初めはアニメとかエンタメから始まって、第2回目はレストランとかファッションまで入って、今はデジタルコンテンツ、その3つ総合のコンテンツ専門調査会を2月にやって、今期中、3月の末までに最終報告をするという流れにしております。並行的に浜野委員、國領委員にお手数を煩わせて、煩わせた割にはまたきついことをみんなが言うと思いますが、御勘弁をいただきたいと思います。
次回は、12月26日月曜日の10時半から、第1回と同じ、霞が関東京會舘で開催したいと思います。
両参考人、大変ありがとうございました。
今日は、これで終了いたします。ありがとうございました。
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