○牛尾会長 それでは、ただいまからコンテンツ専門調査会の第6回会合を開催したいと思います。委員各位におかれましては、ウィークディの大変お忙しいところを多数参加していただきましてありがとうございました。
今回の会合は、従来のメンバーと、その後オープンして非常に活発にやってまいりましたワーキンググループのメンバーが初めて一堂に会して開催するものでございます。
初めに「コンテンツビジネスの現状と課題」、その次に「日本ブランド・ワーキンググループの報告」、そして最後に「コンテンツビジネスの振興と日本ブランドの確立に向けての今後の課題」ということでおおむね3つに分けまして、初めにまず事務局から資料等の説明をお願いしたいと思います。
では、事務局お願いします。
○荒井局長 それでは、資料に沿いまして説明させていただきます。
資料1は「コンテンツビジネスの現状と課題」でございまして、昨年4月の専門調査会報告書で御提言いただいた政策の進展状況と今後の課題につきまして、委員の先生方を始め、各方面からいただいた意見に基づき、事務局で整理したものであります。
1ページ目は「コンテンツビジネス振興の集中改革」の道筋でございますが、2006年度末までの集中改革期間において、民間は自らビジネスの近代化・合理化に、国は必要な環境整備に、集中的に取り組むという考え方を示しております。
2ページは、この1年の主なトピックスでございます。
3ページは「1.業界の近代化・合理化」ということで現状と課題が書いてございまして、課題には個人クリエーターとの契約慣行の改善など、さらなる業界の近代化・合理化が必要だということでございます。
4ページは「2.資金調達・インセンティブ付与」でございまして、課題として完成保証の実現や評価手法の確立を掲げております。
5ページは「3.人材育成の強化」ということで、課題といたしましてクリエーターの受け皿やインターンシップの情報や機会が求められていることを指摘してございます。
6ページは「4.新技術の研究開発」でございまして、課題としてデジタルシネマのほか、関連技術の開発が必要だということでございます。
7ページは「5.人材発掘・顕彰」でございまして、課題として長年にわたるヒット作品や外国人、現場技術者などに光を当てることが不足しているということでございます。
8ページは「6.教育・啓発」でございますが、著作権などの教育・啓発のほか、子どもや国民のコンテンツ創作向上が必要であるということでございます。
9ページは「7.海外展開・海賊版対策」でございまして、課題として海外展開のための政府・民間レベルでの連携がいまだ不足しているという指摘でございます。
10ページは「8.ブロードバンド等を活用した事業展開」ということで、課題といたしまして消費者ニーズに対応したコンテンツのマルチプロデュースが不足しているということでございます。
11ページは「9.地域等のコンテンツ保存・発信」ということで、課題といたしましてコンテンツのアーカイブ化やライブエンターテイメントのさらなる取り組みが必要であるという内容でございます。
資料2は概略でございますので、資料3に沿いまして説明させていただきます。
資料3は、日本ブランド・ワーキンググループということで牛尾会長に座長をしていただきまして、昨年11月から本年2月にかけて4回にわたり開催されました。このワーキンググループでは、日本の魅力向上のための具体策として3つの目標と12の提言を掲げておりますので説明させていただきます。
4ページは「目標1 豊かな食文化を醸成する」ということで、5ページに「提言1 民間が主体となって優れた日本の食文化を評価し発展させる」。
6ページは「提言2 食育や安全・安心と正直さが伝わる食材づくりの推進により日本の食のブランド価値を高める」。
7ページは「提言3 調理師養成施設、料理業界、大学等は食を担う多様な人材を育成する」。
8ページは「提言4 日本食に関する正しい知識や技術を広く普及し積極的に海外展開する」。
10ページからは目標2として「多様で信頼できる地域ブランドを確立する」ということで、11ページは「提言5 生産者、観光業者、大学等の連携により地域ブランドづくりに戦略的に取り組む」。
13ページが「提言6 農林水産品に関する基準を整備・公開し、消費者に信頼される地域ブランドをつくる」。
14ページは「提言7 地方自治体と産地が一体となって効果的に情報発信する」。
15ページが「提言8 地域ブランドの保護制度を整備する」。
16ページは「目標3 魅力あるファッションを創造する」ということで、17ページが「提言9 デザイナーに対し、ビジネス機会を提供し、素材との連携により魅力あるファッションを生み出す」。
19ページは「提言10 大学等や産業界はデザイナー及びデザイナーのパートナーとなる人材を発掘・育成する」。
21ページは「提言11 在外公館やJETROの広報及びビジネス支援を通じ、内外の目を日本のファッションに向ける」。
23ページは「提言12 不正競争防止法を改正し模倣品・海賊版対策を強化するとともに、新たな観点からのブランド保護の在り方を検討する」。
24ページに「日本ブランドの戦略的な発信」の必要性を掲げております。
それから、資料4が「コンテンツ、ライフスタイル・ビジネス、観光立国の連携」により日本の魅力を発信しようという考え方でございます。エンターテイメントコンテンツ、それからライフスタイル・ビジネスの中にコンテンツ専門調査会の日本ブランドワーキンググループが掲げてございます。
資料5でございますが、「コンテンツビジネスの振興と日本ブランドの確立に向けた論点」の例として人材育成、海外展開の推進、関係分野の連携を掲げております。
なお、先日開催されました自民党の知財合同会議においても、コンテンツや日本ブランド、いろいろな分野との融合的な取り組みを進めるべきだという御指摘がございました。 それから、今回の検討を機に、日本百貨店協会では日本のファッションビジネスの活性化に積極的に取り組んでいただいておりまして、この度、新進デザイナーブランドの育成に関するアンケート結果が取りまとめられましたので、参考資料として最後に配布しております。これが日本百貨店協会でやっていただいた成果でございます。
事務局の説明は以上でございます。
○牛尾会長 ありがとうございました。これから皆様の御意見に入りますが、その前に資料3の今、事務局長から説明をしました日本ブランド戦略の推進に関してはワーキンググループでおおむね一致をしてこの報告が出てまいりましたので、本委員会の方で特に御意見がございませんでしたら、このワーキンググループの報告をもって本専門調査会の報告としたいと思いますが、御異議ございませんか。
(「異議なし」と声あり)
○牛尾会長 ありがとうございました。では、これをもって本専門調査会の報告としたいと思います。もし、よく読まれて後で御意見がありましたら、事務局長の方へ御報告なりいただければ的確に対応したいと思います。
次に、各委員からの御発言に移りたいと思います。今回の会合は従来のデジタルコンテンツのメンバーにワーキンググループのメンバーが一堂に会して開催するものであり、人材の育成、海外展開への推進、関係分野の連携を始め、今後の課題について幅広い観点から御論議をちょうだいしたいと思います。
最初に、資料を準備していただいた委員から御発言をお願いします。3分くらいということでお願いしたいのですが、初めに依田委員からどうぞ。
○依田委員 では、お手元に資料の6−1の@とAがございますが、経団連のエンターテイメントコンテンツ産業部会で、「知的財産推進計画2005」に向けまして提言をさせていただいております。
その資料は大部にわたりますので詳細は後ほどごらんいただきますが、まず今回2つ、私どもとして重点項目に挙げたいと思っております。それは、ライブエンターテイメントの振興ということを今回掲げております。そして、特にライブエンターテイメントにつきましては集積特区をつくったらどうかということです。例えばシアター、映画館、デパート、ホールあるいはショッピングモール、そしてまたカジノ等を入れまして、ラスベガスのような集積特区をつくる必要があるのではないかということで提案をさせていただいております。
今、私が申し上げましたライブエンターテイメントの振興につきましては資料6−1のAの19ページにございます。これが第1点目でございます。
それから2点目で特に申し上げたいのはコンテンツの権利、情報、基盤整備の促進をする必要があるということを掲げております。これにつきましては、資料6−1の@の「知的財産の活用」というところで、(1)「コンテンツの流通促進」の「二次利用促進に向けたコンテンツ情報提供基盤整備」というところでございますが、特に昨年は映像産業振興機構ができ上がりました。今回はコンテンツの権利情報をあまねく広く映像、すなわち映画、アニメーション、ゲーム等の映像ソフト、音楽、書籍出版、あるいは写真等も含めた権利情報をポータル化して、世界発信ができるような新しい機構をつくりたいということで、平成18年度の政府予算の申請も含めまして進めてまいりたいと思っております。
あとは時間の関係がございますので終わりますが、ソフト、ハードの事業者のより一層の連携であるとか、あるいはコンテンツ流通促進マーク、CJマーク、これはまだ進行が遅うございまして、何とか産業界のみならず政・官・産業界で進めてまいりたいと思っております。以上でございます。
○牛尾会長 ありがとうございました。皆さんの御意見は後で伺うとして、まず問題提起を先に進めたいと思います。続きまして、辻委員どうぞ。
○辻委員 コンテンツビジネスのまとめとかなりスピードが違うものですから、若干、食の関係については遅れた形で発表するのですけれども、今回私が資料6−2で出させていただいております「日本ブラントの確立に向けて」の中で実践的な人材教育という提言をさせていただいているのですけれども、現状日本に技術教育という教育機関はたくさんあります。それが具体的に実践的な教育をされているかどうかということに関しては、まだ検証がなされておりません。その辺のところをもう少し深く議論するべきだと思います。
そしてもう一つ、実践的な教育という話の流れで、3月21日に日本料理を世界の料理にしようという日本料理アカデミー、今のところは京都の団体が中心ではございますけれども、フランスでのワークショップに立ち会ってまいりました。そこでは、日本料理とフランス料理を互いに披露し合いながらテクニックや考え方の相違を確認し合うワークショップという手法を試みてみました。食材を教材に用いた総合学習的方法というのは初めての試みです。異なる料理を担うプロの料理人同士が従来の枠組みを広げて相互研鑽する場となったわけです。
これから報告が上がってまいりますので、後日まとめて出させていただきたいと思いますけれども、これは非常に大きな成果があったと思います。日本料理の職人、そしてフランス料理の職人たちが互いの料理に対する認識がかなり変わったことに注目をしております。今まで、歴史的には個々でそういった啓蒙活動を行うということはあったのですけれども、こういった団体同士でやるというのは初めての試みです。
この日本料理アカデミーの活動は一例にすぎないのですが、これからは従来の枠組みを超えた「学び」の創出を意識するべきだと考えております。単なる知識の教育事業であれば何らかの学校が存在しているということは既に申し上げましたけれども、何を教えるかというわけではなくて、どういう「学び」を創るかという視点で、自発的な「学び」の促進へシフトしていくことが、今後実践的な教育システムをつくるようになると考えています。
簡単ではございますが、以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。続きまして、原委員どうぞ。
○原委員 資料は6−3です。ちょうど3月の初めにパリコレクションへ行ってきたばかりなので、それについて感じたことを話させていただきます。
パリコレ参加の日本人が多く、世界的にも認められているという認識が多くの方にもあるのですが、それが少しずつ変わってきています。山本耀司さんがオートクチュールで発表していらしたのがプレタポルテに戻られたとか、ビッグ3の方たちはショーをしていますが、ずっとコレクションを発表していた中堅の中野裕通、菱沼良樹、田山淳郎さんなどは今回休まれました。そしてここにいらっしゃる皆川明さんが初めてパリコレで、今度はショーではなくて展示会形式のプレゼンテーションを行いました。また、サカイとか、アンティパストという小さなブランドが展示会の発表でそれなりにヨーロッパやアメリカのバイヤーから注目されている部分があるので、パリコレクションがすべてではなくてもう少しいろいろな形式で日本のデザイナーが世界に出ていく形があることが一般にも知られてほしいと思っています。
ただ、今回、私が一番危機感を持ったのは、中国のデザイナーはまだ全然出ていないんですけれども、プレスとバイヤーの数がすごく増えていたことです。今までは、ともかく外国から行くデザイナーは日本人が断トツに10人以上ということで多かったし、日本の取材陣に対してLVMHグループのビッグブランド、例えばルイ・ヴィトンとかセリーヌとかはワンブロックを日本のバイヤーとプレスのために取っていたりして、それが外国勢の中では割といい位置に与えられていた。
ところが、今回は、日本と同じくらいの中国人用のプレスバイヤー席が設けられていました。カメラ席に近い方のブロックがいい席で、モデルさんが出てくる近くというのはすぐにぱっと見えなくなってしまうから悪い方なんですけれども、そういった位置取りなども変わってきています。ヨーロッパのブランドは中国のプレスとバイヤーを重要視しているということを実感しました。
73年からパリコレを取材しているのですが、そのころ日本人の取材は少なく、エルジャポンの登録だったので、フランスのエルと一緒に見ていました。70年代後半に日本からの取材がどんどん多くなるにつれて日本人ブロックというものができた。それから80年代初めに川久保さん、山本さんがパリに出られて、結果的に評価を得て日本のファッションが世界に認められたという経緯はあるので、今、中国からコレクションを発表するデザイナーはいないにしても、そういうふうにプレスとバイヤーがまず外国に出て行ってその情報をどんどん国内に伝えることで、今まで国内だけにむけてデザインしていた人たちとか、買っていた人たちが別の立場で自国のファッションを世界に出そうという気持ちになっていくちょうど転換期というような気がしました。日本ではまだ中国とか韓国に対してクリエーションでは絶対日本は負けていない。中国はただ人件費が安いために製品が安くできるから、生産はしてもらうけれどもそれだけのことだと安心している部分があるんですけれども、とてもそういうことでは済まされないと思います。
それから、常に感じるのは官がファッションということに対してすごく理解が深くて、今回もチュイルリー公園の中庭にテントを立ててビッグブランドのショーがあるとすると、その近くのジュードポンムという公立の美術館も小さなショーのために提供してくれるといった具合に、官のいわゆるファッションに対する支援の仕方が全く日本と違うことを痛感します。
それから、ファッションショーをするというだけではなくて、つい最近、この1月に山本耀司さんがピッティ イマージネ ウオーモ オムというイタリアの繊維産業が主催する大きな見本市で男物のショーをやり、同時に過去の作品80展くらいをフィレンツェのピッティ宮殿内の近代美術館を使って洋服を見せるという作品展をしています。いわゆる彫刻もあり、その横にボディに着せた洋服も飾って、美術と耀司さんの服を同様に見せることで効果を上げている。しかもそれはイタリアの繊維産業の振興のために、ある意味では耀司さんを利用しているんですけれども、そういった試みもなされているということです。そして、その耀司さんの展覧会というのはこの後、パリの装飾美術館でも行われます。
日本では公立の美術館がファッションの展示会などをやることはほとんどなく、またはファッションなんかということで断られてしまうことが多いので、そういう部分でも日本のファッションの位置の低さや、一般的な認知度の問題を感じました。
○牛尾会長 ありがとうございました。
続きまして、皆川委員お願いします。
○皆川委員 将来のクリエーターを育てるために、2点今後するべきことがあると思っております。
1つはインターンシップ制度ですが、私どもでも国内外より随時インターンシップの学生を受け入れておりますけれども、ファッションスクールでは基礎的な知識を土台に、どちらかというと個人の能力を伸ばすということに偏りがちなことが多いので、実際の社会に出て会社の中でのコミュニケーションや取引先とのものづくりのコミュニケーションというものを実体験していくということで、学校での個人の能力の育成と社会でのチームワークとしての体験ということが必要になってくると思いまして、その辺が社会に出る前にファッション産業に関わろうとする学生たちが是非取り入れていくべき時間だろうと思っております。
同時に、それを通して私どもの例えば協力工場に学生たちが体験でものづくりに行きまして、その後ものづくりのつながりとして社会に出たときに、その工場を使って物をつくり始める。学生のうちから社会でのものづくりの工程を学んでいくということがインターンシップでは取れますので、受け入れる側としてもそういう体験を積んできた学生というものは社会に適用しやすいですし、クリエーションというものをものづくりの視点からも見ていけるということがあると思います。
それと同時に、海外からのファッションスクールと国内のファッションスクールの学生たちが同時にインターンシップを受けていきますので、学生レベルですけれども、世界でどのような学生がファッションを学んでいるかとか、世界のファッションスクールの現状ということを知っていくことができるというメリットもあります。
そういう意味でも、インターンシップという制度は、より企業の受け皿を広くして、学生たちも積極的に取り入れていくというシステムが今後ファッション産業では特に必要ではないかと考えております。
2点目ですが、よりファッション産業はクリエーションを発揮して世界に発信していく上で、現在国内の産業の取引の習慣というものが多少海外に比べていびつな部分もあります。具体的には生地のメーカーがアパレルから発注を受けますが、その発注が少しあいまいな点がありまして口頭での発注、それも発注の方法ではあるかもしれませんが、口頭での発注で紙面で残っていないために、後々発注したものが引き取ってもらえないですとか、アパレル側の生産量の変化の都合によって引取りがされないですとか、引取りをされるに当たっても値引きを依頼されるというような、多少受注する側が不安を持ちながら生産するというような現状があります。
そういう声が実際に産地の方からも聞こえてきます。明確に発注と受注というものがされていかないと、ビジネスの信頼関係というものがなかなか築かれていきませんので、そういう意味では日本のファッション産業の中でモラルを持って物をつくっていく必要が今後あるのではないかと思います。製造業と発注する側の信頼関係のないところにいいクリエーションが生まれるというのは考えづらいことですし、世界的にも余りそういうことはないです。実際にもしそういうことがあれば取引が停止するというのは世界的には常識だと思いますし、その辺の商習慣のあいまいさも国際レベルに合わせてきちんとしていく必要があるのではないかと思っております。
資料の方は、今回のコンテンツビジネスとのコラボレーションのたとえとして、昨年11月に青山のスパイラルホールというところで行われたダンス公演についてです。私はコンテンポラリーダンスの演出と空間美術と衣装を担当しまして、映像の方では高木正勝さんという今、若手の映像音楽の作家とコラボレーションをしまして、ダンサーも今、若手で出ている上村なおかという方を起用してダンス公演をしましたが、そのようにジャンルを超えたクリエーションの交流という意味では、ファッションと映像、音楽というものがより密接にクリエーションをつくっていくということが今後必要ではないかと思いますし、それを受け入れるというか、それを発信しようとするクライアントが国内にもどんどん増えていくことが必要ではないかと思っております。以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
なお、昨日まで出席の御予定だったのですが、今日欠席されました日枝委員から資料6−4でコンテンツ専門調査会に対して人材育成と権利処理のルール、教育等についての書面での提起がありますので、御参照願いたいと思います。
これから皆さんの御意見をちょうだいしますが、今日は何しろ数が多いものですから、御発言の方はいつもやっていますように名札を立てていただければ、その順番で御発言をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
では、初めに太田委員どうぞ。
○太田委員 先ほどちょっと皆川委員、原委員とファッションの話が出ましたので、ついでに私も続けてお話をしたいと思います。
私どもの会社は先般、経済産業省の関係でデザインエクセントカンパニーという表彰をいただきました。いろいろな会社が賞をいただいたのですけれども、その中で実は明日、私どもも新入社員を迎えるので、そこでその話をしようと思っております。
要するに、うちにとっての企業価値は何ですかという話をしようと思っているのですけれども、それは創業者の顔がはっきり見えているということと、世界のどこに行っても大体名前が通用するという、この2つが私どもの会社にとっては非常に大きな企業価値であるということを言おうと思っております。
世界的にどこに行ってもイッセイ・ミヤケというのは皆さん知っているし、どんなものをつくっているかというとプリーツをつくっている人だなくらいのことは皆さん御存じだと思うんですけれども、ここに来るまでに実はいろいろな方々の御支援があったんです。
最初に会社をつくるときに、例えば堤清二さんを始めいろいろな経済界や写真家の方々が自前でポケットマネーでこの人に投資をしようかと言ってお金を出した。そこから会社が始まっているんです。それから、当時の東レの社長さんが金を出してやれと随分支援してくださった。そのお陰で、売れないときも西武百貨店さんやパルコさんに売り場もあったし、それから東レさんと一生懸命共同開発してきて特殊な素材をつくって、それで今日のプリーツがあります。
そういういろいろな方々のご支援、コラボレーションというのは、今の世の中ではなかなか得られない。ミヤケの時代はよかったけれども、今の若手の人たちというのはそういういい意味での企業がある種のスポンサー、支援をするという余裕がない。必ず売上げ、売上げと。この百貨店協会のアンケートも、私も百貨店にいたことがあるのでよくわかるんですけれど、言い訳はいっぱい書いてありますが、百貨店がちょっとくらい腹をくくればできることはいっぱいある。今はその腹をくくる余裕が現場にない。だから、ついつい我々のような顔の見えているブランドは入れてくれるけれども、若手の非常に才能があるかもわからないという人たちに対しては売り場はなかなか回ってこない。
昔と今とは事情が違うので、1つには自分たちの国の文化、デザインというのは自分たちの国で育てるんだという意識を企業の方々に是非持っていただきたいし、今日世界的に名を成しているのはそういうご支援があったからだと思うんです。これが1点です。
それからもう一点は、これはコンテンツの皆さんと同じでしょうが、何を置いても教育、人材育成だと思うんです。その手法がやはり日本の教育の仕方が違っていると思うんです。今の日本の教育の仕方では、情緒とか感性というものはなかなか伸びない。もしくは文化というものはどちらかというと受験科目から排除されていますので、ほとんど勉強しなくても大学へ行ける。だんだん人間のゆとりとか心みたいなものを教えていく、もしくはそれを学習していくという場面が非常に減ってきている。
そこに若干メスを入れないことには、ある種の文化を大事にしようとか、こういうコピーはいけないよということがいつの間にか麻痺して、いいじゃないかとなってきている。そこにメスを入れなければいけないし、先ほど辻委員がおっしゃったように、専門的なプロフェッショナルを育てるためには、より本当の実践の教育現場をつくらないことには何も動かないと思います。
○牛尾会長 ありがとうございました。ほかにございませんか。
では、小山委員どうぞ。
○小山委員 小山です。よろしくお願います。何回か参加させていただいて、今回が最後というか、まとめだとしたら、私が一番思うのは、日本ブランドというものをつくるというお話がずっと出ておりまして、国家ブランドなわけです。そうすると、反対にそのブランドはどういうふうに海外から見えているのかということを一度検証する必要があるだろう。必ずニーズのあるところですから、こちらからこれがいいんだと言うとしても、全世界的に日本という国はどんなイメージなのかということも多分大事なことだと思います。
ずっとお話を聞いていて、ちょうど中国と日本のファッションのお話が出たので例を借りてお話をさせていただくと、ミヤケさんが世界的に名前が売れていらっしゃる。私も大好きなブランドですけれども、それから言うとファッションで中国のブランドは何もないとおっしゃいました。
辻委員が、日本料理の京都の人たちですけれども、この前リヨンで講習会をなさったりした。それはフランスの料理人たちは聞く耳を既に持っているわけです。私も10年にわたっていろいろフランスで講習会をやったりしてきましたから友達もたくさんいますし、この国にフランス料理の文化というのは根付いているわけで、だから、反対にここから今までにフランス人が持って帰っている食文化の情報というのはすごいものがあるわけです。
そうすると、実はブランドとして世界の中で非常にいい位置にいるのではないか。フランスやイタリアや、ある種の国家的な非常にイメージのある国の次の場所に既にきているのではないか。ファッションも食も、実は今から若手も育てたりいろいろするでしょうけれども、ある種のイメージがちゃんとあるわけです。
日本だと、世界中で今うまし国というか、日本料理はおいしいんだ。もう一つは、世界的に長寿で、それは多分食べているものが違うんだ。昔はチベットが長生きだと言われましたけれども、今は日本がすばらしい。その原因は日本食にあるんだろうというふうな意味合いで、非常に興味の対象のところにはきている。
そういうことを意識して、何も一から確立することではなくて、世界に向かって非常に有利なステージにいるという位置付けもある。ミヤケさんに続く若手はだれなんだろうということで言えば、だれもいないところから1人行くのとは全く違う状況で、世界の中で日本の枠組みは取れているように思うんです。
そういうふうなことが海外に向かっての話だとしたら、それが日本にも本当に津波のごとく情報を求めたり、あるいはいろいろなニーズがあったときに、果たしてそれぞれファッション、私たちの食も含めてきちんとブランドというのは実は確立されたものである。私もよく各ファッションメーカー、アルマーニさんとかいろいろなところで料理をつくったりしますけれども、そのときに色であるとか、今年のイメージの色とか、いろいろなことに確立されたものがあるわけです。本来、日本という国のイメージみたいなものが確立されているのかどうか。
あるいは、食で言えば日本料理というのは何なんだろうということをきちんとそれぞれの方、私も含めて説明には行ったり、いろいろコラボレーションしましたけれども、やはり国内でそういうものがきちんとできている必要があるのではないかということで、この食の日本ブランド戦略推進の資料3の提言1のところで私がお願いをしているというか、海外の戦略とかいろいろな広報活動も踏まえて、日本の食文化というものに関して絶えず研究したり、考えたり、ステージをつくる、あるいは場所をつくる必要があるのではないかというのが私自身、昔から思っていたことです。
今回この場に出てファッションであるとか、知的コンテンツであるとか、フランスでテレビをひねったらほとんど日本のアニメなんです。ちゃぶ台に座って衣装ダンスの前でフランス語をしゃべっているんですが、日本人の子どもなんです。内容はわからないけれども、絵で見てわかるという時代ですから、多分知的コンテンツも非常に世界の中で認識されている。その3つは実は十分8割くらいのところにきているので、最後のところをどうやるかということを集中的にそれぞれの分野でお話をすれば、コラボレーションも含めて形が広まるように思いますので、食に関しては是非研究所をつくるということを国家的にもお考えいただけることがいいのではないかというのが私の意見です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
それでは、岡村委員どうぞ。
○岡村委員 唯一、製造業代表ということなのでちょっと観点が違うと思いますけれども、3点ほどお話をさせていただきたいと思います。
日本の製造業は他の産業に比較して非常に国際的な競争の中に入っています。しかし結局、その国々の文化を理解しないことには国際競争の中でその事業は成立しないということを特に痛感をしております。そういう意味で、製造業もこの文化の世界をしっかり理解をしていかなければいけない。要するに、国際進出するために相手の国の文化をよく理解をして入っていかなければとんだしっぺ返しがある。
具体的に言えば、中国から白物家電と言われている冷蔵庫、洗濯機があっという間に入ってきて日本のメーカーは全部つぶれるだろうというような話が4、5年前にありましたけれども、4、5年たってみても状況は全く変わっていない。これはやはり中国側が日本の文化を理解していないから、あるいは日本の文化に対応できる製品がつくれないからだと思うんですが、逆のことが日本側からも言えるということです。
少し回りくどい話をしていますけれども、基本的には相手の文化を理解しようと思えばまず自分の文化を理解しなければいけないというわけで、日本文化をしっかりと教育の中に組み込まないと、大きな意味での日本のグローバル化はないというふうな気がしまして、先ほど太田委員もおっしゃっておられたように、教育の中における日本文化の位置付けみたいなものをしっかり確立していただきたいということがまず1点です。
2点目は全く離れた話なんですけれども、コンテンツ産業をこれから振興させようということは、基本的に言えば製造業で言うと生産高をどうやって増やすかということにほかならないわけです。そういう意味で、統計の問題ですね。これが11兆円とか13兆円とか言われていますけれども、その統計の精度みたいなものが本当に我々は確信を持っている状態になっているのかということが心配です。都合のいい統計を取って伸びた、伸びたと言っているだけでは駄目で、業界がこれだけまとまってきたわけですから、コンテンツ産業という枠組みがいいのか、もう少し再分類した方がいいのかどうかは別にして、統計手法を確立するための動きをしていかないと、いつも定性的な話にしかならないのではないかということで、統計手法を確立するような動きを是非お願いしたいと思います。
3番目は電気メーカーとしての提案ということですけれども、御承知のように携帯電話というのはある意味で日本からスタートした文化になってしまいました。もしもし電話という音声と文字情報だけですと、これは既にヨーロッパや中国、韓国が早かったんですけれども、映像を送れるようになってきたというのはやはり日本の文化です。これは、日本のキャリアとコンテンツプロバイダとの共生がうまくいった結果として育ってきた。そこに、流れる音楽にしても、映像にしても、産業として育ちつつある。
驚くべきことに、過去1年で高速の光ファイバーで100メガビット/セカンド、100メガの光ファイバーケーブルの世帯数が一気に日本では2倍になった。200万世帯になったということで、これは世界一なんです。これほど非常に高速で、しかもしっかりとした映像が見られるのは日本が断然トップを切っているわけなので、この機会を利用しないわけにはいかない。コンテンツそのものの振興というのは一番大事なことだと思いますけれども、それをどうやって流通させるかということも同時並行的に進んでいかないとだめだと思うんです。
ですから、恐らくコンテンツの事業の拡大というものと流通というのはシリーズではなくてパラレルに進むべきだということで、たまたま東芝としてやっていることなんですけれども、東電さんと一緒になって、東電さんの光ファイバーのケーブルにDVDの映像をオンデマンドで送るというふうな実験を始めています。まだ500世帯くらいしかいっていないんですけれども、非常にアクセスが強い。これにいろいろなコンテンツ、エンターテイメントのコンテンツ以外にも教育用のコンテンツ、大学が持っておられるアーカイブをどうやって乗せていくのか、あるいはお医者さんが持っている映像をどうやって配信していくのか。それをビジネスとしてどうするのかということを皆で考える時期ではないかということで、3つほどお話をさせていただきました。
○牛尾会長 ありがとうございました。
では、山田委員どうぞ。
○山田委員 農業の立場から、私も大変この有意義な会合に出席させていただきまして感謝申し上げる次第です。4点ほど申し上げたいと思います。
第1点は、これまでの我が国の農業というのは国内の生産販売だけを考えていて、ほとんど海外に目を向けていなかったかと思っております。今回、新たな食料・農業・農村基本計画で輸出や地産地消、地域ブランドを意識した攻めの農政を展開しようとしているわけであります。当然、その場合コンテンツ、地域ブランド、食、ファッション、観光等とのコラボレーションが大変大事であると思っておりますので、先ほど来意見が出ておりますけれども、その仕組みを是非つくり上げていこう、是非つくってほしいと思うところであります。
第2点は、宮崎駿監督の作品は日本はもとより世界中に大変評判なわけであります。実は、そのことを意識したものですから、今朝早く起きて代表作の『となりのトトロ』を改めて見たわけでありますが、びっくりするほどすばらしい作品でありまして、サツキとメイが隣のおばあさんと一緒に収穫したキュウリをがぶっと食べるんですね。同時に、収穫したトウモロコシを大事に抱えて病気で入院している母親を訪ねるわけです。大変感動的でありまして、当然そこに出てくるのは農村だったり、農業だったり、小川だったり、メダカだったり、それから神社だったり、大きな森だったり、生き物だったり、環境だったりするわけでありまして、今回の万博でも『となりのトトロ』が出店されていると聞いていますけれども、今回の万博の意味がそういう面でもわかるのかなと評価する次第であります。
要は、世界から愛され、尊敬される日本をつくり上げていこうというわけでありますから、我が国のよさをこんな形で徹底して伝えられるコンテンツを非常に大事にして、このコンテンツと連携した世界への発信ということを意識していく、これが食だったり農業だったりするのは、まさに『となりのトトロ』ではないかと思った次第であります。
第3点は、今回の資料の中にも子どもと国民のコンテンツ創作の能力をどう高めるかが大事だと整理されているわけであります。全くそのとおりだと思います。子どものときからの原体験が大変重要だと思うわけです。
ところが、総合教育を見直す動きもあるわけで、評価がいろいろあるのかと思いますけれども、しかし、そうではなくて食育とか農業体験等をむしろ充実させていくということの方が長期的には大変大事ではないかと思う次第であります。
第4点は、農業におきましても知的所有権、知的財産というものが大変大事になってきているわけであります。昔は多くの作物は日本も中国から学んできて、更に発展させてきたという部分があるかと思っておりますが、今後アジアの国々や、取り分け韓国、中国との間でもっと貿易が拡大していく。必然的に拡大すると思いますが、その際、日本の知的財産、農業者がちゃんとつくったものをちゃんと生かしていくという意欲を失わないために、また日本の農業生産を壊さないためにも、農業分野におきましても知的財産の保護ないしはアジア全体におけるそういう制度づくりというのは大変大事だと思いますので、その点も国全体としての仕組みづくりや支えが是非欲しいと思っています。
○牛尾会長 ありがとうございました。
では、久保委員どうぞ。
○久保委員 初めての方もいらっしゃると思いますが、ポケモンのアニメの映画のプロデューサーをしております久保と言います。よろしくお願いします。
資料を読ませていただきましたが、ファッションと料理という観点については私は門外漢ですが、素人ながら感じた点は幾つかありますので、それは後でレポートさせていただければと思います。
では、本職のアニメなどのコンテンツの方ですけれども、お陰様で愛知博と連動していますポケモンの遊園地、ここではテーマパークと大々的に書かれていますが、そんなたいそうなものではございません。ですが、休日には4万人くらいのお客様がいらっしゃっておりまして、そういう意味では本博を何とかサポートできているのではないかと思っています。
ただ、何分、半年間オープンしてたたんでしまうものですから、丁寧にはつくられておりますけれども、ディズニーランドのような大かがりなアトラクションではございません。ただ、可能性はちょっと見出したかなというような気にはなっております。
また、今まではなかなか海外からいらっしゃるポケモンファンに見せられるものが本家本元の日本でなかったということです。国内5ヶ所にあるポケモンセンターと呼ばれる専門グッズ店はありますが、ポケモンを好きだ、ピカチュウを好きだという海外のお客さまに対する楽しいサービスはありませんでした。今回、本場である日本でちゃんと楽しめるものができたということについてはとても喜んでおります。
本来、コンテンツに関しては海外進出による外貨獲得と、自国産業の観光産業による外貨獲得というのは同レベルで検討されるべきだと思いますが、それが今までは海外進出ばかりに目が向いていて、観光産業は伝統文化におんぶにだっこだったのではないかという反省があります。海外では人気の日本製のアニメですが、首都圏ではジブリ美術館ぐらいしか観光スポットがないのです。海外のファンは、せっかくクールだと呼ばれている日本に来るわけですが、見るものが全くなくて本当にがっかりしていると思います。少なからず日本製のアニメは外貨獲得と日本文化の再認識という点で大きな貢献をしていると自負しておりますけれども、今後は日本の観光資源としても重要な役割を果たせるのではないかと期待しております。ですから、今回、事務局がコンテンツと観光を融合させていきたいという方向を出されたことに対しては本当に大賛成でございます。
観光についてさらに付け加えますと、日本のライバルはアジアの中では中国、韓国だと思います。中国は上海万博、北京オリンピックなど、国際的なイベントが控えていますが、日本は愛知博以降これといった大きな催事が予定しているとは聞いておりません。このままでは海外の目は自然とどんどん中国に向けられてしまい、日本は無視されスキップされてしまうおそれがあるのではないかと思っております。やはりアジア諸国に負けない観光的な魅力、例えば、依田委員がカジノというようなこともおっしゃっておりますし、岡村委員のおっしゃった教育というものももちろん必要だと思いますが、やはりコンテンツを目玉にした観光資源をつくっていかなければならないと思っています。リニアモーターカーは上海では実用化されているわけですし、ゆっくり考えている時間はあまりないように思います。
その意味では、経済産業省がクールジャパンプロダクトと位置付けておりますロボットやハイブリッド、携帯、燃料電池、またはアニメ、漫画、ゲームなどといったコンテンツをいかに魅力的な観光スポットとなるように街づくりをし、外貨を獲得していくのかということが重要です。都内には超高級ホテルも増えてまいりましたので、外貨獲得のための環境は整備されつつあるのではないかと言われております。ですので、是非とも具体的な政策の御検討をお願いしたいと思います。
それから、統計のことを先ほど岡村委員がおっしゃいましたが、今までの統計に対する日本の対応については私も岡村委員と全く同意見を持っております。日本ではデジタルコンテンツ白書しかコンテンツ関連の数字の出処は見当たらないようですが、海外ではさまざまなシンクタンク企業がいろいろな数字を発表しています。是非ともそういう企業にコンテンツ関連の数字を出していくようなお願いをしていく必要があるのではないかと感じております。
また、昨今、新聞・ニュース等では、放送と通信の融合についての数多くの記事が目につきます。いかにも2者の融合が規定路線であるかのように語られているのですが、実はコンテンツ制作者サイドから見るともろ手を挙げて賛成しているわけではございません。本来ならばコンテンツ専門調査会という名の会議ですから、今後、このような議題は是非とも、議論していただきたいと思っております。残念ながらここ1年ばかり開催がありませんでした。刻々とコンテンツ業界は変化しておりますから、是非とも御検討をお願いしたいと思います。
また、今年度の予算を拝見しますと、どうもコンテンツ関連の部署の予算が大幅に増額しているような印象を持ちません。決められた予算がどのようになるものなのかということを是非とも教えていただきたいと感じております。できれば四半期に一度開催していただけるとありがたいと思いますし、開催に関しては会長に提言してこなかった自分の反省も込めて、是非ともお願いしたいと思っております。ありがとうございました。
○牛尾会長 確かにコンテンツに関してはこの1年間の変化は目まぐるしいものがあって、これを開催したときにはおっかなびっくりの話が当たり前になって、追いついていかなければいけないものがいっぱい出てきている。そこで今、岡村委員がおっしゃった統計が不整備なものですから、いろいろなところに潜り込んでいて自立して顔を出している部分が非常に少ない。自立をして顔を出している部分も縦割り行政の犠牲になって、また3つ4つに刻まれてしまうということがあって、政策を立てるときに非常にそれは困難であります。やはりこれを知的財産本部に最終的にもう一回報告するときに、当然この変化に対応する思い切った仕組み、それから予算等における事業化の問題を考える必要がありますね。
それから、特にたまたまそこまで具体的な感覚はなかったけれども、観光とコンテンツの融合という問題は日本の大変な武器なんですね。それを刻んで売っているだけでそういうものをつくっていない。ひょっとしたら、そういう日本独自のコンテンツだけれども、ディズニーランドみたいなものができるかもしれないんですね。そういう問題について検討する部署がない。
だから、岡村委員の御意見はもっともなので、知財本部でもう一回練って本当に具体的にそういうことを考えるということも是非始めたいと思っていますし、コンテンツ専門調査会も報告書が出た後、しばらく開催されていない間にいろいろなことが起こりました。ずっと続けていれば少しは違っていたと思いますが、この件も、再度検討して責任を持った行動をしたいと思っております。
ほかにございませんか。
○阿久津委員 一橋大学の阿久津と申します。私はマーケティングの専攻で、大学院ではブランド・マネジメントなどを教えています。今、話題に上がりました「統計を整えるべきだ」というお話と、ワーキンググループでしてきた「日本ブランドの価値をどう上げていくか」という議論を合わせますと、国としてぜひとも検討すべき議題があるように思います。もちろん基礎統計をより充実させて取っていくということも大事ですが、今まで取られてきた統計というのは売上高であるとか来場者数といったいわゆる「ハードデータ」でした。しかし、国のブランド価値を知りたいということになると、イメージとか認知率といったもっと「ソフトな」測定の仕方を考えなければいけない。これは既存の統計調査の研究所では非常に弱い部分です。新しいニーズに合ったデータをとっていくためには、マーケティング分野からの知見を使って、心理的な評価というものをよりよく反映させた統計を、日本国内はもちろんのこと、世界の主要な地域でとり始めることが、今、求められているのではないかと思います。新しい取組には新しい調査やデータが必要であるという意識を関係省庁がきちんと共有し、日本ブランドの構築という目的にふさわしい統計調査機関や研究所に対して十分な投資をしていくということが、国として必要になってくるかと思います。
○牛尾会長 ありがとうございます。大変に有益な御意見だったと思います。
では、熊谷委員どうぞ。
○熊谷委員 では、デジタルコンテンツの制作者として一部考えたところを申し上げたいと思います。
先ほどの皆川委員のコラボレーションのご実績ですとか、また山田委員からトトロのお話などが出ておりましたけれども、ファッションや食といった日本文化とデジタルコンテンツの結び付きに関する期待というか、高まりは、私どもコンテンツ制作サイドにもございます。
ただ、そういったコラボレーションや新しい発想の具現化におきましては、「出会い」の少なさがネックになっていることは確かだと思います。今こうしてこのように、皆様と席を共にさせて頂くことで、皆様の御活動の内容ですとか、御活躍ぶりなどを伺うことができるのですが、こういった結び付きをもっと積極的に、活発に行っていけるような場であるとか、またはそういった機関などが今後組み立てられていくと、アイデアをお持ちの方々とコンテンツ制作者の結び付きを通じ、新しいコラボレーションなども実現していくのではないかと思います。
例えば、自治体などが文化行政の中でアウトソーシングというか、何か具体的に企画を立ち上げて我々同士を結び付けていただくような発想があってもいいのではないかと思いました。
「出会いの場」というところで2点目を申し上げたいんですが、出会いの場の少なさというか、制作者同士の交流がまだまだ少ないデジタルコンテンツの世界の中で、今後は大学ですとか、研究機関等とのコラボレーションに関しても、もっともっと拡大していけたらいいのではないかと思っている次第です。
一部、企業と大学研究者の方と結び付いて、例えば「さきがけ」ですとか「クレスト」といったような研究支援制度を活用して共同研究をするような場も用意されていたりはするんですが、なかなかいいお見合いの方法は確立しておりません。私ども実業の人間からしてみると、どういった研究をされている先生方が世の中にいらっしゃるんだろうか。こういったところの分野を一緒にコンテンツ開発のために生かしたいんだけれども、皆さんどの辺りで成果を上げていらっしゃるのかというところを体系的に知るようなデータベースがございませんので、できればこういったところに関しましても、何らかの関係省庁等の御支援などもあると、より活発化されていくのではないかと思います。
最後ですけれども、先ほど岡村委員の方からもモバイル携帯電話の映像の分野のお話がございましたが、ゲームというコンテンツに関しましても、国内においては据置き型のプラットフォームからモバイル型のプラットフォームに拡大しつつあります。
ただ、このモバイルやネットワークの今後に関しましては、コンテンツを提供する側にとっては、セキュリティの問題ですとか小額課金の問題が山積しております。これらの課題がクリアされているのが携帯電話ですが、ユビキタスというワードで言うとまだまだいろいろなプラットフォームがある中においては、電話は成功事例の1つでしかありません。
ただ、制作者サイドとしては、より広い間口を求めていて、そこでは確実にセキュリティや小額課金の問題、インターフェイスの統一ですとか、解決しなければいけない課題がございます。そういったことがばらばらに物事が決まっていくのではなくて、ルールが確実に一本化されて、ひいてはその消費者、エンドユーザーの方にわかりやすく使いやすいものとして普及していけば、そこに乗っていくコンテンツ側にとっても仕事がしやすいというか、アプリケーションを提供しやすい世の中になっていくのではないかと思っておりますので、そういったことに関しても課題として御認識いただけると非常にありがたいと思います。以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
続きまして、浜野委員どうぞ。
○浜野委員 3点ありまして、小山委員とか辻委員のような海外に出向いて日本の文化を教育したり広めるという努力だけでなく、一方で海外から日本に来ていただいて学んでいただいたり、見ていただく努力も必要だと思います。
1997年のアメリカ経済白書には、アメリカの大学への留学の授業料支出は、トウモロコシか小麦のアメリカの輸出額に匹敵すると書いてあります。留学生は専門の教育だけでなく、アメリカのウェイ・オブ・ライフを持って帰り、政治家、経済人、文化人になり、その国でアメリカのライフスタイルや価値観を広げる手段であるとも書いています。
アメリカ政府のように、そういう意図はなくても、日本で学ぶための受け皿が必要だと思います。最近、私は上海のアニメーションのプロデューサー20人と韓国のプロデューサーの方十数人の研修を頼まれました。私の学生よりよほど熱心で、日本のアニメーションのことを学びたいという意欲の高さに驚きました。料理とかファッションなら、なおのこと日本で学びたい方は大勢いらっしゃるはずです。残念ながら大学は動きが鈍いので、小山委員がおっしゃっているような教育機能を持った研究所、また久保委員がおっしゃるような展示施設も兼ね備えた場が必要ではないかと思っております。
ひとつの例ですが、エッフェル塔の設計者エッフェルさんのお孫さんが今、阿佐ヶ谷でアニメーションを作っています。パリ万博のシンボルであるエッフェル塔の設計者の子孫が杉並に住んでアニメーションを作っている。そういった日本に来て、学んだり日本でしかできないことをしたいという人たちを支援できる場や制度があればと願います。
それとの関連で、日本のマンガやアニメーションを海外に紹介する努力をしていただいた方がたくさんいるのに、放置されたままで、感謝の念を公に表明する機会がありません。外国人の努力に報い、日本に招いて顕彰する制度がほしい。それが1点です。
2点目は、里中先生もずっとおっしゃっていますが、ポップカルチャーは長い間ないがしろにされていたのでアーカイブが充実していなくて、見たいとか研究したいと思っても何もない。今度、アニメーターの技能テストを技能五輪に入れようということで、私も関係者に意見を聞いて回りましたが、「そんなことをやったら韓国に負けるよ」とか、「恥をかくだけだ」と言われました。その理由は、職人としての日本のアニメーターの技量が伝承なされていないということで、技能の記録とか、研修方法についても資料が何もない。ですから、作品だけではなくて、技芸のアーカイブも必要だと思います。例えば手塚先生を中心とするトキワ荘で日本のストーリー漫画が開発洗練されてきた経緯も、具体的な資料は散逸しそうです。時間が経過して消えていく前に、公的な部分でしかできないアーカイブをつくっていただきたいというのが2点目です。
3点目は、先ほど出たデータです。統計データを充実するということは当然ですが、戦略を立てるためには、小山委員がおっしゃっていたように、海外での自己イメージのデータがないと戦略が立てられません。有名なイギリスのレポート「トレードマーク・ブリテン」
なども、自国イメージの把握から出発しています。原委員から今お話を聞いて、「なるほど、そう思われているんだ」ということがわかるわけですが、体系的、定期的に自己イメージを把握する努力も必要なのではないかというのが3点目です。以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
○三國委員 今の浜野委員のご指摘の件ですけれども、実際に四ッ谷のうちの店にも月に4、5件、世界中から研修したいと毎日のようにファックスが入るんです。現実問題として、海外では1年間のいわゆる研修ビザというのを出すんですが、日本だけは出せないんです。観光ビザでしか入れない。それで、お給料を支払ってはいけないんです。やはりお金をあげないと暮らせない。
それは行政と政府にお願いなんですけれども、そこを改善してもらわないことには、世界中から来る人に対応できないんです。日本料理でもそうだと思いますけれども、3か月の観光ビザでお給料は絶対支払ってはいけない。唯一いいのは先生、いわゆる料理長とかは日本人に教育をするからそれは認めましょうと。ただ、それですと今、言った底辺の交流というのは全く不可能です。ここを改善しない限り、海外の方がそれは窓口が広いので是非それは政府として考えていただきたいと思います。
それで、行政と政府にお願いがあるのですけれども、私は今50歳になったばかりなんですけれども、20年前の30歳から40歳に世界中でミクニフェアというのを打ったんです。そのときに世界中からオファーが入ったのは、私はフランス料理の人間なんですけれども日本人だからです。フランス料理をニューヨークだとか、ロンドンだとか、タイとか、いろいろなところでつくるんですけれども、彼らは私がつくるフランス料理を日本食だと思って食べているんです。それで、すばらしいと。ですから、最近私は言うんですけれども、日本人がつくる以上は日本食なんですね。そうやって逆に海外は見ているということです。それを自分の中で開き直って、おれは日本人だということで、それで世界中で認めていただいたんです。
前回から私はしつこく言うんですが、世界の人は4味しか持っていないんです。私は小学校3年生、6年生の授業を持っているんですけれども、甘い味、酸っぱい味、しょっぱい味、苦い味の4つですが、日本人だけが5味、いわゆるうまい味、うまみというのは日本人だけなんです。
前回も申し上げたように、日本人はすべて既にブランドなんですね。日本人というものが既にブランドで、小山委員もおっしゃっていましたけれども、世界中がもう認めているんです。それを我々が知って戦略的にやっていくべきだろう。
それから、私も海外に出ていましたが、日本政府にフランスでメイド・ブリッド・フランスとあるんですけれども、これは職人すべてに国家の称号を与えるんですね。MOFと言うんですけれども、それを是非、日本国家最優秀職人賞、MOJですが、これを検討しない限りは我々は絶対に世界では闘えないです。称号がないと、世界の人はそんなのは相手にしないですから、国家の日の丸ですよ。昨日サッカーは勝ったというか、勝たせていただきましたけれども、やはり日の丸を持って行かない限りは世界中だれも認めません。このMOJなるものを是非国家で検討していただきたい。それは職人さんすべてに対してです。漁師も皿づくりもすべてそうです。
それから、文部科学省様にお願いがあるのですけれども、食育という法案がまだ通らないのですが、栄養士さんには非常に一生懸命なんですけれども、やはり料理人とか生産者にもっと目を向けてほしい。今ゆとりの授業というのがあって私は小学校3年生とか小学校6年生の授業に行くのに、まだ予算も一切出ないのでボランティアです。皆やりたいんですけれども、お金が出ないので誰もできないんです。もっと料理人だとか生産者、農家の人が、自由に学校に出入りできたりとか、そういうゆとりの授業をしていただきたい。
農林水産省さんには、生産者には非常に寛大なんですけれども、つくったものを生かすも殺すもやはり料理人なんですね。もっと料理人とか料理店にもう少しいろいろな配慮といいますか、目を向けていただければ非常に活性化するかと思いますので、お願いしたいと思います。
○牛尾会長 MOJはワーキンググループでこれから作業を始めますので御安心ください。できるかどうかは知りませんけれども。
○辻委員 浜野先生のおっしゃった海外の料理における点で、三國委員のお話と同じになるんですけれども、実際に先ほど申し上げました日本料理アカデミーが、現地リヨンで一緒にやったフランス人の料理人さんたちとで年間これから5名ずつ、これは非常に数は少ないんですけれども、先ほどのビザの問題もありますが、これから毎年5名ずつ日本料理店で約1か月弱の研修を行っていく計画があります。
料理人には学ぶ時期というものがありますので、マネジメントのこととか、日本料理店の経営、お金の回し方、動かし方、運営方法と食材の勉強等、技術・・・、それぞれの興味に合わせてシェフクラスの人たちが学んでいけるという具体的な事業の実施が確定しております。
そしてもう一つ、これは阿久津委員に是非ともお伺いしたいのですけれども、文化をブランド化するというときに、特に日本の食文化というのは非常に裾野が広くて、たとえて言うと頂上が高い富士山のようなものなんですけれども、この頂上の高さがあって始めて裾野が発展する。日本の食文化というのはこれがあるわけです。裾野の広さと頂上の高さ、これはどちらも否定するべきではありません。
ただ、日本ブランド戦略をつくるに当たって、日本国内で海外に発信するのに向けてもう少し的を絞って、どの山の一部を顔として世界に発信するべきなのかということを、もう少し決めてから戦略を練らないと、現状ではもう超高級料理店からトンカツ、寿司、そば、すべてが日本の食文化である。これは否定してはいけないんですけれども、まず的を絞ってから戦略を考えるべきだというのが私の意見です。以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
では、重延委員どうぞ。
○重延委員 テレビマンユニオンの重延でございます。
今日は、ワーキンググループが広がって、とても私としては楽しいというか、やはりこれが正しいと思いました。
ただ、今まではコンテンツビジネスの方の専門調査委員会が進んでいたわけですけれども、通底するところはあると思っております。
今日は4点ほど簡単にと思いますけれども、1つは放送のコンテンツということからすれば、実はコンテンツ振興法というコンテンツの発展のためにつくられた法律があります。これは私はすばらしいものだと思いますけれども、よく見ると、放送番組というのが抜けていたんですね。最初、私はちょっとびっくりして、映像ソフトの中で放送番組が一番お金を動かしていたり、使っていたりするわけですが、これが抜けているということは、何だろうかとしばらく考えて、今はこれは決して悪いことではないという気がしております。
まず、放送番組にはどちらかというと流通に向かっているコンテンツは極めて少ない。それから、国際的コンテンツが少ない。そういうことへの警告かもしれないというのが1点です。これは現在的な判断ですが、もう一つは未来的に考えると、放送というメディアはもっと広がりのある、ここにあるすべてのことに関わるメディアである。そういうぐらいにとらえるから、あえて分類して書かなくてもいいんじゃないか。そういうとらえ方をしようと思いました。
むしろ後者の方に私は今、動いておりまして、そういう意味ではあらゆること、映画にもゲームにもアニメにも漫画にも音楽にも演劇にも食にもファッションにも、あるいは職人の文化、すべてに関わるという広がりのあるメディアでとらえていくのがいいのではないか。そういう分析で放送というのを語るべき時代がきたということは、とてもよいことだと思っております。
先ほども少し申しましたが、今、放送が非常に現実的に揺れているということですけれども、これは一つの過渡期であって、放送が数十年間やってきた歴史がある意味では幸せな歴史だったんですけれども、今は科学技術の変化とか社会の変化ということを考えると変わらなければいけない時代であって、そういうことに向かって幾つかのことが起き始めたという意味では今、変わるべき時代ということに遇しているのではないか。今の現実に出会っている事々は実は放送の本命のことではないんですね。放送の本命である、放送の目的とか、あるいは価値ということについて外れたことで今、問題が起きているわけです。そういう意味では、やはりこの委員会は本命である価値、それからコンテンツとは何か、そういうことに向かっていくべきではないかと思っております。
そういう意味では、放送界が変わっていくことで、今回のコンテンツビジネスの発表の中には最初のところに放送番組委託契約の慣行改善への取り組みと書いていただいておりますので、その意味ではとてもうれしくは思いますけれども、実はこれが消えることが一番の目的ではないか。こんな言葉がなくてもいいというぐらいになるところが出発点だと思います。
日枝委員は今日いらっしゃらないので大変申し訳ないのですが、日枝委員の提言を今じっと読んでおりまして、人材育成とか教育啓発にとてもいい意見は書いていらっしゃるのですが、1点だけ、これは民放連の日枝委員の御意見と考えるんですが、権利処理ルールで、やはりどんな作品もコンテンツとして意味を持つためには、流通ルートに乗せて制作者並びに政策に関与した諸権利者に適正なリターン、報酬を返すことが重要だと書いてあるんですね。ここは、前は返さなかったことよりはよくなったんですけれども、返すのではなくてイコールパートナーとして実際に配分し合う時代に向かうことが一番重要な時期であると思うので、返すのではありませんという感じが少ししました。
日枝委員のいないところで、今だから言えるかもしれませんけれども、一言申し上げておきます。また反論がありましたら、いつでも答えるということでございます。放送についてはそういうことなのですけれども、やはり放送の中にもいいコンテンツが生まれることが必要で、私はこれは冗談だと言いながら、もう一つぐらいチャンネルが要るぐらいのことでなければ、本当に国際的あるいは個性的番組は生まれないのかという気持ちを持っております。ただ、そんなことを言うとメディアを知らない男と言って怒られそうなので、これは強くは言いませんけれども、やはり現存の放送局でもいい番組、個性的番組、それから国際的流通になる番組、そういうものをつくる意志というものは持ち続けていただきたいと思います。
あとは簡単に申し上げますが、人材についてはプロフェッショナルがそういう位置に立っていけるような学校教育とか、そういうものがあっていいと思いますが、もう一つはアマチュアの方々が早く子どものうちから触れるということで、特にデジタルに関しては早く触れる。そういうような環境をつくっていくことがもう一つの教育ではないか。これは日枝委員もおっしゃっていますけれども、育成されるだけで育つものではない。やはり自分が築くような環境にクリエーターを持っていくことが重要という点ではないかと思います。
それから、国際性に関しては私は非常に日本というのは国際性が本来あるものだと思っているのですが、なかなか広がらないという思いを持っておりまして、これが広がる道は皆さんたくさんの方々が広める道を既にお話になっていますから余り話をしませんけれども、私としてはもう一つアジアということをかなり重視していくべきではないかと思います。非常に心理の近いアジアということですね。
ただ、アジアは御存じのとおり排日的な感情というものが教育の中で生まれている。これは日本の戦争責任の問題でもあると思いますけれども、このコンテンツ流通という言葉だけではなくて、ある意味では文化の形で交流できる道をもっと強く考えて、過去の責任に対してそれを次第に超えられるような民族間の交流というものを考える。それも一つの重要な課題ではないか。これは短期的なものではないと思いますけれども、実は海賊版を阻止していくという動きの中でも、文化を理解すること、民族を理解することの中で進めていくというのは、実は大きな流れではコンテンツ流通に寄与するものではないかと思いました。
最後にコンテンツですけれども、日本の国際流通に関して私は割といいものがあるのではないかと思っております。それは伝統的なよさというものが1つありますけれども、私、日本人のDNAの中に非常に繊細な感覚があって、それは世界にないものだと思っているんです。繊細な感覚は伝統の中にもたくさんありますけれども、場合によっては、例えば、着メロなどを築いてしまう感覚とか、それから食文化の専門家を前に話をすると恥ずかしいのですが、回転寿司などというアイデアが生まれてくるとか、それからカラオケなどというアイデア、そういうものはあるサービスへの心理だと思うんです。そういうDNAを日本人は持っているのではないか。そういうことを広げていくということに日本人の価値があるので、伝統とともにそういう日本人の繊細な感覚というものを再認識して価値を広げるという気がいたします。
私のある種の結論は、ずっと話していると、最後にコンテンツとは何だろうと思ったら、やはり人間ではないかと今、思っているんです。あるいは、日本人そのものではないかと少し思っておりまして、そういうことに向かうような理論づけを私ができれば、より貢献できるかと思います。
○牛尾会長 あと10分ぐらいで4人から手が挙がっていますので、大体2、3分でお願いします。
まず久保利委員からどうぞ。
○久保利委員 久保利でございます。今、重延先生から非常に志の高いお話を承って、最近はレベルが低い話が実は私の周りで多かったものでございますから、金、金と言わない話をお聞きしまして大変すがすがしい気持ちになりました。今日は皆さん、志の高いコンテンツ、そしてそれを人間という切り口でお考えになっていらっしゃるので大変うれしい気持ちがいたしました。
私ども弁護士はエンタメロイヤーズネットというものをつくりまして、今NPO化を考えようということで検討を進めております。そういう中で、さはさりながらやはりクリエーターも、そして放送局も、さまざまなファッション、あるいは食品に携わる方々も、先ほど三國委員はおっしゃいましたけれども、ビザをもらって、そこでお金をもらわないと皆、生きていけないという部分があって、お金の話というのはやはり無視ができない。
それから、お金の中でも国庫の財政負担という税金の問題よりは、私は民間の活力といいますか、民間が工夫をしてお金を生み出しながらそれを利用していく。これが必要なのではないかと考えます。決して金もうけのためのコンテンツではなくて、いいコンテンツをつくって人々が愉しむためのファイナンスというスキームが必要なのではないか。
決してお金が目的でも何でもない。すばらしい日本、すばらしい日本のカルチャー、文化をつくっていく。そのためにどうしたらいいかというときに、実は今日お集まりの方々の中でも、あるいは我々がエンタメロイヤーでいろいろ苦労している中でも、なかなか本当の意味の金融についてのプロフェッショナルがいらっしゃらないわけです。例えば信託ということを1つ取ってみても信託銀行、あるいは証券会社の中で本当にコンテンツに関するファイナンスシステム、信託システムというものをどこまでお持ちなのか、どこまでつくっていらっしゃるかというと、実はその部分がまだ米国などと比較するとかなり弱いわけですね。
そういう意味で、自分の持っているすばらしいコンテンツを活用しながら、かつ資金化していける。決してお金もうけのためではなくて、それを次のコンテンツに回していく活用のためのスキームをつくらなければいけないのではないか。それは恐らくファッションであれ、食であれ、皆、同じことなのではないかと思います。
そういう意味で、志の高いお話を聞いて私も力強く思う一方で、やはりそこを支えるインフラとしてのそういうリーガル、そしてファイナンスのシステム、これについても更に研究を重ね、このコンテンツ委員会でもっとそれを取り上げていただいてもいいかと考えました。やはり頭脳とハートと、そして胃袋という辺りも十分考えながら、このコンテンツそのものもそういう視点で考えていく必要があるだろうと考えました。以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。
では、角川委員どうぞ。
○角川委員 資料4に、エンターテイメントコンテンツとライフスタイル・ビジネスと観光立国、これを3つ合わせてもっと戦略的なことができないかということが出ております。
私は、エンターテイメントコンテンツを立体的に活用することで観光立国の日本というものが相当強化できるのではないかと考えております。その例として、少し古いですけれども、映画で言えば、岩井俊二さんの『ラブレター』で、台湾の人たちが北海道の小樽に押しかけてきて観光に役だったということを聞いておりますし、また最近では冬ソナで日本の中年女性の方たちの間で韓国への旅行ブームが起こっている。これは放送ソフトによる影響だと思います。映画ソフトでは北海道、放送ソフトでは韓国、出版ソフトで言えば『ダビンチコード』が売れてパリのルーブル美術館に日本人も世界からも観光客が押しかけているという話を聞いています。
そういうことを考えますと、観光立国日本ということで1,000万人という目標を国が立てておりますけれども、それが今600万人までいったのでしょうか。あるいは、愛知万博で700万人までいくという話ですが、それでもまだ300万人が足りないわけです。そういうことで、もっともっと日本のアニメコンテンツ、映画コンテンツで、アジアから観光客を引っ張ってくるというテーマを立てて、いろいろなアイデアを日本じゅうから集めてみるというのも一つの方法ではないかと思います。
そういう中で、先ほど依田委員から経団連の資料の6−1Aで、ライブエンターテイメントで集積特区をつくったらどうかというお話もございました。私もロケパークという構想をもっており、これは経団連のエンターテイメントコンテンツ部会でもお話があったと思います。東京という場でもっとロケーションとして、使いたいと世界の映画人が思っていますが、なかなか東京ではロケーションを実現できないんです。例えば、『踊る大捜査線』という映画が大ヒットしましたけれども、あれはレインボーブリッジで撮影されたということがなかったわけです。京都の小さな橋をうまく使ったというのが最後のおちだったそうですけれども、そういうことからもロケパークを集積特区でつくるとか、いろいろなことが考えられると思います。
そこで、せっかくこういうふうにして三題噺ではありませんけれども、エンターテイメントコンテンツ、ライフスタイル・ビジネス、観光立国という3つのテーマを1つに合わせるようなアイデアを是非皆さんで考えていただけたらいいのではないかと思いました。
○牛尾会長 阿久澤委員、どうぞ。
○阿久澤委員 時間のないときに申し訳ないですが、1つだけどうしても言っておかなければならないと思いましたのは、何人かの委員の中から学校教育についてこうしたらいいのではないかというようなことが言われておりました。
実は、私は伝統工芸品産業振興協会という製造業でございますが、そういうところでは、経済産業省さんの予算をいただきまして小学校、中学校の生徒に伝統工芸の職人が赴いて、出前講座と言っておりますが、出前の授業をさせていただいております。現在、全国で1年間に500ぐらいの小中学校に行って、近隣の技術屋さん、職人さんが実際につくるところを教えてあげて、あるいは体験もさせてあげております。
これは大変好評でございまして、予算も全部なくなってしまって今たくさんお断りしているというような状況でございます。こういうことによって、子どもに工芸品に親しんでもらう。本当にいいものと、簡単なものとの違いをわかってもらうというようなことをしております。このことはどうしても言っておかないと、経済産業省さんから怒られるかと思いまして一言、言わせていただきました。
それから最後にもう一言、言わせていただきます。先ほど岡村委員の方から大変いいお話を伺いまして、確かに私ども日本ブランドということを問題にする場合には、日本の文化を根底にしたものをブランドとしていかなければならないだろうということをまず1番に考えます。そして、そのときにもちろん自分の国の文化を無視しているような日本ブランドというものを打ち出していくと大変笑い者になるのではないか。しかし、この場合に我々としては、では日本の文化とは一体何なのかということをきっちりつかまえておかないと非常に危ない議論になるのではないかと思います。
その文化を表現する場合にはツールが必要になります。先ほど岡村委員はツールの話をされておられましたが、これが食の分野では多分、素材であり、あるいは伝統工芸品であり、あるいは衣料の分野では素材である衣料といったものが実際に素材産業としての衣料部門である。これは染め織り、絞り、刺繍、いろいろあるわけですけれども、そういったものが非常に重要になってまいります。これにつきましても、同時並行的に振興策を図っていく必要があるのではないかと思います。時間をいただきましてありがとうございました。
○牛尾会長 では、阿久津委員どうぞ。
○阿久津委員 先ほど辻委員の方から日本ブランドの構築の方法について意見を求められましたので、ごく簡単にではありますが、述べさせていただきます。
強いブランド、魅力のあるブランドの構築プロセスを長いこと研究してきて思いますのは、ブランドを構築していくときには、まず作り手の方で、ブランドがどうありたいのか、またはあるべきなのかということをしっかり考えていくのが、非常に大切だと言うことです。この点については、既に多く委員の方々から同様のご意見をいただいております。
ブランド研究では、作り手が考えるブランドのあるべき姿をブランドアイデンティティと呼びます。作り手が考えるといっても、独善的になってはいけませんから、現実を見据える必要があります。そのため、ブランド・アイデンティティを作っていく際には、今現在ブランドが周囲の皆さんからどのように思われているのか、これをブランドイメージと呼びますが、これをできるだけ正しく、明確に認識することが大事です。ここで周囲の皆さんというのは、ブランドを知ってもらいたい相手です。企業であれば、顧客や従業員、株主、地域コミュニティや世間一般といったものになります。国の場合もそれほど変わらないでしょうが、その対象はもっと広がるでしょう。
これまでのブランド研究から、ブランド・アイデンティティは、コアと周辺に分けて構造化できると考えられています。今までの皆さんのお話を伺っていて思うのは、日本ブランドの場合、コアは、日本人の心、伝統といったところに根ざす文化を中心に形成されている。一方で周辺は、伝統文化の革新であったり、ポップカルチャーであったり、時代とともに変化するものから形成されている。伝統芸術に対してモダンアートといったような関係ですね。最近の日本はこうですよ、これからの日本はこんな風に変わっていきますよというものが周辺にあるということです。周辺にあるものは必ずしも全く一貫したものでなくていい。
ブランドというものは本質的に二面性、多面性を持っているものですので、例えば先ほど日本人は繊細だというお話がありましたが、繊細かつ大胆という方が単に繊細というよりも、より魅力的に感じられるかもしれません。国というものは、それだけ複雑なものです。そういった日本の二面性、多面性といったものを、混乱させないできちんと伝えていくためには、アイデンティティに明確なコアがあって、その上で周辺にいろいろな面があるというような出し方をしていけばいいのではないかと考えます。そして、コアはどなたにもきちんとお伝えするように努力する一方、相手の興味や関心に合わせて、周辺アイデンティティのどの部分をコミュニケーションにあたって強調していくかを戦略的に個別判断していけばよいのだろうと思います。
一応指名いただきましたので、非常に簡単で大雑把な説明ではありますけれども、お答えさせていただいた次第です。
○牛尾会長 時間が超過していますけれども、最後に土肥委員どうぞ。
○土肥委員 コンテンツビジネスの振興と日本ブランドの確立に向けた論点ということでお話を伺っていたわけですけれども、やはり得意なそういう分野について有限な資源を投入する。得意であるところの分野の優位性を確保していく。これは戦略として従来からあるところでございまして、コンテンツビジネスというところで見ていくと日本で優れているところが多々認められるわけでありますので、ここを重点的に押し詰めていくという計画に賛成でございます。
それで、やはりコンテンツの全体的な量と質の向上、この両面からの施策が必要になると思います。その場合にコンテンツの創造、それから利用、流通、それから保護、従来はこの三角形といいますか、トライアングルで議論されていたと思うのですけれども、やはりもう一つ保存という観点、つまりコンテンツの保存というものも創造と同様に重要である。こういう観点を入れる必要があるんだろうと思います。
これらの分野について、すべてにおいて人材が必要であるということになります。その人材に関しまして、従来はこういう部分はマイスター制と言いますか、そういう人材の育成の仕方がされていたと思いますけれども、国の政策として考える場合は効率性というものが当然求められてくるわけでありますので、最小のコストで多大な成果を上げるための教育システムをつくり出すことが求められます。
この教育システムをつくり出すために、やはり魅力ある分野にするために、ちょうど今、18歳人口というのは十五年前に比べれば相当程度減っている。60%程度にまで落ち込んでいるわけですね。それで、教育機関も非常に危機感を持っている。こういうところは大いに考えていい分野であって、そこに教育支援を更に投入していくということは、よい教育プログラムを作ってもらって、その汎用性を利用して安いコストで人を育てていく。これについて、ほかから見ても、あれはいいプログラムだと思えばそれをまた取り入れていく。そういう人を育て上げる循環的なシステムをつくっていくことが必要であると思っております。時間のない中、発言の機会をいただき、ありがとうございました。
○牛尾会長 どうも時間がない中、申し訳ありませんでした。
きっとまだお話されたい方はいっぱいあると思うのですが、時間がきましたので討議を終わりにしたいと思います。本日の議論の内容は、これから日本ブランド戦略について知的財産戦略本部に私から報告をして、2005年度の「知的財産推進計画2005」というものに今いろいろとあった施策や予算を込めて検討をされる題材を出すわけであります。
今日お話が出ましたエンターテイメント関係のコンテンツと、ライフスタイルビジネス関係のコンテンツと観光立国というものがあって、具体的にはトライアングルになってもう実は作業が進んでおりまして、幸か不幸か3つとも私が座長をしております。それで、観光立国は大変なスピードで今、JR東海の須田前会長と島田晴雄さんを軸にしてフォローアップ委員会がどんどん進んでいます。
それで、このデジタルコンテンツ、エンターテイメントコンテンツに関しては1年前に準備したときと本当に様変わりに様子が変わってしまいまして、いろいろなことも起こって、近代化とか、合理化などというものも吹っ飛んでしまうぐらいに周辺が変わってきており、未来の展開も相当変わってくると思うので、ここはもう一回新たなコンセプトで引き続き作業したいと思っています。行政の方も小さいコンセプトに固まらないで、一回報告した後にもうひと回り大きなスケールで、もっと幅広くさらに議論を重ねていきたいと考えております。
IT戦略にも若干関係する部分があるので、IT戦略本部ともよく連携を取りたいと思いますし、コンテンツの新しいビジネスモデルの検証、あるいは必要な業界の商慣習や法制度についても改革の検討を再開したいと思います。時代のスピードに追いついていくためにスピーディーに変化に対応していくことが必要であると思いますので、また御出席をお願いすると思いますが、是非2005年度もよろしくお願いします。
今日はどうもありがとうございました。
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