○熊谷委員 先ほど関根委員の方からも、3か年を前倒しにという御意見をいただきましたけれども、まさに私たちはこのように半年間議論を重ねている間にも、韓国などにおきましては、コンテンツ産業を中心にした雇用拡大を促進する政策ですとか、そういったことを次々と打ち出しておられます。私たちも力を入れて急ぐ必要がありますし、そのためにも、ここまで議論してきた貴重な内容をなるべく早く精査して、実行に移していく必要があると思います。
先ほど税制の問題がいろいろな方々からお話しされておりますけれども、ブロードバンド時代における事業展開の促進ということで、改革9にも謳われておりますが、このブロードバンドの問題に関しては、税制と少し絡んでくる事実もございます。
というのは、ゲームコンテンツなどダウンロード型のコンテンツに関しまして、制作費をかけて投入したコンテンツが、5か年の定率の償却期間を経なければ費用化できないというような税制上の問題がございまして、これが我々コンテンツ制作者にとっては非常に重荷となっております。
つまり、つくったものをサービスとしてユーザーに提供し始めた時点では、すべてを費用化することは難しくて、5年をかけて少しずつ費用化していきなさいというようなことがございまして、そういったことがある種の阻害要因というか、ダウンロード型のコンテンツをブロードバンドで配信していくというビジネスを、なかなか難しいものにしております。
したがって、こういったブロードバンドによる事業展開の促進というのが必要になるというところでは、まず税制上の改革についても、御検討いただきたいと思います。
また、今回の報告書の第1部コンテンツビジネス振興政策の基本方向ということで、3に「集中改革を実施し、事業規模を上昇傾向へ」という目標が掲げられております。ここでは、コンテンツビジネスの振興を図るため、コンテンツの創造サイクルの活性化が重要とありますけれども、まさしくこのコンテンツの創造サイクルをいかに活性化するかといった具体的な施策が求められていることと存じます。
1つには、第2部の改革2に「資金調達手段の多様化」というのが謳われておりますけれども、勿論、これは非常に重要な課題でございます。ただ、一方で私たち制作者にとってはコンテンツ制作に投資した資金を回収することが、資金調達にもまさる事業拡大の道でございます。コンテンツ制作者の資金回収のための環境整備をする施策としては、勿論、海賊版問題への対応ですとか、CDの還流防止策とか、書籍の貸与権などの取り組みなどが具体的に既に行われておりますけれども、ただ、販売流通等の環境を整備するということに関しましても、非常に重要なテーマでございます。今後もこの点の問題意識は共有させていただきたいと思います。
以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。続きまして日枝委員。
○日枝委員 先ほどから各委員の皆様もおっしゃられているように、コンテンツビジネスの振興に関して、この専門調査会で非常にはっきりとした形で、答申がまとまったということは、本当に風穴が開いたというふうにおっしゃられた方もいらっしゃいましたが、まさに第一歩であろうと思います。私どももコンテンツをつくることに参加している放送業界ですけれども、久保委員もおられますけれども、一応ここでコンテンツビジネス振興に向けた第一歩がスタートできるのではなかと思いますし、これを期に、日本のコンテンツというものが大きく伸びていくことを大いに期待をしているわけであります。
私はかねがねこの会でしつこいように前近代的な要素も否定してはいけない、と言ったわけですけれども、そもそもコンテンツは、さっき久保委員もおっしゃったとおり、クリエーターがつくるわけです。クリエーターというのはどうしても人間的な要素があるわけです。
ここで行ってきた議論では、クリエーターたちの権利とか制作の能力、税制の問題がありましたけれども、彼らをサポートする方向性がこの調査会から出てきたことは大きな成果であろうと。
先ほど久保利委員のお話のように、エンタメロイヤーのシステムをつくり、それを徐々に広げていこうという動きを見ても、この調査会を立ち上げたのは大きな意味があったと思います。
先ほどからお話があるように、3年計画にするのか1年計画にするのかという議論がありますけれども、やはり1年でできるわけは勿論ありません。したがって、事務局に是非お願いしたいのは、ロードマップをつくって、とりあえずまずここをやる、次にこれをやっていくということを明示した方がわかりやすいし、各業界のそれぞれの皆さん方も改革をしていく努力が出てくるんだろうと私は思っています。
各論ですけれとも、この中にも入っており、言うまでもないんですが、参考資料の2ページ、改革5の「2」のところで、ポストプロダクションというのがあります。私が言うのも変ですけれども、我々放送局は、局によって制作技術の態勢が違いますが、おおまかに言って、局の制作技術がつくるのが半分、プロダクションがつくるのが半分。そうすると、プロダンションもデジタル化に対応していきませんと、番組をつくれなくなってしまうわけです。
したがって、このプロダクションの皆さんに対する税制上の何らかの措置を考えて差し上げないと、デジタル化が遅れてしまい、ひいてはコンテンツビジネスのデジタル化が遅れるということになってしまいます。是非ここで私がポストプロダクションの皆様に代わって、そこのところを是非言わせていただこうと。半分の作品がそういう人たちにつくられて、放送していく。あるいは映画になっていくということもございますので、是非お願いしたい。
○牛尾会長 デジタル化を支援するためには、どうするんですか。
○日枝委員 つまりハイビジョンのカメラとか、編集室とか、そういうのをこれから買っていかなければいけないんです。税制面での何らかの優遇措置を考えてあげないと、なかなか難しい。多分税制を考えるのが一番いいんだろうと思いますけれども、それをやっていただかないと、放送業界で言いますと、2011年には全部デジタル化になる。すると、各プロダクションはみんなデジタル化をやっていかなければいけないわけですし、今、議論しているコンテンツビジネスにもデジタル化は不可欠ですので、プロダクションに代わって、私から申し上げたいと思います。
それから、海賊版対策ですけれども、これは参考資料の「目標3 海外、新分野のビジネス等を大きく展開する」という中で触れられていますが、実は先ほどから出ておりますように、ブロードバンドなどどんどん多メディアの時代になればなるほど、著作権をいかにはっきりさせるかということが大事で、アジアでこれから日本が作品をつくっていくことは非常に大事なわけですけれども、この海賊版対策について是非もう少し大きく太い線で書いていただいてやっていくことが必要ではないかと思います。
いずれにしても、これだけ関係業界の皆様がこのコンテンツビジネスというものを初めてこれだけ大きくまとめたということに事務局の皆さん、また牛尾会長には敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、重延委員、どうぞ。
○重延委員 今回のまとめに関しては、本当に新しいコンテンツ時代を迎えるということで、感謝をしております。やはり1つの特徴は国策となっているということではないかと思います。今まで各分野でいろいろな発言があり、いろいろな活動をしましたけれども、最終的には国策でなければ動かないレベルになってきたということで、今回、国策というレベルで動いたことに、非常に大きな意義があると思っております。
国策ではあるのですけれども、これからはやはり、早く、具体的に、この2点だと思いますけれども、この2点を是非推進していただきたいと思います。
先ほど確かに新しい一撃という言葉があって、非常によい言葉だと思っているんですけれども、もう一つ欲を言えば、これがそのまま世界を驚かせるかというと、まだそこまで行かない一撃であろうと、そういう意味ではもうひと一撃、次の専門調査会があれば、是非世界を驚かすもう一撃というものも考えていくことがあり得たらと思います。
私個人としては、やはりアジアの趨勢というのが非常に気になっておりまして、そういう意味では日本が少しその中心的な役割を果たしながら、さっきネットワークという言葉が出ましたが、アジア・コンテンツ・ネットワークみたいなものをつくり上げて、ヨーロッパやアメリカときちっと競争できるようなものにつくり上げていくことが非常に重要な時代ではないかと考えます。2008年の北京オリンピックとか、2010年の上海万博を考えますと、やはり早くから日本がその役割を果たせると非常にいいのではないかと思います。そこには勿論海賊版問題も入ると思いますけれども、やはり日本が世界で何を果たすかということが非常に重要ではないかと思います。
各論で言いますと、やはり先ほどから出ている中で、クリエーターというのが非常に重要な意味を持っているので、私としては国際的な展開、あるいは産業としての展開には、天才的クリエーターというものが重要だと思うんです。この天才的なクリエーターが何人か生まれれば、そこに裾野のように広がっていくという感じがありますので、このクリエーターがいかに生まれるか、それからいかに育つか、それからいかに成功を持てるか、この3点に関して具体的に進める方法を考えていくべきではないかと思います。
その1点として、日本の場合を考えますと、先ほど岡村委員がおっしゃった技術ですね。デジタルを契機としてということが非常に日本にとってはある意味では意味がある。それがハリウッドで開花してはいけないので、日本の中で開花するという技術とクリエーターの連携というのが1つ新しいでしょうし、NHKさんが推進しているハイビジョンもその1つのきっかけであるだろうと思うんです。そういうツールを日本は持てるわけですから、それが世界に利用されて、世界のものということではなくて、日本独自の発信ということに使われていることが非常に望ましいんじゃないかと思います。
もう一つは、放送という各論で申し上げますと、残念ながら放送ソフトというものは、こういう流通の話の中では、実は余り国際的進出をしてないものだと思うんです。それは、国際的というよりも国内的なところで十分産業として成り立っているからということではあるかと思いますけれども、これからの放送というのは、むしろそういうパッケージをつくって売るということだけではなくて、ここにあるアニメーションも映画も演劇も、あらゆるものが放送の中に含まれるものだろうと思います。そういう意味では放送というジャンルではなくて、放送がすべてのジャンルを助成し得るというか、一種の舞台としてどうぞ放送を使ってくださいというような広がりのある放送という観点から、私は放送が情報発信基地だと思っているんですけれども、そういう広がりのある中で放送がつくられていく、放送がこういう全体のコンテンツを育てていくということが重要です。今、放送の編成がどうしても産業構造から言えば、視聴率、それからGRPという中での考え方しかないんですけれども、そこら辺の構造の中で、もう少し多様にほかのソフトを編成できるような、ある種の考え方を持って、それが日本全体のコンテンツの育成に協力できる形になれば嬉しいと思います。
以上です。
○牛尾会長 どうもありがとうございました。浜野委員、どうぞ。
○浜野委員 私が6年前に東京大学に赴任して、コンテントビジネス概論というのを初めてやったときに、いろんな方から「それは何だ」とか、「世も末だ」とか言わましたが、東京大学でコンテンツの人材育成に取組むという記者会見をできるところまで来ました。これは、この調査会の存在が非常に大きかったと思います。どうもありがとうございました。
最近非常に辛い思いをしました。記者会見の記事を見た学生が私に会いに来て、こう言いました。「たまたま勉強ができて東大に行ったが、本当はアニメーションの仕事をしたかった」と。「卒業する段になって何だ」と。だから是非スピードが必要だと思いました。不作為故にあんな優秀な人材が、みすみす製造業に流出してしまっているのです。
個別の点ですけれども、5ページに改革6としてコンペとか、改革8で東京国際映画祭のことが出ていますが、新しいコンペとか、新しい顕彰事業も大切だと思いますが、これまでにある顕彰事業とかコンペも大事にしていただきたいと思います。
東京国際映画祭の前プロデューサーの川口さんに、東京国際映画祭の15回記念の国際審査委員長としてスピルバーグへの就任依頼をするように頼まれたことがあります。スピルバーグに頼んだときに、彼がこう言ったんです。「そのイベントは何回目だ」と、「15回記念です」と言ったら、「コンペとかアワードというのは50回目から価値がある」と。確かに、カンヌ映画祭も米アカデミー賞も50回をはるかに超えています。勿論既存のものにはいろいろ改善の余地はあろうと思いますが、回数だけはごまかせないので、是非既存のイベントも大切にしていただきたいと思います。
韓国とかカンヌも大変公的な資金で、大きなイベントをやっておりますが、日本のイベントというのはほとんど今、尻切れトンボで終わりそうなものがいっぱいあるので、是非御配慮いただきたいと思います。
もう一つは、6ページの改革の10ですけれども、これは里中委員からもお話があったと思いますけれども、大衆文化というのは保存とか保護というのは、かつての浮世絵のように考慮されていません。そのため一次資料にアクセスできない。民間のコレクターが集めてアクセスできない状態になっています。社会的啓蒙とか文化的保護ということからも、ミュージアムとか、アメリカのナショナル・プリザベーション・アクトに当たるような、公的に収集する制度が必要だと思います。社会的なアイコンとしてもミュージアムは機能するので、映画や漫画、アニメーション、ゲームなどに関するミュージアムを是非つくっていただきたいと思います。民間の努力ではこういうところまで手が回りません。
8ページに今後の検討方向として、デザインとか料理という、著作権で保護されないものが入っておりますが、観光資源ということでひとくくりにされていると思うんですが、景観というのをできれば分離独立させていただけないでしょうか。フィルム・コミッションが映画撮影を誘致したいといっても、景観が破壊されていたら撮る価値のあるものがないわけです。現実の景観が美しくなければ、コンテンツそのものがなりたちません維持されません。
以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。角川委員、どうぞ。
○角川委員 去年、7月8日に出ました『推進計画』、そして今回の『コンテンツビジネス振興政策』とつなげて、私は本当によかったと思います。「推進計画」の成果でありますが、著作権法の改正の柱が、CDの還流防止、あるいは書籍の貸与権、また著作権の侵害に対する罰則の強化ということで、著作権法改正が文化の「振興」という立場に一歩踏み出してきたなという感じがしております。それも『知的財産推進計画』の実施によって行われてきたというふうに思いますし、非常に意味のあることを我々は今やっているんだなという自負を持っております。
その一方で、今回の素案を見ますと、もう一回去年の「創造、保護、活用」という視点でこれを見直してみますと、活用という点で更につっこんだ具体性が欲しいなという意見を持っております。特に活用的な部分としては、6ページの「改革8 海外展開の拡大と海賊版対策の強化〜アジアへ、そして世界へ〜」、それから「改革9 ブロードバンドなどによる事業展開の推進〜もっと便利におもしろく〜」という部分が対応しているのではないかと思います。その点で、私がまたここで提案させていただきたいのは、海外展開の拡大と海賊版対策の強化という点では、既にいろいろFTAとか自由貿易の促進だとか出ておりますし、TRIPS協定などもあるようでございますけれども、必ずしも実効性が上がってないと思うんです。それには、やはりアジアの国々との間で海賊版・模倣品対策条約というのを、二国間条約で推進していく必要があるんじゃないかという感じがいたします。是非「二国間条約の制定」を提案させていただきたいと思います。
そして、この海賊版・模倣品対策が実効性があがるものとしていくため、数値目標を付けていくようなことをしていただきたいと思います。
「9」のブロードバンドの事業展開につきましては、非常に日本の警察庁が頑張っていただいておりまして、京都で違法なインターネットの摘発が実行されて、日本のコンテンツプロバイダーは勇気づけられているんですけれども、まだまだ全警察に対する体制の強化という点では脆弱だなということを拝見しました。その上で、財政上の裏づけなどを必要とするという点で言うと、「インターネット上の海賊版・模倣品の対策強化法」という、ブロードバンドにおける海賊版・模倣品対策を強化する法律を制定していただきたいと思います。
このインターネットの問題は、日本は世界に先駆けてブロードバンドが普及しておりますので、その点で先進的な強化法をつくること、先ほど重延委員がおっしゃった、世界に対して日本の知財の対策として発信していくためには、非常に格好な法律ではないかと予感がしております。本当に、映画のコンテンツのブロードバンドでのファイル交換等も、かなり激しくされておりまして、その問題を是非更に一層強化する法律を制定していただきたいと思います。
今回、バンダイさんが「たまごっち」を再発売されるんですけれども、その「たまごっち」の前の反省から、いろいろな中国における4つの工場を1つにするとかをされているんですけれども、その中で意匠権によって海賊版・模倣品を抑えようという動きをしています。もう外の形がそっくりなんですね。「BANDAI」が、「BENDI」といったりですね。そういう点で意匠によって取り締まっていく、そうすると意匠法もどうなるかというふうな、強化をする必要があるんじゃないか、そんなことも是非検討していただきたいと思います。
なかなか難しいことでしょうけれども、私はやはりこういうふうな著作権の制度が国際的に共通であるということが非常に必要ではないかと思います。アメリカが非常に強化しているのであれば、アメリカに従って強化していくということの視点が必要ですし、アジアの国々に対しても、その国々でそれぞれ個性的な制定をするのではなくて、なるべく世界共通の法律をつくって、それに従ってもらうということが必要なんじゃないかと思います。
今回の成果は大きいものがあると思いますけれども、これを経団連の意見書にもありますように、更にステップ・アップして、それからスピード・アップする点では、私は去年のものがホップ、今回がステップという位置づけにすれば、やはりジャンプという点でもう一回1年苦労を続けさせていただいて、それで重延委員がおっしゃったような、国家的な、日本が世界に発信していく国家ビジョンを構築する視点で、でも一層頑張る価値はあるというふうに思っております。そういう点で、是非この知財本部の取り組み方が、更に組織的にも強化されて、欧米そしてアジアにあるような韓国文化コンテンツ振興院とか、フランス映画庁という恒久的な形でこの知財本部を更に強化していっていただきたいと思います。
○牛尾会長 それでは、最後になりましたが、里中委員、どうぞ。
○里中委員 最後に短く、本当に皆さんおっしゃいましたけれども、ありがとうございました。そして、さまざまな分野のすばらしい人たちと、こういう1つのテーマで短い時間ではありましたけれども、各業界どんな問題を抱えているかということも伝わってきて、大変私自身も勉強になりました。
そして、このコンテンツビジネス振興ということを前面に打ち出したということは、実はかなり創作者たちが励みにしております。国がやっとコンテンツということを前面に押し出して、国はこういうことを考えていますよということで、これまでどちらかと言いますと形になることばかりでしたね。ものとか、見えるもの、ところがコンテンツというのは実は発想であるということで、発想が大切なのだと、発想こそが国の力であるということを公的に前面に出したということが、創作者たちの励みになっております。そんな励みしか創作者たちにはありません。なぜかと言いますと、先ほどから税制の話が出ておりますけれども、つまりこれまで我が国というのは、ものばかり見ておりまして、ものに対して税金をかけると。そうしますと、先ほどデジタル化のための税制というのがありましたが、デジタル機器を買えば買うほど、それが資産とされて、償却期間が長くて、苦しい中からよりこの時代に合わせた発表の仕方をしようとして、新しい機材を導入しますと、そこにはお金がかかって、しかも税制上の優遇措置も何もないと。
何年か前に各企業が、デジタル機器を購入するに当たって、税制優遇措置ってありましたが、認められる金額は99万9,999 円までだったんです。こんなことでは、だれもチャレンジしないです。つまり仕事のために必要なものに対しても、償却期間が長過ぎるというのと、先ほど来また話が出ておりました、損金として認められる範囲が長過ぎる。ですから、海外進出や海賊版に関しましても、かなり出版界でも中国、その他に出て行こうとしましても、投資よりも見返りの方が少なくて、あげくのはてに海賊版が出回るきっかけになってしまうと。それで、引き上げてしまわざるを得ない。なぜかと言いますと、損金として認められない、お金をかければかけるほど、それに税金がかかってしまうということで、韓国が韓流パワーで中国にどどっと出ていったことと、正反対のことが起きたわけです。だから税金というのは、この場でこんなことを申し上げるのは、非常に素人っぽくて乱暴なんですが、リターンがあったときに初めてそれに公平に税金がかけられるという形にすれば、みんなもっと働きがいもあるし、頑張りがいもあるし、お金のかけがいもあると思うんです。我が国では、ある程度以上のお金を持つことが悪であるかのような、そういう平等という名の下で、目に見える形での財産だけでものを見てきたような気がします。実はこの調査会、何か今後発表なさるときに、もう一つインパクトが足りないとなりますと、むしろ抽象的な理念の部分だと思うんです。我が国がこれまで、もの、形に現われたものだけで価値をはかろうとしてきた、だけど改めてここに国家百年の大計として、発想そのものに価値を認める国になるのだという、そういう何かすばらしい、日本というのは生まれ代わったんだと思わせるような見せ方、それによってより創作者たちへの励みになりますし、海外から見ても、もしかして日本で何か創作活動をやることは、有利に働くかもしれないと、そう思えるような見せ方ができればすばらしいと思います。
最後に、もしかしてこれが今回コンテンツが金になるのだと、国として経済効果が上がるのだということだけで、こういうことをしようとしたのだと思われてしまいますと、やはり金とかものだけに価値を抱いていると思われかねません。むしろ文化というのは、国際理解、各民族の理解、お互いの国を尊敬し、理解するための、それこそがコンテンツなんですね。もうじきオリンピックがありますが、世界中の人々がギリシャと言うと思い出すのはオリンピック、なぜかと言うとオリンピック精神という、実は形にならないものですね。オリンピック精神を生かしたものがオリンピックという形になって、そこにその間戦争はやめたという歴然たる事実があるわけですから、ギリシャという国のイメージをみんなが抱くわけです。
私たちが中国に対して抱いている気持ちも、今、海賊版その他みんな苦労していることがあるにしましても、どうしても拭い去れない尊敬の念というのは、かつての中国の思想であり、文献であり、文化だと思うんです。そういう国に私たちもなれるはずなんです。ですから、そういう国になるのだと、世界から尊敬され親しまれる、そのためにコンテンツを生かすのであるということが前面に出れば、随分違ったイメージになるのではないかと思いました。私はしょせんしがない創作者ですので、経済的なことよりも、どうしても何をアピールするかという見せ方が気になりますので、そういう雰囲気が伝わればいいかなと思いました。そこがイメージとしてもう一つ創作者たち、あるいはその創作者を支えてくださる一般の方たちをかき立てる何かプラスワンが欲しいと思いました。
いずれにせよ、すばらしい今回の企画で、あと20年経ったときにあれがきっかけだったのだなと言われることになれば、とてもすばらしいと思います。本当にいろいろとありがとうございました。
○牛尾会長 全員の方から、大変貴重な御意見ありがとうございました。特に冒頭に関根委員がおっしゃった、量的拡大よりももっと大事なものであるコンテンツの質についての議論は、今、最後に里中委員がおっしゃったニューコンセプトや発想や創造力の議論を込めて、質というものが一番重要であるということを強調する必要がある。量的拡大も大事ですが、質を下げない、質を上げていく、理念とかコンセプトを大事にするということは非常に重要な点かと思います。
もう一つは、この種のものというのは、内閣府にあるような本部の場合は、一過性で終わりやすくて、これも関根委員がおっしゃったんですけれども、一過性にしてはだめだと、これはもう貴重な第一歩として、ロードマップをきちっとつくって、そして3年ぐらいになったら経済財政諮問会議でも工程表をつくるわけですから、工程表ぐらいまでつくって、実行するんだという決意を示す必要がある。そのためには、知財本部のこの事務局はきちんとした受け付けの窓口までつくって、作業としての体制を組む必要が大事ではないかという気がいたしました。
それから、お話を伺って、製造業に比べて税制の問題とか、保険の問題とか、近代化のための金融支援とか、社会インフラ、それに法律的なロイヤーの問題とか、非常にこの分野だけが30年ぐらい後を歩いているような印象を与えるような御発言が多かったわけです。やはりこういうことになった原因は、実は業界にもあったと思うんです。というのは、クリエーティブな人というのは社会的な制度を知らないことの方がクリエーティブで、いろんなことを知っているとあいつは俗っぽいものだというようなムードが価値観の中にあると思うのですね。やはり作家でも昔は夜でないと書けないという人が、普通どおりの生活態で書けるように変わっていくのと同じように、この分野は日常の社会制度に乗っかって仕事ができるような雰囲気にどう変えていくか。やはり社会の中でのクリエーターのイメージ、社会的地位、尊敬感というものを、もっともっと高める必要がある。これは7割ぐらいは社会の責任ですが、3割ぐらいはクリエーターの方にもあるというところを、これから大いに考えていく必要があるのかなという気がしました。
それから、ハードとソフトの連携に関しては、確かに日本のデジタル機器、携帯電話、ブロードバンドもそうですが、世界の先端を走っていると思います。携帯電話でも、契約者数が、もう中国が1億5,000 万人に達しているのに対し、日本は約半分の8,000 万ですが、質的にはもう圧倒的に高い。このハード並びにブロードバンドのような情報システムの質に乗っかって、非常にレベルの高いクリエーティブなものがくっ付けば、非常に戦略的になるので、これは知的財産本部で別途ハードとソフトの形状的な住み分けをする、交流する組織を考える必要があると思います。
それから、御発言の中に、もう少し具体的にするべきという話がありましたが、このようなコンテンツの会合を私も経産省で1回やった経験から言うと、具体的になると知財本部だけではおさまらない話になってくる。経産省とか財務省とか総務省とか国土交通省とか、多省との折衝があるわけです。私は、今、経済財政諮問会議の議員をしていますが、もう経済財政諮問会議で1個扱うと6つぐらいの省から関連した内容が返ってきて、ものすごく調整がかかるけれども、これを知財本部が恐れてはだめだと思うんです。だから内閣官房にあるんですから、内閣官房にあるということは具体的になれば多省にまたがる。それはあえて具体的にまとめることによって動き出すということですから、確かにホップ・ステップ・ジャンプの最後は、要するに多省とのかなり激しいやり取りもあえて辞さない決意を知財本部がする必要があれば、それは十分可能な範囲になると思いました。
また、日本は今、文化に関心を示しており、経済成長の発展の中でも、クリエーティブやソフトやコンテンツ等の文化の発展が本当の新しい21世紀の成長と理解されています。また、徐々に従来型の競争力の発展も持ち上がってきているので、2004年、2005年、2006年というのは、非常に大事な時期に3年間を共有することであり、浮上する絶好のチャンス、順風が吹いていると言えると思います。そういう意味では、まずロードマップをつくって、更に具体的な工程表的なものも各省ごとのかなりの激しい交渉の上でやる必要があるのではないかという気がしました。だから、事務局もそういう決意をしてやってほしいと思います。
その他、全部しゃべっていると30分ぐらいかかりますので、もうこれでやめますが、大体これまではだらだら2年やっていてもしようがないので、私が座長をするのはいつも6か月で6回ぐらいでやめてしまうんですけれども、かえって新鮮にきりっとした報告ができると思います。今回討議されましたこのコンテンツ振興政策の案を、今、若干整理しましたが、それプラス詳細を全部整理して、更に皆様から見て2段階ぐらいバージョンアップしたものをつくり上げたいと思います。また会議を開くのは皆さん大変だと思いますので、会長である私に御一任いただければつくりたいと思いますが、いかがでしょうか。
(「お願いします」と声あり)
○牛尾会長 それでは、そういうふうに作業したいと思います。昨年の10月以来5回にわたる会合において、人材、資金、国際展開、流通と多岐にわたって各委員から熱心に討議をちょうだいしました。非常に率直にお話をいただいて感謝したいと思います。この問題は、この委員は発言できても、この委員は発言できないということを事前に聞いていたんですが、驚くぐらいに皆さん堂々と発言されたので、大変に交流の場としてはいい雰囲気だったと思っております。心から感謝をします。
また、各委員の熱心な討議のお陰もあって、最近、テレビや新聞を見ていても、コンテンツに関係した話題が非常に多くて、最近は政界の人に会ってもコンテンツの話をされるからびっくりする。コンテンツというのはどうやって翻訳するんだと言ったら、みんな専ら芸能とか娯楽とおっしゃっておりましたが、あながち間違いではない。そういう意味では政治にも大きく広まったことは驚きであります。コンテンツビジネス振興政策については、これまでの我が国の政府全体として明確な理念と改革の方向を持っていなかったことが、今度はこういうきちっとしたものを出して、また最後に里中委員がおっしゃったように、コンテンツの持つ文化性、創造性、また社会の尊敬感というものをつくる必要があると思います。是非コンテンツ専門調査会の報告においては、再度明確な理念と改革の方向性を打ち出すことに努力したいと思います。
また、今、申しましたように、国会においても、現在、コンテンツの創造保護及び活用の促進に関する法律案が、これは議員立法で本国会中に通るはずであります。我が国のコンテンツビジネスが大きく発展することに寄与すると思われます。法律というのは通りますと、従来非常に困難だったものがすっと動くようであります。たしか施政方針演説でも入りましたから、施政方針演説と法律という、日本の法的な体系ができれば、もう車でいうとローからトップに入ったような感じですっと車を走り出す状況であります。
コンテンツ振興政策については、私から次回の知的財産戦略本部会合で今日のことを再度報告しまして、知的財産推進計画の改定に反映されるように努力したいと思っております。
最終版ができる過程においては、再度、委員の方々に個別に訪問することもあるかと思いますが、十分意のあることをお伝え願いまして、最終版がすばらしいできになるように御協力をお願いしたいと思います。
また、ホップ・ステップ・ジャンプの方に関しましては、相当体力の要る仕事でありますので、よく荒井事務局長とも相談して今後のやり方をまた練って、この専門調査会は解散せずに、まだ皆さんはしばらくは委員でありますので、招集したときには来てもらうこともあるかもしれません。
本当にどうもありがとうございました。
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