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第5回 コンテンツ専門調査会 議事録


1.日 時:16年 3月15日(月)10:00〜11:30
2.場 所:霞が関ビル東京會舘 エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、岡村委員、角川委員、久保委員、久保利委員、熊谷委員、里中委員、重延委員、関根委員、浜野委員、日枝委員、依田委員
【事務局】荒井事務局長、森口事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) コンテンツビジネス振興政策(案)について
(3) 閉会


○牛尾会長 では、定刻になりましたので、ただいまから「コンテンツ専門調査会」の第5回の会合を開催したいと思います。お忙しい中、お集まりをちょうだいしまして、誠にありがとうございました。
 本日は、久保利委員と浜野委員より、コンテンツを巡る最近の動きの御紹介をちょうだいするとともに、事務局により演劇に関する課題について説明をちょうだいします。その後、コンテンツビジネス振興政策についての討議に入りたいと思います。
 では、早速議題に入ります。
 まず初めに、久保利委員からエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークについて、これは資料があります。資料1の参照を願いたいと思います。
 では、久保利委員どうぞ。

○久保利委員 おはようございます。久保利でございます。資料1を御参照いただきたいと思いますが、かねてからエンターテインメント・ロイヤーズ・クラブという仮称で準備をしておりましたが、このたび仮称を更に変更しまして、エンタメ・ロイヤーズ・ネットワークという形でつくりたいと。
 これは、昨日の日経新聞に三宅記者が書いておられましたけれども、要するに日本のコンテンツ産業の弱さの一つの原因は、司法あるいは法律家にあると。エンタメロイヤーが10人しかいないというのは、ちょっと過少評価にしても、まだまだ力が足りないことは、そのとおりだと、数の面においても、質の点においてもそうだろうということで、ここに書きましたような目的、すなわちエンタメロイヤー相互間、更にクリエーターあるいは関係業界、この間のネットワークをきっちり構築して、情報交換をやっていきたい。
 更に、弁護士と関係業界全体の各種能力、特にリーガル能力を含めて、これを研鑽していこうということであります。
 このためには、弁護士のみならず、関係業界、あるいはクリエーター、さまざまな方々が、それぞれの立場で御参加をいただいて、全体として日本のコンテンツ産業がリーガルな面で力を付けるように、企業法務の中の人も当然入っていただきたいし、クリエーターにも入っていただきたいし、メディアの方々にも御協力をお願いする。お互い切磋琢磨していくと、こういうものをつくりたいということで、青山学院大学の法科大学院にも御協力をいただきまして、法科大学院という言わば中立的な存在を事務局にいたしまして、場所の提供、さまざまなハード面での御支援をいただくということをやりながら、シンポジウムを行ったりして拡大していきたいと考えました。
 設立の趣意書は、2枚目に付けたとおりでございまして、ここに書いてあるような趣意の下にネットワークをつくっていきたいというふうに考えて、エンタメロイヤー不足を批判された当事者の私が、とりあえず呼びかけ人となって賛同者を求めたところ、既に代表発起人として十数名の弁護士が名前を上げております。それから、これに会員として参加したいという弁護士は、既に70名を超えました。
 そういうことで、弁護士会としても全面的にバックアップするという約束もいただいておりますので、新しい日本のコンテンツ産業発展のために、リーガルの観点から是非頑張りたいと思います。
 この専門調査会のメンバーの方々、並びに、今日、傍聴にお見えになっている方々も含めて、幅広い御支援と御参加をいただければ大変ありがたいと、かように考えているところでございまして、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 この場を借りて一つお願いさせていただきます。

○牛尾会長 久保利委員どうもありがとうございました。
 では続きまして、浜野委員より東京大学におけるコンテンツ人材の育成の取り組みについての御紹介をお願いします。
 それでは、資料2になります。

○浜野委員 資料2は、3月9日の記者会見で配布した資料です。
 東京大学においてもいろんな部局でコンテンツに関する人材育成について話があり、個別に先行的な試みが行われておりました。
 本調査会の設置なども刺激になり、東京大学としては統一的な取り組みが必要であるという認識が形成されました。
 しかし、人材育成の合意はできていたとしても、4,000 人に及ぶ教官を抱える高等教育機関として、学術研究としての重要性などを明確にした上で、全学的な合意を得るのには時間がかかります。
 そのため、まず、正式の学科ではなく副プログラムとして、コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムを、今年の秋に立ち上げようということになりました。
 このプログラムの目的は、まず国際的なビジネススキームをつくることができるプロデューサーの育成。
 2番目は、先端技術をエンターテインメント・テクノロジーに反映できる技術開発者の育成。
 3番目は、教える人を教えるということで、教える人を育成するという指導的教育者の育成であります。
 クリエーターに関しましては、北京映画学院や、フランスのゴブランなどのように何か月もかけて選抜し、優秀な学生をえりすぐれば、幾らでも優れたクリエーターを輩出できると思いますが、東京大学で入試制度を変えるということは一大事業でありますし、クリエーター育成については、我が国にも多くの機関がありますので、主たる目的ということではなくて、自然発生的に我々のコースから生まれてくることを待つことにいたしました。 本プログラムの特徴としては、国際的な指導者の育成、これは留学生の受け皿ということも含みます。
 2番目は、文理融合。
 3番目は、こういった分野の高等教育機関と産業界の連携を行う。
 4番目は、これまでハリウッドモデルに準拠することが日本でも多かったわけですが、我々はそれが最善とは考えてはいませんので、日本型あるいはアジア型の新たな人材育成モデルをほかの教育機関にも提供したいということであります。
 配布資料の裏面に、講師陣のお名前が出ております。記者会見にも角川委員にも来ていただきましたし、これまで学外から東京大学で講義をしていただいた御経験のある方を中心に、今のところ講師陣を挙げておりますが、勿論、この調査会の方々にも既にお願いしている方もいらっしゃいますし、カリキュラムも予定でありますけれども、こういった試みを通じて、正規の全学的な学科、あるいはCOE、世界的、またアジアの中枢となる研究センターをつくってまいりたいというのが、東京大学の現在の状況であります。
 以上です。

○牛尾会長 浜野委員どうもありがとうございました。
 それでは、次に演劇に関する課題についての説明を事務局よりお願いします。前回第4会専門調査会におきまして、放送や出版や音楽などについて御議論しましたが、演劇も重要な分野だと思いますので、事務局は今回資料を作成しております。
 それでは、事務局お願いいたします。

○森口次長 それでは、お手元の資料3をごらんいただきたいと思います。
 「演劇の現状」でございますけれども、1枚目にございますように、演劇の市場規模は約1200億円、観客動員数で約1100万人という状況でございます。
 左の図を見ていただくとわかりますように、上演回数を見ても、東京に一極集中といいますか、東京が圧倒的な上演回数になっておりまして、強いて言えば、三大都市の大阪、名古屋もございますが、とにかく東京が圧倒的な集中になっておるということでございます。ちなみに、下の方にございますように、アメリカの市場規模は日本約3倍ということでございます。
 2枚目をごらんいただきますと「演劇の課題」ということでございます。
 今、申し上げましたように、舞台公演の大都市集中と、特に東京集中という傾向がございます。このために、中小劇団が地方で公演を行うということが非常に難しくなっているという状況にあるということ、また、民間の劇場の経営というのは、非常に厳しい状況にあるということでございます。全体として、一部の成功例を除きまして、PR・マーケティング不足、あるいは前近代性、人材育成等の環境整備と、こういったものが課題になっております。具体的には、経営と芸術のバランスという問題が非常に難しい。特に会計システム等についての問題がございます。また、成功に向けたビジネスモデルが少ない。更に、出演者との契約についても、明示的な契約をする慣行が比較的少ないという問題。今後、二次利用ということが増えてきますと、そういう点で非常に問題が生じてくる可能性がございます。また、この場でも議論がございました子役の就労時間の制限について、いわゆる特区のときの議論で、2004年度中に21時までの延長が検討されておりますが、興行主側としては22時まで、午後10時までは延長してほしいという要望がございます。
 具体的な対応策でございますが、3ページ目をごらんいただきますと、まず、事業者としての取り組みでございますが、やはり経営の近代化ということ、それによって公的助成や投融資を受けやすくするための情報収集・情報公開が望まれてございます。また、先ほど申し上げました出演契約締結といったことを徹底する必要があるだろうということでございます。さらに、ビジネスモデルというものを構築し、舞台の場合には、やはりロングランというのが収益を確保する上では非常に重要になるわけでございますが、その取り組みということへの工夫ということが望まれております。
 4ページでございますが、政府としての取り組みといたしましては、特に地方公演等におきまして、各自治体間の文化施設の連携強化ということでそういう問題を解決できないか、あるいは見本市的な場の設定といったことが取り組み事項としてございます。また、学校教育の場で鑑賞機会、そうした活動参加への取り組み支援ということをしっかりとやっていくということや、3番目の税の問題でございますけれども、興行や作品への投資を活性化させるための個人・法人への税制優遇措置、あるいは劇場の固定資産税の軽減といった税制面での支援というのが非常に望まれてございます。さらに、契約という意味ではひな形の作成、あるいは子役の時間の多様化、こういったことについても政府として取り組むべき課題というふうに挙げられてございます。
 以上でございます。

○牛尾会長 以上、委員及び事務局の説明について、質問あるいは御意見がございましたらちょうだいいたします。
 どうぞ。

○依田委員 実は、演劇の現状について、現場の声が少しあります。
 今の資料3で、演劇の市場規模、東京ということで、現代演劇が圧倒的に多くて、ミュージカルがまだ少ない状況になっておりますが、この線引きはどうなのか、多分に微妙なところがあると思いますが、いわゆる演劇の一番大きな世界的なビジネスとしては、やはりニューヨークのブロードウェイ、それからロンドン、そしてまたラスベガスといったミュージカル系のビジネスが非常に今活発で、日本にもその流れが入って来ていますが、日本にはハコが圧倒的に不足しておりまして、東京の場合には、なかなかハコを押さえられないということです。
 仕方がなく、その後に韓国へ行きますと、韓国で大ヒットで、日本以上にビジネス効率がいいということで、何か日本と韓国が一体になったような動きが、今、ミュージカルの業界にあるようですが、日本でも浅草国際劇場が、もう既にビューホテルになってしまって、あのすばらしい全盛期からの遺産がないと。
 ニューヨーク、ロンドンへ行きましても100年前の劇場がいまだに使われている、東京にはないということで、どうしてもこれは一事業としてではなくて、国として劇場の確保をどうするか、そしてそれに対する税制、あるいは寄付税制も含めた、きちんとした投資をしないと、日本からそういう演劇のビジネスというのは、永久に育たないんだろうと思います。
 今のところ、海外から入ってくるだけで、日本からなかなか出て行けないということで、音楽業界でも、今、プロダクション系で、一生懸命ミュージカルを立ち上げようという動きがありまして、その辺のネックがどうしても解決されていませんので、是非考慮をお願いしたいと思います。

○牛尾会長 大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。
 ほかにございますか。
 では、特段ございませんようでございますから、次の本日のメインである、コンテンツビジネス振興政策案についての討議に入りたいと思います。
 お手元の「コンテンツビジネス振興政策(案)」は、第3回専門調査会で議論をちょうだいした「コンテンツビジネス振興政策(骨子)」をベースに、第1回から第4回専門調査会における資料や議論、更には各委員からの事前・事後の御意見などをちょうだいして作成したものであります。
 まず、事務局より資料4及び5について説明してください。

○森口次長 それでは、お手元の資料4、5−1、5−2をごらんいただきたいと思います。
 まず資料4は、資料5−1の概要版でございますので、これは横に置いておいていただきまして、報告書本体は資料5−1でございます。
 そして、資料5−2といたしまして、参考資料を用意してございまして、これは後ほど御説明いたします資料5−1、振興政策報告書本文の第2部のところの改革の重点項目につきまして、具体的施策を並べたものでございます。これも横に置きながら、資料5−1を御説明申し上げたいと思います。
 まず、資料5−1をめくっていただきますと、目次でございまして、全体が3部構成になってございます。
 第1部が「基本的方向」ということで、その要約として表題にも入っています「(コンテンツビジネス振興を国家戦略の柱に)」というのが第1部でございます。
 第2部で、「集中改革の具体策」ということで、3つの目標と10の改革を挙げてございます。
 第3部としまして、「今後のコンテンツビジネス振興に向けて」ということで、今後の課題を整理してございます。
 2ページをごらんいただきたいと思います。
 「第1部 基本的方向(コンテンツビジネス振興を国家戦略の柱に)」ということでございますが、まず、1番目としまして、ビジネスの現状でございます。
 これは、これまでも議論されてきたところでございますが、我が国のコンテンツというものは、非常に高い評価を得ております。しかしながら、関係者の一体的な取り組み等が必ずしも十分ではなかったということで、まだまだ伸びる余地はあるということでございます。世界と比較しても、まだまだ平均にもいっていないと、そういう状況にあるということが「1」で書いてございます。
 次に「2」の国家戦略の柱にということでございますけれども、「1」で述べたように、非常にコンテンツビジネスというのは、国家戦略を考える上でも重要な分野であり、昨今ソフトパワーと言われておりますけれども、そういうことで、諸外国におきましても非常に強力に施策を展開しております。
 韓国、中国においては国を挙げて支援しております。欧米は、古い歴史の下で、これもかなり国家戦略として取り上げております。
 我が国におきましても、2ページの最後の段落のところですが、CDの還流防止、あるいは書籍・雑誌の貸与権等、こういったことに対応するための著作権法の改正、コンテンツを信託の対象とする信託業法の改正、輸出入者の情報を開示するための関税定率法の改正、ライセンス契約の法的安定性というための破産法といった各関係省庁から法案がもう既に国会に提出されております。また、コンテンツが国民生活を豊かにし、あるいは海外に我が国の文化を理解増進させるとともにビジネスの成長発展も期待されるという観点から、コンテンツの創造保護及び活用の促進に関する法律案、これは議員立法でございますが、これにつきましても既に国会に提出されてございます。これを見ても国家戦略上の重要な課題であるということはわかるわけですが、今後、こういう法的対応をはじめとしまして、コンテンツビジネス振興というものを国家戦略の柱として明確に位置づけるべきであるということが「2」で書いてございます。
 「3」では、それにあたりましての課題を3つ上げてございます。
 1つは、一部に見られる不透明・非合理的な面ということから、一層の近代化・合理化ということが求められること、
 2番目としては、必ずしも社会的・経済的評価や、産業の重要性という認識が十分ではないので、今後、社会をリードするビジネスとなることが求められていること、
 3番目としては、海外あるいは国内においてのビジネスの大きな展開ということが期待されているということでございます。
 そのために、2部で先ほど申し上げました3つの目標、10の改革、そして重点項目というのを挙げてございまして、これらを今後3年間で集中的に実施し、現在、11兆円規模の事業が横ばい、ないしは若干の減少傾向にあるわけですが、それを上昇傾向に転じさせ、飛躍的な発展への足がかりとすべきであるということを提案してございます。
 第2部は、3つの目標と10の改革でございます。
 目標の1が、「資金、人材、技術等のビジネス基盤を整備し、業界の近代化・合理化をさらに進める」ということでございます。
 柱書きのところにございますように、近年、業界内でも非常に改善に向けた取り組みがなされておりますので、それを加速化するために、国においても積極的な支援ということが求められているということでございます。
 具体的な改革1としましては「業界の近代化・合理化の支援」ということで、重点項目を4つほど挙げてございます。契約慣行の改善や透明化に向けた取り組み、あるいは経営、法務、財務などにおける専門人材の活用、あるいは独禁法の厳正な運用等、あるいは、特に映画等における弾力的な価格設定といったことが求められているという点を4点ほど挙げてございます。その具体的な施策につきましては、資料5−2の1ページ目を御参考に見ていただきたいと思います。
 それから改革の2につきましては「資金調達手段の多様化」ということで、コンテンツ制作への融資、投資、あるいは情報開示等の環境整備と、この3つを重点項目として挙げてございます。
 改革3「コンテンツ制作等へのインセンティブの付与」ということで、これは具体的には、重点項目にございますように、税制上の措置ということにつきまして検討をすべきであるということが挙げてございます。
 改革4「人材育成の強化」でございますけれども、これにつきましては、1つは高等教育機関、すなわち、法科大学院等を含む専門職大学院、あるいは大学、学部、学科そういったところでの人材育成を支援する。2番目の映像産業振興機関の設立でございますが、これにつきましては、参考資料の5−2の方にもございますが、アメリカのAFIでありますとか、イギリスのフィルム・カウンシルといったものを念頭に置きながら、我が国においても、映像産業振興機関というものの設立の動きが経団連を中心にございますので、それに対する支援ということを挙げてございます。
 それから、改革の5でございますが「新技術の研究開発等の支援、普及」ということで、いわゆる先端映像技術の研究開発、あるいはデジタル化、特に映画等でのデジタル化、それからハイビジョン技術、そしてコンテンツ流通技術、こういったものの研究開発の支援を行うということでございます。
 目標の2でございますが「活躍する者に光をあて、社会をリードするビジネスを目指す」ということで、これは具体的には改革の6と7、2つ挙げてございますが、1つはコンペの開催、あるいは顕彰機会の拡大・広報などを通しで、人材を早期に発掘、育成するという点、改革7といたしまして「教育・啓発の充実」ということで、特に学校教育等におけるコンテンツに触れる機会の増大と、そういったことが重要であるという点を述べてございます。
 6ページでございますが、目標の3でございます。「海外、新分野のビジネス等を大きく展開する」ということで、我が国の産業というのは、これまで国際競争力を有する製品を武器に、積極的に海外へ展開してきたわけでございます。コンテンツビジネスは、冒頭に申し上げましたように、非常にいいコンテンツを持っていながら、まだ必ずしも展開が十分になされていないということで、これを多面的な国の支援の下に、積極的に展開していこうというものでございます。
 改革の8でございますが「海外展開の拡大と海賊版対策の強化」ということで、これも4点重点項目を挙げてございますが、国、在外公館、JETRO、国際交流基金といったものを通じた海外展開への支援、また、東京国際映画際を抜本的に強化、参考資料の方でも三大映画祭並みにという目標も掲げておりますが、海外展開への支援、それから、ジャパンブランドの発信強化、あるいは、海賊版のあらゆるチャネルを通じての取り締まりという点を重点項目に挙げてございます。
 改革9でございますが「ブロードバンドなどによる事業展開の推進」ということで、契約締結やデータベースの整備といった問題、あるいは青少年の健全育成への自主的な取り組みへの支援、あるいは必要に応じて、著作権等の法制度の整備、あるいは運用といったことの検討、そして、ブロードバンドなどの新たな流通における事業の推進の支援といった点を4つ挙げてございます。
 改革10、最後でございますが「地域等の魅力あるコンテンツの保存・発信強化」ということで、地域等での伝統的、文化的なデジタルアーカイブの構築等への支援、あるいはフィルムコミッションのロケ誘致活動への支援、地域でいろいろ考えておりますコンテンツ戦略の取り組みへの支援と、そういったことを課題として挙げてございます。
 最後に第3部、今後の課題でございますけれども、冒頭の4つは、これは3つの目標と10の改革を進めるにあたりまして、関係者が共有すべき理念というものをA〜Eという言葉で、まとめておりまして、常にこれを念頭に置きながら頑張っていこうという標語的なものでございますが「All Japan」「Brand Japan」「Cool Japan」「Digital Japan」、Eはちょっと苦しいですけれども、「leading-Edge Japan」、済みませんテクノロジーというのが誤植で抜けております。「leading-Edge Tech Japan」ということでEと、ABCDEを常に念頭に置きながら頑張っていこうと、そういう標語でございます。
 それで、更に今後の振興の留意点を挙げてございますが、1つは今回の振興政策につきまして、近く始まります知的財産推進計画の改定に反映させるということと、関係府省がそれぞれの担当する施策を3年の期間内に集中的に実施をするということ、そして、知財本部は随時実施状況を把握し、関係府省の取り組みを促進していくとともに、3年の改革案終了時に目標の達成状況について評価を行うということを示しております。
 2番目としまして、「調査研究・広報の推進」ということで、1点は、まず統計資料が必ずしもこの分野は十分ではございませんので、諸外国でのいろいろデータ等も参考にしながら、統計資料の整備ということがまず必要であります。また、広報という意味では、いろんなシンポジウム等が開催されております。そういうものも通じながら、広報活動を充実させていくということでございます。
 3番目としましては、「関係者一体となった取組の促進」ということで、特に国としては、今後課題にも上がっています、税制、あるいはコンテンツの二次利用、海賊版対策といったものにつきまして、関係府省での適切な役割分担の下に連携協力して対処していくということが必要でございます。知財本部におきましては、そういった関係府省の連絡会議というものを適宜開催していくことが望まれております。また、民間におきましても非常に幅広い関係者がございます。コンテンツ制作者、流通事業者、送・配信事業者、広告事業者、権利管理事業者、機器メーカー、法務関係者ということで、言わばソフト・ハードを含む関係者があるわけでございますが、そういった関係者の連携を一層強化していくということが重要で、国は、それを奨励、支援する必要があるということを述べてございます。
 4番目に、「今後の検討の方向性」といたしまして、今回の専門調査会では、コンテンツの中でも、いわゆる狭義のコンテンツということで議論をしたわけですが、コンテンツとしては、ファッションなどのデザイン、料理、観光資源、更にスポーツ、イベントといった必ずしも著作権等の保護を受けないけれども、知的・文化的な資産というものもあり、今後検討の課題としてあるのではないかということ、また、21世紀型コンテンツということで、これまで全くみんなの頭になかったような新たなものも登場してくる可能性があること、そういった幅広い分野について、その振興のための施策というものを検討することが今後の課題ということで、最後に挙げてございます。
 以上が振興政策案の概要でございます。


○牛尾会長 それでは、討議に入りたいと思います。
 いつものように、御発言のある方は、ネームプレートをお立ていただいて、3分ぐらいを目途にして、約一時間弱ありますので、2サイクル、発言できるわけですから、それぞれで御自由に御発言をお願いいたします。どなたからでも結構です。
 関根委員どうぞ。

○関根委員 関根でございます。
 今回こういう形で、コンテンツ産業・コンテンツビジネスといった分野について官・民あげて振興させるということに着目し、こういった案をまとめたというのは、大変結構なことだと思います。加えて、さまざまな分野の方々と率直に意見交換できたというのは、非常にありがたいことだと思います。事務局の皆さんには本当にお世話になり、ありがとうございました。
 「意見」というか、「要望」というか、2点述べてみたいと思います。
 まず、1点目ですが、ポンチ絵にありますように、今回の3つ目標と10の改革について、向こう3か年で改革していくというふうに述べています。これは16年度から18年度にかけての3か年というふうに理解しています。
 しかし改革と銘打っているんですから、一気呵成にやった方が良いと思います。改革は一気呵成に実行しないと成果は上がりません。3年というのは、長いか短いかというのはそれぞれ個人的な評価によって異なるのではないかと思います。「3年のうちにやればいい」というんではなくて、できるだけ1年でも前倒しでやるという、そういった気構えで是非やっていただきたいと思います。
 当然、欧米を始め、アジアでは中国、韓国というところが、日本をキャッチアップすべくいろんな施策を打ち出しているわけですから、この3か年の間にいろんな形で新しいコンテンツを生み出してくると思います。従って、『改革』と銘打つ限りは、できるだけ短期間のうちに、内容のあるものを成し遂げていただきたいというのが1点であります。
 もう一点は、今回の政策を見る限り、さまざまな制度や体制、そういったものを整備して、「事業規模の拡大」というんですか、「量的な拡大」というんですか、そういったところに主眼が置かれていると、私はそういう受け止め方をしています。しかし『コンテンツ』というのは放送であれ、アニメや映画であれ、文化的な側面を持っています。従いまして、そういう量的な規模の拡大といったことは勿論大事ではありますけれども、やはり質をどうやって高めていくのか。コンテンツの内容の充実、レベルアップというのが非常に大事だと思うんです。
 当然、コンテンツは、内容が悪ければ市場から淘汰されます。今回の政策にそういう視点が全くないとは言いません。言いませんけれども、まず量的な規模の拡大をやった上で、二次的な補完政策として、日本のコンテンツをどういう形で内容の充実をはかっていくのか。別の言い方をしますと、量的な拡大をやったあとのフォローアップがどうしても必要になってくるんではないかという気がいたします。
 日本のコンテンツを官・民あげてどういう形で内容を一段と充実させていくのか。そのためにはこれからもいろんな形で、制度や整備それに体制の充実をやっていく必要があるんではないかと思います。
 つまり、今回の政策を打ち出したことでコンテンツの振興策がこれで終わりというのではなくて、更にコンテンツの内容を充実させることに着目した体制の整備、そういったものを是非これからやっていただきたいということをお願いしておきます。
 文字通り日本のコンテンツ産業を地球規模で展開させていくためには、この2点について是非考えていただきたいと思います。

○牛尾会長 大変貴重な御意見だと想います。続きまして依田委員。

○依田委員 この調査会が、牛尾会長、荒井事務局長のリーダーシップの下に一体感ができ上がって、非常に短期間にすばらしいコンテンツビジネス振興政策案が出てきたことついて、日本始まって以来のことだと想いますし、この場を借りて感謝と敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
 総論的に申し上げますと、今回出てまいりました多彩なメニュー、これをどのようにこなしていくか、どのようにビジネスとして、あるいは文化政策として具現化するかということが非常に大事だと想いますが、私ども民の立場から言いますと、経団連でエンターテインメント・コンテンツ産業部会ができておりまして、明日の16日に経団連の理事会に今回の知的財産推進計画の改定に向けてという提言を諮ることになっています。その中で我々、産業界としてすぐに手を付けなければならない問題をまず列挙しまして、その辺からアクションを起こそうというつもりで現在動いております。その最初に挙げられるのはコンテンツ振興税制ということだと思っております。
 税制という言葉ではなかなか御理解いただけない。コンテンツ振興という形容詞を付けて、早急にワーキンググループを立ち上げて経団連内部で検討をスタートさせます。
 あるいはまた全般的な映像産業を網羅する形で振興機関をつくるとか、あるいは東京国際映画祭をどうするかということを含めまして、映画祭のみならず、関連のソフトコンテンツをどのようにまとめるかという意味においての、国際見本市的な色彩を帯びた新しい東京国際映画祭を今年10月に開催する、サポートするとか、あるいはコンテンツの二次利用を促進する。あるいはまたブロートバント時代に対応したコンテンツ利用の促進をどのように図るか、勿論、海賊版、模倣品等もございます。
 そんなことで、民としてとにかく経団連がサポートして、一つ一つの分科会をつくって進めるという動きになりますので、是非、今回でき上がりましたコンテンツ振興政策案が早く政府から発表されて、後押しをしていただければと想います。
 1つ2つ、各論的なことを申し上げたいんですが、先ほど申し上げましたように、税制というのはなかなか聖域で一般的には立ち入れない分野であるというふうに我々、ソフトコンテンツの業界は思っておりました。しかし、今回この機会をとらえて、コンテンツ振興税制という形でいろいろな税制の改正案をまとめる。先ほど申し上げたとおりでございますが、それが4ページ目の改革3のところの「コンテンツの制作・投資等を促進するために必要な税制上の措置」という表現よりももっと踏み込んだ姿勢にしてほしい。先ほどの資料5の1の4ページの改革3のところでございます。
 改革4の「人材育成の強化」のところでございますが、前回申し上げたと思うんですけれども、人材育成について、ともすればプロデューサーであるとか、制作者側の人材育成が表面に出ますけれども、やはりどう考えてもハリウッドであるとか、あるいは欧米のコンテンツ制作、あるいはコンテンツのアグリゲーター、あるいはコンテンツのディストリビューターは、トップが自分で日本に乗り込んできて、あるいは自分の言葉でビジネスをまとめていくという人材がきら星のごとくいるんですね。日本の場合にはそれがまだ圧倒的に不足していると思います。
 そういう意味で、いわゆる国際事業推進ができる、そういうビジネス・アフェアーズがきちんとできる人材というものを大学院も含めまして、今後の教育機関においてはその科目を入れるべきだと私は思います。
 ともすると、コンテンツ制作ということに重点が置かれますが、そのコンテンツをどのように国内外にビジネス展開をしていくかというマーケティング思考のある人材を育てるということが必要だと思います。
 最後に、8ページの「関係者一体となった取組みの促進」という事項がございますが、これにつきましては、岡村委員から前回御指摘があったとおり、是非ハードとソフトの業界が定期的にきちんと意思疎通がきるような基盤と言いますか、機関をつくっていただきたい。それにはやはり今回はこのアクションをベースに、経済産業省、文化庁、総務省、公取をはじめ関係省庁の仲立ちを得て、ハードとソフトがもっと緊密な連携を取りながらダイナミックなビジネス展開ができるような機関を奨励・支援する必要の程度ではなくて、踏み込んで動いていただきたいと想います。
 以上です。

○牛尾会長 これは事務局の方で今、依田委員がおっしゃった税制、「コンテンツの制作・投資等を促進するために必要な税制上の措置を検討する」というのは、法案ではどの程度書いてあるんですか。

○森口次長 法案では、一般的に、財政上、法制上、金融上の措置ということで書いてありまして、その中には税制も含まれております。

○牛尾会長 具体的にはどういう税制なんですか。

○依田委員 各論的に言えば、撮影所、あるいは劇場、スタジオ等が持っている膨大な固定資産に対する固定資産税が高過ぎて維持できないとか、あるいは寄付税制の問題であるとか、ソフトコンテンツ制作の企業においては、連結納税制度の見直しを求める声が上がってきておりまして、これはここ1、2週間の間に経団連でワーキンググループを立ち上げます。

○牛尾会長 まとめて資料を出してください。

○依田委員 まとめますから、提出します。

○岡村委員 今、依田委員からお話をいただいたので、私から余り付け加えることはないんですけれども、日本のコンテンツをこれから強化するため、今お話があったコンテンツそのものの優秀性をこれからもっとグローバルに広めていかなければいけないということは十分理解しますし、この計画に沿って進めていただきたいと思うんですけれども、これからのコンテンツの普及を考えると、やはりユビキタスという情報化社会に対応するコンテンツの拡大ということに対して意をもっと払っていかなければいけないんじゃないか。そういう意味からしますと、プロードバンドによってこれからコンテンツのビジネスがどう伸びるかという、従来の技術の領域を超えた1つの大きなコンテンツ業界の発展の基礎になるんじゃないかと思います。
 幸いにして、情報家電というものは日本が世界をリードする技術的な進歩を遂げていますので、是非この機会をしっかりととらえて、グローバルに技術を含めたコンテンツビジネスの拡大を、日本がリーダーシップを取っていくべきではないか。そういう観点からの検討を是非お願いをしたいと思います。
 具体的にはいろいろ技術の芽が出てきておりまして、電子書籍であるとか、音楽配信、あるいはDVDをインターネットで配信するとか、あるいはそれを含めた映像配信という新しい技術、それに基づいたセキュリティーや課金の仕組みもできつつあるわけで、これが飛躍的に日本のコンテンツビジネスを拡大させる1つのきっかけになるんじゃないか。 そういう意味で今、お話がありましたように、ハードウェアの業界とソフトウェアの業界が一体になってその技術を評価しながら進め合っていくということが互いの産業にとって大変メリットのあることだろうと思います。
 私自身がここへ唯一ハードウェア屋として参加している意味というのも、そういうところにあるんじゃないかという気がいたしまして、そういう意味で今回改めて最後に「関係者一体となった取組の促進」ということが謳われておりますのは、今、依田委員のお話にありますように、更にこれを深めていただきたい。そのための関係府省の御協力を是非お願いをしたい。民間サイドもそのつもりになってこの問題に対して取り組むということをお約束をしておきたいと思います。
 それから、これも先ほど関根委員から御指摘がありました3か年計画ということでありますけれども、やはり一番大事なのは、3か年かかるということはあり得る。しかし、最初の1年何をするのかというのが一番大事で、最初の1年のロードマップをきっちりと描いて、評価は1年ごとに評価をしていくという仕組みを是非つくっていただきたい。3か年計画としますと、どうしても3年かかってやることというふうに考えられまして、3年後の結果だけを判定をするきらいがありますけれども、是非1年ごとのロードマップをきちっと書いて、それをフォローしながら次のステップへ行くための計画の変更とか修正を行っていくという活動を是非引き続きお願いをしたいと思います。
 以上です。

○久保委員 今回の振興政策案を読まさせていただきまた。コンテンツビジネスが守備範囲の広く、企業利益がぶつかりやすい業界の集合体だということを考えると、非常に効率よく提言を、実に短期間にまとめていただいていると思いました。まず始めに、事務局の方々とそれを指導された牛尾会長に敬意と感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 私自身は数年前よりこれといった援軍のない中、コンテンツの輸出作業を様々な壁にぶつかりながら行っておりました。当時は援軍などないのが当たり前だと思っていたわけですが、今回の政策案や、前々回の報告書などを読ませていただきますと、いろいろな作戦が今後は可能になると思っております。心強く感じております。
 このコンテンツ専門調査会は恐らく援軍先遣隊のようなものではないかなと思っているわけです。今回はまとめの回ということで、今までお話しした中で、特に強調したいものを細目ではございますが、幾つかお話しさせていただきたいと思います。
 まず知的財産保険の問題でございます。先ほど久保利委員の方からエンターテイメントロイヤーを増やすというお話がありましたが、やはり弁護士さんをお願いするということはお金がかかることですから、それを積極的に活用できる仕組みが背後になければいけないんじゃないか。それが保険だと思うんですが、現状、その北米地域に適用される知的財産保険を国内で安価に手に入れることは不可能でして、それを何らか改善できないだろうかと思っております。
 次に、税の考え方の問題ですが、依田委員と全く同意見でございます。少し補足させていただきます。例えば、全くヒットしなかったコンテンツはたとえ大金をかけて制作したものであっても、財産的評価はゼロです。以前、資産計上する際に何らか控除できないかということをお話しさせていただきました。例えば新しいコンピュータグラフィックスにチャレンジするとか、制作資金を集めるといった場合テスト映像をつくる作業が必要になってくるわけですが、この企画が仮にうまくいかなければつくったテスト映像は全く資産価値はゼロなわけです。ところが、国税は一円もかせがない映像も、あくまでも資産として計上してほしいという要望を出してきています。何らかいい解決の方法はないかなと思っております。

○牛尾会長 経費で落ちないということですか。

○久保委員 資産としてとらえられているということです。失敗作はあくまでも失敗なので価値はないはずなのですが。
 次に、契約の問題です。前回お話しさせていただいた放送局との契約の件ですが、実は前回から1か月の間で大幅に前進いたしました。この調査会の議事録がインターネットに載った後、さまざまな会話が開始されまして、日本動画協会、テレビ局間の間でも会話が再開されました。良い方向に向かったんではないかなと期待しております。
 ただ、いただいたお話の中で新しい問題として提案を1つ受けました。それが広告事業者との契約の問題ということでして、私は余り触れてなかったんですが、プロダクション、テレビ局の現場からも指摘を受けました。今後の検討課題かなと思っております。
 最後に一番強調させていただきたいのは、とにもかくにも、「クリエーターにより多く資金を還流させる」ということが重要であるということです。ディズニーのお家騒動が海の向こうで行われていますが、やはり何もないところから物をつくり上げる人というのが非常に偉い。または重要であるということは、多分、アメリカも日本も変わらないんじゃないかと思っています。つまり、クリエーターがいなければコンテンツビジネスはあり得ないわけでして、彼らの社会的、経済的な評価が、より適正に評価される時代が来ることを切に願っております。
 以上です。

○久保利委員 まず牛尾会長、本当に御苦労様でございました。本当にありがたいなと思います。難しい問題、今まで内閣で本気になって取り組んだこともないこの問題に、これだけ多士済々を集めて、きっちりとした方向性を打ち出していただいた、本当に御苦労様でございました。ありがとうございました。これは言わば第一撃ではありますけれども、ベルリンの壁も第一撃から崩壊をしていくわけでありまして、最初に穴を開けた、一打を打ったというのがこの専門調査会だとすれば、大変うれしい、意義のある存在ではなかったというふうに思いました。これから引き続き頑張っていかなければいけないと思うんですが、そういう観点から見ると、税制問題というのは非常に大きい問題だと思います。
 それは依田委員がおっしゃったとおりなんです。特に知財戦略、あるいはコンテンツというものを国家戦略の中枢に据えるということはどういうことかというと、国家の動いているシステム、あるいは構造というものを変えていくということだと思うんです。そうだとすると、今までは税金というのは、お国がとにかく取れるだけ集めて、これをばらまいていくという形で使ってきた。だけれども、本当のことを言うと、このソフト、コンテンツというのは、目利きでなければ、実はどこが本当にいいところで、これを発展させると国益にかなうかというのはなかなか見抜けない。そういう点から言いますと、現場で一番一生懸命やっている人が、一番目利きのはずなんです。それだって失敗があるわけです。 そう考えてくると、その人たちが投資をし、一生懸命やって失敗したものに対して、損金として認めないという体制そのものが私はコンテンツというものをむしろ阻害する税制なりシステムになっているんではないか、と思います。
 ですから、そういうところへ投資をして、うまくいったらリターンがあって、そのリターンにはしっかり税金をかければいいわけですから、損をしたときにまで無理やり持っていくというのは、国家戦略としてコンテンツを中心に据える発想とは思えないということをまず申し上げたいと思います。
 そういう中で言えば、例えば、今、もし我々に健康保険がなかったときに、30万人のお医者さんがいても、この医師にかかる気があるかというと、多分かかれない人が大半だろう。 逆に弁護士がどんどん増えていっても、さっき久保委員がおっしゃったような知財保険とか、そういう保険制度がないときに、弁護士費用は誰がどう払うんだということになると、結局そのコスト負担に耐えられないということになっていきます。アメリカの一流弁護士は決して日本の弁護士よりも安いわけでも何でもありません。何倍も高いわけです。しかし、それに払ってでもやろうとしているのは、それなりの財力があったり、それなりの税制があったりするからであります。
 そういうスキームを抜きにして、単に弁護士だけ増やして、弁護士が一生懸命勉強すると、それでみんなハッピーになれるかというと、そういうことではない。とりあえず今、エンタメ・ロイヤーズ・ネットワークをつくって、勉強を始めますし、それは充実してまいりますけれども、基本的には、誰が、どう負担するんだということはしっかり押さえなければいけない問題ではないかというふうに私は考えております。
 そういうようなことを考えていくと、まだまだ道は遠いわけでありますけれども、とりあえず一撃は振った、穴も少しあいてきたということでありますので、まさに関係者全員、力を合わせながら前へ進むその第一歩として、本当にいい機会を与えていただきました。ありがとうございました。


○熊谷委員 先ほど関根委員の方からも、3か年を前倒しにという御意見をいただきましたけれども、まさに私たちはこのように半年間議論を重ねている間にも、韓国などにおきましては、コンテンツ産業を中心にした雇用拡大を促進する政策ですとか、そういったことを次々と打ち出しておられます。私たちも力を入れて急ぐ必要がありますし、そのためにも、ここまで議論してきた貴重な内容をなるべく早く精査して、実行に移していく必要があると思います。
 先ほど税制の問題がいろいろな方々からお話しされておりますけれども、ブロードバンド時代における事業展開の促進ということで、改革9にも謳われておりますが、このブロードバンドの問題に関しては、税制と少し絡んでくる事実もございます。
 というのは、ゲームコンテンツなどダウンロード型のコンテンツに関しまして、制作費をかけて投入したコンテンツが、5か年の定率の償却期間を経なければ費用化できないというような税制上の問題がございまして、これが我々コンテンツ制作者にとっては非常に重荷となっております。
 つまり、つくったものをサービスとしてユーザーに提供し始めた時点では、すべてを費用化することは難しくて、5年をかけて少しずつ費用化していきなさいというようなことがございまして、そういったことがある種の阻害要因というか、ダウンロード型のコンテンツをブロードバンドで配信していくというビジネスを、なかなか難しいものにしております。
 したがって、こういったブロードバンドによる事業展開の促進というのが必要になるというところでは、まず税制上の改革についても、御検討いただきたいと思います。
 また、今回の報告書の第1部コンテンツビジネス振興政策の基本方向ということで、3に「集中改革を実施し、事業規模を上昇傾向へ」という目標が掲げられております。ここでは、コンテンツビジネスの振興を図るため、コンテンツの創造サイクルの活性化が重要とありますけれども、まさしくこのコンテンツの創造サイクルをいかに活性化するかといった具体的な施策が求められていることと存じます。
 1つには、第2部の改革2に「資金調達手段の多様化」というのが謳われておりますけれども、勿論、これは非常に重要な課題でございます。ただ、一方で私たち制作者にとってはコンテンツ制作に投資した資金を回収することが、資金調達にもまさる事業拡大の道でございます。コンテンツ制作者の資金回収のための環境整備をする施策としては、勿論、海賊版問題への対応ですとか、CDの還流防止策とか、書籍の貸与権などの取り組みなどが具体的に既に行われておりますけれども、ただ、販売流通等の環境を整備するということに関しましても、非常に重要なテーマでございます。今後もこの点の問題意識は共有させていただきたいと思います。
 以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。続きまして日枝委員。

○日枝委員 先ほどから各委員の皆様もおっしゃられているように、コンテンツビジネスの振興に関して、この専門調査会で非常にはっきりとした形で、答申がまとまったということは、本当に風穴が開いたというふうにおっしゃられた方もいらっしゃいましたが、まさに第一歩であろうと思います。私どももコンテンツをつくることに参加している放送業界ですけれども、久保委員もおられますけれども、一応ここでコンテンツビジネス振興に向けた第一歩がスタートできるのではなかと思いますし、これを期に、日本のコンテンツというものが大きく伸びていくことを大いに期待をしているわけであります。
 私はかねがねこの会でしつこいように前近代的な要素も否定してはいけない、と言ったわけですけれども、そもそもコンテンツは、さっき久保委員もおっしゃったとおり、クリエーターがつくるわけです。クリエーターというのはどうしても人間的な要素があるわけです。
 ここで行ってきた議論では、クリエーターたちの権利とか制作の能力、税制の問題がありましたけれども、彼らをサポートする方向性がこの調査会から出てきたことは大きな成果であろうと。
 先ほど久保利委員のお話のように、エンタメロイヤーのシステムをつくり、それを徐々に広げていこうという動きを見ても、この調査会を立ち上げたのは大きな意味があったと思います。
 先ほどからお話があるように、3年計画にするのか1年計画にするのかという議論がありますけれども、やはり1年でできるわけは勿論ありません。したがって、事務局に是非お願いしたいのは、ロードマップをつくって、とりあえずまずここをやる、次にこれをやっていくということを明示した方がわかりやすいし、各業界のそれぞれの皆さん方も改革をしていく努力が出てくるんだろうと私は思っています。
 各論ですけれとも、この中にも入っており、言うまでもないんですが、参考資料の2ページ、改革5の「2」のところで、ポストプロダクションというのがあります。私が言うのも変ですけれども、我々放送局は、局によって制作技術の態勢が違いますが、おおまかに言って、局の制作技術がつくるのが半分、プロダクションがつくるのが半分。そうすると、プロダンションもデジタル化に対応していきませんと、番組をつくれなくなってしまうわけです。
 したがって、このプロダクションの皆さんに対する税制上の何らかの措置を考えて差し上げないと、デジタル化が遅れてしまい、ひいてはコンテンツビジネスのデジタル化が遅れるということになってしまいます。是非ここで私がポストプロダクションの皆様に代わって、そこのところを是非言わせていただこうと。半分の作品がそういう人たちにつくられて、放送していく。あるいは映画になっていくということもございますので、是非お願いしたい。

○牛尾会長 デジタル化を支援するためには、どうするんですか。

○日枝委員 つまりハイビジョンのカメラとか、編集室とか、そういうのをこれから買っていかなければいけないんです。税制面での何らかの優遇措置を考えてあげないと、なかなか難しい。多分税制を考えるのが一番いいんだろうと思いますけれども、それをやっていただかないと、放送業界で言いますと、2011年には全部デジタル化になる。すると、各プロダクションはみんなデジタル化をやっていかなければいけないわけですし、今、議論しているコンテンツビジネスにもデジタル化は不可欠ですので、プロダクションに代わって、私から申し上げたいと思います。
 それから、海賊版対策ですけれども、これは参考資料の「目標3 海外、新分野のビジネス等を大きく展開する」という中で触れられていますが、実は先ほどから出ておりますように、ブロードバンドなどどんどん多メディアの時代になればなるほど、著作権をいかにはっきりさせるかということが大事で、アジアでこれから日本が作品をつくっていくことは非常に大事なわけですけれども、この海賊版対策について是非もう少し大きく太い線で書いていただいてやっていくことが必要ではないかと思います。
 いずれにしても、これだけ関係業界の皆様がこのコンテンツビジネスというものを初めてこれだけ大きくまとめたということに事務局の皆さん、また牛尾会長には敬意を表したいと思います。ありがとうございました。

○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、重延委員、どうぞ。

○重延委員 今回のまとめに関しては、本当に新しいコンテンツ時代を迎えるということで、感謝をしております。やはり1つの特徴は国策となっているということではないかと思います。今まで各分野でいろいろな発言があり、いろいろな活動をしましたけれども、最終的には国策でなければ動かないレベルになってきたということで、今回、国策というレベルで動いたことに、非常に大きな意義があると思っております。
 国策ではあるのですけれども、これからはやはり、早く、具体的に、この2点だと思いますけれども、この2点を是非推進していただきたいと思います。
 先ほど確かに新しい一撃という言葉があって、非常によい言葉だと思っているんですけれども、もう一つ欲を言えば、これがそのまま世界を驚かせるかというと、まだそこまで行かない一撃であろうと、そういう意味ではもうひと一撃、次の専門調査会があれば、是非世界を驚かすもう一撃というものも考えていくことがあり得たらと思います。
 私個人としては、やはりアジアの趨勢というのが非常に気になっておりまして、そういう意味では日本が少しその中心的な役割を果たしながら、さっきネットワークという言葉が出ましたが、アジア・コンテンツ・ネットワークみたいなものをつくり上げて、ヨーロッパやアメリカときちっと競争できるようなものにつくり上げていくことが非常に重要な時代ではないかと考えます。2008年の北京オリンピックとか、2010年の上海万博を考えますと、やはり早くから日本がその役割を果たせると非常にいいのではないかと思います。そこには勿論海賊版問題も入ると思いますけれども、やはり日本が世界で何を果たすかということが非常に重要ではないかと思います。
 各論で言いますと、やはり先ほどから出ている中で、クリエーターというのが非常に重要な意味を持っているので、私としては国際的な展開、あるいは産業としての展開には、天才的クリエーターというものが重要だと思うんです。この天才的なクリエーターが何人か生まれれば、そこに裾野のように広がっていくという感じがありますので、このクリエーターがいかに生まれるか、それからいかに育つか、それからいかに成功を持てるか、この3点に関して具体的に進める方法を考えていくべきではないかと思います。
 その1点として、日本の場合を考えますと、先ほど岡村委員がおっしゃった技術ですね。デジタルを契機としてということが非常に日本にとってはある意味では意味がある。それがハリウッドで開花してはいけないので、日本の中で開花するという技術とクリエーターの連携というのが1つ新しいでしょうし、NHKさんが推進しているハイビジョンもその1つのきっかけであるだろうと思うんです。そういうツールを日本は持てるわけですから、それが世界に利用されて、世界のものということではなくて、日本独自の発信ということに使われていることが非常に望ましいんじゃないかと思います。
 もう一つは、放送という各論で申し上げますと、残念ながら放送ソフトというものは、こういう流通の話の中では、実は余り国際的進出をしてないものだと思うんです。それは、国際的というよりも国内的なところで十分産業として成り立っているからということではあるかと思いますけれども、これからの放送というのは、むしろそういうパッケージをつくって売るということだけではなくて、ここにあるアニメーションも映画も演劇も、あらゆるものが放送の中に含まれるものだろうと思います。そういう意味では放送というジャンルではなくて、放送がすべてのジャンルを助成し得るというか、一種の舞台としてどうぞ放送を使ってくださいというような広がりのある放送という観点から、私は放送が情報発信基地だと思っているんですけれども、そういう広がりのある中で放送がつくられていく、放送がこういう全体のコンテンツを育てていくということが重要です。今、放送の編成がどうしても産業構造から言えば、視聴率、それからGRPという中での考え方しかないんですけれども、そこら辺の構造の中で、もう少し多様にほかのソフトを編成できるような、ある種の考え方を持って、それが日本全体のコンテンツの育成に協力できる形になれば嬉しいと思います。
 以上です。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。浜野委員、どうぞ。

○浜野委員 私が6年前に東京大学に赴任して、コンテントビジネス概論というのを初めてやったときに、いろんな方から「それは何だ」とか、「世も末だ」とか言わましたが、東京大学でコンテンツの人材育成に取組むという記者会見をできるところまで来ました。これは、この調査会の存在が非常に大きかったと思います。どうもありがとうございました。

最近非常に辛い思いをしました。記者会見の記事を見た学生が私に会いに来て、こう言いました。「たまたま勉強ができて東大に行ったが、本当はアニメーションの仕事をしたかった」と。「卒業する段になって何だ」と。だから是非スピードが必要だと思いました。不作為故にあんな優秀な人材が、みすみす製造業に流出してしまっているのです。
 個別の点ですけれども、5ページに改革6としてコンペとか、改革8で東京国際映画祭のことが出ていますが、新しいコンペとか、新しい顕彰事業も大切だと思いますが、これまでにある顕彰事業とかコンペも大事にしていただきたいと思います。
 東京国際映画祭の前プロデューサーの川口さんに、東京国際映画祭の15回記念の国際審査委員長としてスピルバーグへの就任依頼をするように頼まれたことがあります。スピルバーグに頼んだときに、彼がこう言ったんです。「そのイベントは何回目だ」と、「15回記念です」と言ったら、「コンペとかアワードというのは50回目から価値がある」と。確かに、カンヌ映画祭も米アカデミー賞も50回をはるかに超えています。勿論既存のものにはいろいろ改善の余地はあろうと思いますが、回数だけはごまかせないので、是非既存のイベントも大切にしていただきたいと思います。
 韓国とかカンヌも大変公的な資金で、大きなイベントをやっておりますが、日本のイベントというのはほとんど今、尻切れトンボで終わりそうなものがいっぱいあるので、是非御配慮いただきたいと思います。
 もう一つは、6ページの改革の10ですけれども、これは里中委員からもお話があったと思いますけれども、大衆文化というのは保存とか保護というのは、かつての浮世絵のように考慮されていません。そのため一次資料にアクセスできない。民間のコレクターが集めてアクセスできない状態になっています。社会的啓蒙とか文化的保護ということからも、ミュージアムとか、アメリカのナショナル・プリザベーション・アクトに当たるような、公的に収集する制度が必要だと思います。社会的なアイコンとしてもミュージアムは機能するので、映画や漫画、アニメーション、ゲームなどに関するミュージアムを是非つくっていただきたいと思います。民間の努力ではこういうところまで手が回りません。
 8ページに今後の検討方向として、デザインとか料理という、著作権で保護されないものが入っておりますが、観光資源ということでひとくくりにされていると思うんですが、景観というのをできれば分離独立させていただけないでしょうか。フィルム・コミッションが映画撮影を誘致したいといっても、景観が破壊されていたら撮る価値のあるものがないわけです。現実の景観が美しくなければ、コンテンツそのものがなりたちません維持されません。
 以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。角川委員、どうぞ。

○角川委員 去年、7月8日に出ました『推進計画』、そして今回の『コンテンツビジネス振興政策』とつなげて、私は本当によかったと思います。「推進計画」の成果でありますが、著作権法の改正の柱が、CDの還流防止、あるいは書籍の貸与権、また著作権の侵害に対する罰則の強化ということで、著作権法改正が文化の「振興」という立場に一歩踏み出してきたなという感じがしております。それも『知的財産推進計画』の実施によって行われてきたというふうに思いますし、非常に意味のあることを我々は今やっているんだなという自負を持っております。
 その一方で、今回の素案を見ますと、もう一回去年の「創造、保護、活用」という視点でこれを見直してみますと、活用という点で更につっこんだ具体性が欲しいなという意見を持っております。特に活用的な部分としては、6ページの「改革8 海外展開の拡大と海賊版対策の強化〜アジアへ、そして世界へ〜」、それから「改革9 ブロードバンドなどによる事業展開の推進〜もっと便利におもしろく〜」という部分が対応しているのではないかと思います。その点で、私がまたここで提案させていただきたいのは、海外展開の拡大と海賊版対策の強化という点では、既にいろいろFTAとか自由貿易の促進だとか出ておりますし、TRIPS協定などもあるようでございますけれども、必ずしも実効性が上がってないと思うんです。それには、やはりアジアの国々との間で海賊版・模倣品対策条約というのを、二国間条約で推進していく必要があるんじゃないかという感じがいたします。是非「二国間条約の制定」を提案させていただきたいと思います。
 そして、この海賊版・模倣品対策が実効性があがるものとしていくため、数値目標を付けていくようなことをしていただきたいと思います。
 「9」のブロードバンドの事業展開につきましては、非常に日本の警察庁が頑張っていただいておりまして、京都で違法なインターネットの摘発が実行されて、日本のコンテンツプロバイダーは勇気づけられているんですけれども、まだまだ全警察に対する体制の強化という点では脆弱だなということを拝見しました。その上で、財政上の裏づけなどを必要とするという点で言うと、「インターネット上の海賊版・模倣品の対策強化法」という、ブロードバンドにおける海賊版・模倣品対策を強化する法律を制定していただきたいと思います。
 このインターネットの問題は、日本は世界に先駆けてブロードバンドが普及しておりますので、その点で先進的な強化法をつくること、先ほど重延委員がおっしゃった、世界に対して日本の知財の対策として発信していくためには、非常に格好な法律ではないかと予感がしております。本当に、映画のコンテンツのブロードバンドでのファイル交換等も、かなり激しくされておりまして、その問題を是非更に一層強化する法律を制定していただきたいと思います。
 今回、バンダイさんが「たまごっち」を再発売されるんですけれども、その「たまごっち」の前の反省から、いろいろな中国における4つの工場を1つにするとかをされているんですけれども、その中で意匠権によって海賊版・模倣品を抑えようという動きをしています。もう外の形がそっくりなんですね。「BANDAI」が、「BENDI」といったりですね。そういう点で意匠によって取り締まっていく、そうすると意匠法もどうなるかというふうな、強化をする必要があるんじゃないか、そんなことも是非検討していただきたいと思います。
 なかなか難しいことでしょうけれども、私はやはりこういうふうな著作権の制度が国際的に共通であるということが非常に必要ではないかと思います。アメリカが非常に強化しているのであれば、アメリカに従って強化していくということの視点が必要ですし、アジアの国々に対しても、その国々でそれぞれ個性的な制定をするのではなくて、なるべく世界共通の法律をつくって、それに従ってもらうということが必要なんじゃないかと思います。
 今回の成果は大きいものがあると思いますけれども、これを経団連の意見書にもありますように、更にステップ・アップして、それからスピード・アップする点では、私は去年のものがホップ、今回がステップという位置づけにすれば、やはりジャンプという点でもう一回1年苦労を続けさせていただいて、それで重延委員がおっしゃったような、国家的な、日本が世界に発信していく国家ビジョンを構築する視点で、でも一層頑張る価値はあるというふうに思っております。そういう点で、是非この知財本部の取り組み方が、更に組織的にも強化されて、欧米そしてアジアにあるような韓国文化コンテンツ振興院とか、フランス映画庁という恒久的な形でこの知財本部を更に強化していっていただきたいと思います。

○牛尾会長 それでは、最後になりましたが、里中委員、どうぞ。

○里中委員 最後に短く、本当に皆さんおっしゃいましたけれども、ありがとうございました。そして、さまざまな分野のすばらしい人たちと、こういう1つのテーマで短い時間ではありましたけれども、各業界どんな問題を抱えているかということも伝わってきて、大変私自身も勉強になりました。
 そして、このコンテンツビジネス振興ということを前面に打ち出したということは、実はかなり創作者たちが励みにしております。国がやっとコンテンツということを前面に押し出して、国はこういうことを考えていますよということで、これまでどちらかと言いますと形になることばかりでしたね。ものとか、見えるもの、ところがコンテンツというのは実は発想であるということで、発想が大切なのだと、発想こそが国の力であるということを公的に前面に出したということが、創作者たちの励みになっております。そんな励みしか創作者たちにはありません。なぜかと言いますと、先ほどから税制の話が出ておりますけれども、つまりこれまで我が国というのは、ものばかり見ておりまして、ものに対して税金をかけると。そうしますと、先ほどデジタル化のための税制というのがありましたが、デジタル機器を買えば買うほど、それが資産とされて、償却期間が長くて、苦しい中からよりこの時代に合わせた発表の仕方をしようとして、新しい機材を導入しますと、そこにはお金がかかって、しかも税制上の優遇措置も何もないと。
 何年か前に各企業が、デジタル機器を購入するに当たって、税制優遇措置ってありましたが、認められる金額は99万9,999 円までだったんです。こんなことでは、だれもチャレンジしないです。つまり仕事のために必要なものに対しても、償却期間が長過ぎるというのと、先ほど来また話が出ておりました、損金として認められる範囲が長過ぎる。ですから、海外進出や海賊版に関しましても、かなり出版界でも中国、その他に出て行こうとしましても、投資よりも見返りの方が少なくて、あげくのはてに海賊版が出回るきっかけになってしまうと。それで、引き上げてしまわざるを得ない。なぜかと言いますと、損金として認められない、お金をかければかけるほど、それに税金がかかってしまうということで、韓国が韓流パワーで中国にどどっと出ていったことと、正反対のことが起きたわけです。だから税金というのは、この場でこんなことを申し上げるのは、非常に素人っぽくて乱暴なんですが、リターンがあったときに初めてそれに公平に税金がかけられるという形にすれば、みんなもっと働きがいもあるし、頑張りがいもあるし、お金のかけがいもあると思うんです。我が国では、ある程度以上のお金を持つことが悪であるかのような、そういう平等という名の下で、目に見える形での財産だけでものを見てきたような気がします。実はこの調査会、何か今後発表なさるときに、もう一つインパクトが足りないとなりますと、むしろ抽象的な理念の部分だと思うんです。我が国がこれまで、もの、形に現われたものだけで価値をはかろうとしてきた、だけど改めてここに国家百年の大計として、発想そのものに価値を認める国になるのだという、そういう何かすばらしい、日本というのは生まれ代わったんだと思わせるような見せ方、それによってより創作者たちへの励みになりますし、海外から見ても、もしかして日本で何か創作活動をやることは、有利に働くかもしれないと、そう思えるような見せ方ができればすばらしいと思います。
 最後に、もしかしてこれが今回コンテンツが金になるのだと、国として経済効果が上がるのだということだけで、こういうことをしようとしたのだと思われてしまいますと、やはり金とかものだけに価値を抱いていると思われかねません。むしろ文化というのは、国際理解、各民族の理解、お互いの国を尊敬し、理解するための、それこそがコンテンツなんですね。もうじきオリンピックがありますが、世界中の人々がギリシャと言うと思い出すのはオリンピック、なぜかと言うとオリンピック精神という、実は形にならないものですね。オリンピック精神を生かしたものがオリンピックという形になって、そこにその間戦争はやめたという歴然たる事実があるわけですから、ギリシャという国のイメージをみんなが抱くわけです。
 私たちが中国に対して抱いている気持ちも、今、海賊版その他みんな苦労していることがあるにしましても、どうしても拭い去れない尊敬の念というのは、かつての中国の思想であり、文献であり、文化だと思うんです。そういう国に私たちもなれるはずなんです。ですから、そういう国になるのだと、世界から尊敬され親しまれる、そのためにコンテンツを生かすのであるということが前面に出れば、随分違ったイメージになるのではないかと思いました。私はしょせんしがない創作者ですので、経済的なことよりも、どうしても何をアピールするかという見せ方が気になりますので、そういう雰囲気が伝わればいいかなと思いました。そこがイメージとしてもう一つ創作者たち、あるいはその創作者を支えてくださる一般の方たちをかき立てる何かプラスワンが欲しいと思いました。
 いずれにせよ、すばらしい今回の企画で、あと20年経ったときにあれがきっかけだったのだなと言われることになれば、とてもすばらしいと思います。本当にいろいろとありがとうございました。

○牛尾会長 全員の方から、大変貴重な御意見ありがとうございました。特に冒頭に関根委員がおっしゃった、量的拡大よりももっと大事なものであるコンテンツの質についての議論は、今、最後に里中委員がおっしゃったニューコンセプトや発想や創造力の議論を込めて、質というものが一番重要であるということを強調する必要がある。量的拡大も大事ですが、質を下げない、質を上げていく、理念とかコンセプトを大事にするということは非常に重要な点かと思います。
 もう一つは、この種のものというのは、内閣府にあるような本部の場合は、一過性で終わりやすくて、これも関根委員がおっしゃったんですけれども、一過性にしてはだめだと、これはもう貴重な第一歩として、ロードマップをきちっとつくって、そして3年ぐらいになったら経済財政諮問会議でも工程表をつくるわけですから、工程表ぐらいまでつくって、実行するんだという決意を示す必要がある。そのためには、知財本部のこの事務局はきちんとした受け付けの窓口までつくって、作業としての体制を組む必要が大事ではないかという気がいたしました。
 それから、お話を伺って、製造業に比べて税制の問題とか、保険の問題とか、近代化のための金融支援とか、社会インフラ、それに法律的なロイヤーの問題とか、非常にこの分野だけが30年ぐらい後を歩いているような印象を与えるような御発言が多かったわけです。やはりこういうことになった原因は、実は業界にもあったと思うんです。というのは、クリエーティブな人というのは社会的な制度を知らないことの方がクリエーティブで、いろんなことを知っているとあいつは俗っぽいものだというようなムードが価値観の中にあると思うのですね。やはり作家でも昔は夜でないと書けないという人が、普通どおりの生活態で書けるように変わっていくのと同じように、この分野は日常の社会制度に乗っかって仕事ができるような雰囲気にどう変えていくか。やはり社会の中でのクリエーターのイメージ、社会的地位、尊敬感というものを、もっともっと高める必要がある。これは7割ぐらいは社会の責任ですが、3割ぐらいはクリエーターの方にもあるというところを、これから大いに考えていく必要があるのかなという気がしました。
 それから、ハードとソフトの連携に関しては、確かに日本のデジタル機器、携帯電話、ブロードバンドもそうですが、世界の先端を走っていると思います。携帯電話でも、契約者数が、もう中国が1億5,000 万人に達しているのに対し、日本は約半分の8,000 万ですが、質的にはもう圧倒的に高い。このハード並びにブロードバンドのような情報システムの質に乗っかって、非常にレベルの高いクリエーティブなものがくっ付けば、非常に戦略的になるので、これは知的財産本部で別途ハードとソフトの形状的な住み分けをする、交流する組織を考える必要があると思います。
 それから、御発言の中に、もう少し具体的にするべきという話がありましたが、このようなコンテンツの会合を私も経産省で1回やった経験から言うと、具体的になると知財本部だけではおさまらない話になってくる。経産省とか財務省とか総務省とか国土交通省とか、多省との折衝があるわけです。私は、今、経済財政諮問会議の議員をしていますが、もう経済財政諮問会議で1個扱うと6つぐらいの省から関連した内容が返ってきて、ものすごく調整がかかるけれども、これを知財本部が恐れてはだめだと思うんです。だから内閣官房にあるんですから、内閣官房にあるということは具体的になれば多省にまたがる。それはあえて具体的にまとめることによって動き出すということですから、確かにホップ・ステップ・ジャンプの最後は、要するに多省とのかなり激しいやり取りもあえて辞さない決意を知財本部がする必要があれば、それは十分可能な範囲になると思いました。
 また、日本は今、文化に関心を示しており、経済成長の発展の中でも、クリエーティブやソフトやコンテンツ等の文化の発展が本当の新しい21世紀の成長と理解されています。また、徐々に従来型の競争力の発展も持ち上がってきているので、2004年、2005年、2006年というのは、非常に大事な時期に3年間を共有することであり、浮上する絶好のチャンス、順風が吹いていると言えると思います。そういう意味では、まずロードマップをつくって、更に具体的な工程表的なものも各省ごとのかなりの激しい交渉の上でやる必要があるのではないかという気がしました。だから、事務局もそういう決意をしてやってほしいと思います。
 その他、全部しゃべっていると30分ぐらいかかりますので、もうこれでやめますが、大体これまではだらだら2年やっていてもしようがないので、私が座長をするのはいつも6か月で6回ぐらいでやめてしまうんですけれども、かえって新鮮にきりっとした報告ができると思います。今回討議されましたこのコンテンツ振興政策の案を、今、若干整理しましたが、それプラス詳細を全部整理して、更に皆様から見て2段階ぐらいバージョンアップしたものをつくり上げたいと思います。また会議を開くのは皆さん大変だと思いますので、会長である私に御一任いただければつくりたいと思いますが、いかがでしょうか。

(「お願いします」と声あり)

○牛尾会長 それでは、そういうふうに作業したいと思います。昨年の10月以来5回にわたる会合において、人材、資金、国際展開、流通と多岐にわたって各委員から熱心に討議をちょうだいしました。非常に率直にお話をいただいて感謝したいと思います。この問題は、この委員は発言できても、この委員は発言できないということを事前に聞いていたんですが、驚くぐらいに皆さん堂々と発言されたので、大変に交流の場としてはいい雰囲気だったと思っております。心から感謝をします。
 また、各委員の熱心な討議のお陰もあって、最近、テレビや新聞を見ていても、コンテンツに関係した話題が非常に多くて、最近は政界の人に会ってもコンテンツの話をされるからびっくりする。コンテンツというのはどうやって翻訳するんだと言ったら、みんな専ら芸能とか娯楽とおっしゃっておりましたが、あながち間違いではない。そういう意味では政治にも大きく広まったことは驚きであります。コンテンツビジネス振興政策については、これまでの我が国の政府全体として明確な理念と改革の方向を持っていなかったことが、今度はこういうきちっとしたものを出して、また最後に里中委員がおっしゃったように、コンテンツの持つ文化性、創造性、また社会の尊敬感というものをつくる必要があると思います。是非コンテンツ専門調査会の報告においては、再度明確な理念と改革の方向性を打ち出すことに努力したいと思います。
 また、今、申しましたように、国会においても、現在、コンテンツの創造保護及び活用の促進に関する法律案が、これは議員立法で本国会中に通るはずであります。我が国のコンテンツビジネスが大きく発展することに寄与すると思われます。法律というのは通りますと、従来非常に困難だったものがすっと動くようであります。たしか施政方針演説でも入りましたから、施政方針演説と法律という、日本の法的な体系ができれば、もう車でいうとローからトップに入ったような感じですっと車を走り出す状況であります。
 コンテンツ振興政策については、私から次回の知的財産戦略本部会合で今日のことを再度報告しまして、知的財産推進計画の改定に反映されるように努力したいと思っております。
 最終版ができる過程においては、再度、委員の方々に個別に訪問することもあるかと思いますが、十分意のあることをお伝え願いまして、最終版がすばらしいできになるように御協力をお願いしたいと思います。
 また、ホップ・ステップ・ジャンプの方に関しましては、相当体力の要る仕事でありますので、よく荒井事務局長とも相談して今後のやり方をまた練って、この専門調査会は解散せずに、まだ皆さんはしばらくは委員でありますので、招集したときには来てもらうこともあるかもしれません。
 本当にどうもありがとうございました。