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第3回 コンテンツ専門調査会 議事録


1.日 時:15年12月 8日(月)8:30〜10:15
2.場 所:霞が関ビル東京會舘 エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、岡村委員、角川委員、久保委員、久保利委員、熊谷委員、重延委員、関根委員、浜野委員、依田委員
【事務局】荒井事務局長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 資金調達・海外展開について
(3) コンテンツビジネス振興政策(骨子) (案) について
(4) 閉会


○牛尾会長 ただいまから「コンテンツ専門調査会」の第3回会合を開催させていただきます。早朝にもかかわらず、大変にありがとうございました。
 本日は議題として、資金調達及び海外展開についての議論と、並行的に行いますコンテンツビジネス振興政策の骨子案についての議論の2つが大きなテーマでありますので、大体50分ずつに分けて運営をしてまいりたいと思っております。
 初めに資金調達、海外展開に関する討議でありますが、まず初めに40分くらい行って、この部分を終わらせたいと思うんでありますが、冒頭に事務局から資料1及び資料2について御説明をお願いしたいと思います。

○荒井局長 お手元の資料1、これに沿いまして、最初お話しさせていただきます。
 「コンテンツビジネスにおける資金調達について」でございます。2ページ目は目次でございますので、3ページにまいりまして、「資金調達の現状 現在主流となっている資金調達スキーム」の例を示してございますが、3ページには、製作委員会モデル、映画の場合には映画配給会社、テレビ局、出版社など、コンテンツを流通させる能力のある事業者が出資して、製作委員会を組織し、映画制作会社等に制作を委託する方式を示しております。この場合には、著作権を製作委員会が保有する場合が多いと言われております。
 4ページ目は、「テレビ番組」のモデルでございますが、テレビ番組制作の大部分を占める地上波キー局は、広告代理店を通じまして、スポンサーから広告費を集めて、それでコンテンツを制作する方式でございます。
 この場合には、著作権はキー局、または番組の制作会社が保有するケースが多いと言われております。
 5ページにまいりますと、2といたしまして、「資金調達をめぐる課題」でございますが、既存の資金調達スキームの場合には、コンテンツ制作会社の特色といたしまして、受託型ビジネス形態が多いこと。資金調達力が弱い企業が多いこと。『コンテンツは水物』という意識が強いこと、こういう特色が挙げられております。 6ページにまいりますと、(2)といたしまして、デジタル化・流通経路の拡大化が進んでおりますので、新しい資金調達スキームの整備が求められていると思います。一番下にございますが、コンテンツ業界が更に発展していくためには、コンテンツを制作する事業者による資金調達の円滑化や、自らのビジネススキームを外部の金融機関や投資家等からも信頼されるものへ変換していくことが必要ではないかという御指摘もいただいております。
 7ページは、3といたしまして、「資金調達の円滑化のための方策」でございますが、(1)といたしまして「資金調達スキームの多様化」ということでございますが、信託スキームの活用を進めたらどうかという御意見をいただいております。
 このためには、信託業法を改正して、著作権等の知的財産を信託可能とするとともに、多くの事業者による参入を可能とすることが必要だという御指摘でございます。
 8ページは、もう一つの案といたしまして「映画ファンドの活用」でございます。映画を投資対象として一般投資家から資金を調達する映画ファンドの組成を容易にすることが必要だということでございまして、(1)としては「人的構成要件など許可要件を緩和」することや、(2)といたしまして、全体的、総合的な見直しによって、もう少しこの消費ファンドスキーム自体を抜本的に見直しが必要ではないかという御指摘もいただいております。 9ページは、「(2)政策金融による補完」でございますが、「資金力やリスク負担能力に乏しいコンテンツ制作者の資金調達において、民間金融機関等の補完や、呼び水としての政策金融機能は重要」でございますので、日本政策投資銀行による融資・債務保証・投資制度の創設を図ったらどうかという考えでございます。
 10ページにまいりますと、「日本型完成保証制度の創設」でございますが、アメリカでは間接金融による資金調達手段が充実しております。制作の工程管理や制作会社の債務を保証する専門の事業者、完成保証会社が存在して、これが非常に大きな役割をは果たしていると言われております。
 11ページは、それに対しまして、日本ではこのような完成保証会社は存在しませんので、間接金融による資金調達が制約を受けているということでございます。したがいまして、日本でも日本型完成保証制度を創設し、コンテンツの企画を持つ独立した制作会社の資金調達を可能とする仕組みの創設が必要ではないかという考えでございます。
 12ページは「外部資金投入を促進する税制」でございます。ヨーロッパを始めとする諸外国においては、事業者や投資家からのコンテンツ制作に対する投資を容易にするための税制を整備している例が多いわけでございますので、一番下にございますが、「我が国においてもコンテンツ投資に対する税制のあり方についての検討する必要がある」という御指摘をいただいております。
 13ページは、参考といたしまして、フランスの投資優遇税制や、イギリスの税制の優遇措置の内容を示してございます。
 14ページは、(5)といたしまして「ビジネスモデルの透明性の向上」でございます。コンテンツ産業がいろいろ外部の資金を入れるためには、その投資された制作資金がどのように使われているか。経費や売上げなどがどのような様子か、そういうことの詳細、あるいは利益分配がどのようになるか。そういうビジネスモデルをはっきりさせて、外部の方から、あるいは金融機関からお金を集めることが必要ではないかということでございます。
 現在、民間における自主的な取り組みが始まりつつある状況だということが下に書いてございます。
 以上が資料1でございますが、次に資料2に沿いまして「コンテンツビジネスの海外展開について」お話しさせていただきます。
 2ページは目次でございます。3ページ「1.現状」でございますが、我が国のコンテンツビジネスを今後10年間で2倍程度に引き挙げるには、国内市場の拡大のみならず、海外へ大きく展開することが不可欠でございます。
 (1)にございますが、国内市場規模はここ数年11兆円前後で推移して横ばいでございます。
 (2)ですが、一方、アジアを中心とした海外市場は拡大する傾向にございます。
 (3)といたしまして、市場規模に占める海外売上の割合は、アメリカが17%に対して日本は3%と非常にこの差が大きいというのか特色として挙げられます。
 4ページは「(2)海外展開の現状」でございますが、我が国のコンテンツを活用した海外ビジネス展開の素地は十分にあるのではないかという御指摘をいただいております。(1)はコンテンツ、アニメ、ゲーム、映画など、海外でも高い評価を受けている例を書いてございます。
 (2)は、アジア地域においても、日本のコンテンツが人気があること。
 (3)は、例えば韓国で日本大衆文化の第4次開放が進められている状況だということを御指摘してあります。
 5ページは、「海外展開の現状」でございますが、諸外国ともに積極的に海外展開を図っております。諸外国と比較した場合に、残念ながら我が国の取り組みは遅れているんではないかという御指摘をいただいております。アメリカの場合には、著作権産業は化学産業、自動車産業、航空産業を抜いて、アメリカ最大の輸出産業になっているというレポートもございます。イギリスにおいても、音楽や映画が黒字になっておりますし、韓国でも、ここ4年で22倍という高い成長で映画の輸出を進めております。
 一方、日本においては、音楽ソフトは赤字でございますし、映画も輸出入が赤字ということでございますから、日本も積極的な海外展開が必要ではないかということでございます。
 6ページは、諸外国の海外展開の状況でございますが、アメリカは20世紀の初めから、映画の文化輸出、産業輸出ということを戦略的に展開しております。
 最近ではイギリスが「クールブリタニア」ということで、国家のブランディングを強化しておりますし、フランスでも国立映画センターで進めている。あるいは韓国や台湾も力を入れているということが示してあります。
 7ページは「コンテンツの有する波及効果」でございますが、コンテンツは経済効果にとどまらず、ほかの産業にいい影響を与える。あるいは文化にも好影響を与えるということでございます。ソフトパワーだという指摘もございます。他のメディアへの波及効果、日本の国家イメージが上がること、ハードへの波及、あるいは観光への波及効果、こういういい効果があると言われています。
 8ページは、以上のような海外展開を考えた場合の課題でございますが、いろいろ課題があるということで具体的には9ページからこの課題に対する方策が書いてありますので、9ページに参りますが、1つは、我が国コンテンツビジネスの海外展開のためには、企業が積極的にやっていただくことが一番基本でございますが、同時に、海外拠点の整備や相手国政府との交渉など、政府もしっかりサポートしていくことが必要だという御指摘がございます。そのために大使館、JETRO、国際交流基金、その他が力を入れる。あるいは2国間や多国間協定を積極的に活用したらどうかということでございます。
 10ページは、以上のものを図に示したものでございます。日本企業が相手と外国にしっかり展開するためには、日本政府が支援するというものを絵で示したものでございます。 11ページは、(2)といたしまして、国内外のイベント等の活用や支援でございます。海外イベント、映画祭、見本市、芸術祭等へ積極的に参加していただくよう支援すること。 それから、国内のイベントを支援して、日本も世界のコンテンツの中心になっていくということが必要ではないか。
 あるいは各地域の映画祭や芸術祭をやりまして、国内のコンテンツ発信の芽を拾い上げていくことが必要だと、こんな御指摘もいただいております。
 12ページは、「(3)海賊版対策」でございますが、我が国コンテンツが海外に出ていくためには、官民挙げて偽物の一掃に取り組むことが必要だと。そのためには、大使館、JETROが積極的に活動すること。それから、相手国政府の能力を構築する。キャパシティービルディングを応援すること。
 それから、多国間や二国間協議、政府間交渉で問題を解決していくこと。WTOの活用、それから不正還流対策を考えること。こういう御指摘をいただいております。
 13ページは、以上の海賊版対策を絵に示したものでございます。企業が中心になってやるものを日本政府、あるいは国際機関を通じて積極的に働きかけるということを示したものでございます。
 14ページ、「(4)海外との連携等」でございますが、海外で受け入れられるコンテンツをつくることが重要でありますので、企業が積極的に取り組む。政府が支援すること。具体的に言えば、海外との連携、そのための海外のクリエーターや海外アーティストの参加を促進するとか、いろいろ工夫が要ること。
 あるいは展開先の言語へ対応するために、企業の方にやっていただくわけですが、中小企業の場合には、しかるべく支援も必要ではないかという御指摘もいただいております。 15ページ「(5)幅拾い権利許諾契約の締結」でございますが、従来は第一次利用と言うんでしょうか。国内の最初のものだけを中心に、権利の関係が契約でなされていたわけですが、海外展開のためには、コンテンツの二次利用を行う際、国内展開とは別の許諾を実演家などの権利者に改めて求めていたりしますと、タイミングを逸するということもございますので、制作の段階から幅広く権利許諾を受けることが必要だと。こういう御指摘をいただいております。
 以上でございます。

○牛尾会長 では、事務局の説明が終わりましたところで、皆様の御意見に入る前に、久保委員から実際にポケットモンスターというコンテンツ・キャラクターの海外展開を行って来られた経験の御紹介をちょうだいして、海外展開の1つの参考例としたいと思いますので、久保委員、よろしくお願いします。

○久保委員 貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。8分間ということですので、簡潔明瞭にお話ししたいと思います。
 実際にパワーポイントをめくる前に少々前置きをさせていただきたいと思います。大前提のお話をまずさせてください。
 コンテンツを世界展開していく上で利益を最大化するProper and best wayは、各国に支社を置き、すべて自社系列でビジネスを完結させるという方法です。つまり、自社所有のテレビ・映画配給会社などのメディアを置き、劇場公開・ビデオ販売・ライセンスといった全ての回収作業も自社のリスクで行うことを意味します。
 ハイリクス、ハイリターンな方法と思われるかもしれませんが、海賊版の発生を防ぐ最も効果的な方法が、世界同時展開であることを考えると、あながちそうとも言い切れないと思います。
 ワーナー・ブラザーズやディズニーは、自社による世界同時展開が可能です。先月公開された映画『マトリックス リボリューション』がよい例だと思います。
 残念なから日本の会社は誰一人できません。世界順次展開も可能な会社は10社に満たないと思います。コロンビア・ピクチャーを所有するソニーさんと、有力なゲームハード、ソフトメーカーさん以外にはないかもしれません。
 世界展開が自社でできないということは、だれかの力を借りることになります。ここで力を借りる会社はエージェントなどを指しますが、一度でも力を借りると彼らの報酬と経費が発生します。日本の会社は自分たちの利益からその分を供出・分配をしなければなりませんので、おのずと日本サイドの利益は減ります。
 また、彼らとの間には契約や知的財産保険が必要になりますから、そこから生まれるリーガル・コストやリスクも日本の会社は逃げて通れないことになります。
 勿論、自社で世界を展開する上での各国に支社を置く経費もばかになりません。結果として、ワーナーやディズニーなどの通年で豊富にコンテンツを供給できる会社しか世界展開の資格がないことになります。資格のない会社は、日米を問わず誰かの力を借りる方法しか残っていないということになります。
 では、日本の企業が行うだれかの力を借りる方法ということですが、どういうやり方が一番良いのでしょうか。それは世界展開が可能な有力なエージェントと大きなテリトリーを対象にして大型契約を結ぶということがセカンド・ベストだと思っています。「ハリー・ポッター」がよい例だと思います。
 ハリー・ポッターの原作チームは、ワーナー・ブラザーズより多額な原作使用料と、映画作品に対するアプルーバル権利を手にした上、大きなリスクから開放されているんですから、契約自体は悪くないと思っています。
 私どもが展開したポケモンですが、北米展開の成功後、ポケモンUSA INC.という現地法人を立てました。ニューヨークのロックフェラーセンターにも専門店を出しております。テレビシリーズはエージェントを通じ、ワーナー・ブラザースと契約し、最近、契約更改交渉を経て、再契約いたしました。
 また、映画は4作目よりエージェントを外すことに成功し、日本映画としては珍しく、直接ディズニー系列のミラマックス社と契約しています。
 つまり、ポケモンは少しでもベターな展開方法を探しながら、契約の変更などのトライを重ねてきております。
 つまり、数々のトライとメディアミックスを行ったお陰で、様々なノウハウが蓄積しているんではないかと思います。
 前置きが長くなりましたが、今日はそのノウハウのエッセンスをちょっとお話ししたいと思っています。
 先ほどお話ししましように、だれかの力を借りる場合には「契約書」が必要です。北米展開における最重要ポイントは、まずは契約書だと思います。契約書を作る上での注意点は、ここにある全ての項目ですが、どの項目1つでも不利になれば、契約全体に陰を落としかねません。

本来であれば英語版に関する著作権は日本サイドで完全に押さえておきたいところです。なぜならば、スペイン語版といった英語版以外のバージョンは英語版をベースにつくられることが多いからです。
 日本人にとって落とし穴的な項目は下から3つの「経費(トップオフ条項)」、「オプション」、「訴訟・監査・保険関係」になります。
 大きな企画ともなると、経費明細書というのがアメリカのエージェントから送られて来るわけですが、電話帳を超える厚さになることもままあります。使われた宣伝費なとの経費が妥当なものであったかどうかは、しっかりチェックすべきですし、事前に上限のキャップもはめておくべきだと思います。いずれにしても電話帳を一々チェックするのは大変な作業です。それゆえ、時には「監査」も必要だと思います。
 アメリカの会社に監査を入れる場合、大体コストは2,000 万くらいかかりますが、北米では経費監査を入れることは一般的です。相手の会社に嫌われるとかを気にせずに、勉強のためだと思ってどんどんかけてみるのが良いかもしれません。
 また、日本人が契約交渉をする際に大きく誤解していることがあります。それは契約交渉時の議事録が契約とほぼ同等に位置づけられているという慣習を知らないということです。日本人は契約書にサインする前は、何度も前言撤回して構わないというふうに思っている方は多いのですが、議事録が残っているとそれは不可能ですし、最悪の場合は、議事録を基に訴訟をされる可能性もあります。ですから、アメリカとの契約交渉は首尾一貫した態度と要求をするということが重要なポイントになります。
 契約書の次に大きなポイントは「英語版の制作(ダビング作業)」です。英語版の制作で重要なものは「アプルーバル」と「(英語版での)権利」ですが、契約書同様、他の項目1つでも失敗すると、契約全体に悪影響が及びます。
 録音スタジオがカナダにあると、カナダ政府から支援があったり、カナダ国内での放送が容易になったりするメリットがあります。勿論、実演家のユニオンとの関係も、カナダでダビングすると薄れますので、最近はカナダのスタジオが人気です。
 英語版の制作費は一番安いのはフィリピンで、30分1話あたり70万程度です。ですが、英語のクオリティが今ひとつなので、アメリカでは余り歓迎されておりません。一番高いのはニューヨークで行う英語版制作で1話250 万ほど、カナダだと大体150 万前後です。
 放送1年分を考えますと、30分番組50話必要になりますので、全体のコストは7,500 万から1億2,500 万ほどになります。アメリカで展開する最初の一年間で絶対必要なコストということになってくるわけです。
 アメリカでは実演家の権利主張は大変激しいです。BGMを使用するオーケストラからも権利主張があったりします。対策として、チェコ辺りで録音することも珍しくありません。また、音楽の出版権の権利については、日本とアメリカではいささか違いがありますので、ここも留意が必要ではないかと思います。
 ここにあるFCCですが、「フェデラル・コミュニケーションズ・コミッション」の略で、連邦通信委員会のことを指しています。委員長は私の記憶ではコリン・パウエルさんの息子さんのマイケル・バウエルさんがやっておりまして、日本の公正取引委員会よりも強い絶対的な権限を持っております。
 地上波のデジタル放送の推進もこの委員会が担当しているところです。
 彼らは、番組内で表現されております暴力や性的な表現のチェックをしておりまして、合格しないと、簡単に放送中止に追い込まれます。
 また、FCCは、4時間娯楽的な子ども番組を放送する場合、1時間の教育的な番組放送を求めてきます。このように海外の放送局は何らか公的機関に監視されている場合が多いので、英語版の番組制作は彼らのコードをクリアーすることが絶対条件となってきます。 下から2つ目にあるリメイク権ですが、昨今話題になっています。これはリメイクする際の権利使用料を低く抑え、つまり日本に払うお金は低く抑え、新映像をアメリカサイドが独自につくるということで、彼らの利益が拡大するという目論見が背後にあるからです。
 4ページ、3番目に重要なポイントとして「ブランドマネージメント」を挙げました。ブランドマネージメントにとっての重要なポイントは、「マーケティング」と「流通」です。北米では小売店の発言力が強固なために、彼らの対応はライセンサーがじきじきに行うことが普通です。つまり、ビデオや玩具を発売する場合、小売への説明は日本だとビデオ流通会社、玩具メーカーが行いますが、アメリカではライセンス元が直接対応するということです。アメリカのビデオや玩具の小売はウォルマートとトイザラスなどで、50%以上のシェアを持っていますので、彼らへの対応は直接利益に影響します。
 ここにある訴訟ですが、コンテンツが成功しなければ深刻な訴訟が発生する確率は低いです。つまり、金の儲かっていない人は訴えられないということです。また、保険がカバーすることもありますので、英語版制作において、FCCなどの要求にきちんと応えていれば、問題を最小限にすることは可能です。
 しかしながら、一旦作品がヒットすると、雨後の筍のように訴訟されます。忘れてならないのは、アメリカは陪審員制度ですので、負けるときには簡単に負けてしまいます。1年間に5億円以上のリーガルコストがかかってしまうことも希ではありません。そうなると、日本でかける保険は全く意味のないものになるということを強調しておきます。
 時間が足りないので、南米については、飛ばします。
 最後にヨーロッパの話をします。ヨーロッパのデータをここに出しましたが、ポイントは北米よりも人は多いけれども、マーケットは小さいということです。つまり、ヨーロッパで展開しても余り儲かりません。全ヨーロッパをカバーする言語もメディアも流通もありませんので、効率が悪いのです。その上、バルカン半島という海賊版の発生するホットスポットもテリトリー内にありますので、フリーパスでヨーロッパすみずみまで海賊版が運ばれてしまうという状況があります。海賊版への対処が難しいということです。
 フランス、ドイツはかなり発言力の強い国ですので、ここで展開することは非常に難しい作業になります。
 ヨーロッパでは、展開後のビジネスの難易度が高いということなので、日本サイドは契約時にもらえるミニマムギャランティー重視になりがちです。長らく、日本製アニメの販売方法は、売り切りだけのミニマム・ギャランティー・ビジネス一辺倒でした。ですので、買った放送局は何度でも再放送を無料でできたりします。その反面、放送チャンスが増えて、日本製アニメが人の目につきやすかったということがあるかもしれません。安いがゆえ人気があったということも言えると思います。
 しかしながら日本サイドのビジネスは、ワーナー・ブラザーズやディズニーが行っていたブランドマネージメントとはほど遠いものでした。ポケモン以降は売り切りではなく、成功に付随したライニング・ロシヤルティー重視に変わってきています。
 ポケモンは世界45か国で映画公開し、日本映画の海外興行収入トップ3を占めているわけですが、この金額のほとんどが北米地区から上がっております。このことからしても、北米で当たらなければエンターティメント・ビジネスのダイナミズムは決して経験することはできないということが言えるのではないでしょうか。
 少々時間をオーバーしました。失礼いたしました。ありがとうございました。

○牛尾会長 事務局からの御説明と、久保委員からの説明は大変に充実したものであったと思いますが、あと20分ばかり時間がございますので、討議に入りたいと思います。
 なお、本日御欠席の里中委員並びに日枝委員からの問題提起は、資料4、5に添付してありますので、後でお読み願えればと思います。では、恒例に従いまして、御発言の方はネームプレートを立てていただくことと、今日は時間を3分厳守でお願いいたしたいと思います。御発言の方、いらっしゃいますか。

○角川委員 今、久保委員からお話がありまして、非常に参考になったのが北米では1年間で5億円くらいのリーガルコストがかかるというリスクがあるということですが、これは角川も経験しております。そういうことで、告訴の経験というのは日本企業はなかなか明らかにしたがらないと思うんです。何か恥ずかしいと。もっと公になるためには、つまり教訓になるわけです。リーガルコストを負担するような制度というのはつくれないんでしょうか。国家的な視野というか、そうすることによって訴えられている案件が割と社会に認知されて、それが当事者から見ればコストが安くなる部分と、合わせて日本の社会も海外展開に対するリーガルなリスクを認識していくという、両方のいい点があるような気がします。

○牛尾会長 これは例えばカメラとかオフィスオートメーションの対応は、進出した20年くらい前というのは、ひどい目に遭ったわけです。それに対して多くのカメラメーカーが大いに頑張られたんだけれども、最後はキヤノンが徹底的に、初めからそれをコストとして投入をして、キヤノンの特許戦略というものがこの業界の1つの共通項になって、不利な場合は日本企業が結束して相手と当たるという慣習ができたために、詳しい最近の状況は知りませんけれども、キヤノン、並びにその国の業界の特許占有率は80%を超えているわけです。だから、個別同士で海外企業と争っているケースもかなり多いんですけれども、業界としてまずその辺を話し合わなければならないというのと、この費用というのは不可欠なコストなんです。
 私は経済産業省とか、関係省庁がどういう振興をされたのか知りませんが、従来の一般商品はほとんど援護されなかった。初めは徹底的に特許でたたかれて、アメリカは優秀なところは横の連絡を持っています。例えばエレクトロニクスの場合は、GEとウェスティンハウスとドイツのシーメンスとオランダのフィリップスは相互に使い合う。それで年末に調整する。日本だけがそこに入っていない。昔は東芝がそこに入っていたんです。それが追い出されたような話になって、今のところ4社はクロスライセンス契約で非常に強い。
 しかし、この分野というのは、日本の存在なしには考えられないくらいに、日本の商品シェアと品質が高まったために、日本からの話し合いについてはほとんどクロスライセンス並みに話ができるような状況がこの2、3年できてきたということが言えると思います。 ですから、政府の援護も必要だし、業界の方も共同して闘うとか、相互にそういうことを表に出して、情報を共有するとか、情報が同時に進んでいくくらいのことを考えていかなければならないと思いますが、これは非常に初期の段階では重要なテーマなので、初めはなかなかできないんです。それを乗り越えるまでもつかどうか。その辺のところも是非知的財産戦略本部で。

○角川委員 そういう物販の方ですと、物販の利益がコストに対応できますね。私が申し上げたいのは、コンテンツの場合は、リメイクのケースでいっていますので、リメイク権で1億円収入を得ても、リーガルコストで5,000 万から8,000 万取られてしまうと、何をやっているのかわからなくなって、下手するとリメイクの収入以上になってしまう場合もあるわけです。ですから、今この段階では申し訳ないんですけれども、ちょうど今コンテンツを育成するという養成期間だと思っていただきたいんです。

○荒井局長 検討させていただきます。

○関根委員 1つは、資金調達についてのお願いですが、完成保証制度については、今回の会合ができたのを機会にして、政府として何らかの形でつくってほしいということです。我々も細々ながら予約購入制ということで、放送権についてNHKが事前にシナリオを募集して、これはいい番組になりそうだというものについては、放送権について、あらかじめプロダクション等との間で契約を結んで購入する制度。それを元にしてプロダクションが番組を制作するんですけれども、そういうことを細々ながら4年前からやっているんです。
 間接金融的なものについては、国内ではできませんから、ただ1つ、アメリカのロバート・レッドフォードという映画俳優で監督をやっている人がいますけれども、この人が主宰しているサンダンス・インスティテュートと我々が7年前から映画をつくることで資金的にもいろんな協力をしています。
 毎年シナリオを募集しまして、募集の対象は、日本のほかラテンアメリカ・ヨーロッパと4つの地域です。優秀なシナリオには賞金を出すほかに、NHKが放送権について購入することをあらかじめ予約しておく。 アメリカでは、それを元にして間接金融でお金を借り、映画の制作に当てています。しかし、借りられる資金は僅かで、実際やっていることは、非常に細々なんですね。だから、是非こういった完成保証制度というのをつくってもらえれば、これは国内だけではなくて、海外でもいろんな形でいい作品がつくれるし、新しい人材を発掘できるんではないかというふうに考えています。
 もうひとつは海外展開についてですが、これはこの会議の最初の会合で申し上げましたけれども、ハイビジョン、つまり、HDについて是非国家戦略として位置づけてもらえないかということです。。これは改めて言うまでもなく、今、放送界については勿論のこと、映画界、特にハリウッドでは、ほとんどがハイビジョンで映画を制作しています。スティーブン・スピルバーグ、ジェームズ・キャメロン、ジョージ・ルーカスなどの著名な監督は全てHDで映画を作っています。
 ハイビジョンについては、我々は十数年にわたるノウハウを持っていますし、NHKだけではなくて、日本では民放、あと各プロダクションもいろんなノウハウを持っています。しかも、取材、制作、送出というハード系、ハイビジョンはソフトとハードが一体ですから、これもほとんど日本の家電メーカーが、アメリカのほかヨーロッパ・アジアに輸出しています。
 これを国家戦略として位置づけていけば、もっともっとソフトだけではなくてハード系についても海外展開できるんではないかというふうに思っています。

○牛尾会長 今の国家戦略に位置づけるというのは、どういう意味ですか。

○関根委員 今までは、国家戦略に位置付けて推進して貰えなかったんですが、これからは我々のソフトと日本の家電メーカーのハードを一体で海外に展開できるよう大胆に打ち出して戴きたいということです。

○牛尾会長 推進するわけですね。

○関根委員 規模はほかのコンテンツに比べて小さいかもしれませんけれどもソフトとハードが一体ですし、やろうとすれば、幾らだってできるわけですから、そういうところに是非目配りしてやっていただきたいということです。しかも、このハイビジョンについてはアメリカの映画界が中心になっていくだけではなくて、例えばアジアでも中国では、2008年の北京オリンピック、これはCCTVは全部ハイビジョンでやると言っていますし、すべてハイビジョンでやるという風潮になってきています。マーケットとしての可能性が拡がってきていますので、是非考えていただきたいというふうに思います。

○牛尾会長 前半に述べられた完成保証制度というのは、今、日本で動いているものというのは、大体どれぐらいの金額なんですか。

○関根委員 いや、ほとんどないと言っていいぐらいですよ。


○牛尾会長 わかりました。では、続きまして、久保利委員お願いいたします。

○久保利委員 久保利でございます。3点申し上げます。
 1点は、今、角川委員のおっしゃった訴訟コストの問題ですが、考えてみれば、コンテンツ産業というのは、司法制度あるいは訴訟というものとセットでないと、実は権利化できないし、ビジネス化できないんです。
 したがって、日本でどうしてもコンテンツビジネス、あるいはエンタメロイヤーが少ない少ないというふうに言われますが、それは今まで日本のその種の企業が訴訟というものをコストとして考えていなくて、何か突然天から降ってわいたような災難としてしか理解していなかったと。しかし、これはまともなビジネスにおける正当なコストなので、そのコストのことに気がついてコスト化していこうとすることによって、日本の弁護士たちにとってもビジネスになってくる。
 アメリカのハリウッドが強いのは、コンテンツがいいだけではなくて、司法、弁護士と訴訟という手段を通じてこれを保護していくという、このことがあるので非常に強くなっているんではないかと。そのことに日本も今気がつき始めたわけですから、何らかの形で、企業の負担プラスαの国家的な支援なり、保険制度なり、こういうものを充実することによって訴訟を活用していただきたいというのが1点であります。
 もう一点は、税制の問題でありまして、資金調達の中の12ページに書いてありますが、全くおっしゃるとおりで、この種の税制、特にエンジェルとか、ベンチャーに対することも含めて、コンテンツ投資はその一つだと思います。映画産業については記述のとおりでありますが、是非そういう国民の持っている富を自分の関心のある方向に誘導するという税制、これを是非お願いしたいというふうに考えます。
 3番目についてでありますけれども、これは海外展開についての事務局ペーパー15ページ、「幅広い権利許諾制約の締結」というのが最終ページにございます。私もそのとおりだと思います。
 ただ問題なのは、幅広い権利許諾というのが、不公正な力関係の中で無理やり制作者に押し付けられるということであってはならないだろうと。どちらかというと、今の日本の全体を見ていると、やはり流通が非常に強い。その意味でいうと、ここでコンテンツをやっていこうとする側が強くて、むしろ実演家だとか、クリエーター、こういうものが力関係からどうしても追いまくられて反対ができない、あるいは対価が十分でないという中で、こういうことだけ言いますと、幅広く権利許諾を受けることは必要なんですが、その権利許諾の対価をしっかりと差し上げないと、次の創造の意欲が出てこないということで、結局尻つぼみになってしまう。その辺りを十分考えた、そういう幅広い権利許諾という制度を考えていただきたいし、我々もそういう見方で、海外展開は勿論大事なんですが、その根っこで日本の国内が疲弊して消耗しないような、そういう権利関係をつくり上げるべきだと、こう考えます。
 以上でございます。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。では、依田委員どうぞ。

○依田委員 3点ございます。角川委員と、久保利委員の御発言と関係していますが、私は余りリーガル、リーガルという前に、日本にはまだビジネス・アフェアーズという考え方が不足していると思います。海外攻勢をやるときには、まずビジネス・アフェアーズありきです。
 そこでノウハウをきちんとわかった人が交渉し、その後リーガルに持ち込むべきで、その前段が抜けているということは、いきなりロイヤーが出てくると。しかも日本にはコンテンツのような非常に小さい弱小の分野においては、細かいノウハウをわかったリーガルの方もおられないということで、私は、これは学校教育も含めましてビジネススクールも常に大学院とか、高度な教育施設を皆さんお考えになりますけれども、いわゆる一般の町に存在するビジネススクールが必要だと思います。
 私の経験からいっても、15年間の企業経営の中で、7年間は自分でビジネス・アフェアーズをやりました。だから、訴訟コストはほとんどゼロでございました。最初のビジネスの目の付けどころ、そしてそれをどのようにうまくビジネスとして築き上げるかというビジネス・アフェアーズの部分をもっと強化しないと日本は勝てないというふうに思います。 2番目ですけれども、税制ですが、よくエンジェルとか、ファンドはいろいろありますが、基本的にはそのお金は何かリターンを求める、全部投資効果を求める出資が多いように思います。
 1つの業界の中で、その業界に自分の何らかの形の動産、不動産を投資して、それは寄付すると、その寄付したものにはリターンを求めないというようなものが日本にはどうしても不足しているような気がします。
 税制、税制というと、なんとなく企業あるいは投資目的の税制であって、本当に自分が育った業界に投資というよりも、寄付をするという感覚がどうしてもここでもう一度見直す必要があると思いますし、それについての税制は必要だというふうに思っています。
 言ってみれば、いわゆる自己ドネーションのトラストファンドというような、そしてある程度の自分のバックアップしたいセクターの希望も入るというような形で何か考えられないかなと思います。
 3つ目でございますが、海外展開の5ページで、音楽ソフト輸出額29億で、輸入額251 億という大幅な輸出鎖国的な数字が出ております。これをなんとかしていかなくてはなりません。国レベルでのバックアップも頂きながら我々民間にできることは精一杯取り組んでいき、音楽文化も海外に広げていきたいと思っております。輸出振興を図りつつ、不正還流対策についても、これを機会に是非達成していきたいと思っております。
 以上です。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。大変貴重な御意見だと思います。
 では、岡村委員お願いします。

○岡村委員 もう既にお話が出ましたので、簡単にお話しさせていただきますと、やはり我々メーカーの立場からもさっき会長から御指摘があったように、知的財産権の問題というのは大変厳しい話で、過去はございました。
 アメリカでビジネスを始めてから、再三にわたり知的財産訴訟で悩まされてきたわけですけれども、基本的には、まず最初にクロスライセンスということで、まず守るということから入りまして、具体的に相手側の特許を持っているであろう、あるいはこちらの特許を使うであろう対象者とネゴをして、包括的なクロスライセンスを結んで、まず、訴訟費用をいかに押さえるかということをまず最初に考えると。
 今は、そこから恐らく攻めの時代に入ってきて、先ほどキヤノンさんの話が出ましたけれども、それはやはり権利は向こうで積極的にこっちが取りに行くことだというふうなことで、今、そういう状況に来ています。
 したがって、この業界でいかに権利を確保するかというのは、先ほど依田委員が言われた、まさしく、まずビジネス・アフェアーをしっかり立てた上で、具体的に展開するということですから、やはり総合的なお話になってきますので、必ずしも知的財産権、訴訟コストだけのことを制度にするためにはというふうな考え方では、ビジネスそのものが成立しないんではないかと。やはり、ビジネスは成功するための一つの大きな要因ではないかということだというふうに思います。
 大変訴訟費用がかかるわけですけれども、これはアメリカの弁護士産業そのものが要求してきているわけで、我々なんかがねらわれるのは、得てして訴訟費用がかかるから、訴訟に負けても、しっかりやってこないんだろうというふうに見られてしまうんです。
 例えば、こちらが絶対に勝てると、しかも訴訟に買っても5,000 万円ぐらいしか取れない。訴訟費用が1億円かかると、こういうふうなケースでは、彼らは我々に対しては、それを承知の上で挑んできて、こっちが取り下げて和解に行くのを待っている状態なんですね。
 ですから、そういうふうな状況も含めて、やはりアメリカの訴訟社会というのを業界としてどう認識して、それに対してどう対応するかというようなことが必要で、その辺の情報交換みたいなものが必要なんではないかと思います。
 必ずしも日本のエンタメロイヤーを育てることが海外進出にはほとんど役に立たない。やはりアメリカ人の弁護士を組織化して、日本のこの業界のために頑張らせるというふうな、そんな方策が、これは民間でやっていかなければいけない部分だと思います。

○牛尾会長 ありがとうございました。熊谷委員どうぞ。

○熊谷委員 2点ございます。まず、資金の件に関しましては、皆様からさまざまなアイデアがございますので、一部税制に関しまして少し補足させていただきたいと思います。 15年度の研究開発税制の抜本強化が図られまして、試験研究費に関する税額控除についての改定がありました。
 しかしながら、コンテンツ制作会社で試験研究費を適用していただくことというのは、非常に現状困難です。画像認識ですとか、音声認識、人工知能、環境シミュレーション等、デジタルコンテンツに関わる基礎研究分野は非常に幅広いものの、制作に関する研究部分と、基礎研究部分との境界があいまいということを理由に、コンテンツ制作会社でそれらが認められることは非常にまれだと思われます。
 デジタルコンテンツに関する基礎研究分野の推進に寄与して、産学共同研究等の成果に期待するためにも、試験研究費に対する税額控除の適用範囲について再検討していただきたいというふうに、まず1つ提言申し上げます。
 2点目なんですが、ゲームのコンテンツの海外展開に関しまして、こちらについては既に成功しているコンテンツというふうに評価をいただいていることと思います。
 昨今の市場変化に関しましては、ただし、制作サイドに大きな負担を強いています。
 現在、ゲームの開発費は、日本やアメリカで一本当たり平均4億から5億というふうに言われています。非常に大きくなっているわけですが、こちらに関しまして、コストの大きさというのは、前世代ハードの倍以上にふくらんでおりまして、2Dのゲーム機時代に比べると、更にその差は顕著です。
 一方で、コンテンツの平均売価は下がっておりますので、売価が下がってコストが上がっているということで、制作サイドは非常に厳しい状況に置かれています。
 こういった状況下では、なかなか自由な発想でものをつくるというよりは、どちらかというと安定したアイデアを実現して、それで確実に資金を回収するといったような、そういった内容に最近は偏っているようにも思っております。

このまま、我々もいろいろな側面で無策でおりますと、あっという間にアジア、アメリカの方に逆転されてしまうという危機感は非常に持っております。
 そういった自分たちに対する自省の思いもあるんですけれども、なんとか業界も含め、また政府の方からもそういった意味では御支援いただきたいというふうに考えております。

○牛尾会長 では、続きまして久保委員。

○久保委員 プレゼンさせていただいたので、簡潔に。
 多分、角川委員の後押しをするような発言になると思いますが、やはりハードウェアの輸出とコンテンツの輸出は根本的に違います。一番の違いは、やはり権利の複合体であるということと、その複合体のバインディングは非常に弱いということが背景にあります。 ビデオデッキ、もしくはカメラというものは間違いなくそれだけで完結した商品だと思いますが、コンテンツの場合は、そこからさまざまな二次利用が発生します。それゆえに権利の拡大はハードウェアとは比べものにならないぐらい広がっていくわけです。
 そういうことを考えますと、訴訟される確率は、またこれも飛躍的に増えていくわけでして、ハードウェアとソフトウェアは全く違うということを改めて強調させていただきたいと思います。
 もう一点は、資金についてですが、私はお金を集める方ではなくて、国に税金を納める方についてお願いがあります。
 例えば、3,000 万円の映画をつくって、それが全く当たらなかったとします。でも国税は、それは3,000 万円の財産という価値評価をするわけです。それをずっと持っていれば、勿論財産評価されて課税されていくわけです。ですが、実際は、当たらなかった映画は価値ゼロですから、3,000 万円の価値なんかないのです。
 ところが、国税は、解釈に関して全く頑として譲らないんですね。では、目の前でフィルム切りましょうかという話になるわけです。でもそれは文化財産を壊していく話になりますから、私らはできません。そうすると税金を払うしかないのです。国税にはもう少し柔軟になってもらいたいなと思います。これからコンテンツ、コンテンツと皆さん言いますので、国税はますますやってくるでしょうから。やはり税金をどういうふうに納めるのかということについては、皆さんでもう少し考えてあげようという意見を出して頂けるようお願いしたいと思います。

○牛尾会長 3,000 万円の資産になってしまうわけですね。

○久保委員 そうです。

○牛尾会長 開発費用で5年ぐらいで償却できれば本当はいいんですね。

○久保委員 そうですね、そのようには見てくれていません。

○牛尾会長 そうなればいいわけでしょう。

○久保委員 そうです。

○牛尾会長 資産はないけれども、開発費として計上すると、わかりました。
 重延委員どうぞ。

○重延委員 3点だけ簡単に、1つは久保委員のポケモンのメガヒットの形が非常に明快で、なおかつこの会合はメガヒットとともに、そこに至るまでのことに関しても少しお話ししなければと思いますが、久保委員のような経験を是非これからも御披露いただければと思います。1ついろいろなことの関係の中で、1つだけポイントとしては「コスト感覚」というのがあって、日本の場合に、あらゆる面で「コスト感覚」に関しては非常にあいまいであるという気がいたしますので、このコストの感覚をどう変えていけるかということです。映画の方が、むしろ製作委員会制度になってから、割と「コスト感覚」が明解になってきたんです。
 それに較べ放送界の方は非常に遅れているという具合に思います。これは、収入構造、支出構造に関して、なかなかしっかりした形が出ない。それから、日本の放送界はほぼ見積書は紙一枚だと思います。これは紙一枚では収まるものではないという認識がないというところから始まらないと、なかなか変わらない。「コスト感覚」の重要性というものがまずあると思います。
 それから、関根委員の方からお話のあった、予約購入があって、これはNHKさんがむしろ民放よりも早く発言をなさっているところで、非常に興味があり、私は賛成しているんですけれども、この予約購入に関しても、やはり「コスト感覚」がしっかりしていなければ成立しないものです。
 特に、これはBBCから発想されたものなんですけれども、BBCに関しては「コスト感覚」につきましては明解でありまして、BBCが、「100 %出資しているという」形では、制作費を口座に入れて両方でお金の動きを管理するという考え方で成立している。そういう感覚からコスト管理が出発しているので、やはり収入、支出に関して、将来、契約者同士では公開できるような形で進めていくことが産業化へ進む道ではないかという感じがあります。
 それから、海外展開に関しては、やはり経験が非常に重要であるというのがポケモンの形でもよくわかるので、ポケモンでさえ、あれだけの経験を持つわけでから、未経験な方々がどれだけの経験が必要かと。
 そういう意味では、日本の場合には、やはりもう少し海外市場に出向いていくという形が必要です。特に流通ではなくてクリエーターが出向くといことが必要です。これはカンヌ映画祭とか、ベネチアでもそうですけれども、クリエーターが集まって意見交換して、クリエーターの形の中でのコンテンツの海外展開というのを見つめ合っていく。ですから、簡単に素手で行ってもなかなか招待されませんし、それから賞も取れません。そういう意味では、やはりこの世界に入っていくと、情報交流というのがものすごいんです。ここになかなか育っていく人が行けないわけです。それから、招待されても、大体カンヌですと1,000 万ぐらいかかるわけです。今、文化庁の方から助成金が出て、300 万か400 万でしたか、その辺のお金が出てるようになって大変助かるんですけれども、やはり1,000 万レベルで、やっと国際舞台に出られるという支出が必要だということで考えれば、やはり海外展開に関しては具体的な、もう少し援助とか、あるいは道立てというものが必要だと思います。
 3点目は、海外展開の中で、メガヒット系ではなく考えると、アジアに向かってというのが非常に重要だと思います。アジアの方が身近で、もしかしたら言語を超えて少し共通な感覚を持てるというところがありますので、海賊版の問題も早く解決して、アジアとどうやっていけるかということを、これは国の文化政策として是非考えていただきたいと思います。
 以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、最後に浜野委員お願いします。

○浜野委員 2点ありまして、里中先生いらっしゃったらということを代弁したいと思います。海賊版のことは、目に見える海賊版については議論されていますが、『ジャングル大帝』の問題であったように、目に見えない海賊版も無視できません。角川会長の『リング』はリメーク権が売れましたけれども、ストーリーの宝庫である漫画は、キャラクターを変えて映像にしてしまうとわかりませんので、たくさんのストーリーが目に見えない海賊版となっています。
 アメリカではライターズ・ギルドというシナリオ作家協会が、ストーリーの登録制を実施しています。その登録時間がストーリーの模倣かどうかの裁判において重視されるため、模倣の抑止力になります。さらにストーリーは抽象性が高いために、広く網をかけられるので、抑止力になるのです。知らぬ間にストーリーが流出するようなことを避けるためにも、目に見えない海賊版対策についても検討いただきたい。

○牛尾会長 それは、どこの組織ですか。

○浜野委員 アメリカのライターズ・ギルドです。

○牛尾会長 これは民ですか、それとも官ですか。

○浜野委員 民間です。シナリオライターが加盟しているユニオンです。

○牛尾会長 それを政府がバックアップして、エビデンスに使うと。

○浜野委員 それを一応フォーマルな根拠とするということです。
 もう一点は、牛尾会長は、家電メーカーとか、大企業が民間として協力して対策を取られたという例を出されましたが、コンテンツ業界というのは規模が比べものにならないくらい小さく、集まっても大した勢力になりません。
 例えば、フランスでは1980年代に、政府も論壇も日本のアニメーションをひどく批判しました。そのときに、日本のアニメーション業界の方がくやしい思いをしたのは、反論するというか、自分たちの考えを聞いてもらう機会を作ることができなかったということです。フランスに行くだけで費用がかかるし、公式に議論する方法も知らないし。
 例えば、アメリカの映画業界のことを考えるとわかりますが、何かあったらMPAAの代表が出向いて、シンポジウムを開くとか、当事者を連れて行って議論する機会を設定します。自らの立場を説明し、理解を求めます。
 韓国は日本よりも制作会社は小さいですから、集まっても大した勢力にならないので、官の方が場を設けて出向いたり、アーティストを連れて行ってシンポジウムを開くとか、そういう議論をさせて韓国の立場を説明するといったことをやっています。わが国のプロダクションも小さな勢力なので、海外での活動について官の支援がもっとあってもいいのではないかと思います。
 以上です。

○牛尾会長 大変、具体的に、かつ重要な問題がたくさん出たと思います。一応、これらを事務局でよく収集して、他の分野ではほとんど経験していることが、この分野では初めて発生しているわけですから、割と経済産業省はやりやすいと思います。税の問題なんかも特に大事ですね。
 それから、今出た経費の認め方とか、不良商品の開発勘定とか、そういう問題が割と具体的に問題提起すればできることですから、次回までに検討してもらいたいと思います。
 大変に貴重な御意見をありがとうございました。もうワンラウンドぐらい本当はしたいんですけれども、今日はテーマを2個与えられておりますので、ここで一応締めまして、後でまた問題点を思い出されれば、事務局の方に御連絡をお願いしたいと思います。
 では、第2の議題に移りたいと思います。
 資料6は、コンテンツビジネス振興政策に関する考え方をまとめた骨子案です。当初中間提言の形で、文章により相談させていただいておりましたが、その前に、まずコンテンツビジネス振興に関する現状認識、基本哲学、理念などを骨子の形で議論した上で、3月の本専門調査会でとりまとめるという形に考えました。
 これまでの委員の方の御相談をいただいた文章の内容につきましては、3月のとりまとめの作成の際に活用させていただくことを御了解ください。
 今日の議論にも非常に関連があるし、今日の発言にも非常に関連があるんですけれども、その辺を込めて事務局から、まず骨子についての御説明をお願いしたいと思います。

○荒井局長 資料6「コンテンツビジネス振興政策(骨子)(案)」、これに沿いまして御説明させていただきます。
 1ページは、この重要性と課題でございますが、産業として重要であること。それから日本文化の発信ツールとして重要であると。双方を足してソフトパワーになるということですが、一番下にございますように、ビジネスとしての展開は不十分であると。
 こういう認識の元に2ページ以下に書いてございますが、問題点は、日本ではコンテンツビジネス、構造上のいろいろな問題を抱えているということでございまして、左側に「(1)前近代的な構造」がある制作の現場、流通の問題。
 (2)は、社会的に認知度が低いということで、高等教育機関での教育が不十分である。
 (3)は、海外展開の遅れでございます。
 そのことの結果、真ん中にございますが、コンテンツビジネスの悪循環に陥っているという御指摘もございまして、少ない資金で制作するということですから、海外展開やマルチユースが不十分であり、また利益が少ない。したがって、制作者へもリターンが少ないということの悪循環だという御指摘もございます。
 右側にございますが、一方、海外では、アメリカがこのままでいけば一人勝ちになっていく様相を示している。
 一方、アジアの追い上げも非常に激しく、韓国や台湾、中国、それぞれ国家的な支援をしているということで、一番下にございますが、このままでは日本は国際的に大きく立ち遅れる危機であるということでございます。
 3ページは、こういう認識の下に集中構造改革を進めたらどうかということでございます。2004年から3年間にわたり基本方針といたしましては、コンテンツビジネスの事業規模を今は横ばいでございますが、それを上昇方向に展開させ、更に大きな飛躍を目指すということでございます。
 考え方、改革は民間主導でいく、国はそれを積極的に支援するということでございまして、では国が何をやるかと言えば、(1)制作・流通の近代化を支援するということで、「(1)『制作』部門の近代化」、(2)は「『流通』部門の近代化」。
 それから、(2)として社会的認知度を向上させるため、「(1)高等教育機関の充実」、「(2)優れた人材の顕彰と広報」。
 (3)がビジネス展開を支援するということで、「(1)海外展開の拡大」、「(2)国内での流通の拡大」、「(3)ビジネス展開の基盤整備」、こういうものを進めたらどうかということでございます。
 4ページは、今のお話をちょっと違った角度からまとめたものでございますが、コンテンツが振興していくというのは、日本として「クール・ジャパン」、"カッコイイ"日本を考え出す、売り出す。「ブランド・ジャパン」、海外市場戦略を重視する。「デジタル・ジャパン」、デジタル化・ブロードバンド化に対応していく。「ハイテク・ジャパン」、先端技術を活用する。「オール・ジャパン」、すべての関係者、官民が連携・協力していくと、この5つのアクションで右側にございます「ビジネスとしての飛躍的展開」と「創造性あふれる日本文化の発信」という2つのゴールを目指したらどうかということでございます。
 5ページは、参考資料ですので省略いたします。
 以上です。


○牛尾会長 ありがとうございました。この件につきましても、本日、御欠席の日枝委員からは資料7のとおり、御意見を書面でちょうだいしております。
 それでは、再度討議に入りたいと思います。御発言ある方は、ネームプレートを縦にしてください。
 依田委員どうぞ。

○ 依田委員 2ページでございますが、先ほどもちょっと、時間がなかったので切ってしまったんですけれども、2ページの問題点の左側の(1)ですけれども「高等教育機関での教育機会不十分」とあるんですが、どうしても高等教育というふうに言ってしまうんですけれども、やはり基本的な海外ビジネスというものがよくわかる、そういうビジネス・アフェアーズの経験のあるデパートメントがないと、いいロイヤーも育たないと思うんです。
 したがって、やはりどうしてもビジネス学校、いわゆる高等教育、今回の新しい法科大学院とか、そういうレベルではなくて、もっと多くの一般の町にそういう学校ができないかと。
 例えば、私はエレクトロニクス業界から来たんですけれども、アメリカに10年いましたけれども、そのころの同期の多くの力のある人たちが、みんな中高年でリタイアしている人が多いですね。そういう人たちが持っているアメリカの独禁法、FTCなどのノウハウを是非活用したい。こうした知識をもってビジネスをきちんとつくり上げてくれる人が、特にコンテンツの業界では不足しております。
 大手の超一流の企業はクロスライセンスもできますし、情報はどんどん入ってきますが、我々のレベルのコンテンツ産業は、情報が大幅に不足しています。ノウハウも不足しています。
 そういう意味で、どうしても社会認知度の低さの中で、高等教育機関の教育機会不十分というのは、もうワンランク下げてもいいんじゃないかなと思っています。
 それに関連しまして、3ページの左の2番目の「社会的認知度を向上」に「高等教育機関の充実」「優れた人材の顕彰と広報」とありますが、私も文化庁の芸術文化フォーラムに入っておりまして、そこでこの間文部科学大臣を囲んでの昼食会がありました。そこで舞台芸術に関わるいろんな問題が出されましたけれども、今、日本では映画、あるいは舞台芸術等において、縁の下の力持ちになる、若い人たちが育たない。このままでは伝統芸能もなかなか先が暗い。なぜならば、こういうクリエーターたちは高等教育の機会がない。ただ、キャリアだけで、その業界だけに埋もれてしまう。将来が見えないということで、たまたま監督さんであるとか、俳優さんは、社会的地位に恵まれるけれども、照明であるとか、大道具、小道具、そういう人たちというのは、ずっと縁の下の力持ちで浮かび上がれないという現実をどうするか。その辺についての将来を感じることができるような、あるいは新しい職場を求めることができるような、そういう高等教育も是非必要だというようなお話があったように思っております。
 その意味では、その業界、業界によっての教育方法というのは、いろいろあるんではないかというふうに思っております。
 とりあえず、そんな実感がございましたので申し上げます。

○牛尾会長 どうぞ久保委員。

○久保委員 今、依田委員の方からもありましたけれども、やはり大切なことは、官民力を合わせて!ということがあります。しかしながら、どうも官の人たちは漫画を見て育っていないんではないかと思います。つまり、漫画を読んで東大に入った人は、そうはいないと思うんですね。
 官民力を合わせようとした時にプロトコルが合わないということが起きてくるのではないだろうかと危惧しております。
 解決の方法としては、国立大学の受験科目の質問の中には、やはり漫画を大切な日本の文化財産だと位置づけで、問題の中に組み込むなど考えて頂きたい。冗談ではないんです。教科書の中にマンガが登場する時代です。そういうようなことも大胆に検討していかないと、官民を合わせた会話は成立しないんではないかと思います。
 それから、海賊版についてですが、例えば中国政府は、私どもも海賊版の被害者ですということを公に言っています。つまり、中国政府にものを申しても、自分たちは被害者だからわからないというのが彼らの公式見解なんです。
 こういう状況下では訴訟も必要でしょうし、高度な政府間交渉も必要になってくると思います。経済産業省では日韓中の3カ国コンテンツ会議を継続的に開催しており、そのような場で具体的な方策はどうするんだというところを突っ込んだ議論をしていただきたいと思います。

○牛尾会長 角川委員、どうぞ。

○角川委員 2ページに関して申しますけれども、議題の方は少ない資金での制作ということからくる悪循環になっているという問題と、右の方でアメリカ、ハリウッドの一人勝ちという指摘をされているわけですけれども、私はやはりここで「コンテンツビジネス振興法」では、きちっと恵まれない創作者のための資金援助のためのシステムということと、それからメガコンテンツを制作するための基盤づくりということを、きちっと議論の上で分けて考えないと、どこかでダブルスタンダードになってしまうんじゃないかという感じがします。
 文化庁の著作権審議会でもコンテンツの保護から創造の方に軸足が移ってきて、支援する方に回ってきているという感じがします。そう言われても、やはり恵まれない創作者への資金、コンテンツ創造という部分はどうしても必要ですからどちらかというと文化庁的なのかなと思います。
 また、メガコンテンツの創造というのは、娯楽作品ですから、これはハリウッドに対抗しているわけですから、経済産業省的なのかなとか、区分けをして、それぞれの仕組みをつくらないといけないのではないかと思います。
 先ほどから出ている完成保証についても、そういう映画の完成するノウハウのないアーティストのための完成保証と、30億、50億のための完成保証は全くスキームが違ってきます。そこのところを考えていただいた方がいいと思います。

○牛尾会長 これは大事な問題ですね。まぜこぜにすると違うんですね。

○角川委員 はい、違うんです。

○牛尾会長 関根委員、どうぞ。

○関根委員 瑣末な問題と受け取められるかもしれませんけれども、1次案より2次案、少しずつ文章の表現自体が練れてきているという受け止め方をしています。ただ表現上の問題、つまり現状に対する認識の受け止め方、ここでちょっと気になることが幾つかあるので意見を述べておきます。例えばこの2ページの問題点の1番のところで、「前近代的」という表現があります。それと、3ページのところにも、真ん中ほどに国が進める方策の中で、「制作流通の近代化」、どうも「前近代的」とか、「近代化」ということについて、私非常に違和感を持っているんです。
 つまり、ここで前近代的という表現を使いますと、コンテンツ産業全体、つまり日本の文化産業全体が非常に前近代的という受け止め方をされるんじゃないかと懸念しています。確かに、それは業界によっては、前近代的というか時代遅れ的なシステムなんかもあるんでしょう。しかし、ここの言葉遣いに気を付けないと、日本の文化産業自体が非常に前近代的なんだといった、いわば自虐的な表現になるんじゃないかという気がするんです。
 しかも、これを外部に公表するということになれば、表現通りストレートな受け止め方をされる恐れがあります。したがって、この2ページの「前近代的な構造」という表現については、別の言葉で言い換えられないかどうか、例えば「基盤が脆弱であるから構造上の問題が出てきているんじゃないか」という風に改めることが出来ると思います。要するに、「基盤が脆弱な構造」という形に改めていけばいいんじゃないかというふうに考えていますし、それと3ページのところの「近代化」についても、ここもやはり「基盤の強化」とか、(1)の「『制作部門』の近代化」というところについては、「『制作部門』の強化」という言葉に言い換えれば良いと考えています。
 ちょっと何か後ろ向きなことを指摘している表現ではないかという気がするので、これは現状に対する認識でもありますから、是非もう一度考え直してほしいという気がいたします。

○牛尾会長 割と幅広く、遅れているところから、先端まであるという、どこをながめて発言するかで全然表現が違うので、正確に発言した方がいいですね。

○関根委員 これは全部じゃないんですね。

○牛尾会長 そうですね。

○関根委員 どこを取って前近代的なのか。人によって受けとめ方が違うと思います。

○牛尾会長 もう少し突っ込んで分けて考えるという手もありますね。非常に貴重な御指摘ですね。
 岡村委員、どうぞ。

○岡村委員 まず一つ、先ほどソフトウェアとハードウェアの問題が出ましたので、一言だけ申し上げておきますと、今やまさにハードウェアといえどもソフトウェアの固りになっていまして、現実にはもうソフトウェアの闘いを訴訟の世界でやっております。
 したがって、ハードウェアという、もののつくり方というレベルでは、既になくなっているということを認識いただければ、1つエレクトロニクスの業界は、ソフトウェアで訴訟を今やっておりますので、是非誤解のないようにひとつお願いします。
 この問題なんですけれども、4ページの参考1の絵を拝見していて、これは全くエレクトロニクス業界、日本の産業全部に当てはまる話だというふうに理解をしまして、そうしますと、やはり日本産業の決定的に今、置かれている、すべての産業における問題点がここで出てきているということで、程度の差こそあれ、やはり象徴的だなというふうに感じたんですが、問題は最後の「オール・ジャパン」というところが一番問題で、果たして官も民の方もオール・ジャパンでやる気に今なっているのかというところが問題で、大変総論としての方策については、これで進めていくべきだと思うんですけれども、具体的にこれをだれが、どうやって、主体的に引っ張っていくんだというような、官の代表、産の代表というのは、それぞれ不明確なままでこの大綱だけが評価されても、実際はほとんど効果がなくなってしまうということで、いろんなところでお話をしているんですけれども、やはりコンテンツについても、あるいはデジタルコンテンツについても、いろいろなところでいろいろな主張がなされている。官の方も、いろいろな省で、いろいろな主張がなされていると。
 だれが一体これを責任を持ってとりまとめていきますかという話になると、そこはさあという話にいつもなってしまうということで、是非やはりオール・ジャパンのところの具体的なやり方のようなものを、これは是非中間報告の段階でもはっきりさせて、これでいくぞという形を見せていただきたいという希望があります。

○牛尾会長 非常に多様化していますね。だから、非常に成功している業界を中心に、民間が軸になって、オール・ジャパン的な方向にいって、しかもおっしゃるように中身はソフト、ハード、混然として、しかも闘いの主戦場はソフトになっているんですね。そういうところは成功しているけれども、やはり業界そのものがもう混迷しており、官民に行く前に民の中がまとまっておらず、しかも会社のレベルにばらつきが多くて、それが過去の秩序と全く違ってきていると思います。昔、Aランクの企業がCになり入れ替わりが激しく、相互に認知してなくて、何かゲリラ戦のようになっている業界というのは、もうますます沈んでいくんですね。
 そういうところは、特にアジアにやられてしまっていますね。ですから、私はこういう時代ですから、政府にそれほど期待するだけでは難しいと思うんです。政府が理解をしてバックアップするのはいいけれども、問題の解決のきっかけにはならない。だから、やはりその分野で官、政治ともつながりを持った、優れた指導者が現われた業界というのは非常に、そのリーガルにも世界的には学問の世界に媒体の役割をするわけですから、学問ともリーガルともつながって、分野別にオール・ジャパンのようなものをつくる求心力は、最終的には民の人だと思います。
 そういう人が許容できる社会とできない社会というのは、伝統的にあります。伝統尊重の分野ではやはり30年か40年やってないと相手にしないようなこともあるんですね。そういうところは非常に対局しにくい。そういう点では、IT分野等は非常に新しい社会ですから、うまくいく。失敗者も多いけれども、何かまとまっていくということなんですが、このコンテンツの世界は、今、関根委員おっしゃったように、本当に50年ものから2年ものまであって、2年ものでもおいしいものはあるし、5年ものでも手に負えないものもあるわけですから、非常に難しい話で時間がかかるんですが、しかしこの2、3年が大事だと思うんです。余り時間がかけておられない。
 だから、最近考えて、どれをすることが一番いい波紋になって、どの石を投げ込めば波紋で直していくところがありますから、御指摘のとおりだと思います。
 次は、熊谷委員、どうぞ。

○熊谷委員 ゲームという一つ絞られた世界のことになってしまうかもしれないんですが、昨今ゲームと犯罪との結び付きですとか、暴力との結び付き、またゲーム脳という御指摘があります。勿論こういったことに関しましては、各専門の分野の方々の調査結果を待たねばならないところはありますし、一部で漫画やアニメ、映画に関しましても、同じような歴史で悩みを抱えられていたと思いますけれども、ゲームに関しましてもそういった意味ではメディアの方から非常に厳しい状況を強いられているところもあります。
 今回のとりまとめの3ページの(2)で、「社会的認知度を向上」といふうに掲げられておりますが、そういった意味では今回、こういった席にゲームというコンテンツも認めていただいて同席させていただいているというのは、非常に光栄なんですが、一方でそういったメディアに対して、情報発信を慎重に行っていかなければいけない。また、社会的認知度を本当に向上させる努力が必要だというところで、御支援いただきたいと思います。
 以上です。

○牛尾会長 わかりました。重延委員、どうぞ。

○重延委員 まず、この骨子案ですけれども、1つは先ほど近代化と書いてある流通部門の近代化で、「公正取引委員会による独禁法・下請法の厳正適用」というところですけれども、公正取引委員会だけではなくて、民間レベルの意識改革で、「近代化」という表現よりも「意識改革」の方がいいかと思いますが、民間レベルの意識改革が必要かと思います。これは流通の方、制作する方、両方によるものだと思いますけれども。
 それから、多少抽象論で申し訳ないんですけれども、いつも最後のところに来るとビジネスと文化が分化されて書かれているんですけれども、私は余りビジネスと文化が二元論で行われるのはよくないなと、むしろ文化の中にビジネスが吸収されるぐらいの意識で文化論をやった方がいいという意識がございますので、ここの表現を是非新しくしていただければうれしいと思います。
 全体にこういう案というのは、幾つかの委員会でもよく出るんですけれども、私が非常に重要だと思うのは、アメリカで1985年に出ているヤングレポートで、知的財産の改革をやったときに、その後にプログレスレポートというのがあるんです。必ずこれがどう進展していったか報告するというのを付けているんです。
 ですから、案だけではなくて、それがどう実現していったというプログレスを報告するのを、この会の方針としたらいかがかと。終わっても報告することが大事じゃないかと思いました。
 非常に瑣末にわたって申し訳ないんですが、日枝委員の意見書をいただいて、今、初めて読んだんですけれども、日枝委員の意見書の6番の「メディアによるコンテンツビジネスの促進」ということに関しては、非常に評価できると思っているんですけれども、5番のところに一人歩きすると怖いことがあるので、瑣末ですけれども、意見をちょっと言わせていただくと。「"著作権は『流通』が握っている"のか」というところで、日枝委員はフジテレビと書いてあるんですけれども、フジテレビは非常に先進的な方だと思います。フジテレビの例だけではないという実態があるということと。
 (1)ですけれども、著作権を持つというのは、私としては著作権は自動的に派生するものという認識を持っていたいということです。
 それから、発意と責任というのが加えられていく。つまり責任ある行動があって、そこに著作権が自動的に派生するということではないかと。
 (2)のところで、制作費は100 %放送局が負担という例は、こういう表現もあると思いますけれども、これは海外先進国というか、ヨーロッパはこの場合に支払い方というのが、大体納品時に90%は支払われている。日本の場合は、一切支払いがありません。納品が終わって1か月後です。ですから、資金運用は日本がやっているというところが違う。
 それから、赤字が出た場合、合議によって赤字部分が支払われるということがヨーロッパであります。日本は制作会社がリスクを持つ、こういう実態が多少誤解を生むケースです。
 著作権は流通が握っているというより、流通の管理権はどこが握っているかというテーマは、やはり外してはいけない。ここは日本は遅れているという具合に認識して、日枝委員がいらっしゃらないので申し訳ないんですけれども、多少将来の議論を日枝委員としてもいいかなと思っております。
 以上です。

○牛尾会長 管理権の問題ですね。
 更に問題が明確になりまして、ありがとうございました。
 続きまして、久保利委員、どうぞ。

○久保利委員 関根委員のおっしゃった、2ページの「前近代的な」云々という部分なんですが、会長がおまとめになったとおり、このコンテンツ産業というのは、非常に多岐にわたるいろんな業態が入っているので、全部まとめて前近代的と言うと問題なのかもしれません。しかし、少なくとも私が知る限りは、制作現場の問題一つ取ってみても、これは零細なクリエーターのところから、あるいは放送局に至るまで問題があります。例えば、放送局におけるADの低賃金、非常に長時間の労働というものとか。セクハラ相談なんかやると、弁護士会に一番来るのは放送局の人なんです。非常にマスメディアはそういうことについて厳しいように思われていながら、実は非常にルーズな人事管理をしたり、非人間的な取り扱いがあったりする。 流通の問題1つ取ってみても、これは前近代的としかいいようのない側面もあるのではないかと。
 したがって、すべてをそう前近代的と言われてはとおっしゃる意味はよくわかりますけれども、そういう部分もあると、その部分を直せというのがここの真意だろうと思いますので、その部分をしっかり直そうよと、いいところはうんと伸ばせばいいわけでありまして、そうふうに私は思いました。
 日枝委員のおっしゃったとおり、今日、日枝委員いらっしゃらないので、私も日枝委員のいらっしゃらないところで余り言うのはと思っていたんですが、重延委員おっしゃったので、驥尾に付して、ちょっと議論の頭出しだけさせていただければ、やはり流通はプロダクションよりも強いのではないかと、そうではないぞとおっしゃるようですが、、一般的には今の流通は非常に強いのではないか。
 その中で、勿論例外的な局もあるでしょうし、それぞれが違うと思いますけれども、今年の3月に公正取引委員会のデジタルコンテンツと競争政策に関する研究会が出したレポート、かなり突っ込んでいろいろお調べになっていますし、そういう部分を踏まえて専門調査会としても議論をしていいのではないか。
 ただ、日枝委員がおっしゃっていることで、全く正しいと思うのは、よいコンテンツをつくれない事業者は立場が弱いと、当たり前の話でありまして、それは同時によいコンテンツを流通させられない流通業者は立場が弱いということになるべきなんだけれども、本当に公正な競争があればそうなんだけれども、今、日本の流通はそうなっているのでしょうか、そうではないのでしょうかという辺りに問題があります。もし不公正な部分があるとすれば、その辺りの是正が問題になるのではなかろうかと。
 そういう点で、是非この問題は別に流通がいいとか悪いとか、プロダクションがかわいそうだとか云々という問題ではなくて、競争関係の中で強いコンテンツができていき、そのコンテンツ産業というのが世界に伸びていってほしいというのは万人の思いだと思いますので、そのときにフェアなマーケットがなければ、フェアな競争ではないということになるわけですから、そこにやはり注目をして、それを変えていく。オール・ジャパンでそこを伸ばしていこうということを議論すべきだと私は思います。
 以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。浜野委員、どうぞ。

○浜野委員 2ページ目に「アジアの追い上げ」というふうに書いていますが、国際競争力という点では日本映画は中国映画に追い抜かれていますし、オンラインゲームとかモバイルコンテンツの一部では、韓国に差をつけられています。追い上げるべきはアジアではなく日本である部分もあり、反論があるかもしれませんが。認識が甘いのでないかと思います。
 3ページ目にビジネス展開というところの3番の「ビジネス展開の基盤整備」についてです。局長からお話があったように、アメリカは1920年代から商務省と大使館が通じて、国際展開に関するデータ収集を行って、業界に情報を提供しました。当時はハリウッドだけが、スクリーン数、入場料、映画人口、文化的障害などのデータをもって、海外への流通戦略を立てることができました。

日本では今もって、 残念ながら、海外でコンテンツビジネスする際のデータがありません。研究者として恥ずかしいですけれども、海外のデータ収集の努力が体系的に行われてこなかったのです。
 ですから、わが国のコンテンツ産業は海外のデータを持たないまま海外のビジネスをやっているものだったと思います。久保委員のように一部の個人や企業は持っていると思いますが、体系的には整備されておらず、データが流通していないのも事実です。ビジネスの基盤としてデータの整備と流通が重要と思います。

○牛尾会長 依田委員、どうぞ。

○依田委員 時間の関係で、先ほどレコード業界の立場で申し上げましたが、私も日本経団連のエンターテインメント・コンテンツ産業部会に関係しておりますので、ちょっと追加でお願いしたいと思います。
 日本経団連の提言で、8つ御提出させていただいております。そのうちの1つは、エンターテインメント・コンテンツビジネス振興法(仮称)の制定を求めておりますが、そのほか7つのポイントの中で、今日この3ページの中で、もう少し追加していただきたいと思うことがございます。
 その背景といいますのは、一応8つの分科会が誕生しまして、1月、2月と鋭意検討を始めるわけですが、その中で少しでも3ページの中に関連性を持たせていけるといいなという気持ちでおります。
 特にお願いしたいのは、ここでは最初あったんですけれども、国際映画際であるとか、イベント等の強化、推進というポイントをどこかに入れてほしいということ。
 (3)の「ビジネス展開を支援」の中の、(2)に「国内での流通の拡大」に、「コピーに対する技術的保護手段の開発、普及」とあるんですが、もう少し大事な、いわゆる放送分野における認証、あるいは広義の権利処理のためのネットワークづくりをどうするかということ。
 もう一つは、放送業界で持っているコンテンツ二次利用がもっとしやすくできる改善策がないのかという問題があります。
 先ほど熊谷委員が言われたことと関連して、非常にいいポイントなんですが、倫理の問題をどうするかと、いわゆる青少年の倫理というものがコンテンツ産業からネガティブな影響を与えていることはないか。その典型的なものが、非常に悪質になっている万引の問題であるとか、もっと啓蒙、教育を必要とするという部分があると思います。これが、この部分では「社会的認知度を向上」というところで盛り込まれた方がいいんではないかというふうに考えております。
 そんなことで、一応前回私欠席しましたけれども、牛尾会長からも日本経団連の方も頑張ってやるようにというお話があったというふうに受け止めておりまして、できればなるべくいい形で参画できればと思っております。
 以上です。


○牛尾会長 ほかにありませんか。どうぞ、角川委員。

○角川委員 11月28日付けの新聞各紙で、京都府警がブロードバンドにおける映画のダウンロードを不当にしていた人を逮捕したという画期的な事件があって掲載されていました。ハリウッドの方の調査機関の調査では、日本では2年間のうちに4,200 万本の映画が不当にダウンロードされているという調査が出でおります。
 その逮捕された41歳の人でも、その自身が映画界に与えた損害は、2億円強だと言われております。その2億円強というのは、1人の人が映画の中ヒット並みの侵害がすぐにできるという、ブロードバンド時代の本当にとんでもないことなんです。
 4,200 万本が2年間ということですから、1年間ですと約2,000 万本、今、映画の人口というのは、1億6,000 万人ですが、その上に2,000 万人の不当に見ている人がいるという状況を考えると、ブロードバンドの知的財産の基本法の中で、18条2項に国がインターネットにおけるコンテンツの流通を支援しなければいけないとありますけれども、そこら辺の法的な問題はどうなのかということを、もう一回きちんと検証する必要があるんじゃないかと。
 アメリカでも遅ればせながら、7月−9月の間にブロードバンドが急送に普及してきて、アメリカでも不当な映画のダウンロードが急増しているという話を聞いております。 そういう意味で、日本がこれに対応することが結構世界に対しての先進的な行動になると思いました。
 もう一つ、今日こういうふうに、調査会を何回か重ねておりますけれども、来年2月、3月のいい時期に是非公開シンポジウムをしてみたらどうかという感じがするんです。先ほど岡村委員から、官民一体となっているけれども、実態はどうなんだろうかということがありますけれども、そういうギャップを埋めるためにも、どこかこのメンバーで1回大きなところで公開シンポジウムをして、私たちはこういうことをやっているということをまず知ってもらった方がいいんじゃないかと。それの上でもって、最終案をまとめていく方向の方が、ちょっと認識を一体化するためにいいんじゃないかと感じたんですけれども、どうでしょうか。

○荒井局長 貴重な御意見だと思います。

○角川委員 そうです。

○牛尾会長 ブロードバンドの普及がいよいよ本格的になるのは、2005年、IPバージョン6が完全に軌道に乗ったときに、一気に幅広くなるわけですね。このままでいきますと、こんな状態でそれをすると、もうどんどんダウンロードされて、何が何だか大混乱に陥ると思うし、みんなも顧客合戦で、今のADSLの競争を見ていると、コンテンツを吹き飛ばして、客を何人取るかということに全部焦点が行っているような、ちょっとひどい闘いになっているんですね。だから、ブロードバンドの場合は今度は中身が問題になってきますから、本当に来年の9月ごろまでにすればぎりぎり間に合いますから、この委員会もその辺を相当しないと。
 また、世界中が殊にブロードバンドに関しては、日本に学びに来ることがあるんですね。コンテンツは学ぶところはないかもしれないけれども、その学びに来たときに、中身を付随して、これは何だということになるとまた国民の恥じでもあるし、映像技術だけが前に進んで、中身が非常に整理されてない状況というのは、そういうミーティングをどうやって人に知らしめるかということもありますね。
 知らす人が全部当事者であるという、非常に難しい業界なんですね。違う分野は関係ないから、たくさんしようと思うけれども、これは登場人物はそれを知らす役の人になってしまうわけだから、なかなか難しいところがあるですね。一回、NHKさんぐらいと相談して、ここでは無理かもしれないから。

○荒井局長 国民的な課題ですからね。

○牛尾会長 まだ、日本社会全体に知的財産の問題とか、コンテンツの問題とか、それは一体何だという人が、恐らく95%だと思うんです。だから、もっとわかりやすい言葉に転化して伝えないといけないわけです。
 この分野で仕事している人は、だんだん非常に狭くプロフェッショナルになっているものだから、一般の人に伝えようなんていう気があまりありませんね。だから、それは非常に問題なんです。
 やさしく理解させる単語は大いに欠落して、専門用語が飛びかうことによって、相互に認識を共有しているところがあって、実は専門用語そのものは3人の間ではみんな誤解している部分が一般あるんですね。だから、そういう意味では面白い業界なんです。だから、均衡が保たれているという説もあるんです。
 だから、割と1回始めるということがなきにしにもあらずで、だからこれは偉い人がまた1回検討してください。

○荒井局長 はい。

○牛尾会長 簡単にやってしまうとうまくいかないですね。といって、おっしゃるように、タイミングからいって来年ぐらいにやらないといけませんね。

○依田委員 そう思いますね。

○牛尾会長 あなたが冒頭に言われたリーガル・マターの前にビジネス・アフェアーそのものが、形を成してないところがあるんですね。それぞれ個別にいいところは、いいゾーンなんですよ。

○依田委員 だから海外進出できないんじゃないですか。

○牛尾会長 国内の特殊な条件で行っているわけだから、ビジネスの人の基礎が成り立つようにする為には、やはりみんなビジネススクールに行くしか仕方ないんじゃないですか。特殊なもののビジネスを学ぶよりも、世界に通用するんだったらビジネススクールに行くのが一番いいので、みんな映像もあるし、そういうことでもっと当たり前の仕事なんだということを言わないと、特殊な仕事だと言わない方がいいんじゃないですか。
 このことだと、いろんなことがたくさん出てくるだろうと思ったら、案の上非常に貴重な情報が多かったので、もう一度今日のお話の議事録を公開して、骨子については再度つくるわけですね。最終答申は3月になっておりますね。だから、1月に再度骨子を出しますか。

○荒井局長 できれば、そうですね。

○牛尾会長 暮れから正月で、事務局には悪いけれども。
 第4回が2月2日、第5回が3月15日でありますので、1月に作業をしてもらって、2月2日の1週間ぐらい前にこれの改訂版を出すと。第4回は流通をやるんですね。流通は非常に重要な問題なので、流通を何らかの形でカテゴリーに分けて、非常に近代化度の高いものと、どろどろしたものがはっかりあるんです。同じ分野でも右と左があるんだけれども、分野ごとに集中して、その辺もどろどろの分野の方には申し訳ないけれども、1回見せないといけないと思いますので、見せていただきまして、ヒアリングをするとみんなお話しになると思いますから。
 では、そういうことで2月2日、今日皆様にお配りしたコンテンツ振興政策の骨子のセカンドバージョンをつくっていただきまして、相談できない場合は私が事務局長の報告を得て、その判断でバージョン2をつくります。
 次回は、流通とこの問題を、今日のような時間割でやりまして、第5回目に最終案をとりあえず出して、早く出すことが非常に大事だと思いますので、わかりやすいものを早く出して、それで次に進むということで考えたいと思います。
 経済産業省で1年ぐらい前にやったのが、この業界のあらゆる分野の人が一堂に会した初めての例だというぐらいに、何か部分で生きていた業界が初めて表に出てきたわけですから、その割にはスピードが早くて、データなんかあるはずがないですね。だから、その敷衍的なデータをどうやってつくるかというデータづくりのプロセスが、ある意味ではいろんなものを強力に一致するきっかけになるかもしれないと思いますので、事務局、その辺考えてやってください。

○荒井局長 はい。

○牛尾会長 それでは、次回は流通ともう一度振興政策骨子で、勿論事務局からヒアリングでもう一度参ると思いますが、最終的にこうやってまとめることに関しては、私に御一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。


(「異議なし」と声あり)

○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、まだ2、3分ありますけれども、ほぼご意見が出たと思いますので、本日のこの会議を終了したいと思います。
 貴重な御意見、誠にありがとうございました。